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ここに死神はいらっしゃいませんか?  作者: 街灯
『日常とは言い難い何か』編
7/9

射的で商品を取ったことは一度もないです

「「あっ」」


さぁ、ここで私たちが「あっ」と言った経緯を説明しましょう。


てくてくと歩いていたら、前方に街らしきものが見えたから。以上。


「行ってみますか?」


「そうしてみましょう」


こうして私たちは、久々に街へと降り立ったのでした。




「なんだか街って感じの街ですね」


「うわぁ...!」


到着したのは少し小さめの街。まだ瓦礫が残っていますが、建物の半数以上が新築されていました。とはいえ、都会のような近代感は一切なく、大自然のような穏やかさ、時間のなだらかさを感じます。


「あら、外から来た人?」


第一村人発見です。というか自分から発見されにきました。


「はい、街を見かけたものですから寄ってみたのです」


「あらそう。何にもない街だけれど、良かったらゆっくりして言ってね」


「ありがとうございます」


どうです?この私のパーフェクトな対応。普段は役立たずに見られているかも知れませんが、こういうときはやるのです。


過去、ロボたんさんにこのことを話したら『別のことにも力を入れてほしいです』と褒められたこともあるんですよ?


え?そのロボたんさんはどこかって?


街の方々に「喋る機械!? なにこれすごい!これが人口知能ってやつなの?」と騒がれても厄介なので、というか騒がれたことがあるので、今は私のリュックサックの中にいます。中には収納テントなども入っているため結構ギリギリですが。


「あ!そうだ!今は向こうの広場の方で何か面白いことをやってるみたいよ?あなたも行ってみたら?」


「面白いこと、ですか?」


「『射的』というものらしいわ」


「へぇ、わかりました。行ってみます」


おばさまに改めてお礼を言った後、広場へと歩きます。


「ロボたんさんは、射的ってわかりますか?」


「残念ながら記憶...記録にないんですよ」


...可哀想な機械。


「あー他の秘密道具も試してみたいなーどんな効果が」


「わかりましたよ!本当に意地悪ですねこの機械は!」


ロボたんさん特有の秘密道具、ましてや『例のリング』のような物でも出されたら、次は丸一日再起不能になるでしょう。


ああ、寒気が。




そんなこんなで広場に到着。


広場には凄い数の人...はいませんでしたが、かなりの賑わいを見せていました。真ん中に屋台らしきものがあり、そこに人が密集しているようでした。


「いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!次は誰だい?」


店主の方がありがちな呼び寄せを連呼しています。


「次は僕!」「その次は私ね!」「ああ!ずるい!」「じゃあその次!」「次!」...


それに呼応するように上がるいくつもの声。そして、その声のほとんどが子供の発したものでした。


子供...。


.........。


「...帰りたい」


「...あなたが広場に行きたいって言ったんでしょう。それに、射的というのが一体どんなものなのか、僕に見せてくれるんじゃなかったんですか?」


「そ、それはそうですけど」


あーうー言いながら人混みへの突進を躊躇っていると、ありがたいことに射的屋の店主から話しかけてきやがりました。


「お?君見かけない顔だね。外から来たの?」


「はっ、はい。旅をしているものでして」


急に話しかけられビクッとしながらも、冷静を装い対応する私。すごい。


...しかし後にロボたんから聞いた話によると、「動揺丸わかりでしたよ。だってリュックサックの端をこれでもかってくらいギュッと握っていましたから」だそう。


...まだまだですね。


「こんな世の中に旅とはあんたの変わり者だねぇ!」


「ははそれはどーも」


「おーい!外からいらっしゃったんだってよー!なんか飲み物でも出して上げてくれ!」


「えぇっ!そ、そんな...」


あぁ、この人すごくいい人だ。いい人なんだけどお願いします叫ばないで!ましてや「外から来た人ー!」だなんて大声で!そんなことしたら...


「え!お姉ちゃん外から来た人なの?」「すっげえ!俺久しぶりに見た!」「あの!何か聞いてもいいですか?」「そのリュックサックなにー?」


「...」


ああ。


あの店主は対私専用兵器を究極召喚しやがりました。


私は引きつった笑みのまま、その場に固まります。完全に時間が止まっていました。


ええ、もうおわかりでしょう。


私は、子供が苦手なのです。




「疲れた...!」


どっと近くのベンチに座り込みます。


子供たちの相手をすること約一時間。私の体力は全てドレインされていました。


「...子供って怖い」


子供というのは恐ろしいです。出どころ不明の無限大な探究心。興味があるものには即座に飛びつき喰らい尽くす活発性と凶悪性。危険を顧みない行動力。質問攻めにされ、いろんなところに連れ回され、リュックサックは開かれそうになる。おかげで危険察知能力が鍛えられた気がします。


いや、どれもこれも...リュック以外は善意だということはわかっているのです。こちらもそんなに手厚く歓迎されて嬉しいのです。ただ、疲れた。すごく。


「こんにちは、旅の方。お疲れ様です」


「...お疲れました」


ベンチでうだーっとなってる私に話しかけたのは、私が絡まれている最中ずっとニコニコして観ていた男性の方でした。


「申し訳ありませんでした。村の子供たちがご迷惑を」


「いえ、迷惑なんて。むしろ善意なら嬉しい限りなんですが...ただ、子供たち元気すぎて。あぁ、何日分もの体力と気力を吸い取られたみたいです」


「完全に飲まれていらっしゃいましたね」


「なら止めてくれても良かったでしょうに」


男性はあはは、と笑い、


「でも、楽しそうでしたよ」


「子供たちが?」


「いえ」


「?」


「あなたが」


...。


私が、楽しそうだった?子供たちに囲まれて?


「...不思議なこともあるんですねぇ」




「あの、良かったらどうぞ」


しばらく何気ないお話した後、男性は何かを私に手渡し言いました。


「これは?」


「射的券です」


「射的券?」


「ええ。これを射的屋に渡すと、一回だけ射的が楽しめるんです」


「あぁ、そういう仕組みなんですね」


「射的用の銃は、火薬の爆発によって弾を打ち出しているんです。ああ、もちろん少量ですよ。子供たちの安全が第一ですからね。幸い、ここの子供たちはみんな言うことを聞いてくれるいい子ですから」


「私の言うことは聞いてくれなかったみたいですが?」


「あ、あはは...」


じとーっと顔を見る私に戸惑う男性。


「は、話を戻しまして。火薬も今になっては貴重なもの。かといって、もうお金という制度もない。本来なら物々交換でもしたいのですが、子供から物を取るなんてこともできないでしょう。だから最大限の譲歩として、『無料、但し回数制限あり』というルールにしたそうです」


「...随分と子供思いなのですね」


「ええ」


子供たちが安全かつ安心して、はしゃいで、楽しく暮らせるように。この街全ての人々が協力している。そしてそれは全て―


「子供たちの笑顔があるから、こんな世界でも生きていけるんですよ」


子供たちの笑顔のため。そして彼ら大人は、子供たちの笑顔があるから生きていける。毎日をこの街みんなが笑顔で暮らしていける、幸せのサイクル。


「...そうですね。やっぱり私はー」


私は。きっと。


「彼らと騒いで、本当に楽しかったのかもしれませんね」

今回はちょっと続きます。

誤字があったら申し訳ないです。

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