「私でいいんですか」
私は昔から太っていた。
気が付いた時にはもう太っていた。
テレビで昔太っていた人の食生活を見たりするが「あの食生活なら太って当然だと」思うほど食べている。
私は普通に食べていただけなのに太った。
そりゃあ、運動は得意じゃないしお菓子を食べたりしていたけど…
ダイエットをした事もある。
頑張りが足りなかったのかもしれないが…、何をしても痩せないので諦めた。
私には3つ上の姉がいて、その姉はスタイルも良く可愛いと評判だった。
いつも私はこの姉と比べられていて、それが嫌で嫌で仕方なかった。何度か姉を恨めしく思った事はあるが、だからといって姉妹仲は悪くなかった。
でもどこかで私は、姉の事を嫌っていた。
昔は凄く嫌だった。
「お姉ちゃん可愛いよね」と周りに言われる事が。
でもさすがに年を重ねると、そう言われる事にも比べられる事にも慣れっこで、気にする事もなくなっていた−−−が、それでも言われて嫌な言葉はある。
「お姉ちゃんは可愛いよね」とか「痩せたら可愛いくなるよ」とか。
どうでもいいが、チクチクと心に刺さるものだ。
私が何より辛かったのが中学の時−−−−
同級生の男子が面白半分で私に告白し、私をその気にさせてバカにしようとした事。
そして告白してきた相手は、私の好きな人だった。
この計画を企てた連中は私の気持ちを知っていてやったのだ。
悪質過ぎる−−−
恋に幻想を抱いていた私にはキツかった。
(少女マンガみたいな事が本当にあるんだ!!)と舞い上がり、急いて「私も」と答えたら爆笑された。
私はどういう事か訳が解らず慌てていると、教室の外からクスクス笑う声が聞こえてきた。
嫌な予感がしたら的中だった。
「告白したらマジな顔してやんの!笑いを堪えるのに必死だったわ。少し考えりゃあ解んだろうに」
そう言ってひとしきり笑った後、私の肩に手を置いて奴はこう言った。
「身の程を知ろうね」
その時の蔑むような顔は一生忘れられない。
私は自分が相手にされる訳がないのを自覚している。それでも「もしかしたら」と淡い希望を抱いてしまう。
それすらもいけない事なのだろうか−−−?
私はこの件以来、不登校になってしまい高校にも行けなかった。
あの日から男の人が恐くなり、外に出れなくなってしまった。ご飯も喉に通らなくなり10kg痩せた。(食べたらすぐに戻ったが…)
さすがに二十歳を過ぎて「あんな男のせいで自分の人生を無駄にしたくない!」と思い、自分を奮い立たせて外に出た。
出たのは出たが…出ただけで、また家に引き返してしまった。
外に出るだけで2年もかかった。
最初のうちは男の人を見かけただけで脇道に逃げた。でも「慣らす事が大事だ」と思い、何度も逃げたくなったが…、それでも男の人とすれ違うようにして、少しずつ慣らしていった。
男の人とすれ違っても平気になったら、次はお店のレジの人、次は飲食店の店員さんと、男の人と関わるようにした。
中々慣れなくて、普通に話せるようになるまで5年もかかった。
自分でも(本当情けないな…)と思いながら、何とか普通に生活が出来るようになった。
そして今現在−−
私、山内メグミは小さな本屋さんで働いている。
身長158cm体重65kg。
彼氏いない歴29年である。
親はもう結婚は無理だろうと諦めている。正直私も少し諦め気味だ。
「30歳になる前までには」とは思っていたが、焦って結婚するのも違う気がする。
まあ、今は遅く結婚する人もいるし、そんな気にする事はない−−気にする事は…
あんな事があってから、私は男の人を好きになれるような気がしなかった。それでもどこか、運命的な出会いをめてしまう自分がいた。
こんなんだから未だに結婚(というより彼氏が先だが…)も出来ないのかもしれないが…、でも人生1度きりなら「この人だ!!」と思える人と結婚したい。
そう思うのは悪い事じゃないと思う。思うのは勝手だし(笑)
メグミは儚い夢を持ってはいるが、ちゃんと現実を見て生きている。
理想は理想でしかないのだ。
「夢は見るな」メグミはどこか、自分にそういい聞かせていた。
そうしないと、現実に押し潰されてしまいそうだから−−−
「いってきま〜す」
メグミはいつものように歩いて本屋に向かう。
家から歩いて30分ぐらいの所に、メグミが働いている花房書店はある。
メグミの実家は田舎で、出掛ける時は車がないと不便だ。だから出掛ける時は車ばかりで体を動かす事がほとんどないので、仕事先にはなるべく運動がてら歩いて行くようにしている。
そのお陰か、70kgあった体重が65kgになった。5kg減っただけで身体が軽く感じるし、幾分気持ちも軽くなった。
お店に着くとオーナーは、いつものようにレジの所に座って本を読んでいる。
花房書店はお店と住居が一緒になっていて、下がお店、上が住居で、オーナーはこのお店の2階に住んでいる。
レジの奥も住居になっていて、台所と3畳ぐらいの居間がある。
このお店は、オーナーのお父さんが残したお店みたいで、オーナーは今42歳にして、既にご両親が他界されている。
だからこのお店はメグミが入るまでオーナーが一人でやっていた。
まあ、殆どお客が来ないので一人でやれない事はない。
オーナーは少し変わった人だと思うが、おっとりしていて人当たりが良い。
メグミは働きだして今年で2年になるが、オーナーの怒った所を1度も見た事がない。感情の起伏があまりないのだ。
本を読んでいる時のオーナーは周りが入らなくて、いくらメグミが話しかけても反応がない。よくここまで集中出来るなと感心する程だった。
このお店には防犯装置がないのだが、オーナーは本を読んでいてもレジの支払いとお金を払わずに出て行こうとする人だけは、何故だか判る。
基本オーナーは本を読んでいる。だからメグミは、いつも掃除を済ませてからオーナーに(一応)挨拶をする。
「おはようございます」
もちろん返事はない。
本を読み終わるまでは、しつこく呼びかけない限りオーナーは気付かない。
お客さんが来るまで、オーナーの隣でメグミも座って本を読む。
昔はファッション雑誌とか漫画しか読まなかったが、ここで働きだしてから小説も読むようになった。
内容が難しいのは駄目だけど、メグミみたいに漫画しか読んだ事がなくても楽しく読める本がたくさんある。
メグミも夢中で読んでいた。するとお昼の音楽が聞こえてくる。
(えっ!?もう12時?)
メグミは慌てて本から目を離し、お店の時計で確認する。
誰一人としてお客さんは来なかった。だいたいそうだが…
いつも思う。
よくこのお店潰れないな…と。
オーナーの方を見るが、まだ読み終わりそうにない。
(お昼ご飯どうしよう…)
オーナーは「気にせず食べてくれていい」と言う。だからメグミは、いつも気が引けながらも先に食べる。
だが今日は、実はオーナーの分のお弁当も持って来ていた。
オーナーの食生活は、まあ酷い。もうちょっと栄養バランス考えようよ!!と思うような食生活で…。オーナーは「その時お腹が満たされれば何でもいい」という感じだ。
料理が殆ど(というより全く)出来ないから、基本菓子パンだったりカップ麺だったりと炭水化物ばかりで……、それに本を読んでいると食べる事すら忘れたりする。(私には考えられない!)
ずっと作って持って来ようかなと思っていたが、さすがに厚かましいかなとも思い、遠慮していた。でも本当にあまりにも酷いので、迷惑かもしれないが作って持って来た。
だからといって、メグミは堂々とオーナーにも言えず……
メグミはお弁当をどう渡そうか悩んでた。
別に好意を持ってる訳じゃないんだし、オーナーの食生活があまりにも酷いから作ってきただけで、別にやましい気持ちとかがある訳じゃあ…
どうしても変に自分に言い訳してしまう。
メグミがあれこれ悩んでいるとオーナーが話しかけてきた。
「あれ?メグミちゃん来てたの??」
本を読み終わったオーナーがやっとメグミに気付いた。いきなり話しかけられてメグミはビックリする。
「え!あ、はい…」
「来たなら言ってくれればいいのに」
(言いました(笑))と心の中で返事をし、メグミは愛想笑いで誤魔化した。
メグミはお弁当の事を切り出そうとするが、中々言い出せず、違う事を聞いてしまう。
「何読んでたんですか?」
「アガサ・クリスティーだよ」
「あ、知ってます!私でも名前は聞いた事ありますよ」
「ミステリーの女王だからね。ミステリーの王道って言われてるけど、1度も読んだ事がなかったんだよ。いや〜、クリスティーがミステリーの女王と言われるのも解るよ」
「へ〜、私も今度読んでみようかな」
「うん。読んでみて」
「はい」
ぐきゅるるる〜
見事なお腹の音が鳴った。それを聞いたオーナーが笑顔で言う。
「お腹空いたね」
「…はい」
メグミは恥ずかしくて、お腹を押さえて下を向く。オーナーはお店の時計を見て時間を確認する。
「あ、もうこんな時間なんだね。気付かなかった…、そりゃお腹も空くよね。あれ?メグミちゃん食べてないの?」
「あ、はい…」
下を向いたままメグミは答える。
「お弁当持って来るの忘れた?いつも持って来てるのに」
「あ…」
メグミはお弁当の事を切り出すなら今がチャンスだと思った。
「あ、あの…えっと…、実は今日、たくさん作り過ぎてしまってですね…、あのオーナーの分のお弁当もあるんです…。だからあの、一緒にどうかなと思いまして…」
「わざわざ作ってくれたの?」
「いやっ…、違います!多く作り過ぎただけです!!」
本当はそうなのだが、変に否定してしまう。
どうしても傷付かないように保険をかけてしまうのだ。
素直に言って迷惑がられるのが恐いから−−−
「あぁ!」
オーナーは何かに気付いたみたいに声をあげた。
「それで食べずに待っててくれたんだね。ありがとう」
「いえ…」
優しく微笑んでオーナーはメグミにお礼を言った。メグミはそれが凄く嬉しかった。
2人は居間で向かい合ってお弁当を食べる。
オーナーは手を合わせて「いただきます」と丁寧に言って、卵焼きに箸を手をつけた。
メグミはそれを見守りながら、オーナーが卵焼きを口に入れると同時に聞く。
「どうですか?」
「え?」
オーナーは何を聞かれたのか解らないみたいで、一瞬悩んでから答えた。
「あぁ!お弁当か。美味しいよ」
「他のはどうです?」
「え…?」
メグミは他のおかずも食べるように急かす。
オーナーは他のおかずも食べて「全部美味しいよ」と笑顔で答える。
それを聞いて安心したメグミは、自分も食べ始める。
手作りとは微妙なもので、人によって味覚も違うし好みもあって難しい。
だから作って来たのはいいが、気に入ってもらえるかメグミは不安で不安で堪らなかったのだ。
オーナーは驚くほど食べるのが早かった。そして、全部キレイに食べてくれた。
自分が作ったものを、残さずキレイに食べてくれるのは凄く嬉しいものだ。
メグミは聞いてみた。
「あの、また作って来てもいいですか?オーナーさえ迷惑じゃなかったらなんですけど…」
オーナーはそれを聞いて驚く。それに気付いてメグミはいい訳がましく言ってしまう。
「あ、嫌ならいいんです!オーナーの食生活があまりに酷かったもので…あの、良かったら…と思っただけで…」
(あぁ〜あたし何言ってんだろう−−−)と恥ずかしくなる。
するとオーナーが不思議そうに聞いてきた。
「食生活そんなに酷いかな?」
「酷いですよ!酷すぎです!!もっと野菜とか気を使った方が−−−」
そうメグミが言うのを聞いてオーナーが笑う。
「なんかお母さんみたいだね」
(お母さん……)
確かにもう、子供の2、3人ぐらい居てもおかしくない年ではあるが…、複雑だ。
メグミは褒められたのか良く判らなく、微妙に思っているとオーナーが言った。
「ありがとう心配してくれて。じゃあ、お願いしようかな」
「え…、あ、はい」
まさかそう言ってもらえるとは思わず、メグミは驚いた。メグミは慌ててオーナーに言う。
「でもお口に合うかは保障できませんよ!」
「大丈夫。今日のお弁当美味しかったから、十分お口に合ってるよ。それに作ってくれるならどんなに不味くても全部食べるよ。だから安心して」
メグミは、心臓の鼓動が耳障りなぐらい響いているのに気付いた。
色々な感情が入り混じっていて、何でこんなにドキドキしているのか自分でも訳が解らなかった。
「…はい。…あ、いや…、不味かったらちゃんと言って下さい!」
「わかった」
その後メグミは、心臓の鼓動を落ち着かせるのに一苦労した。
これ程までに仕事が早く終わって欲しいと思ったのは初めてだった。
それからのお昼は、メグミが作ったお弁当を一緒に食べるようになった。
最初のうちメグミはずっと不安で、毎回美味しいか確認していた。その都度オーナーは嫌な顔せず「美味しいよ」と言ってくれた。
自分でも鬱陶しいなと思いつつ、どうしても確認してしまうメグミは、いつも残さず食べてくれるオーナーを見て、確認するのを止めた。
あまり料理について何も言ってくれなかったのだが、時々オーナーから「これ美味しいね」とか「どうやって作ったの」と言ってくれるようになった。
そしていつも食べ終わった後に「いつもありがとう」と言ってくれた。
一緒に食べるのが当たり前になった頃だった。
ちょっとした事件が起きた−−
いつものようにお弁当を食べ終わって、いつものようにたわいもない話をして、何気なくメグミは言った。
「良かったら何か作って帰りましょうか?」
「いいの?なんかしてもらってばっかで悪いね〜」
「何かあるもので適当に作りますよ」
とは言ったものの、冷蔵庫の中身は空っぽだった。
「冷蔵庫の中、何もありませんね…」
「あぁ〜そうだったかなぁ?じゃあ今ヒマだし、僕買って来るよ」
「え、じゃあ何が食べたいですか?」
「カレー」
「カレーですか?ベタですね…」
「うん。ベタなものが好きなんだよ」
「じゃあ−−−」
メグミはカレーに必要な材料を細かくメモに書いて、オーナーに渡す。
でないと何を買ってくるか分かったもんじゃないからだ。
「もし解らない事があったら、電話して下さいね」
「分かった。じゃあ行ってくるね〜」
「いってらっしゃい」
買い物に行くオーナーを笑顔で見送る。オーナーが居なくなった後にメグミは(何か…)と思った。
(これだとまるで夫婦みたいだな…)
メグミはそう思うと顔がニヤけてしまっていた。そしてそれに気付いて恥ずかしくなる。
(何考えてんだろ私−−)
オーナーが買い物に行っている間に少しお客さんが来たけど、メグミ1人で接客出来ない程ではなかった。
オーナーから連絡もなく、(もうそろそろ帰って来るかな?)と思っていたら、期末試験で学校が早く終わったのか、高校生の男の子が4人がお店に入って来た。
メグミは反射的に怯えてしまう。
自分より年上の男の人は何とか克服できたが、今だに若い男の人は苦手だ。
メグミは自分でも震えているのが判った。
(早くオーナー帰って来て−−!!)と思っていると、高校生の1人がメグミに話しかけて来た。
「お姉さん何歳?」
「…29…」
「そうなの?見えないね〜。それより断然若く見えるよ」
高校生はどう見てもお世辞と解る言い方で言う。そしてメグミは、この男の子が自分を明らかに見下しているのも解った。
(何しに来たんだろう?)と不思議に思っていると、男の子はまだ話し続ける。
「この店っていっつもお客居ないけど、お客来んの?」
「たまには…」
「そうなの?俺見た事ねーや。そんなんでよく潰れないよね〜」
「はあ…」
それから男の子は自分の事やら学校の話をしだした。メグミはあまりにもこの行為がおかしいので訝しく思った。
すると案の定、残りの3人が万引きをしているのが見えた。
(あ!万引きしてる!!)
気付いたはいいが、メグミは恐くて注意ができない。いつも万引きはオーナーが注意してくれていた。
それに注意しようにも、メグミに張り付いている男の子が鉄壁の壁みたく立ち塞がっている。
高校生は堂々と万引きをしている。それなのにメグミはそれを止める事が出来ない。
メグミは自分の不甲斐なさに涙が出て来た。
どうして動けないんだろう−−−?
悪い事してるのはあっちなのに……、何でいつも私が罪悪感を感じないといけないの?何でいつも追い詰められるのは、やられてる私なの−−−?
(こんな事、許しちゃ駄目だ!恐くても立ち上がらなきゃ!!)
そう自分に言い聞かせるがやはり動けない。
メグミはどこかで(オーナーが帰って来てくれたら−−)と思ってしまう。そして自分が買い物に行けば良かったと後悔していた。
そう思っている時点で、メグミはあの万引きをどうにかしようとするのを諦めていた。
自分にあの子達を注意出来るとは思っていないのだ。
囮役の高校生はメグミが注意しないと判ると、仲間の所に戻り耳打ちし、4人組はごっそり漫画を盗んで笑いながら店から出て行った。
結局メグミはその場から動けなかった。
オーナーに申し訳ない気持ちでいっぱいで…、自分の不甲斐なさに死にたくてしょうがなかった。
この事をオーナーに伝えないといけない−−
もうそれだけで苦痛で、吐きそうだった。
万引きされた分は、自分の給料でまかなうつもりだった。それで許してもらえるとは思わないが…、そうする事しかメグミは思いつかなかった。
万引きも注意できない店員なんか、居ないのと一緒だ−−−−
ここで働くの好きだったのに…
メグミはクビになるのを覚悟していた。というより自分から辞める覚悟だった。
***********
その頃オーナーは買い物をすませ、店の近くまで帰って来ていた。
すると前から歩いてくる高校生の4人組が、大きな声で楽しそうに話しているのが聞こえた。
「いや〜、ちょろかったな」
「あの女、俺が話しかけた時からビクビクしてんの。しかも途中、泣きそうになってやがんの!スゲー笑えた」
「余裕だったよな。もっと取ってくりゃ良かったな」
「また今度でいいじゃん。あの女が一人の時に行きゃあ楽勝だよ」
「何が楽勝なの?」
いきなり目の前に知らない男に立ち塞がれ、話しかけられた高校生達は驚く。
「な、何でもねーよ!てかオッサンどいてくんない?邪魔なんだけど」
オーナーを避けて通ろうとするがそれを阻む。
「おぉっと、まだ話しは終わってないよ」
「うっぜぇな…。こっちは別にオメェと話す事なんてねーよ!!」
「そうだよ!どけよ!!」
全員に焦りと苛立ちが見えた。それを見てこの4人が万引きをしたのは明らかだった。
実はオーナーは、自分のお店の本を嗅ぎ分ける事ができる。だからさっきのこの4人の会話とこの特技で、4人が万引きしたのをオーナーは確信した。
オーナーは店の本が入っているカバンに目星をつけ、笑顔で高校生に言った。
「駄目だよ、お金を払わずにお店から出たら。その時点で君達は自覚してないかもしれないけど、犯罪者だよ」
全員がヤバイと思ってその場から逃げたが、本を持っている男の子だけはオーナーは逃がさなかった。
「クソっ…放せよ!!」
高校生がいくらオーナーの手を振りほどこうとしても、力が強くてほどけない。
「このまま君だけ警察に突き出してもいいんだよ。反省の色もないみたいだし」
「なっ…」
「そうなると君は2択を迫られる事になるんだ。自分一人だけが罪を被るかそれとも仲間も売るか。君一人が罪を被れば皆は救われるが、君の心には小さな蟠りが出来る。かといって仲間を売ると君は嫌われる」
オーナーはそこで少し言葉を切って続ける。
「どっちがいい?どっちにしても、そうなると友情ってのは意外と簡単に壊れるものだよ」
「どっちも嫌に決まってんだろ…」
「そんな事言ったって罪を犯したのは君なんだから、その責任は負わないと」
そう言ってグイグイ男の子を引っ張ってお店に連れて行く。
「嫌だ…。止めてよ〜…」
オーナーはそれを無視して引っ張り続ける。
高校生はどこかで高をくくっていた。いくら何と言おうと「本当に警察には連れて行かないだろう」と。だが、オーナーが容赦なく引っ張って行くので、高校生は本当に警察に連れて行かれると思い、急に恐くなった。
「ごめんなさい!もう2度しませんから許して下さい!!」
泣きながら訴える。
「本当にごめんなさい〜…反省してます…ひっ…」
それを見てオーナーは少し考えてから言う。
「…わかった。今回だけは見逃してやる。でも次はないからな」
「はい!もうしません!!」
ちゃんと反省してるみたいだし、オーナーは見逃した。
だがカバンを開けて、オーナーは考えを改めてようかと思った。なぜならカバン一杯に漫画が入っていたからだ。
さすがにこれを手で持っては行けないから、カバンごと預かった。
あまりの多さに、オーナーは呆れて溜め息しか出なかった。そして気持ちが変わる前に高校生を逃がした。
***********
メグミはこれから自分が言わなければならない事に、不安と恐怖でいっぱいだった。
それでも逃げようとは思わなかった。
ほどなくしてオーナーが帰って来た。
メグミはすぐに万引きの事を話そうとする。でないと一生言えなさそうだからだ。
「あのオーナー実は−−」
「ただいま」
メグミに気付いて笑顔で言う。そんなオーナーに、メグミは万引きの事が余計言いづらくなった。
「あ、あ、あの…」
それでもちゃんと言おうとしていると、ある物が目についた。それに指を指して聞く。
「それ…」
「あ、これ?調度そこで万引きしたって喜んでたバカな男の子達をとっちめて取り戻したんだよ」
メグミの目に止まったのはオーナーが持っている、万引きをした高校生のカバンだった。
オーナーはそのカバンを持ったまま、メグミを責める事もなく何事もなかったかのように奥に入って行く。
メグミは安堵の気持ちと不安な気持ちでいっぱいだった。
慌ててオーナーの後をついて行き謝る。
「すみません…あの私、万引き…」
突然涙が溢れてきて、メグミはちゃんと喋れなくなった。
(泣いちゃあ駄目だ)と思えば思うほど、涙は止まらない。
メグミはしゃくり上げながらも謝った。
「すみっ…ません、ひっく…た…。わっ…」
ちゃんと謝りたいのに謝れない。
メグミの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
それを見てオーナーは少し吹き出してしまった。
そして必死に謝ろうとするメグミを見て微笑ましく感じた。
「もういいよ」
オーナーは自然とメグミの頭を手でポンポンとする。母親が子供をあやす時にするみたいに。
「メグミちゃんが気にする事ないよ。団体で来られたら僕でも恐いよ」
そう言いながらティッシュを差し出し、オーナーはメグミの鼻を拭いてやる。
「ほら、チーンして」
どう見ても子供扱いだが、メグミはそれに素直に応じる。
「メグミちゃんが本当に申し訳なく思ってるのは伝わってるから、もう泣かないで、ね?」
メグミはオーナーが困っているように見えたので、頷いた。
オーナーのお陰でメグミはだいぶ落ち着いた。
こんな小さい書店なら、隠れる場所がないから万引きは判る。万引きがあったと報告しなくても判るぐらい、漫画を盗まれて、何も出来なかった店員は普通クビだと思う。
それなのにオーナーは、一言もメグミを責めなかった。
そしてメグミはこの出来事で、自分の気持ちに気付いてしまった。
今まで何度も、そうかもしれないと思ったが、自分に「違う」といい聞かせてきた。
でも、もう自分に嘘はつけなかった。
私、オーナーが好きだ−−−
オーナーはメグミが落ち着いたのを見計らって、気を取り直させようとある事を頼んだ。
「じゃあ、今暇だからカレー作って」
材料をメグミに手渡す。
万引きの事があり、カレーの事などメグミはすっかり忘れていた。材料を受けとり、笑顔で返事をする。
「はい!」
メグミは頼られた事が、嬉しくて仕方がなかった。
今まで以上に腕によりをかけてカレーを作り、オーナーがそのカレーを美味しいと褒めてくれて、メグミは更に舞い上がっていた。
その日からメグミは幸せだった−−が、恋をした事での苦労もあった。
前まで、お弁当のおかずで少し失敗しても「まぁ、いっか」と思えていたのに、今は一つのミスも許せなくなっていた。全て完璧に仕上げないと気が済まなくなっている。
それに服にも気を使うようになった。
今までラフな格好で、動きやすければいいと気にもしていなかった。さすがに少し意識し始めてからは気を使うようにもなっていたが…、それでもあまり、こだわりは無かった。
だが、がっつり意識しだしてからは「いきなりオシャレても変に思われるかも」とか「スカートはやり過ぎかな」とかそんな事ばかり考えていると、服を着るのに1時間以上もかかるようになってしまった。
幸せの反面、メグミは悩みが増えて困っていた。
でもメグミにとって、これは嬉しい悩みだった。
最近では、夕方近くになると夕飯の支度をしている。
初のうちは作り置きがきく物を作っていたが、オーナーに「良かったら一緒に食べよう」と言われてからは、あまり迷惑にならない程度にオーナーの所でちょくちょく食べて帰るようになった。
メグミはどうしても帰りがたくて、遅い時間になってしまう。でも22時になると「遅いから送るよ」と強制送還される。
「一人で帰れます」と言っても必ずオーナーが家まで送ってくれた。
そういう所で何だか、女の子扱いされているような気がして、メグミは余計に嬉しかった。
それからはもう有頂天だった。
店が終わってから2人で一緒に買い物に行ったり、時々外食したり、するともうメグミはカップル体験をしているみたいで、幸せの絶頂だった。
夕飯の支度はお店が閉まる前に作るから、一人は必ず店番をしないといけない。だがら『2人で一緒に料理を作る』という事は出来ていないが、オーナーが「いつも作って貰ってるから僕が作るよ」と手料理を振る舞ってくれた。味はイマイチだったが、オーナーの手料理というだけで満足だった。
それにメグミが食べて帰る時は「作ってくれたんだから洗い物は僕がするよ」と言ってくれる。
(そんなのいいのに−−)といつも気が引けながら、そういう事が言えるオーナーにどんどん惚れ込んでいた。
メグミがオーナーへの気持ちに気付いてから半年が経ち、もう今年も終わろうとしている。
それなのに、2人の間は何一つ進展していなかった。
それでもメグミは幸せだった。オーナーと居られるだけで満足だったから。
そりゃあもちろん、何度かそれ以上を望んだ事もある。でも下手に行動を起こして嫌がられでもしたら…、
簡単にこの幸せが壊れてしまう。
そうなるぐらいなら、何もせずに今のままの方がいい。
それにオーナーに拒否でもされたら、生きていけそうもない……(ちょっと大袈裟)
だからメグミは、何か行動して壊れるぐらいなら、何もせずこの幸せを壊したくなかった。
花房書店は大晦日と元旦から3日間は正月休みだ。
オーナーは正月休み、お父さんの実家である島根の親戚の家に行っている。ご両親のお墓がそこにあるのだ。
最近、元旦から開いているお店が多いいが、ここは田舎なのでコンビニ以外は閉まっている。
メグミの正月はというと、ずっと家で正月番組をダラダラ見ていそうだが(基本そう)、実は去年から友達と一緒に初詣でに行くのが恒例になっている。
この友達−−ケイコは、引きこもった時から唯一メグミを見捨てず、励まし続けてくれた。
メグミにとってケイコは掛け替えのない友達だった。
大きな神社だと人は多いいし、車が多過ぎて行くだけで時間がかかるから、こう言っては何だが…あまり人が来ないマイナーな方の神社にお参りに行く。それでもメグミにとって、人は多い方だ。
それにこちらの方が地元から近かった。
ケイコにはオーナーの話をしていて、どうしてもその話になってしまう。
「オーナーさんとは順調?」
「うーん…だと思う。何も変わりはないし、今のところは−−−」
「告白とかしないの?」
ケイコが窺うように聞く。メグミは慌てて答える。
「そ、そんな!無理だよ!!上手くいきっこないもん…」
「そうかな〜?聞いてる話だと上手くいきそうだと思うよ」
「そ、そんなの分かんないよ!もし断れたら?私の人生終わっちゃうよ…」
「そんな大袈裟な…」
「大袈裟じゃないよ!こんなに好きになったの初めてなんだもん」
「だったら尚の事、気持ち伝えないと。待ってるだけだと上手くいくものもいかなくなるかもよ」
「うぅ…ん」
メグミは言い淀む。ケイコはそんなメグミを見て安心させるように言う。
「でもオーナーさんなら、メグミの気持ちをちゃんと受け止めてくれると思うよ」
「でも断られたら?」
「また告白すればいいじゃん」
「え…」
それはメグミにとって意外な言葉だった。ケイコはそのまま続けて言う。
「何で好きな相手への告白は1回だけしか出来ないみたいに思ってるの?振られても諦めきれないなら、また告白すればいいじゃない」
そう言われてメグミは目が覚めたような気がした。
確かに気持ちを伝えるのは恥ずかしいし、とても勇気がいる。
返事を聞くのはもっと勇気がいる。
それでも気持ちは伝えないと、想っていない事と一緒だ。
自分の中では存在してても、相手の中では存在してない。
それだと無意味になる。
せっかく男の人を好きになれた。あの件以来、自分は誰も好きになれないと思っていた。
(恐がってこの気持ち伝えないでどうする!)
メグミはケイコのお陰で勇気が出た。
「ありがとうケイコ!私頑張ってみる」
「うん。頑張って!応援してる」
ケイコはいつも励ましてくれる。やっぱりケイコがいてくれて良かったと、改めてメグミは思った。
おさい銭の後、2人でおみくじを引いた。
メグミのおみくじは大吉で、恋愛は『恐れずに突き進め』だった。
神様まで応援してくれているみたいで、ますます自信がついた。
ちなみにケイコのは大凶で…それでも、「あたしがあんたの分まで悪い運気を受け持ったから、安心して告白しな」と、落ち込んでいるのに励ましてくれた。
家に帰ってからは、「どう告白すべきか」ばかりを考えていた。
(いつ言おう−−−?)それが問題だった。
タイミングというものはとても大事だ。
いきなり「好きです」と言われても困惑するだろうし。……いや、告白なんて突然するもんなんじゃないのか?でも、オーナーに突然「好きです」って言っても「何が?」とかって言われそう………
考えれば考える程、頭がこんがらがってくる。どうすればいいのか判らない−−−
インターネットで調べようかな?
メグミは食事中もオーナーにどう告白するかと計画を練っていた。すると母親から聞きたくもない事を聞かされた。
「メグちゃんの同級生に橋本くんって居たでしょう?」
メグミは固まった。まさかその名前が出てくるとは思っていなくて、返答が引き攣ってしまう。
「いたよ…何で?」
「何でも大学卒業してから東京でモデルしてるみたいで、結構人気だって噂なのよ。何でも最近はテレビにも出てるって。凄いわね〜、昔から格好よかったの?」
「…まぁ、顔は良かったんじゃない…、ごちそうさま」
「もういいの?でも同級生が芸能人とか鼻が高いわよね〜、お母さん羨ましいわぁ」
母親が嬉しそうに話すのを聞いてメグミは複雑だった。
見事メグミに深い傷をつけてくれたのが、さっき母親が話題にした橋本だった。
何でか母親ってのはご近所繋がりが強くて、メグミの同級生の情報を仕入れてくる。メグミよりメグミの同級生事情に詳しいぐらいだ。
両親はメグミが引きこもった原因を橋本だとしらない。だから話題に上がったとしてもメグミにはどうしようもないのだ。
何で相談しなかったのか?と思われるだろうが、もし相談して解ってもらえず「そんな事で」と言われるのが恐かったからだ。
そりゃ、言うかどうかなんて判らないけど…、言われた場合メグミは一生立ち直れなかっただろう。
だから家族の中で、1番メグミの気持ちを理解してくれるだろう、姉にだけ相談した。
正直、姉の事は嫌いではないが、あまり好きでもなかった。姉は可愛いくメグミと違って友達も多いい。天真爛漫という言葉がよく似合う、そんな人だった。そんな姉に、メグミは心の底では嫉妬していた。そんなつもりはなかったが、どうしてもどこか比べてしまっている自分がいた。何でお姉ちゃんは−−って。
それでもこの時、メグミが救いを求めたのは姉だった。
姉はメグミの話を聞いて凄く怒ってくれた。登校拒否をしているメグミの事を両親に説得してもくれた。姉はメグミをバカにした奴らを懲らしめるとまで言ってくれた。
メグミにはその気持ちだけで十分だったが、姉なら本当にやりかねないと思い、メグミはこれ以上あの連中と関わりたくなくて、必死に「余計な事はしないで」と頼んだ。
多分、メグミの願いは届いているだろう。(多分…)
この時ほど、姉の事を頼りになると思った事はなかった。
あの場に居たのは橋本だけではないのだが…
それでも実行犯のこいつだけはどうしても許せない。
メグミはせっかく幸せ気分だったのに、思い出したくもない奴の名前を聞いて、ベッドの上で心底沈んでいた。
性格最悪でも顔が良ければモデルになれんだ−−
まぁ、外見だけだもんね…中身は関係ないよね〜…どうでもいいけど……
どうせ東京だし会う事ないし、テレビに出だしたとしても最初は外面良くしてるだろうけど、その内メッキが剥がれて地が出て終わりだよ−−
でももし人気が出て、テレビに出ずっぱりになったら−−−?テレビ見れなくなるや…
考えたくないのにどうしても考えてしまって、どす黒い感情がモヤモヤと湧いてくる。
寝れない…
寝れなくて、メグミはお弁当のおかずを作る。
料理を作っていると少しずつ落ち着いてきて、自然とオーナーの事を想えてくる。
それとせっかくだから、プチおせちを作るつもりだった。作るといっても、母親と一緒に作ったおせち料理の残りを詰めるだけだが…(ちゃんと日持ちするものだけを入れた)
オーナーは意外と甘い物が好きなので、くりきんとんと伊達巻きを多めに入れる。
メグミは、お弁当を作り終えた時には橋本の事をすっかり忘れていた。
正月休みが終わって、メグミは4日ぶりに花房書店に行く。
オーナーに会うのも4日ぶりだ。たかが4日なのだが、もの凄く久しぶりな気がした。
何故だかいつも以上に緊張して、メグミは中々お店に入れなかった。
お店に入ると珍しく本の整理をしていたオーナーは、メグミが来たのに気付いて挨拶する。
「あけましておめでとう。今年もよろしくね」
オーナーに新年の挨拶をされて、メグミは心臓が口から出そうだった。
「あ、あけましておめでとうございます。こちらこそ…お願いします」
メグミはペコっと頭を下げる。そしてお弁当の入っている袋を軽く持ち上げて言う。
「今日はプチおせち持って来ました」
「ありがとう」
荷物を置いてからメグミも本の整理を手伝う。
メグミは何か話そうとは思うのだが、緊張がピークで頭が働かない。するとオーナーが話しかけてくれた。
「メグミちゃんは正月何してたの?」
「あ、私は友達と初詣でに…、あとはこたつでダラダラとテレビ見てました」
「こたつでダラダラは正月の醍醐味だよね」
「はい…、こたつは魔物です」
「あはは、確かにそうだね。あ、お土産買って来たからお昼の後にでも一緒に食べよう」
「…はい!ありがとうございます」
「いえいえ」
メグミはまさか、自分の為にオーナーがお土産を買って来てくれるとは思わず、心が躍った。
それに初詣での事を口に出して、告白の事を思い出した。
今までオーナーとは恋愛話をした事がない。
聞きたくて聞きたくてしょうがなかったが、そういう事は聞きづらくて、メグミは怖じけづいていた。
彼女がいるようには見えないが…けど、「もしかしたら」というのがあるし、年が年だから(←失礼)結婚とかした事あるのかなとか……
結婚はいいとしても、付き合っている相手がいるかどうかは確認するべきだと思い、メグミは1度だけ勇気を振り絞って聞いてみた。
「オ、オーナー…」
「何?」
「オ、オーナーは…女性とかいないんですか!?」
(あ!間違えた…)
あまりにも緊張し過ぎて勢いで言った為、「彼女」を「女性」と言ってしまった。案の定オーナーはきょとんとしている。
(どうにかしないと…)と慌てていると、オーナーが察したのか答えてくれた。
「僕はこんなだから。こんな男を気に入ってくれる風変わりな女性はいないよ」
オーナーは見た目悪くないのし中身だって申し分ないとメグミは思うのに、女の人が寄って来ないというのは意外だった。
「メグミちゃんはどうなの?」
「え!?」
まさか聞き返されるとは思わず、メグミは益々慌てた。
「え、あ、…わ、私にはそんな相手いません…」
「そうなの?意外だね。料理美味しくて可愛いいのに」
(可愛い−−−−!!!??)
「〇×△★☆◇◎□」
オーナーのビックリ発言に、メグミはもうパニックだった。
お世辞だと解ってはいたが、それでも(少しは脈があるのかな)と期待してしまった。
それにもしここで「彼女がいる」と聞いていたら、メグミは諦めていただろう−−−
この時、勇気を出して聞いて良かった。いるかいないか知らないよりは気持ちが軽いし、オーナーがフリーだと判って、安心して(…とは言い切れないが)告白できる。
2人はお昼を食べ終わって、いつものように本を読んでお客さんが来るのを待っていた。だが、メグミの頭の中は、お昼の時も今この時も告白の事でいっぱいだった。
今かな−−?いや、今本読んでるし…言ったって聞こえてない…、!
待てよ…、今試しに言ってみるってのはどうだろう−−−?
本読んでると聞こえてないし、練習がてら言ってみようかな…
告白の練習をしてみようと決めたのはいいが、オーナーの方を向いたままメグミはまごまごしていた。すると、お客さんが1人入って来た。メグミは反射的に反応する。
「いらっしゃいませ−−−」
メグミは一目見て判った。垢抜けて派手になってはいるが、橋本だった。
(何で−−−…)
全身から冷や汗が出る。
メグミは何で目の前に橋本がいるのか理解できなかった。
ここは橋本の地元でもあるんだし、地元に居れば会う可能性はあるが…、それでもメグミは2度と会う事はないと思っていた。
体が全身で橋本を拒絶しているのに、逃げ出したくても体がいう事を利かない。
橋本はメグミに気付いたみたいで話しかけてくる。
「あれ〜?もしかして…山、内?うっわ、久しぶりじゃん」
橋本は悪びれる様子もなく、普通に話しかけてくる。
「中学以来だよな?うわぁ〜、変わってねーなーお前。ここ潰れてると思ったのにしぶとく潰れてなくてさぁ、懐かしくて入ってみたらお前が居てさらにビックリだよ」
何で−−−?
何でこいつ、私にあんな事しといてこんなにも馴れ馴れしく話しかけれるの?
メグミは橋本の神経が信じられなかった。
「お〜い、聞こえてる〜?」
あまりにもメグミの無反応に、橋本はメグミの顔を覗き込み、顔の前で起きているかどうか手を振って確認する。
「山内さ〜ん?寝てんの?」
全く反応しないメグミに、橋本は(目を開けたまま寝てるのか(笑))とバカにし、起こそうと体を揺すろうとして手を伸ばす。
それに気付いてメグミが手を払った。
「止めて!触らないで」
メグミが声を荒げたので、さすがのオーナーも驚いて反応する。
今まで本を読んでいて状況がさっぱり理解できないオーナーだが、メグミの身体が強張っているのは解った。
橋本はメグミの、あまりの過剰反応に笑いながら言う。
「何?どうしたのお前?過剰反応し過ぎじゃねぇ、大丈夫〜?」
そのまま笑いながらバカにしたように続けて言う。
「お前ってほんと身の程知らずだよな(笑)」
メグミはあの時と同じ言葉を聞いて驚いた。
(何こいつ−−−−)
そしてメグミは気付いた。
橋本は自分にした事を、これっぽっちも覚えていないのだと。
こいつあの時私にした事覚えてないんだ−−−
何それ?人を傷付けておいて悪いとも思ってないの?あんな事しといて全く罪悪感もないっ事?
あんたにとってあれは忘れれる程度の事だった訳−−−?
メグミは吐き気がした。そして急激に怒りが込み上げてきた。
ふざけんじゃないわよ!!あの後私、登校拒否にもなったのに…それにすら何も感じてないんだ。
あれだけ私を苦しめておいて自覚なし?
しかも忘れてるだぁ?
あんたのせいで私がどれだけ人生ムダにして苦しんだと思ってんのよ!!
こんな奴のせいで−−−
オーナーは橋本の台詞を聞いて眉をしかめた。
不快に感じ橋本を追い出そうと立ち上がったが、その前にメグミが話し出した。
「あんたあたしにした事覚えてないの?」
「え?何かしたっけ?」
「私の気持ち利用して皆でバカにしたのよ」
「そんな事あったっけ〜?まぁいいじゃん、昔の事なんだしさぁ」
ヘラヘラ笑いながら言う橋本にメグミの怒りは頂点に達した。
「テメェは…どこまでも男のクズだな。
テメェのせいで私がどれだけ傷ついたと思ってんだよ!!あんたにとっちゃあどーでもいい事だろうけど、こっちは死ぬ程傷付いたんだよ!!!
テメェみたいな奴は地獄に堕ちろ!!」
「はぁ?たかが冗談かなんかだろ。中学の時の事をいつまでも引きずってんなよな…」
確かに橋本の言うように15年も前の事だ。メグミだって引きずりたくて引きずっている訳ではない。
それでも忘れたくても忘れられない事はある。
しかもやった張本人に罪悪感がないのなら尚更だ!
「テメェは人を傷つけといて罪悪感もねぇんだな。何だ、あれで私が傷つかないとでも思ったのか?それとも冗談だから許してもらえるとでも思ってんのか?顔がいいだけで人を見下してもいいとでも思ってんのか!?
それとも何か?顔がよけりゃあ他人に何しても許されるとでも思ってんのか!!?」
それを聞いてオーナーは心の中で「いいぞいいぞ、もっと言ってやれ〜!!」と加勢していた。
橋本が覚えているメグミの印象は『物静か』で、まくし立てるメグミのあまりの昔とのギャップに、橋本はしどろもどろになる。
「いや〜、別にそういうつもりじゃ…」
「じゃあどういうつもりだった訳?どうせ何したかも思い出せないくせに」
「……」
その通りだった。
ただ懐かしくて入っただけなのに、こんな面倒臭い事になるとは思っていなかった。
橋本はここに入った事を後悔していた。
「あんたなんか、ただ顔がいいだけの残念な奴よ」
「いや…、ちょと言い過ぎだろお前。そこまでお前に言われる筋合いねーだろ。なぁ、俺、一応客だよ?てか、そこのオッサン!従業員がこんな暴言吐いてんのに、あんた止めたりしない訳?」
困った橋本は、助けを求めてオーナーに話しを振った。メグミは頭に血が上っていてオーナーの存在を忘れていた。
(あ…、オーナーの事忘れてた−−−)
自分の言った事を思い返し、急に冷や汗がドッと出てくる。
メグミはオーナーが何て言うか不安だった。
「え、僕?僕には君がお客さんのようには見えないし、別にいいんじゃない」
オーナーはにっこり微笑んで答える。助けてもらえると思っていた橋本はア然とした。
「な、何だよこの店…。調子こいてんなよ…俺とお前等じゃあ比べもんになんねーんだからな!」
「何が?」
オーナーが本当に訳が解らなさそうに聞き返す。それを見てメグミは笑ってしまった。
橋本はからかわれている気がして恥ずかしくなった。
「こんな店潰れちまえ!!」
そう吐き捨てて出て行った。
メグミは橋本が出で行くのを見て気分爽快だった。それなのに急に体の力が抜けて、その場に座り込んでしまう。
あれ?おかしいな−−、平気なのに……
まさか自分があんな事言えると思わなかった−−−
「ははっ…」
メグミは笑いが込み上げてくる。それと同時に涙も出てきた。
言いたい事が言えてスッキリはしていたが、悔しくて堪らなかった。
アホらしい…、今まで何してたんだろう?
あんな奴のせいで、あんな奴のせいで、あんな奴のせいで…何でもっと前にこうできなかったんだろう−−
クソ、クソ、クソッ−−−−…
メグミは膝を抱え込んだまま動かない。オーナーは心配で声をかける。
「大丈夫?」
だがメグミから返答はない。
「あの子と何かあったの?」
メグミはオーナーが心配してくれているのは解るのだが、答えたくても答えられなかった。
「別に話したくないならいいよ。今日はもう帰る?」
メグミは下を向いたまま首を振る。
「そう、分かった。
もし話したくなったら言って、いつでも聞くよ」
オーナーはそう言って、メグミの背中を優しく摩る。
いつもなら、オーナーにこんな事をされたら舞い上がってしまう。だが、橋本に会ったせいでメグミは卑屈になってしまっていた。
「優しくしないでもらえませんか…そんな事されたら勘違いしてしまいます」
メグミは自分でも最低だなと思った。オーナーは、ただただ心配して言ってくれてるだけなのに…
こんな自分が嫌で仕方なかった。
すると−−−
「他の人はどうか知らないけど、僕は好きでもない人に優しくなんかしないよ」
そう言われてメグミは驚きのあまりオーナーを見る。
(え、え、それって…、
どういう意味ですか−−−!!?)
口をパクパクさせているメグミを見て、オーナーは「少し元気になったみたいだね」と言って、安心したのか本を読み出した。
メグミはさっきのオーナーの言葉がどういう意味なのか聞きたかったが、オーナーは本を読み出してしまったし、もう色んな事があり過ぎて頭ゴチャゴチャで……、
結局どういう意味か聞けなかった。
このオーナーの発言で、メグミはすっかり橋本の事など忘れていた。
それから1月も終わり2月になったというのに、あの時のオーナーの言葉の意味を聞きたくても聞けずに、悶々とする日々が続いている。
「はぁ〜」
メグミは溜め息をついて、オーナーの方をチラッと見る。
どう見てもオーナーはいつもと変わらない…
あまりにもいつも通りのオーナーを見ていると、あれは気のせいだったのではないかとメグミは思うようになっていた。
オーナーが本を読み終わり、メグミは焦って自分が持っている本を読んでいる振りをした。
「本取りに行って来るね」
「はい」
オーナーは次に読む本を取りに、2階の部屋に行く。オーナーが行ったのを確認して、メグミはまた溜め息をついた。
「はぁ〜…」
メグミはこのままだと気疲れしてしまいそうだった。
外を見ると中学生3人が歩いているのが目についた。(もしかして来るのかな?来てほしくないな〜)と思っていると、案の定この中学生は花房書店に入って来た。
メグミはあの高校生の一件以来、偏見かもしれないが学生には過敏になっている。
注意深く監視していたら、思った通り万引きをした。
(あぁ…−−−)
メグミは憂鬱な気持ちになる。
軽い気持ちでしたんだろうが、万引きは立派な犯罪だ。バレなければいいだなんて思って、軽い気持ちでしていいものではない。
本当は、お店を出てから引き止めないといけないのだが、この花房書店は違った。
出て行く前に止めるのだ。
それだと反省をしないかもしれないが、『罪を犯す前に止めれるなら止めたい』それがオーナーの意向だった。
だからメグミも出て行く前に中学生を引き止める。2度とあんな失態はおかしたくなかったから。
「ごめん。ちょっといいかな?」
「何ですか?」
引き止められた中学生は立ち止まり、メグミの方を見る。
「支払いがすんでないよね?カバンの中見せてもらえる?」
「いいですよ」
中学生達は、あまりにもあっさりとカバンの中を見せた。メグミは素直過ぎて訝しく思う。
(やけに素直だな−−)
変だとは思ったがそのままカバンの中を見続ける。
ところが、誰のカバンの中にも本は入っていなかった。
「え…何で!?」
中学生は勝ち誇ったように言う。
「もういいですか?」
「いや、ちょっと待って…」
メグミは必死に探すが、どう見てもカバンの中に本はなかった。
「いくら探してもないですよ。だって俺達万引きなんてしてないですもん」
(そんなはずはない−−−、だってこの目でちゃんと見たのに…)
メグミは自分が見たものに段々自信がなくなってくる。
(もしかしたら見間違えなのかもしれない…、どうしよう−−−)
メグミは焦って必死にカバンの中を探す。
「ちょっといい加減にしてくれませんか?そんなに俺達を万引き犯にしたいんですか?」
「違っ…」
「何が違うんだよ!そっちが勝手に勘違いして俺達の事犯人扱いしてんのに」
「そうだよ。俺達何もしてないんだから、疑った事謝れよな!!」
「そうだそうだ!謝れ!!」
中学生は、口を揃えてメグミを非難する。
それに動揺して、メグミはどうしたらいいのか判らなくなってしまう。
(何でないの?絶対見たのに…、勘違いだったのかな……)
人に何か注意するのは、とても勇気がいる事だ。
例え相手が悪くても−−
万引きはいけない事だが、注意するのはとても難しい。確信があっても確証がなければ、ただの間違いでは済まないからだ。
だから慎重にならないといけない。
(どうしよう…どうしよう…−−−)
メグミが困っていると、オーナーが本を持って戻って来た。中学生が騒がしくメグミを責めているのを見て間に入る。
「どうしたの?」
「あっ…あの…」
メグミはオーナーに、事のいきさつを説明する。中学生達は大人の男が出で来て押し黙った。
「ふ〜ん…」
メグミから事情を聞いたオーナーは、中学生3人を隈なく見て、一人の男の子を指差して言った。
「君、上着脱いで」
オーナーにそう言われて、中学生達は動揺する。
「え…いや」
「ここ寒いし…」
「まあまあ、いいから。何か上着を脱げない理由でもあるの?」
そう言われてしまったら、脱がない訳にはいかない。
当てられた男の子は観念して上着を脱いだ。
それを見てメグミは驚いた。
男の子が脱いだ学ランの内側には100均のCD用のウォールポケットが器用に付けてあって、そこに漫画を入れていた。
確かにその男の子が上着を脱いでいたのは見た気がするが…、まさかそんな事になっているとは思わず、メグミはカバンに本を入れようとしている子にばかり、気を取られていた。
万引きをする方も、捕まらない為に色々な方法を使う。
メグミにはそんな事、思いもよらない事だった。
中学生は素直に自分達の非を認め、「2度としない」という署名を書き帰って行った。
万引きを注意する事は出来たが、結局またオーナーに助けてもらった。
メグミは自分を情けなく思う。
これじゃあオーナーがいないと駄目な子みたいだ…、私1人でも大丈夫だって、オーナーに認めてもらいたいのに−−
自分の情けなさに落ち込んでいると、オーナーが頭を撫でてくれた。
「よく頑張ったね」
メグミは優しく微笑んで褒めてくれるオーナーを見て、もう自分の感情が抑えられなくなった。
「私オーナーの事が好きです」
***********
オーナーは昔、たまたま外でメグミを見かけた事があった。
その時のメグミはあまりにもおどおどしていて、少し不審に見えた。
前から人が来る度に物陰に隠れていて、「大丈夫かな」と心配になる程だった。
それから何年かして、バイト募集の張り紙を見て店に入って来た子が、あの時の子だった。
自分でもその事を覚えている事に驚いたが(まぁ印象的だったから…)、それより、あの時見た彼女より堂々としている事に驚いた。
そのメグミを見てオーナーは(変わったな〜)と思った。
本当はバイトの募集などしていなかった。
ずっと前から募集の紙を貼ったまま、剥がすのを忘れていたのだ。
どうせバイトなんて誰も来ないだろうと高を括っていた。
まさかのバイト志願にどう対処しようかと考えていると、メグミが凄く必死な目で自分を見ているのに気付いた。
あまりの一生懸命さに、自然と口から出でいた。
「いつから来られる?」
それを聞いて安堵したのか、メグミは勢いよく答えた。
「明日から…何なら今日からでもいいです!」
たかだかこんな店のバイトで目を輝かせてそう言うメグミを見て、オーナーは微笑ましく思えた。
オーナーは『人は基本的には変われない』と思っていた。でも変わったメグミを見て、自分も変われるかもしれないと思った。
それに何故かメグミと一緒に居たら、自分も変われる気がしていた。
オーナーはあまり人に興味がなく、話しかけられれば話すが、用がない限り自分から話しかける事はないタイプの人間だった。
両親とも、用がないと話す事もなかった。就職してからもそうだったが、さすがにこの書店を継いでからは接客業なので、接客をするようになってからは人付き合いは出来るようになったが、上辺だけだった。
未だに自分が変わったのかは解らない。
それでも、自分の中での彼女に対する気持ちが、変わっているのは解った。
***********
「じゃあ、結婚しようか」
「えっ!?けけけ、結婚ですか!!?」
「うん」
「いや、でも…いきなりそれは−−」
「どうして?今までの事とあまり変わらないよ」
(まぁ、確かにそうかもしれないが−−−)
「こんな私でいいんですか?」
メグミがそう聞くと、オーナーはいつものあの優しい微笑みで言った。
「君だからいいんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、嬉しくて涙が止まらなかった。
オーナーは泣いているメグミを見て慌ててしまう。
「あぁ…泣かないで」
「だって〜…」
どうしていいのか分からず、オーナーはとっさにメグミを抱きしめる。
メグミはあまりの衝撃で涙より驚きが勝った。
初めての出来事に心臓が爆発しそうで、暖房がいらないぐらい身体が火照っていた。
今度はメグミが慌てる番だった。
「…え!?…オ、オーナー!!?」
「よしよし。泣かないで」
オーナーはメグミが泣き止んだのに気付かず、頭を撫でながら優しくメグミを落ち着かせる。
やっぱり、メグミはどこか子供扱いされているような気がしたが、それでも自分達の関係が『ただのバイトとオーナー』から『恋人』に変わった事だけは解った。
メグミはオーナーの背中に手を回す。
(何だろ…凄く落ち着く−−−)
私を抱きしめてくれたオーナーは、とても私に安心感をくれた。
それからはとんとん拍子だった。
プロポーズ?されたその週末にオーナーは私の両親に挨拶しに来た。
オーナーは少し緊張しているみたいで、メグミはそんなオーナーを見るのは意外で(可愛い)と思った。
あまりにも急な展開に(反対されるかな〜)と少し不安にも思ったが、両親は快く結婚を承諾してくれた。というより逆にオーナーに感謝していた。
解ってはいたが…、娘の前でお礼を言うなよ!と思った。
複雑な所は残るが、これで両親も少しは安心できるだろうと思うと、気が楽になった。
結婚式はしなかった。
もともとしたいとも思っていなかったが…、ウェディングドレスだけは着たかったので、写真だけ撮った。
写真を撮ったその日に籍を入れて、私は山内メグミから花房メグミになった。
結婚してからも未だにオーナーの事をオーナーと呼んでいる。
下の名前で呼ぶのはどうしても気恥ずかしくて…
オーナーはいつものように本を読んでいる。
それを見てメグミは未だに顔がにやけてしまう。
正直こんな自分を好きになってくれる人なんていないと思っていた。
『ありのままの私を受け入れてくれる存在』
そんな人がいるだけで、こんなにも自分に自信が持てるとは思わなかった。
今凄い幸せ。
こんなにも幸せでいいんだろうかってくらい幸せだ。
空に向かって「幸せだー」と叫びたいくらいだ。
恋愛ってこんな幸せなものだとは知らなかった。
散々遠回りしたけど…、
やっと自分が好きになれた。
運命なんてどうなるか判らない。
待ってるだけじゃどうにもならないんだ。
自分から歩み出さないと。
こうしてメグミは、前を見て歩いて行く。
「この人だ」と思えた人と一緒に−−−
「私でいいんですか」を最後まで読んで下さってありがとうございます。
気に入ってもらえれば何よりです。
長文ってほど長文じゃないんですが…(笑)
メールでも長文になると何を書いてるのか自分でも解らなくなってきて…、
ちゃんと読み返してるつもりなんですが、他の事が気になってしまい(言葉の言い回しとか…)、自分では客観的に見れずちゃんと纏められているか心配です。
「迷惑な女」を読んで下さった方には判るかもしれませんが、私のレパートリーが少ない為、料理の話しになると必ず出でくるのは『卵焼き』です。
私が卵焼き好きという事もあるのですが(笑)
多分これからも他の作品で料理の話しになったら『卵焼き』が出ると思うので、もし他の作品を読む機会があったら探してみて下さい。