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さくら奪還

「なに?」


 ランディファミリーの屋敷に一人で乗り込んだ謎の少女 あすかは、背後に広がるランディファミリーの無数のソルジャーたちの死体を全く気にも留めていないのか、平然とした口調で、その地獄絵図に戸惑いながら、彼女を見つめる俺に言った。


「君は何者なんだ?」

「あなたに関係ない事だと思うんだけど。

 それとも、私の事好きなの?」


 これまた予想外の言葉に返す言葉を失っていると、レイさんがマシンガンを構えた。


「来たぞ!」


 そう言ったかと思うと、マシンガンをぶっ放し始めた。

 耳をつんざく凄まじい銃撃音。

 レイさんが放つ銃弾が向かう先に目を向けると、屋敷の中の建物の中から、何人かのソルジャーたちが、マシンガンを構え、飛び出してきていた。


「ぼぉーっとしていないの!」


 あすかが俺の事を突然突き飛ばした次の瞬間、俺がさっきまで立っていた空間を銃弾が切り裂いて行った。

 門柱の陰に隠れて、迎撃をしようとするレイさんだが、弾幕の激しさに押され、反撃の機会を掴めないでいる。俺はしりもちをついた状態から、四つん這いのまま門柱の陰に隠れた。

 命がけの戦い。

 そんな思いで気合を入れる俺の目の前で、あすかは再び屋敷の中に飛び込んで行った。

 ドバッ、バッ、バッ、バッ。


「ぎゃあっ」


 銃撃音に混じり、男の悲鳴が聞こえてくる。

 俺たちを狙う弾幕が止んだ。

 中の敵は、狙いを彼女一人に絞っているに違いない。


「行くぞ!」


 レイさんがマシンガンを構え、中に飛び込んだ。

 その後ろ姿に続き、俺も飛び込む。

 最初に俺が目にしたのは、あすかが放つ数多の銃弾をその身に受け、肉片と血しぶきをまき散らしながら、身をくねらせている一人のソルジャーの姿だった。

 アーシアがエルカーンファミリーを襲った映像を見た事で、少しは免疫ができていたが、もし初めてこれを見ていたら、足がすくみ、吐き気に立っていられなかったに違いない。


 敵を倒しているのは、彼女だけじゃない。

 彼女に気を取られていたソルジャーたちの横から、レイさんが移動しながら銃撃を浴びせる。

 俺も!

 そんな思いで、引き鉄を引く。

 その反動はすさまじく、予想以上の力に俺は体勢を崩し、地面に転がってしまった。

 再び立ち上がろうとする俺は、あすかの攻撃を目の当たりにした。


 アーシアは人の動きを超越していた。だが、彼女のそれは人の動きの範疇だ。

 ただ、普通の人よりはかなり早い。そして、敵が放つ銃弾の弾道を見切ったかのような華麗な動きでかわし、隙をついて敵に銃弾を浴びせている。

 剛の拳に対するのは静流の拳と言った昔の最強の暗殺拳のアニメの兄弟二人の対決シーンを彷彿させるじゃないか。

 俺はまだ一人のソルジャーも倒しちゃいない。レイさんも数人レベルだ。それだと言うのに、彼女は数えきれない敵を葬っている。レイさんたちが彼女の力を信じる理由は、この彼女の力を知っていたからだろう。


「行くよ」


 彼女の驚異的な力に頭の中がいっぱいになっている内に、周囲のソルジャーたちをすべて倒していたらしい彼女はそう言って、建物の玄関を目指し始めた。


「お前たちの目的は、こいつか?」


 頭上からした声に目を向けると、三階の窓から数人の男たちが顔を出していた。そして、その中央にはこめかみに銃口を向けられたさくらの姿があった。


「さくらぁぁぁ」


 俺の叫びに、さくらは無反応だ。眼鏡はかけているので、俺の事は分かっているはずだが、恐怖で声が出ないのかも知れない。


「こいつを死なせたくなければ、銃器を捨てろ」

「分かった」


 レイさんは素早く敵の要求を受け入れたらしく、手にしていたマシンガンを足元に捨てた。

 俺も捨てるしかない。あすかは?

 そんな思いで、あすかの姿を探したが、見当たらない。

 どこに行った?


「あの女はどうした!」


 敵も当然、あすかの事を気にしているらしく、身を乗り出してあすかの姿を探している。

 そんな時だった。身を乗り出していたソルジャーが地上に落下した。


「こんなところにいやがった!」


 さくらの姿が部屋の中に消えたかと思うと、男たちの怒声が聞こえた。それは始まりの合図のようなものでしかなかった。

 続いて銃撃音が轟き始めたかと思うと、絶える事の無い男たちの悲鳴が辺りを包み始めた。


「行くぞ!」


 一度手放したマシンガンを手に、レイさんが開いたままの玄関のドアから、中に飛び込んだ。

 多くのソルジャーたちが庭に飛び出して、彼女の餌食となっていたが、まだ建物の中にも多くのソルジャーたちが俺たちを待ち構えていたらしい。そんなソルジャーたちの屍が階段や廊下のいたる所に転がっていた。

 ただ、彼らは銃撃ではなく、首の骨を折られたり、背骨からおられたりと、素手での攻撃で葬られていた。きっと、さくらのいる部屋に気づかれずに近づくため、彼女は銃器を使わなかったのだろうが、銃器を装備している相手にそれを使わす間もなく、瞬殺していった彼女はまさしく暗殺者だ。


 俺が三階にたどり着いた時、全ては片付いていたらしく、さくらとあすかが廊下の奥から、向かって来ていた。


「さくら、無事だったか?」

「ありがとう。

 無事だったよ」

「私には聞かないのね」


 さくらの横にいたあすかが言った。


「えっ?

 あっ、ああ。無事だった?」

「心配してくれたからって、嬉しかないんだからねっ」

「いや、今、俺に自分で聞かないのかって、言ったよね?」


 俺の言葉は聞こえていないかのように、無視して俺の横を通り過ぎて行った。


「ここ、盗聴器しかけなくていいよね?」


 殺戮を自分の手で行ったと言うのに、平然とした表情で立ち去るあすかの後ろ姿を見つめている俺の横で、さくらがまたとんでもない事を言った。


「まだ、持ってたの?

 全部、ボスに渡したんじゃなかったか?」

「本当は他にも色んな周波数のがあるんだよ。

 ああ言って、同じ周波数のものばかり渡しておけば、他の周波数もあるなんて、思わないでしょ」

「じゃあ、あの屋敷の中にも仕掛けてあるの?」

「当たり前でしょ」


 さくらも平然とした表情で、とんでもない事を言った。

 この二人、何者なんだ?

 

 ただ、ロベルトさんの仇をとるには力強いメンバーなのかもしれない。そう俺は感じた。

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