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閑話1

大変お久しぶりです。なかなか筆が進まず、時間がかかってしまいました。

今も本編の執筆に手間取っており、気分転換に閑話を投稿してみました。

どうか今しばらくお待ち下さい。



帝国では一時期、とある種類の絵画が話題になったことがある。


きっかけは官僚や軍人などから怨嗟や恐怖、或いはそれらが混ざり合った畏怖を抱かれる象徴として、5人の女性を描いた絵画の登場だった。




リーゼ・ラドバーン近衛憲兵庁長官

シャリア・ブラウバルド帝国軍飛行猟兵中佐

エルノ・リリーム大蔵大臣

セレティーヌ・ラル・ミストン商工大臣

オリビア・ディオ・レマルダ海軍兵学校長




5人は共に美女の部類に入ることもあり、議会制度が導入さつつも専制国家の性質が強い帝国内において、一般国民の間でも知名度の高い方だった。


帝国五大恐女という題で世に出た絵は当初、限られた人々の間でのみ知られる存在だった。しかしそのタイトルと画風を女帝エルヴィアが気に入ったという噂をきっかけに、注目が集まるようになる。


その後、この5人の女性たちを描いた絵画がブームとなり、重厚な質感で描かれた作品からコメディさを取り入れたものまで、様々な作風が登場するなど、一つのジャンルとして認識されるほどになった。




その中でも女帝エルヴィアが特に称賛した作品があるのだが、その絵には5人を解説するかように次の言葉が書き込まれていた。



悪魔の拷問屋

狂気の狩人

鋼鉄の金庫番

色欲商売人

鬼畜調教師



5人をこのように表現した作品の存在を知った時、女帝は腹を抱えて爆笑したとか。



因みに彼女たちの異名には根拠となる実績があった。




リーゼ近衛長官


彼女は過去に、反乱を計画した組織や組織的な公金横領を犯した者たちを摘発したのち、自らの手で取調べを行ったことがあった。


その際、爪を剥がしては治癒魔法をかけ、耳を削ぎ落としては治癒魔法をかけ、四肢を切り落としては接合治療を繰り返し、その痛みと恐怖を利用して情報を聞き出すことにより、事件に対して迅速な対応を取った。


一切の容赦もせず、それでいて肉体的にも精神的にも壊れないギリギリのラインで拷問を行う姿は、荒事に慣れている筈の部下たちにも強烈な畏怖を抱かせたのだった。





シャリア中佐


女帝と同じ吸血鬼であるシャリア中佐は、たった一人で敵の軍勢を壊滅させることも可能な戦闘能力を有し、その性格は戦争狂でありながらも、実戦で率いた部隊は帝国軍の中で損耗率が限りなく低いという実績を出し続けていた。


そして彼女の弟は国防省人事局にて課長職に就いているのだが、その弟に対して優秀な人材を寄越すよう脅迫するのが日常茶飯事なのだ。



「化け物かつ姉という最強生物に、一般人かつ弟という存在が逆らえるとお思いか。」



姉の言いなりになることが多い彼に対して、他の部隊指揮官から苦情を言われた時の反論だ。


それでもシャリア中佐の脅迫を受けつつ人事配置の交渉をできるのは弟である彼のみであるため、人事局から離れられないのであった。





リリーム大蔵大臣


エルフ族の彼女はもともと帝国の黎明期に、発足して間もない税務署にて事務官として働き始めたのだが、徴税官に昇格したのを契機に頭角を現した。


そして体系化される前の税務組織の中で出世を重ねた結果、組織としての骨格が形成された大蔵省にて、屋台骨とも言える存在にまでなっていたのだ。


彼女は徴税の現場を経験しているためか人一倍国家予算の使い方に厳しく、帝国国税庁の組織改革や予算執行監督局の立ち上げも主導している。


無駄ではないかと疑問を抱けば、戦時下の軍事費だろうと容赦なく追及する彼女の姿勢には、帝国官僚達から恐れを抱かれていた。





ミストン商工大臣


ラミア族の商家の家系であったミストン大臣は、彼女の叔父が帝国の初代商工大臣に選ばれたことをきっかけに官僚の世界を目指した。


元々商家の跡継ぎ候補として育てられながらも家業を継ぐのを嫌がっていたこともあり、ある意味で一族を飛び出し役人となった叔父のコネで商工省へ入省。


コネでは入ったとは言っても、幼少期から教育されてきた彼女の優秀さは周りの認めるところであり、遂には商工大臣の椅子に座ることになる。


しかし彼女の出世の裏には、色仕掛けがあるとの噂が絶えなかった。


ある時は商工省の主導で帝国中の運送業者の統合集約が行われた際に、各地で拒絶していた業者の代表者がミストン大臣と話し合うと、翌日には一転して商工省に味方するということがあった。


話し合いがあった夜には、獣のような男女の声が響いていたという証言も出てきたことで、大臣は色気で話をまとめ、成果を上げているのだと噂された。





レマルダ兵学校長


帝国海軍では元海賊という経歴を持つ者は珍しくなく、彼女もその一人だ。


海賊時代から身につけている眼帯がトレードマークの彼女は、帝国海軍で唯一の女性海軍大将でもある。


特に兵士への訓練教育にて目覚ましい結果を出した彼女の有能さと、士官への教育を重視する海軍の方針によって、海軍大将の位で兵学校長の職に就くことになったのだが、兵学校長への就任が取り沙汰された際、一部士官から激烈な反対の声が上がったのだ。



「幹部候補達をあの鬼畜閣下のおもちゃにする気か!?」


「あんな地獄を味わうのは俺たちだけで充分だろ‼︎ 犠牲者を増やすな‼︎ 」



レマルダ大将から特に『可愛がられた』経験を持つ者達が、各海軍基地から帝都の国防省へ殺到し、口を揃えて直訴した。


しかし結果として彼らの訴えは通らず、レマルダ大将は予定通り海軍兵学校の長となる。





絵画に書き込まれた表現についての各人の反応は次の通りであった。



「拷問屋?わたくしの仕事は陛下をお守りすることと、不届き者の『尋問』なのですけれど。」


「私は飛行猟兵なのだから狩人でも間違いではないだろう。狂気とは些か不本意だが。」


「そんな事より各省が提出した概算要求の査定は何処まで進んでいる?大蔵省は暇じゃない。」


「いやぁねぇ、色欲なんて。昔ほど男を漁る時間も体力も無いわよぉ。それに最近はダンナ以外の男に手を出そうすると、娘がうるさいのよぉ。」


「がっはっはっ‼︎ 訓練ではなく調教だと言いたいのか其奴は?我は虐げる事を好むのではなく、新兵の『指導』を楽しんでいるだけなのだがなぁ。」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 待ってましたよ〜 本編も楽しみにしてます! [一言] ご自分のペースで書きたいように書いてくださいね
[一言] 待ってたー 更新を楽しみにしてますよー
[一言] 更新されてよかったです。楽しんでます。次の更新も楽しみにしてください。
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