頭脳戦とか一回も経験ありません
翌日。いやその前に。
前回のあらすじ。
私のことを...子供たちが無理矢理...
グサッ。
「いったあ!?」
「変な言い方せんでくださいよ。あなたの認識が『歩く18禁』にでもなったらどうすんです。ここは子供の街と言っても過言ではないんですから」
アームの先端、もとい尖端を彼女の太ももに突き刺しながら冷淡と喋るロボットがそこにはいました。というか僕でした。
「だから冗談ですって!もう本当に固いんだから。しかも露出部に変な傷跡残さんでくださいよ。DVですよDV!」
「ドメスティック・ヴァイオレンスって知ってます?」
朝からギャーギャーと傍迷惑で喧しい僕たちは現在何をしているかと申しますと、例の広場へと向かっているのです。
目的はもちろん射的。せっかく券を貰ったのにやらないなんて損ではないですか。
やれるものならやってみろ。これ重要。そう彼女は言っていました。
そんなこんなで、例の広場にある例の屋台に到着。店主さん元気でした。この屋台は一日中営業してるんですかね。
「おっ、いらっしゃいませ!旅の方!」
「いらっしゃいましたよ子供呼び寄せ機」
朝からナチュラルに毒を吐きますねこの人。まあ彼女が子供に絡まれることとなった元凶ですから、仕方ないといえば仕方なくないですね。ええ、彼女が悪いです。
「え?子供呼び寄せ...?お、お客さん...?もしかして何か怒ってます...?」
「いいえ。いや。全く。全然。これっぽっちも」
笑顔で優しく話す彼女。その笑顔の裏に絶対零度を見た僕は、決して間違ってないと思いたい。
券を一枚渡し、ゲームスタート。ちなみにナレーションチェンジ。私でお送りします。
店主さんに「ルールは聞くかい?」とありがちな台詞を言われたので、一応聞いておきました。うん、普通の射的です。変哲もない。ただ、一枚の券で三回撃てるというのは嬉しい誤算です。商品を取れる確率は上がりました。
指定位置に立ちます。目の前にはいくつもの、具体的に言えば十数個の小さな商品が並んでおりました。
「さあ!好きな銃を使ってくれ!」
...どれも同じだと思うんですけど。
適当な銃を手に取ります。銃弾(コルクのような物)と火薬はすでに装填済みのよう。
「ロボたんさん、見えてますか」
『はい、問題なしです』
ロボたんさんは現在リュックに収納中。つまり外が見れません。なので先ほどリュックに少しばかり穴を開けてきました。ロボたんに付いてる目と同じくらいの。つまり、私のリュックから目が少し飛び出してるってことなんです。
...そう考えると怖い。
あと問題なのは会話です。私はロボたんさんと話しているつもりなのですが、周りから見たら『一人でブツブツ喋っている変な人...と思ったけど、それに答える声が聞こえてきて軽く自分を疑ってる』みたいに思われかねない...いやもうそれは面倒なのでいいや。
「い、今誰に話しかけたんだい?それに答える声も聞こえたし...君の他に誰かいるのか?」
早速店主さんに思われていました。
私はにっこり笑って、
「はい、リュックサックです」
「...............は?」
ポカーンとしている店主さん。まあそうなりますよね。思考が停止している今がチャンス。更に畳み掛けます。
「喋るリュックサックです。私が作りました」
「.........あ、ああ。な、なるほど」
成功です。完全に思考が追いついてませんね。人間は思考領域をオーバーしますと「ああ、そうなのか。私が知らないだけか」と納得してしまうのです。今回はその手を使わせて頂きました。
では、改めて。
「行きますよ」
銃口を前方に向けます。その心は狩人。目の前に陳列されている商品は完全に『獲物』と認識されていました。あくまで私の感覚ですけど。
「いいですかロボたんさん。射的というのは、前方にある商品に向かって銃弾(安全)を放ち、その商品を...」
直後、引き金に指を掛け、少し力を入れます。標的は中央にある比較的小さい箱のオレンジガム、のようなもの。...なんですかねこれ。
目を瞑ります。私の視界は他をシャットアウト。その空間には銃を向けた私と獲物のみ。それまさしく、本物の狩りのようでした。
カッ!! と目を見開き、一気に引き金を奥まで押し込み―
「落す!!」
バァン!! という音。それと同時に発射された弾丸(安全)。それは標的のオレンジガム(仮)...の横をすり抜け、後ろの壁へ吸い込まれるように...。
...............。
「...ことが出来たらいいな。そんな遊びです」
「....わかりました」
流石のロボたんさんも困惑していました。多分、それが正解です。
二発目。
当たりました。偶然。
少しばかり予測とずれ、「あーダメだなーこれは当たんないなー」と思ってたら当たりました。
...私の狙いはどうなっているんでしょうかね。
ただ、ヒットはしたものの商品は落ちませんでした。落ちそうだったんですけどね。いや惜しい。
さあ、ラストの三発...。
『あの、ちょっといいですか?』
「わっ、なんですロボ...リックさん」
『なんですかリックって』
咄嗟に付けた名前です。ごめんなさい嘘です。失礼、噛みました。
『違う、わざとだ』
「え?」
『あ、いや、なんか言わなきゃいけない気がしたので』
...たまによく分かんないんだよなぁ、このロボットは。
「で?なんですか?ご要件は」
『いや、ちょっと...』
「.........」
ここでは話しづらいことなのでしょうか。仕方ない。私が気を利かせてあげましょう。
「すみません。お花を摘みに行きたいのですが」
「え?花を摘みに...ああ!わかったわかった。そこの建物を入ってすぐだよ」
私とロボたん、もといリックの会話を聞いていたのか、聞こえなかったのか、聞いていないふりをしていた店主さんは「お花を摘む」の意味を理解してくださったようです。変なところでデリカシーを心得ています。
「まだ一回分ありますからね?」
「はは!わかってるさ!」
笑顔の店主さんを横目に、私は花摘み...面倒なのでもういいです。トイレにさーっと歩いていきました。
店主さんの供述(?)通り、入ってすぐの場所にありました。個室にバタンと入り、カギをガチャっと閉めます。
「ふぅ...で?話は?何かあるんでしょう?」
「...別にトイレじゃなくてもよかったんじゃないですか?」
.........。
確かに。なんでトイレなんて言ったんだ私は。
「まぁ、いいです。で、話というのはですね―」
「店主さん、一つ提案があるのですが」
「ん?何だい?」
屋台に戻った直後、人差し指を上に向け怪しげな(?)笑みを浮かべて私はこう言いました。
「『賭け』をしませんか?」
「賭け?ほぉ、そいつあいきなり」
一瞬真顔になりましたが、すぐに笑顔へ戻る店主。しかし明らかにさっきと声のトーンが違う。しかもちょっと楽しそう。私は確信しました。
この人はやはり、『賭け事』が好き。
「で?賭けの内容は?」
ご覧下さい、この食いつき。これは非常に都合が良いですね。私は不敵な笑みのまま続けます。
「そうですね、じゃあ...私が商品を撃ち落とすことが出来たなら、落とした物を貰います」
「商品ってことか?」
私は笑顔を続けたまま、
「その代わり、もし撃ち落とせなかったら...私のリュックから好きなものをあげます。というかリュックごとあげます」
『ちょ...!』
ロボたんさんが想定外のような声をあげますが無視します。
「ほおぅ、リュックか。そいつぁ。商品とじゃ釣り合わない気がするが?」
「いえいえ、いいんですよ。これくらい」
「面白れえなあ、あんた!よしわかった!それでいこう!」
無事(?)、契約成立。まあ多少の誤差はあったみたいですが。
『ちょっと!僕を賭けるなんて!』
「あなた絶対落とせるって言いましたよね?嘘なんですか?」
『ぐっ...』
自分の言葉によって首を絞められる気分はどうですか!普段散々私を足蹴にしている罰ですよバーカ!と叫びます。心の中で。
『落とせなかったら許しませんよ』
「ええ♪」
私な定位置につきます。
「あ、そうだ。店主さん。危ないので離れていて貰えますか?」
その言葉に?を浮かべる店主さん。
「え?いや、この程度の距離で...」
「離れていて貰えますか?」
「いや、だから」
「離れていて、貰えますか?」
「は、はい」
笑顔で威圧。これ私の得意技に認定しましょう。本気で退いてほしいときしか使えませんがね。
店主さんが急いで退いてるその隙に、私は銃を構え射撃体制に入ります。
『いいですか?当てようと『しないで』下さい?』
「わかってますよ!失礼な!」
そんなに私の腕が信用できませんか!
...まあ、その方が当たりやすい気はする...ような?
「お、余所者がやるらしいぞ!」「マジか!見ようぜ見ようぜ!」「頑張れー!余所者!」
「だから余所者呼ぶなって!お姉さんと言ってくださいお姉さんと!」
いつの間にか子供たちも集まってきました。私は子供が苦手なはず...なんですがね。どうやら昨日のドタバタハイテンションで慣れてしまったよう。
『集中してください!いや、集中しないでください!ああ、やっぱり集中してください!外すことに!』
「うっさいですね!そんな集中しなくても当たります!」
『いや集中してくださいよ!僕の人生が賭かってるんですから!』
「チッ...わかりました」
『ちょっ...今舌打ち―』
なんか喚いて騒がしいので、早めに終わらせるとしますか。右手を前に突き出し、銃口を正面に向けます。狙いは商品、の後ろにある壁。
「「「頑張れー!お姉ちゃん!」」」
子供たちの声援に笑顔で返し、再び目線を前へ。目を瞑り、雑音をシャットアウト。
子供たちが集まる。ここまでは予定通りです。あとは簡単、商品を落とすだけ。ロボたんさんが言うには、『今のあなたが撃てば95%の確率で一個以上の商品を落とせる』そう。
まあ、楽勝ですね。最初から勝っているようなものですから。
この時の私は、まさにニヤリという擬音が似合う、それはそれは薄気味悪い笑顔だったことでしょう。
目を見開き、目標の左へ銃口をずらします。私の視線は背後の壁を補足。そのまま引き金に力を込め―
「この『勝負』、貰いました」
直後、街全域に発砲音が響き渡りました。
射的編、謎にもう少し続きます。
早足で書いたので誤字があったら申しわけないです。後で修復します。