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Fランクの烙印  作者: 井浦駿佑
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緊急会議

アストラル南東部 とあるレストラン


「で、これからどうする?」

「・・・・・・・・・」

背中にハンマーを装備した精悍な顔つきの男が眼前に座った比較的端整な顔立ちをした剣使いに問いかけるも、返答がなかった。

「おい、聞いてるのか?」

もう一度問うが、剣使いが返答する様子はない。

「はぁ、このままでいいのかよ」

「良くねえよ」

「やっと口を開いたか・・・・・」

口を開いてくれた相棒にハンマー使いは少々安心する。

「良くねえけど、もうどうしようもないだろ」

剣使いは諦めたように言う。


彼等はアストラル南東部の戦士寮に住む戦士達である。

しかし只の戦士ではない。こういう言い方をすれば凄い戦士なのだと思ってしまうが、彼等は全くの真逆である。

彼等は戦士ランク最底辺のFランクであり、通称Fラン戦士である。

住んでいる戦士寮もFラン戦士専用のボロい戦士寮であり、彼等はそこに住み、暮らしている。

彼等は戦士にも関わらず、クエストへ行かず戦士寮で昼間から酒を飲んではゴロゴロとするといった自堕落な生活を送っており戦士がとるべき行動は何一つとっていない。

クエストに行かない理由は依頼が来ないからであり、ならばアイテムの採掘に行けばいいではないか。と普通の人間ならば思うが、どうやら彼等はそれすらも面倒らしくクエストに行く様子が見当たらない。どうやら彼等は普通ではなく根っこから腐ってしまったダメ人間なのである。

彼等は依頼が来ないことを言い訳にクエストに何年も行っておらず金はギャンブルで手に入れている。

戦士としての腕は最悪だが、ギャンブルに関しては得意であり食っていける程度の金は稼げている。

昼間から酒を飲み、酔っては爆睡し起きては酒を飲む。そんな日常が何年も続いたある日、いや今日、ついに金が尽き絶体絶命の危機に陥った。

金が尽いた、すなわち金が無くなったということはアストラルに住んでいる者として、冷静に考えればかなりヤバイことであり、家に住めないわ食糧が買えないわと生きる為に最低限必要な物が手に入らず、人権がないここアストラルでは死ぬ以外の選択肢しか残らない。

二人はまさに窮地に立たされているのである。

二人は緊急会議と称しレストランへと足を運び現在こうしてレストランで会議をしている最中なのである。


「リッグ、お前が決めてくれ」

リッグと呼ばれたハンマー使いは、なげやりな相棒に呆れつつも黙考する。


ハンマーを背中に装備した男の名はリッグ・カールマン。

怠け癖が強くそれが原因でクエストをサボり続け、いつしか最底辺であるFランクとなってしまった。

ハンマーの腕はそれなりに持っており、超級レベルの最強モンスターと死闘を繰り広げた末、見事勝利したという伝説を持っている。

そんな彼でも確実に堕ちていた。

自分が堕落しているという意識はあったが、彼は怠けることを止めなかった。

自分がここまで堕ちるまでの数年間は本当にあっという間だった。

彼は今、後悔という鎖に縛り付けられていた。

現在話している剣使いとは相棒と呼べる存在であり、彼がアストラルで戦士としての生活を始めた頃に出会った男である。

リッグの向かいに座っている剣使いの名はアレク・ソーレイド。

彼は剣使いだが、只の剣使いではなかった。

彼はある能力を持った能力者兼剣使いである。

能力者は普通の場合、高ランクに位置するのが普通なのだが最底辺であるFランクの能力者は異例であり彼が初めてである。

彼は、アレクは風を操る能力を持っており自由自在に風を操り敵を翻弄することが可能なのである。又、能力だけでなく剣術もある程度長けている。

ランクを見ずに能力だけを見れば高ランクに位置するほどのレベルであった。

そんな彼が何故Fランクに位置しているのか?それはリッグと同様、怠け癖が強く数あるクエストをサボり続けてきたからである。

彼は自分が堕落しているという意識すらなく、気付いたら最底辺ランクとなっていた。


彼等は自分の実力を棒に振り、自らの意思で最底辺ランクのFランクに陥ったのである。


「やり直さないか?」

リッグはそう言い、真剣な眼差しでアレクを見つめる。

「やり直す・・・・・か・・・・・」

アレクは手を額に添え、考え込む。

「もう一度、かけ上がろう」

強い語気でそう言い放つ。

アレクは眼前の相棒が言っていることは本気なのだと確信する。

「でも・・・・・どうやって」

本当に分からない。どうすればかけ上がることが出来るのか

「そうだな・・・・・・」

リッグはまたも黙考する。

そんなリッグの様子を見てアレクはあることに思い付く

「パーティを作らねえか

唐突な相棒の言葉にリッグは数秒間停止するが即座に返す。

「チームをってことか?」

「ああ、俺ら二人と戦士寮にいる何人かでチームを作るんだよ」

「なるほど・・・・・・」

確かにそれは良案だった。チームを作れば、クエストに行った場合、数が多いことでモンスターを倒すのに必要な力や手間、労力が省かれることとなる。

「それで、クエストをクリアしていって装備や武器を強化してまたクエストに行ってランクが上がって金も増えてって・・・・・」

「超美人な彼女も作って!!」

言葉の続きをリッグが繋ぐ。

「ま、それはずっと先の話だろうけどな」

ハハハハハ、と互いに笑い合う。

「とりあえず、寮に戻って皆に報告するぞ」

「ああ、そうだな」

二人は席から立ち上がり、会計を行う。会計を終え、レストランを出た二人は自分達の寮へと向かった。









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