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友達

作者: 不安定な机

友達がいた。

大学でお互い日常生活の愚痴を好き放題言い合える仲だった。

俺はそいつの年上相手にも物怖じしない態度、直感で動く行動力に最初憧れを抱いていた。

そんな奴がサークルを作った。

もちろん俺は期待した。

どんな世界を見せてくれるだろう?

どんな人間が集まるだろう?


それも最初だけ。

奴は勢いに任せて物事を推し進めるのはいいが、後片付けをしない男だった。無駄に集められた人数はその計画性の無さ、あまりにも馬鹿らしい内容にほとほと呆れて次々にサークル室を後にした。

もちろん俺の努力が至らなかった点も多々ある。ただ、それ以上に周りを振り回し過ぎたのである。


それでも俺は過去の友達をまだ高く買っていた。日常で腹を割って話せる仲間が他にいなかったのも原因かもしれない。孤独になりたくなかったのも理由の一つだ。

だが、度重なる彼のやる気のスイッチのオンオフの身勝手さ、挙句に時間にルーズ、終いにそんな身勝手な奴と飯に付き合っている際も他の人の話ばかりを振る。



俺はもう疲れ果てていた。

昔から人の顔色をうかがう性格で

誰かに嫌われていると落ち着かない。

出来るだけ好かれる行為を心がけ、常識に則った生活を続け、親や近所、友達?からはいわゆるいい子として居続けた。そんな俺が周りを気にせず常に楽しみたい自分を大事にする奴に憧れたのは必然である。

いや、逆に俺には出来ないことをやってのける奴に嫉妬しているのかもしれない。なんだかんだで周りを振り回す奴は、いつも笑顔だったからである。


俺といえば、

大学での自分は変わろうと思っていた。中学、高校では周りを取り持つだけで努力の成果は認められず、美味しい所を持っていかれるばかりだった自分が嫌だった。

だが、現実はうまくいかない。サークルの存在が、ある意味では俺を大学に行かせる要因として奮いたたせていたが、次第に行かなくなった。


俺は限られた空間で生活していたからこそ、中学、高校ではまだマシだったのだ。大学は全てが自由だ。自己責任の重りがついてくるが、行きたくなければ行かない。会いたくなければ会わない。実に自由だ。

俺は落ちぶれた。引きこもり、毛布と白い天井が日常だった。

時間はあるので逃避の一つとして自殺について考える。もちろん死ぬ勇気などない。ただ、死が身近にあると思うと、どうしようもなくなった時の最終手段として非常に落ち着くのである。

思えば、この時悩む者同士で話し合えば良かったのだ。





憧れていた奴が去年に自殺した。

なんの連絡もなく。

死因はポピュラーな首つり



驚きはあったが悲しみは湧いてこなかった。ただ先に逝ってしまった。

その事実が俺をいらだだせた。

こうありたい。こうしたい。こうなりたい。奴は俺の憧れるものを全てもっていたと言っても過言ではない。その一つとして悲劇的ではあるが、奴は俺より先に自殺といったものをやり遂げたのだ。

奴にはかなわない。

憧れは憧れのまま世界から消えていった。



今は自殺しようとは思わない。

死にたい気持ちは世の中に嫌というほど溢れているが、奴が先に行動してしまったせいで自殺が二番煎じになってしまう。本当にずるい。


奴のために生きようとか無駄な責任感は捨てることにして、とりあえず毎日を過ごしてみる。まだ、人嫌いは治らないが奴が与えた影響は少なくない。

人生で印象に残る友人を手に入れた自分はある意味では幸せなのか?

結論は出ない。


今日が奴の命日だ。

俺は久しぶりに玄関のドアを開いた。









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