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国交成立へ2



アメリカ合衆国のヴァンセス帝国に対する最初の対応は、沈黙だった。


日本と帝国の間で手打ちとなった後、日本政府を通じて接触を図った帝国に対し、米政府は一切の反応を示さなかった。


帝国絡みの話題が出ると米政府関係者は口を閉ざし、何か話したとしても「答えられる事は無い。」といった回答であった。





◆◆◆





「米側の対応は無反応、ね。」



皇帝執務室にて報告を受け、エルヴィアはため息混じりの呟きをもらした。



「日本は国交樹立と同時に我が国の存在を公表する予定ですから、米国はその後に日本を介さず直接接触するつもりではないかと思われます。」



エルリランスが外務省内でまとめられた見解を述べる。



「自国の不始末の結末がどうなるのか、日本を中継した交渉で外部に筒抜けになるのは、米国にとっては確かに受け入れ難いだろうね。」


「いかが致しましょうか?サトナカ大臣からは陛下の御判断を仰ぐよう指示を受けていますが。」


「・・・・・静観するのが良いんじゃない?米国を本気で敵に回すのは帝国にとっても好ましいとは言えないから。ただその場合、一応は日本政府を介した交渉の呼びかけも継続して。帝国は米国の行為を忘れるつもりは無いと付け加えてね。」



アメリカの行為を許すつもりは無いが、真っ向から喧嘩を売る気もない。当分は拉致未遂の件についての追求をちらつかせつつ、アメリカと距離を置ければそれで充分だ。


その間に、日本政府と日本の産業界を帝国との蜜月関係に引きずりこむことが出来れば・・・。



「分かりました。その旨大臣に伝え、外務省としての結論を急ぎます。では私は準備がありますので、これで失礼させて頂きます。」


「我がヴァンセス帝国を代表する初代駐日大使として、頑張ってきてね。期待してるよ。」


「光栄です、陛下。」





◆◆◆





日本国 首相官邸



「本日ここに、日本政府は海上門の通じる先の異世界に存在する国家、ヴァンセス帝国と国交を樹立したことを発表します。」



この日行われた内閣官房長官による定例会見は、歴史に残る場面となったことだろう。



「・・・・・」



時間にして5、6秒ほどの沈黙が続き、記者たちは一斉に声をあげた。



「それはどういうことですか⁉︎ 」


「異世界で国家の存在を承認したということですか‼︎ 」


「ヴァンセス帝国とはどのような国なのですか⁉︎」


「通商協定などは結んでいるのですか‼︎ 」


「国会の承認はどうなるのですか⁉︎ 」



以前から異世界の国家との接触について噂はあったが、政府が公式発表したという事実を受けてマスコミのみならず、各国政府も情報収集に走り出した。


またヴァンセス帝国から大使館設置のため、数日以内に帝国外務省の人間が来日する予定であることも発表され、海上門に最も近い福島県いわき市にはマスコミが雪崩をうって押しかけることになる。





◆◆◆





記者会見から3日後、ヴァンセス帝国海軍第二練習艦隊に所属する練習艦『レマルダ』が海上門をくぐり、日本の領海に入った。


来航予定のいわき市小名浜港には、地球で初めて異世界の勢力が公式に来訪するとあって、世界中からマスコミのみならず各国の外交関係者や情報機関までが殺到していた。



「こちら、いわき市の小名浜港です。ご覧の通り数多くの報道関係者が詰め寄っています。異世界から国交を結んだ相手国の外交官が来日するという前代未聞の事態に、その姿を捉えようと世界中から記者が集結しております。」


「政府関係者の話として、今回国交を樹立したヴァンセス帝国は日本語を公用語としているという、一見するとあり得ないような情報も入っています。情報が錯綜し、憶測も数多く飛び交う中で、異世界人の容貌をカメラに写そうという思いがより強まっているようにも思えます。」



ざわざわ、ざわざわ、カシャカシャカシャッ‼︎


突如として人混みの一角が慌ただしくなった。



「あっ! 船が見えました!まだ詳細は分かりませんが、軍艦と思しき船舶が港へ向かっている模様です。」



明らかに海上保安庁や自衛隊の艦艇ではなく、されど民間の船でもない存在が船首を陸地へ向けて航行している。


港に集まった全員に動揺と興奮が襲いかかった。


次第にその姿を鮮明にした船舶に、皆の視線は釘付けとなる。シルエットは戦前の巡洋艦に近いが、武装はそれほど多くはない。


そうこうしているうちに『レマルダ』は埠頭に接岸し、日本の外務省関係と思しき車両が船に近づく。


そして特命全権大使として派遣されたエルリランスを始め、駐日帝国大使館員が船内より姿を見せた際には、シャッター音やフラッシュが怒涛の勢いで放たれた。


初めて目にする異世界人。その姿を目にすることができたという事実、またファンタジックな種族が目の前に存在している光景に、その場に居た誰もが高揚していた。


また駐日大使がダークエルフの女性であることや、大使館職員の中にケンタウロスや猫系の獣人などがいるということもあり、特に日本国内の反響は凄まじいものとなった事は言うまでもない。





◆◆◆





『エルフきたーー‼︎‼︎ 』


『しかもダークエルフだと‼︎⁉︎ 』


『ぱねぇよマジ』


『それよりネコ‼︎ ネコミミだ‼︎ リアル猫娘だぞ‼︎ 』


『ネコミミは正義』


『変態どもめ。ケンタウロス(女性)こそ至高である‼︎ 』


『そっちがマニアックだ。』


『リアルなバニーちゃんはいないのか‼︎ 』


『外交官の中にはいないらしいな。だが異世界に行けるなら期待はできる』


『モン娘ハーレムが現実に⁉︎ 』


『女ミノタウロスの来日求む』


『乳目当てだろ、貴様』


『アラクネとかラミア見たい』


『ハルピュイアに会いてぇ〜』


『幼女趣味か、犯罪者め』


『通報』


『ハルピュイアが幼児体型とは限らん』


『龍の一族とかいねぇかな。めっちゃ強そう』


『龍の血を引く龍人みたいな種族とか、いるんじゃね?』


『国交結んだ国の名前はヴァンセス帝国。皇帝はヴァンパイアだそうな』


『ナヌ‼︎⁉︎ 』


『吸血鬼キタぞコレ‼︎ 』


『闇の高潔な一族、みたいな設定欲しい』


『皇帝がヴァンパイアってキリスト教圏の国と付き合えんの?』


『異世界の吸血鬼と地球の吸血鬼の伝説が同じとは限らんし、何とかなんじゃね?』


『宗教は根深いぞ』


『とにかく異世界行ってみたい』


『それな』



とあるネット掲示板より抜粋。



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