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コミッションの圧力

 かつて五万人を収容したと言われるコロッセオを、車の濃いスモークガラス越しに見ながら、リムジンの向かいに座る五十近くと密かに思っているロベルトさんの話に耳を傾けている。こう言うのはなんだが、はっきり言って、見た目から西洋人の年は俺には分からない。

 かく言う俺は、勉強はつまらないし、将来に夢も無い、何もない生活に飽き飽きしていたところに、偶然見たマフィアを主題にしたアニメが面白く、実際のマフィアの世界を体験したくて、一人家を、そして日本を飛び出して、今、ここにこうしているのだ。

 もしも、学校に通っていたなら、高3だ。

 

「結局、コミッション側はエルカーン側と言う事だ」


 ロベルトさんの言葉にあるコミッションとは、マフィアの五大ファミリーからなるリーダーたちの集まりであって、縄張りなどマフィア間の争いごと仲裁などを行っている。そして、エルカーンとはエルカーンファミリーと呼ばれるマフィアの一つで、ロベルトさんがコンシリエーレ、いわば顧問のようなものを務めるマフィアのベルッチファミリーと縄張りが隣接し、ここのところ紛争を繰り返していたマフィア組織だ。


 ちなみに、五大ファミリーと呼ばれるほどの力を持つマフィアが、東の果てにある島国からやって来た俺を拾ってくれるはずもなく、俺を拾ってくれたベルッチファミリーとは中規模の中でも、下の方の規模なのだ。


「ボスの話では、コルレオーネのボスが恫喝したらしい。

 目の前を飛ぶハエに殺虫剤をかけ、サムライの国では目の前を飛ぶハエを箸で捕まえた強者がいるらしいが、俺はそのような事はできぬゆえ、飛び道具で処分するのだ。

 つまり、エルカーンファミリーの縄張りから撤退すると言う裁定に従わぬなら、襲撃して我らを処分すると言う事だ」

「ええっ!

 じゃあ、せっかく広げた領地返しちゃうの?」


 突然、口を挟んできた俺の横に座る眼鏡で黒髪ロングの少女は、日本の高1の時に同級生だったさくらだ。と言っても、俺は高1早々に日本を出たので、日本の時の彼女について、あまり記憶が無いのだが、平凡な生活は飽きたとか言って、原が連れて来られたのとほぼ同じ頃に、俺を追っかけて来たのだ。ちなみに、世間のワイドショーとかで言う一線は越えていない関係だ。正確には、俺的には越えてもいいのだが、彼女が結婚するまではしないとか言うのだ。いつの時代の考えだ! とは思うが仕方ない。


「やだな!」


 そう付け足して、ちょっと膨らませたほっぺを見ていると、ゲームで広げた領地を盗られた程度に思っているんじゃないかと思ってしまう。そんな奴はほっておいて、大切なのはボスがどう考えているかだ。


「で、ボスは何と?」

「力に対抗するには、さらに大きな力が必要だ。つまり、あの計画が完成するまでは、従うしかないと考えているようで、すでに、エルカーンの縄張りから撤収するよう、部下の者たちに命令を出している」

「あの計画が完成するのも、近いはず。

 早く完成すればいいですね」

「あれって、あれだよね?

 人間の形をしためっちゃ強い女の子。

 やっぱ、呪文とかで強くなっちゃうのかな?」

「いや違うだろ。

 元々強いんだよ」


 ロベルトさんが言ったあの計画とは、数年前に俺がここに来た時、力を渇望するロベルトさんに提案したもので、日本国内で開発が進んでいたヒューマノイドを戦闘用に特化して実用化すると言うもので、その案に乗ったロベルトさんとボスは、日本で有数のヒューマノイド開発者 原正樹の娘美紀を人質にして、ヒューマノイド開発を、原にベルッチの屋敷の地下で行わせているのだった。さくらはそこのところを理解しきっていないんだろう。


 ともかく、ソルジャーと呼ばれるファミリーの末端の者たちのいざこざから発展したベルッチファミリーとエルカーンファミリーの抗争は、俺たちのベルッチファミリー優位で推移していたと言うのに、巨大な力コミッションの介入によって、力、つまりソルジャーたちの血で得た縄張りを取り上げられる事になってしまったのだった。


 だが、ヒューマノイドの開発完了はもう目の前だった。

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