プロローグ
「闇夜の紳士。」
裏社会でその名を知らない者はいないという。
どこからともなく現れて、闇の中に消えていく。
その姿からその名はついた。
誰も本名を知らない。声も聞いたことがない。
姿形は見えるのに…触れようとすれば霧の様に消えていく。
頼まれた依頼は完璧にこなすが殺しはしない平和主義。
彼はいったい何者なのか…真相は闇の中である。
「…らしいですよー?」
ちらりと横目で見れば…またか。「闇夜の紳士」本人はワイン色のソファーに寝そべり猫と戯れていた。鼻歌交じりでご機嫌そうだ。
「ふむ。なかなか格好よく書かれているではないか。この筆者は賞賛に値するね。」
「でもちょっと美化しすぎじゃありません?」
「そうかな?ありのままだと思うがね?なあフランソワ」
「ニャー。」
ニャーと鳴いたのは我が愛猫マーガレットである。フランソワではない。
「ほらね?」
「ほらね?じゃありませんよ。それにそのこはマーガレットです。」
「ん?これは失礼。マーガレット嬢。」
「ニャー。」
「よろしい。だそうですよ?」
「それはよかった。」
こんな平和そうな人が裏社会を駆け回っているなんて想像もつかない。
そう思うが人には裏表あるというもので…
ちなみに私も似たようなもので…まあ、それは後ほど。