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ここに死神はいらっしゃいませんか?  作者: 街灯
『日常とは言い難い何か』編
3/9

お願いですから午前6時には起きて下さい

「...うー...ん...」


ジリリリリリリリリリリ。

私の横でアラームが鳴り響いています。


「お......おき...!...い!」


なんか声も聞こえる。しかし、この程度で私の睡眠を妨げているつもりなら、それは浅はかと言わざるを得ません。私はどんな状況でも眠れます。


「あと5分...」


必殺、漫画でよく見るあれ。この呪文を詠唱すればいつまでも寝れるとそれに書いてあった記憶が―


「い、いい加減にしてくださいっ!!」


「うわあっ!!」


ガバッ。青年様の大声によって反射的に飛び起きてしまいました。ミッション失敗。漫画はやはり信じるべきではないのですか...!


って、それより。


「そんな大声出さなくても...ジョークですよジョーク。本当に冗談が通じないんだからー...あー頭フラフラする」


ふらつきながら右手で頭を抑えます。皆さんはありませんか?急に勢いよく起きたら気持ち悪くなったりフラフラしたりすること。今まさにそれです。もう少しゆっくり起こしてもらっても良いでしょうに...


そんな私に構わず彼はキシャキシャと叫びます。


「ジョークって!ああそうですか!じゃあこれもジョークですか!あなた今日何時間寝たと思ってるんです!」


...へ?


「え?六時間くらい?」


「十時間ですよ!」


「...え、えっ!」


そ、そんなば、馬鹿なことが...


「目泳ぎまくってますけど」


「き、気のせい!それより...」


慌てて時計を...っと。


「ロボたんさん!今何時!」


「午前十時です」


「嘘つき!」


「現実です」


「...うそ」


なんとなんと。


昨日定めた出発予定時刻を、約三時間近くオーバーしていました。


「くっ、ぐぬぬ...私としたことが...ちゅーか!じゃあなんで起こしてくれなかったんです!」


その瞬間。


ブチッと。ロボたんさんから音が聞こえた...気がしました。


あ、やばい。


地雷踏み抜いた。沸点超えちゃった。


ロボたんさんをじっと見つめます。...なにやらブツブツ唱えてらっしゃる。怖い。


「お...(超重低音)」


「はひっ!お、お...?」


「起こしましたよ!起こしましたとも!」


「うわぁすごい発声!...へ?起こした?」


はぁー...とため息を吐くロボたん。


...余程お怒りなんでしょうね(震え声)。


「いいですか?僕はアラームをどれくらい前から鳴らしてたと思います?」


「...にじか」


「四時間前から!」


すごい。完璧な意見封殺。


「四時間前からアラーム鳴らしっぱなし!大声で叫びつづけてたんです!これで起きないとかあなたどうかしてますよ!」


「へぇ...」


それはそれは、お疲れ様です。考えられません。四時間前から鳴らし続け叫び続けなんて...あら?


「ねぇ、ロボたんさん」


「なんですか」


「起こすなら、もっと最適な方法があるじゃないですか」


「というと?」


「体に教え込む」


「変な言い方しないでください」


ん?変な言い方?はてなんのことやらー。あっすごい睨まれてる話続けよう。


「でも、目覚ましビンタやらなんやら、痛みで起こす手もあるじゃないですか。なんでそれを使わなかったんです?」


ピタッと。ロボたんさんの動きが泊まります。


ははーん。ふふーん。これはもしや。


「...別に、叩かれるようなことはしていないでしょう」


「私を気遣ってくれたんですか?」


「...」


「女の子に手をあげるのはよくないと?」


「......」


「手をあげるくらいなら、寝かしておいてやろうと?」


「.........」


「やーっさしいっ♪」


「...行きますよ」


「ああっ」


スーッとテントから出ていってしまうロボたんさん。ああ、可愛い。ときどきロボたんには抱きしめたくなるような愛嬌があります。


ちなみに以前抱きしめたら、


『うわぁっ!ちょ!何してんすか!何してんだぁ!離れろ!離れろこの異種族がぁ!』


と良い返事が貰えました。人間を異種族とは...いや私は人間なのか吸血鬼なのかそれ以外の何かなのかわからんですけど。ちゅーかあなただって元人間でしょうに。完全に機械と化していましたね。そんな照れなくても。


っと、いけない。


私もロボたんさんの後を追い、テントから這って出ます。


「寒い...」


今は真冬...ではないのですが、どんな季節も朝は冷えるものですね。


「ロボたんさん、近くに水道はありませんか?」


「水道はあるんですが...ダメですね、水が通っていません」


「おうっ」


水がない。これじゃあ顔が洗えません。それは由々しき事態です。女性としてまずいです。女性たるもの、崩壊した世界でも洗顔はしなければ。


「何をそんなに慌てているんです?すれ違う人なんてゼロに近いと思うんですけど」


...デリカシーないなぁ。


「そういう問題ではなくてですね...というよりあなたに見られるじゃないですか」


「別にいつも変わらないですよ」


あー。これはあれだ。彼女に「この服どう?」って聞かれたら「いつもと同じ」とか答えるタイプだ。なんかショック。


「あ、あちらに水たまりがあります。比較的綺麗なようですよ」


「あら、ありがとう」


ロボたんさんが水を確保して下さいました。手の内で水を掬い、顔に押し当てること数回。私はすっかり覚醒していました。


「よし、目が醒めました」


「もっと早く醒めてほしい」


「うるさいですよ」


爆睡していたことをまだ根にもっているご様子。これは数日くらい弄られますね。


「さあ行きま」


「待ってください。口濯いでから」


「...何も食べてないから良いじゃありませんか」


「じゃあ誰にも会わないのですから顔なんて洗う必要なかったのでは?」


「ぐっ」


それを言われると弱ります。勝ち誇り気味のロボたんさん。言葉を封殺できて満足でしょう。まあこれくらいは許します。今朝のこともありますからね。


「じゃあさっさと濾過して下さい」


「うわっ、雑だなあ」


濾過を頼む私。ロボたんさんにはそういう機能

が備わっているのです!


「嘘言わない!あなたが僕を改造したんでしょうが!」


「うわっ、心読まないでくださいよ」


ギャーギャー口論しながら口を濯ぎました。唇の端からボドボドと漏れましたけど。


「ふぅ」


一段落終えて準備完了。進行方向を決めます。


「今日はどちらに向かいますか?」


「そうですね。僕は北西をオススメします。建造物が少なく、また村もあるため生存者を発見できるかもしれません」


「了解です」


今日も平和な今日がスタートです。

れっつらごー。




え?なんで「ロボたん」なのかって?

答えは簡単、私が名付けました。

あっ、今舌打ちされた気が

こんな感じです。

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