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前説 そらとぶきつねのはなし

それじゃあ、そろそろ始めよう。この物語を忘れた人は置き去りに、忘れてない人だけがこっそり終わりを楽しめるステキ仕様。……っていうか遅れに遅れてホントすみません。

次の話は小説家になろうの一話限界をとうとう超えちゃったんで、二話編成です。てへ♪

……や、なんてかね。

携帯の人はパケット代注意、みたいなっ!



 そして狐は、空を飛ぶ。

 一つのわがままを貫くために。



 むかしむかし、ひとりのおとこのこがいました。

 おとこのこはいじっぱりで、まけずぎらいで、わがままでした。

 けれど、だれにもそうみせたくなくて、ひきょうになりました。

 みのほどをしったふりをして、こうかつになろうとしました。

 でも、おとこのこがだいすきなおんなのこは、そんなおとこのこにそだったのをじぶんのせいだとおもいこんで、じぶんをころそうとしました。

 おとこのこはそのとき、はじめて恥をしったのです。


 そう、おとこのこはようやく『恥』をしったのです。


 恥をしり、おとこのこはどりょくをはじめました。こころにせいぎのみはたをうちたて、ちをはきどろをすすり、だれかをまもるためのどりょくをはじめたのです。

 それはむだなどりょくなのかもしれませんでしたが、むだではないとおとこのこだけはしんじていました。しんじつづけて、あきらめませんでした。

 そして、どりょくはげんじつになりました。



 我は今より最後の執筆を開始する。

 この物語を応援してくれた全ての人に最大限の感謝を。



 猫の女は彼を見た。

 彼はどこまでもふてぶてしく、不敵に笑い、女を助ける漢だった。

「よう、久しぶりだな、戦友」

 会ったこともない男は、出会うなりそう宣言する。

 そして、不敵な笑顔を浮かべて、しかしこれ以上ないくらいに優しい声で、囁いた。


「立てよ、戦友。……守りたいもののためにじゃない。お前のためにだ」


 言葉はそれだけ。ちっぽけな人間である彼は、そう言って船の中に戻った。

 猫の彼女は少しだけ唖然として……不意に口元を緩めた。

「ああ、そうか……思い出した」

 本当に強いのは神様なんかじゃない。

 本当に強いものは……本当に、強く在った者は。

 全てを受け止めて歩き続けられる者なのだから。

 猫は立ち上がる。己の意地と全てを賭けて、一瞬だけ怠け者を放棄して立ち上がった。血を吐き、泥を啜り、それでもなにかを守ろうとする、それはただの人の姿だった。

 鼻血を拭いながら、彼女は双剣を振り上げる。

「感謝する、戦友」

 そして、最後にそんなことを呟いて、死力を尽くすことにした。

 死力で、終わらせることにした。



 時間は、その五分ほど前に遡る。

 宇宙空間の中で、その戦闘は行われていた。

 その戦いはこの世界の命運をかけた戦いで、絶望と正義とのぶつかり合いだった。

 彼と彼女たちはその戦いを傍観していた。……なぜ傍観なのかと言えば、彼と彼女たちにはこの戦いに参加する意義がなく、同時に意味もないからだ。

 遠くから眺めて帰ろうという、そういう腹積もりだった。

「あのさ……テン。あたしが言うのもなんだけど、戦いに参加しなくていいのか?」

 彼女たちの一人が目を細めて、彼に話しかける。

 赤い翼を持つ狐たる彼は、口元を緩めてきっぱりと言った。

「必要ねェよ。この戦いに参加できるのは、ヘタレ眼鏡を守ろうっていう奇特な連中だけだ。俺としてはアイツが死んでくれた方がいいんでな、参加はしない」

「……そのヘタレ眼鏡ってのが誰かは、あたしたちは知らないんだけど」

「知る必要もねぇしな。あえて言うなら、そいつは自分の目で見たものを真実だと思い込んでた、超絶的な馬鹿野郎で俺の天敵だ。生物としてあまりに強すぎて守ってもらう必要すら本来はねェんだよ。……ま、ヘタレてっからフォローは要るがな」

 彼はそう断言する。当たり前のように、きっぱりと。

 自分のことは棚に上げて。

 天敵だと言いながらも、その声には絶対的な信頼感があった。

「それより、モニターをちゃんと見てろ。なにか動きがあったらすぐに……」

「ご主人様」

 眼鏡のメイドが声を上げる。

 主はなにも言わず、視線で続けろと合図した。

「我らの後方より巨大な影。……恐らくは敵の伏兵かと思われます」

「こちらの反応は?」

「敵を無視して前進。……いえ、一人後方に残っています」

 後方の伏兵を一人で敵を迎え撃つ。戦の上では、大昔からある決まりごと。

 すなわち、囮。敵の目をひきつけるための『死に残り』である。

 彼は嫌悪を隠そうともせず、眉をしかめた。

「……死ぬ気か? 冥、その馬鹿をモニターに映せ」

「了解」

 主人の命令に反応し、メイドは舞うようにキーパネルを操作。『死に残り』として殿を務めている女を映し出した。

 狐たる彼は、彼女の姿を見て……にやりと笑った。

 心の底から嬉しそうに。

「……ハ、こいつは傑作だぜ。いい女だ、こいつ」

「どうなさいますか?」

「そんなもん、決まってんだろ」

 狐たる彼はにやりと笑い全員に指示を出す。

「冥、全速後退っ! 京子はそのまま狙撃位置をキープ、舞は制御系の補助を頼む。美里は本隊に伝令を出せ。これよりこの艦は本隊より離れて彼女の援護に向かうっ!」

「……無茶な指示だと進言します。あくまで、一応ですが」

「ま、いつものことだけどな」

「それが普通になってる時点でなんかおかしいんですけどね」

「だ、そうですよ、テンさん?」

「作戦の難易度や無茶や無謀なんざ知るかよ、そんなもん」

 艦長席でふんぞり返っていた彼は、椅子から勢いよく飛び降りて拳を握った。


「思い知らせてやれ。……俺たちがここにいる、その意味をな」


 いつも通りの言葉に、女たちは一様に溜息を吐いてから指示に従う。

 彼の言葉をねじ伏せることなど、彼女たちにとっては簡単極まりないことだったが、ああまで啖呵を切られてしまっては言葉も出ない。

 それに……無茶だとは言ったが、誰も『やれない』とは言っていないのだった。

「了解しました、ご主人様。全速後退を開始します」

「伝令を飛ばしました。返信は全て無視します」

「制御系には問題なし。いつでもオッケー」

「こっちも準備はオッケーだけど……テン、あのバケモノを相手にするには、ちっと色々と装備が足りねぇぞ?」

「いざとなったら、ぶつけるまでだ」

『いや、それはやめて』

「ならばいつも通りだ。創意と工夫で生きて帰るぞ」

 女たちの意見が一致したところで、漢はにやりと笑う。

「全リミッター解除っ! 赤き稲荷ノ艦『ディア・シュヴァンツ改』発進ッ!」

 どこまでも不敵に、まるで世界最強のように。


「心に一つの御旗を立てて、かくあるべしと定めて進め! ……いつも通りにっ!」


 そして、赤い狐の船は、いつも通りに行動を開始した。

 彼が叫んだ言葉の通りに。



 どりょくをげんじつにして、おとこのこはだれかをたすけはじめました。

 うずまくぜつぼうのことごとくをけちらし、ひとにはいよるあくいのすべてをほろぼすために、たったひとつのおやどをせいぎのしろとし、じごくのそこをすあしであるくような、たたかいをはじめたのです。

 これはのちのよで『赤の魔法使い』とよばれたおとこのこの、

 さいしょでさいごのわがままな話。

さくっと前説終了。次からは本番。本番の後はエンディング。エンディングは軽めに仕上げるつもりなんで、とりあえず本番からお楽しみください。

前書きで断った通り二話編成です。

いやぁ……まぢでごめん(謝)

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