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後悔の向こう側  作者: 染舞愛
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戻らない過去

どれだけ願ったって無理な事なんていくらでもある。

だからこそ大事にしなくちゃいけない時間がある。

だけど、それができない人なんてたくさんいるんだ。

そう、あたしもそうだったから・・・・・・。

おじいちゃんが帰らぬ人となった。


ガンになってしまい、体が衰弱し、最後はご飯が食べられなくなった。


私はまだ15歳になったばかり。


兄は高校2年生で昨日から修学旅行へ行っていた。


「楽にしてくれ」


おじいちゃんの最期の言葉。


深夜2時30分、みんなが眠っている間に息を引き取った。


その日、お母さんがおじいちゃんの様子を見に行った時は元気だったそうだ。


それでもおじいちゃんは静かに天国へ行った。


あたしがおじいちゃんに会いに行った時にはもう体が冷たくなっていた。


生きていた頃には見ることのなかった安らかな顔。


お経を唱える男、顔も知らない人達、じっと涙をこらえるおじさん。


そしてもう目を開けることの無くなかったおじいちゃん。


お経を読み終えた頃を見計らって、あたしはおじいちゃんの横に連れていかれた。


かかっていた布を取ると見慣れた顔が静かに目を閉じている。


こうして見ているとまるで寝ているようだった。


つい2日前に会ったばかりのおじいちゃんが息をしていない。


実感なんて少しも湧いてこなかった。


それでも溢れてくる涙とツンと痛くなった鼻の感覚は紛れもなく現実だった。


初めて人の死に触れ、あたしは心に違和感を感じた。


もう会えなくなる。


口を聞くことも一緒にお出かけすることも笑い合うこともできなくなる。


一緒に住んでいなかったとはいえ、土日になれば畑の手伝いやらでよく会いに行っていた。


体が弱って動けなくなってからは毎日のようにお母さんに連れられて会いに行っていた。


でも、昨日だけは会いに行かなかった。


今日行かなくてもまだ当分死なないって軽く見てたんだ。


あたしは弱ったおじいちゃんより、自分の私利私欲に走ってしまった。


おじいちゃんが死んだと聞き、どんなに後悔したことか。


後でおばあちゃんに聞いた話では「杏菜はまだ来ないのか」とずっと言っていたらしい。


あたしはどんなに後悔したか。


毎日行っていたのにたまたま昨日だけ行かず、次の日にはこんなことになってしまうとは予想もしなかった。


あたしは目に溜まる涙をそのままに声も出なかった。


1度だって弱みを見せなかったおじいちゃん。


でも、本当はすごく辛かったんだ。


眉間にしわをよせて、苦しそうにベットの上で眠るおじいちゃん。


でも、「苦しい」とか「辛い」だなんて一言も言わなかった。


(お願い・・・・・。もう1度目を開けて・・・・・・)


心の中で叫んだ言葉。


絶対にあり得ないのに願ってしまう。


そっと頭をなでる。


動かないおじいちゃんにあたしは何を求めていたんだろう。

書いてみて、いろいろ悲しくなりました。

どれだけ後悔したってマンガやアニメみたいに時が戻る事はない。

完全に実感させられました。

ちょっと前までそういうことがあってもおかしくない!って思ってましたけど一気に覚めました。

やっぱり現実だなぁと思い知らされた瞬間でもありましたから。

だから今のあたしがいるって思う事もできました。

おじいちゃんの死は運命で、悲しい事じゃない。

あとで気づいたことです。

あたしや家族や知り合いが泣いてたらおじいちゃんが悪いみたいになってしまう、そう気がつきました。

でも悲しい気持ちは消えません。

どれだけ後悔したってもう過去には戻れない。

だからこそ、新しいこれからをつくっていくのです。


読んでいただき、誠にありがとうございました。

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