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新たな剣士の誕生

大陸の最南端に位置する、夕霧の里。

森林を中心とする、穏やかな国で林業や牧畜が盛ん。

そんな里の首都セツヒに一人の少年がいた。

金髪というよりもオレンジ色に近い頭髪に、大きめのゴーグルを頭につけ、剣士として基本的なスタイルに刀を腰にさしている。

彼の名前は宮本ダイスケ。



えっ?俺?

俺はまぁちょっとした剣士でね。

あっ、正確には元剣士かな?

そのうち本編にも参加する予定だから気長に待ってよ。

じゃあ本編ね。



彼の名前は宮本ダイスケ。

剣士を志す、14歳の少年。

分け合って両親とは死別している彼は、剣の道を自分一人で学んでいた。

そして、今日道場破りをもって正式な剣士になろうと考えていた。

剣士になる方法は幾つかある。

まず一般的なのが剣士連主催の試験を受験し合格すること。

剣士の最高位である特級剣士は、特例で免許を授けることができる。

そして異例中の異例がこの道場破りである。



つまるところ、道場破りは不可能なのだ。

道場には基本的に四級剣士以下の剣士が修行に励んでいるが、免許を持たない剣士見習いの身で十九の剣士に勝利することはかなり難しい。

その可能性は1%にも満たない。

なぜダイスケが、道場破りに挑んでいるのかはわからないが、少なくとも断言できる。

彼は今日、剣士になることはできないだろう。

そうこう言っているうちに、彼は道場の前に立っている。



『ここが本願寺道場か。』

そう言って彼は、門を叩く。

『たのもう。』

ゆっくりと門が開く。

中からダイスケと同い年くらいの少年が出てきた。

『貴様、何者だ?』

少年はおかっぱ頭に鋭い目つき。

身なりは整っており、腰には木刀をぶら下げている。

どうやら、裕福な家庭の子供らしい。



ダイスケが口を開く。

『俺の名前は宮本ダイスケ。道場破りにきた。』

するとおかっぱ少年は、ちらっとダイスケの全身を見回して尋ねた。

『貴様、階級は?』

ダイスケは懐から一枚のカードを取り出し、おかっぱに見せた。

カードにはこう書かれている。

【刀剣所持許可証(仮)】

これは一時的に刀剣を保持することを許可するカードだ。

僻地や戦地を通過する旅人やダイスケのような道場破りに向かう者に一時的に交付される。



カードを見たおかっぱはニヤリとして言った。

『いいだろう。貴様の挑戦受けて立とう。』

そういって、彼を道場の中に招き入れた。

道場は想像以上に豪華な造りだった。

夕霧の里は裕福な国ではないが、この道場はそれなりに栄えているようだ。

道場の中には10人ほどの見習いと思われる者達が並び、ダイスケとおかっぱの様子をうかがっている。

するとおかっぱが彼らに言う。

『コイツは道場破りだ。今から俺様がコイツの挑戦をうける。』

そういうと、たてかけてあった煌びやかな刀を手にとる。



おかっぱは中央に歩み出ると、ダイスケを招いた。

ダイスケはそれに応じ中央へと歩み出ようとすると、一人の見習いがダイスケに近寄ってきた。

『あの~、やめたほうがいいですよ。』

そう言い終わるかどうかというところで、おかっぱがその見習いを殴り飛ばした。

『貴様、何余計なことを言っている。これ以上なにかしてみろ。ただじゃ済まさないぞ。』

見習いは怯えて道場の隅のほうへ下がってしまった。

ダイスケは不思議そうにその様子を見ていたが、しっかりとおかっぱを見つめなおして、刀を握る手に力を込めた。



おかっぱは先ほどとは違う見習いに審判をやるように申しつけて、ひとつだけルールを告げた。

『審判役が止めるまでもしくは、どちらかが降参するまで試合は続行。』

審判役が何か言いたげな表情をしていたが、おかっぱがにらみを利かせると、仕方なさそうに言った。

『それでは、両者刀に手を。』



このとき審判役が言いたかったことはたぶんこれだろう。

『相手を傷つけてはならない。』

これが道場破りのルールであることは、たぶんダイスケは知らない。

おそらくおかっぱは、あえてこれを告げなかった。

あえてダイスケを傷つけるために。



『し合え。』

審判役の声が響く。

先手を取ったのはおかっぱだった。

刀を抜くと同時にダイスケに突進して上段から刀を振り下ろした。

ダイスケは間一髪のところでそれを受けた。

おかっぱは少し意外そうな顔をしたが、構わず幾度となく刀を振るった。

ダイスケはそれを受けつつ少しずつ後ろに下がっていった。



おかっぱはダイスケが受け手に回っているのをいいことに、剣を振るう。

おかっぱは力自体はそれほどでもないようだが、剣速はそれにりにあるようだ。

それが、ダイスケを後ろに下がらせている要因だろう。

ついに壁際まで追い詰められてしまった。

ダイスケの劣勢は明らかだった。

やはり見習いの剣士が、級持ちと思われる剣士には勝てない。



壁際で受け続けている大輔が、先に崩れた。

上から刀を幾度となく振るわれ、刀を若干下げてしまった。

しめたとばかりにおかっぱがダイスケの首元目掛けて、横一線に刀を振るった。

『しょ、勝負はあった。』



審判役の声がこだました。

おかっぱの額から一筋の汗が流れた。

勝ったのはダイスケだった。

誰もが、ダイスケの敗北とおかっぱの勝利を確信した。

ダイスケは1%の壁を破って、上級の剣士を破ったのだ。



横一線の刀が振るわれたその時、ダイスケはとっさに腰を落とした。

横一線に振るわれた刀はスパッと壁に突き刺さり、ダイスケは刀を上に振り上げた。

おかっぱの刀の刀身は砕け、勝負はついた。

ダイスケは狙ってこれをやったわけではないだろう。

ただ勝負は時の運と言えばそれまでだが、一寸の違いなくこれは勝利だった。



そしてこの時だった。

後に世界にその名をとどろかす剣士が誕生した。

彼の名前は宮本ダイスケ。

新たな剣士の誕生だ。

【宮本ダイスケ】

・剣士を志す少年

・14歳

・右利き

・オレンジの頭に大きめのゴーグル



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