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最終話後編 なんて言わせてやるもんかっ!!

最後の物語。

これにて終幕。

あとは、エンディングで全てを語りましょう。


※ちなみに、この話は全体通しても二番目に長いです(一番は美里VS京子)携帯の方はご注意を。

 僕の家族のコッコさん つヴぁいっ!


 最終話後編:なんて言わせてやるもんかっ!!


 サブタイトル・・・



 Last Battle and My Name.



 殴られる。殴り合う。いつかこんなことがあったような気がする。

 友樹と別れる前。こんな風に殴り合った。

「らああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 強烈なボディブローが腹に決まる。

 痛い。当たり前のように痛すぎて、僕は泣きたくなった。

 泣く代わりに、時間に遅れてきたくせにいきなり僕に殴りかかってきた、そいつの頬をぶん殴った。

「ゆうりいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

「うるせえええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 そいつもアホみたいに痛いだろうに、意味もなく僕を殴り返す。

 僕も意味もなくそいつを殴る。

 殴られたから殴り返すのではなく、殴りたかったから殴った。

 拳を握り締めて、殴った。

 ひとしきり殴り合って、僕らは間合いを取る。お互いに殴り疲れただけのことで、勝負の機微とか決着とかそういうことは一切考えていない。

「……なにしやがる、由宇理! 痛てぇだろうがっ!」

「うるせぇ! アンタがしけた面してるから、ぶん殴って分からせてやろうとしていただけのことッスよ」

「あぁっ!?」

「ったく、クソむかつく。……アンタはふてぶてしく笑ってればいいのに、そーやって諦めて妥協して見捨てて終わるってか!? どこのどいつがそんなアンタを認めると思ってんスよ? 頭に乗ってんじゃねぇぞこのクソキツネっ!!」

「んだとコラァ!!」

「女四人救おうってんだったら、五人目くらい救ってみせろっ! ふてぶてしく笑いながら、絶望やら魔法やら、そういうつまんないものも全部凌駕して、手加減なんざ一切合財全部やめて全力出して、アンタの好きな奴全員幸せにしやがれっ!!」

「それができれば、こんなに悩んだりするか馬鹿野郎っ! 大体お前はコッコさんのこと恨んでるんじゃなかったのかよっ!?」

「馬鹿はアンタだろうがっ! そんなの、恨んでるに決まってるっ! ……でも、そんなのはアンタとあの女の間には全然なんにも関係ないっ!!」

 由宇理は叫ぶ。どこまでも雄々しく、猛々しく、力の限りに叫んだ。

「ずっとそうやってきたんだろうがっ! ずっとそうやって生きてきたんだろうがっ! だったら最初から最後まで、その馬鹿を貫いて生きてみろっ!」

「………………っ」

「あたしの知ってるお前は、そういう奴だった!!」

「…………由宇理」

「情けない顔すんなっ! 歯ァ食いしばって、努力して、みんなみんな幸せにしてみろ。……あたしは、そういうアンタに会ったんだ。だから……」

 泣きそうな顔で、由宇理はポツリと言った。


「諦めるとか……そゆこと言うなッス」


 なにもかもがどうでも良くなった。

 ああ、その通りだ由宇理。お前の言う通りだ。

 僕にみんながいなかったら、100%お前に惚れていたくらいの男前だよお前は。

 口元の血を拭う。ついでに鼻血も拭って、僕は由宇理を見つめる。

「由宇理」

「あんだよ?」

「僕はお前が好きだ。……だから、友誼には友誼で返す。ここでお前を打倒する」

「やってみせろよ、アホキツネ。あたしに勝てるもんならやってみせろッス」

「ああ。やってやるよ」

 僕は血の混じった唾を吐き捨てて、訓練通りに起動させる。

 師匠からのもらい物だが、使ってやろう。魔法使いを打倒するのなら、こんなものでは全然全くさっぱり足りないが……ないよりはましだ。

 そのための訓練なら、10歳の頃に終わらせてある。


「ディア・シュヴァンツ、起動」


 亜光速戦闘用縮退艦、ディア・シュヴァンツ

 それは、ただ格好良いという理由だけでドイツ語で名づけられた戦舟。

 ただ伸縮自在というだけが取り柄の、尾という名を冠する宇宙戦艦だった。

 僕はそれを5機展開させ、全砲門を由宇理に向ける。

「行くぜ、親友。……僕はお前を倒す」

「来いよ、親友。……できるもんならやってみせろッス」

 かくて、病院の屋上で怪我人同士の大喧嘩が始まる。

 ラスボスVS主人公。

 そういう意味合いの戦いにしては、あまりにスケールの小さな戦いが幕を開けた。



 由宇理と全開戦闘を開始する三時間ほど前。

 なにもかも終わって、なにもかもがなくなって、僕は途方に暮れていた。

 由宇理曰く、時間移動には『座標』が必要となるらしい。範囲を指定するのがコッコさんがやっていた庭造りで、転移そのものには現在と過去を繋ぐ座標……つまり、今回の場合は『屋敷』を目印に時間を移動しようとしたらしい。

 だから、屋敷そのものを消してしまえば時間転移は起こらないと由宇理は言った。

 やってくれと頼んで、屋敷はこの世界から消滅した。

「………………あー」

 まぁ、それはどうでもいい。

 本当は色々と取っておきたいものがあったけれど、それはいい。

 諦めるのは慣れている。

 問題なのは……僕の今の状況だ。

「やっちゃったなぁ」

 真っ黒な世界の中で、僕は苦笑する。

 笑うしかなかったというのが本当のところで、僕は口元を歪める。

 半分しかない世界。左側は真っ黒でなにも見えない。

 まぁ、簡単に言えばコッコさんの最後の一撃が僕の瞳をざっくりやっちゃったというわけで……僕は思い切りへこんでいた。

 どうやら、失明らしい。

 検査入院ということで一週間ほど入院することになったのだけれど、病院から支給された眼帯は真っ白なやつで、僕には似合わないことこの上ない。

「うーん……いくらなんでもこりゃねぇよなぁ」

 仕方がないので、マジックを使って黒く塗ってみる。

 ついでに髑髏マークなんて書いたりしてみたり。

「お? おぉ? 意外とよくね? これはなかなかいいんじゃないかな?」

「まぁ、眼鏡よりは胡散臭くないね」

「………………ん?」

 なんだか、見えない左側からどす黒いオーラが燃え上がってるような気がした。

 聞き覚えのある響きの声が、僕の耳を打った。

「で、アンタは勝手に突っ込んだ挙句に左目を失明と、そういうコトなわけだ?」

「……えっと、もしかして京子さんだったりしますか?」

「大正解だよ馬鹿野郎」

 どうやら僕の左側にいるらしい京子さんは、今にも破裂しそうな怒気を放っている。

 ただし、僕の視力は平均以下なのでかなり視界はぼやけているけれど。

 とりあえず、確認のために目を細めて思い切り顔を近づけてみた。

「っ……ちょ、いきなりなにしやがんだっ!?」

「あぁ、その反応は間違いなく京子さんだ」

「ぶん殴ったろか?」

 ああ、怒ってる。めちゃめちゃ怒ってる。

 ……まぁ、仕方ない。京子さんが怪我でもしたら、僕だって怒る。

「……だ、大体だな、いきなりそういうことをすんなよ。びっくりするだろうが。……ほら、その、なんつーかもうちょっと……段階を踏んでだな?」

 ……あれ? なんかものすごく勘違いされてる?

 しかも、誤解だと分かったら殺されてしまいそうなくらいの勘違いじゃないか?

「あの……京子さん?」

「ん? いや、アンタがどうしてもって言うんだったら……まぁ、なんていうか」

 京子さんが恥ずかしそうに顔を赤らめたりするのがとんでもなく可愛かったためにうっかり誘惑に負けそうになったのは、男として仕方がないような気がする。

 この時点でロリコンと突っ込んだ人間には、僕の全力パンチをプレゼントしよう。

「……えっとですね、京子さん。今のはキスしようとしたわけじゃなくて」

 ゴスッ!

「んなこたぁ分かってるっつうの。……ほれよ、コンタクトレンズ。代金はあたしのポケットマネーから出てるけど、気にしなくていいから」

「……あの、分かってるなら頭を殴りつける必要はどこにもないのでは?」

「察しろ」

「………………はい」

 京子さんの威圧感たっぷりの視線に射すくめられて、僕はなにも言えなくなった。

 んー……なんつーか、そういう可愛い反応をされるとそろそろ我慢の限界なんだけど、そのへんがいまいち分かっていないらしい。

 さて、まぁそれはともかく、僕はコンタクトレンズを右目にだけつける。

 左側は相変わらず見えないままだったけれど、右側はよく見えるようになった。

「ありがとうございます、京子さん」

「礼なんかいらないさ。ま、惚れた弱みってやつだし」

「………………」

「なんでそこで黙る?」

「や、あんまり好きとか嫌いとか縁がなかったもんで……はっきり言われると」

 かなり照れるのだけれど、そこまで言ってしまうと僕がヘタレであることが証明されてしまう。

 京子さんは愉快そうに口元を緩めて、僕の顔を覗き込んだ、

「もう一回ちゃんと言うけど、あたしはアンタが好きだよ」

 京子さんは笑う。呆れているような、苦笑しているような、そんな微妙な笑い。

 そんな表情をさせているのは、間違いなく僕なんだろう。

 京子さんは俯きながら溜息を吐いた。

「だから……山口のことは、許せないような気がする」

「……京子さん」

「ま、色々とやり直したいっていう、山口の気持ちは分かるさ。……でもね、あたしは好きな男を傷つけられて黙っていられるような女じゃないんだよ」

 他にも色々と言いたいことはあるだろうに、京子さんはその一言で全てをまとめてしまったようだった。

 僕は少しだけ目を細める。

 ああ……そうだ。それでいいんだろう。


 この人に好きだと言ってもらえるだけで、僕にはきっと価値がある。


 平均的で、才能も枯渇してて、最初から最後まで普通で終わる僕だけど。

 それでも……京子さんに好きだと言ってもらえただけで、本当に生きている価値があるんだと、そう思えた。

 口元を緩める。

 ついでに、あくむさんの最悪な言葉を思い出す。

(……やれやれだ。お互いに人のことは言えないよな、友樹)

 誰かと付き合ってみろとあくむさんは言った。

 それを聞いても、僕にはぴんと来なかった。誰かと付き合うとか、誰かを好きになるとか、そういうのは分不相応だと思い続けてきたから。

 今でも、そう思っている。

 でも……いつまでもそれだけで止まってちゃ、いけないんだと思った。

「京子さん」

「ん?」

「一つだけ聞かせてください」

「なんだよ? 改まって」

 息を吸う。息を吐く。僕は彼女を真っ直ぐに見据える。

 そして、口を開いた。

「屋敷の生活は、楽しかったですか?」

「楽しかったに決まってんだろうが。面倒なことも多かったけどな」

「……そうですか」

 口元を緩める。

 京子さんがそう言うのなら、大丈夫だ。

 不安は腐るほどあるけれど……もう一度、今度は自分の意志でやってみよう。

 僕がやりたいと思ったことを、やってやろう。

「じゃあ、交換条件です」

「交換条件?」

「はい。見ての通り、僕は今目がなくて困っています」

「よく見える目を寄越せってか? そいつはちっと虫が良すぎるだろ」

「まぁ、そりゃそうでしょうね」

「……なんかまだ裏がありそうだな?」

「簡単に言えば、屋敷の焼き直しですよ。でも、今度は親なんて関係ない。僕が僕のために、僕の思った通りにやりたいことをやるだけです。……京子さんにはその協力をして欲しいと思ったんですよ」

「で、協力するとあたしにどんなメリットがあるんだよ?」

「幸せになります」

 僕は、笑顔のままで断言する。

 京子さんは少し唖然として、それから思い切り目を細めた。

「どうやって幸せにするんだよ?」

「衣食住と働く場所と笑いの日々を提供します。少なくとも、退屈はしないかと」

「……なんつーか、屋敷の時と変わらないね」

「ああ、あともう一つ」

「ん?」

「僕を自由にしていいです」

 京子さんが口元を引きつらせて、僕を見つめる。

 僕は笑いながら京子さんを見つめた。

「僕は、みんなのことが好きです。絶対に裏切らないとは言い切れないけど……みんなのために生きて、死んでやろうくらいには思ってます」

「………………アホか、アンタ」

「僕にはもうそれしか残ってませんからね。……精々、使い潰してください」

「……ったく」

 京子さんは溜息を吐いて、僕を見つめる。

「はっきり言って、愛が重てぇよ。ついでに『みんな』とかとにかく気が多い。そんなんで女を納得させられるとでも思ってるのかよ?」

「……でしょうね。自覚はあります」

「ただ……残念なことに、あたしもあいつらと一緒にいたいとは、思ってる」

 京子さんはいつも通りに、にやりと笑う。

 本当は言いたいことも色々とあるだろうに、全部押し潰して笑った。

「いいだろう、その条件で乗ってやる。アンタに合った目を探してやんよ」

「ありがとうございます」

「ただし、一つだけ教えろ」

 京子さんは真っ直ぐに僕の目を見据える。

 真剣に……僕の目を見据えて、口を開いた。

「アンタ、あたしのことどう思ってる?」

「愛してますけど」

「………………」

 京子さんは思い切り顔を赤らめて、僕の顔面を殴りつけた。

「……はっきり言うな、ばか」

「そんな言葉じゃ済まされないほど痛いんですがっ!? 僕の眼球は今すごいことになってるってちゃんと自覚してますかっ!?」

「………………うん?」

「やたら間があった上に疑問系じゃねぇかっ!!」

 絶対に怪我とか忘れてツッコミ入れやがったよ、この可愛い人は。

 まぁ、いくら可愛かろうがやっちゃいけないこととやっちゃ悪いことがあるわけで。

「……だって仕方ねぇじゃん。男に好きとか言われるのはこれが初めてだし」

「や、それはそれでものすごーく可愛いいんですけど、ものには限度ってもんがありますよ?」

「大体、言葉だけじゃ軽いね。こういうのは行動で示してもらわないと。目を探してくるのに一年くらいかかるかもしれないから、それだけで一年頑張れるってくらいじゃないとあたしは納得しないよ?」

「………………ほぅ?」

 つまりそれは、全力を出してもいいってことなのかな?

 中学校くらいの時に師匠に『貴方は愛情表現が薄いわね』と言われてカチンときて、全力を出したら『心臓が持たないから封印なさい』と言われたほどの、僕の全力を。

「……待て。アンタ、なんかものすごく嫌なコトを考えてるだろ?」

「いえいえ。……ところで京子さん」

「な、なにさ?」

「愛の囁きフルコースと、愛の抱擁30分、どっちがいいですか?」

 京子さんは顔を真っ赤に染めて、思い切り口元を引きつらせる。

 その時の僕はきっと邪悪な顔をしていただろうことは、想像に難くなかった。



 京子さんが顔を真っ赤に染めながら病室を出てから、三分経過。

 恐怖は突然やってきた。

 背後から、肩をガシッと掴まれる。

 止まった時の世界で、僕の背後から声が聞こえた。

「うっふっふっふっふ♪」

 一瞬で病室に満ちる殺意。悪意。害意。敵意。

 殺されると僕は確信した。

「ラブラブですね〜。萌え萌えですね〜。思わず殺したくなっちゃう♪」

「…………その声は、もしかしなくても美里さんでしょうか?」

「軽々しく人の名前を呼ぶんじゃねぇですよ、このスケコマシ♪」

「ひぎゃああああああああああああああああああああっ!?」

 折れる折れる砕けるっ! 肩に指が食い込んで骨が砕けちゃうよっ!?

「ちょ、ギブ、美里さんっ! 折れるっつか砕けるっつうか再起不能にっ!!」

「だって、貴方、普通に京子ちゃんのこと口説いてるんだもの。……この程度の嫉妬くらいなんでもないでしょう?」

「や、確かに口説いてましたけど、あれはなんつーか仕返しとかそういう領域の話で、決して照れまくる京子さんが洒落にならないほど可愛いとかそんな風には……」

「言うまでもなく、思ってたわけですね?」

「……思ってました。すみません」

 僕は素直に頭を下げた。

 や、だって……無理だよ。京子さんを可愛くないなんて思うのは。

 反応が在り得ないくらいに可愛いもん。

 口説いてるこっちがおかしくなりそうだったもん。

 なにもしなかったのが、奇跡みたいなもんですよ?

 僕がその事実を目で物語ると、美里さんはゆっくりと溜息を吐きながら手を離した。

「……確かに、京子ちゃんは可愛いですよ。見てても萌えますし、からかった時の可愛らしさなんてもう反則で、またいじめたくなるような中毒性が満載です」

「………………」

 いや、もうなにも言うまい。

 この人がドSなのは今に始まったことじゃない。

「まぁ……京子ちゃんの境遇を考えればこの辺で幸せになってもいい頃合だとは思うんですけど、それはそれ、これはこれ。人の心は難しいもので」

「……かもしれませんね」

「だから……これもきっと、難しいことだと思います」

「美里さん?」

 不意、だった。

 不意に美里さんは、居たたまれないような微笑を浮かべて、僕を抱き締めた。

 いきなりのことだったので、僕は動けない。

 僕の胸に顔を埋めているため、美里さんの顔を見ることもできない。

 でも……なんとなく、分かった。

「私は、いいんです。夫からたくさん幸せをもらいました。貴方からも……たくさんの優しさをもらいました」

「………………」

「でも……貴方が死んでしまったら、私はもう耐えられません」

 美里さんは、前に一度大切な人を亡くしている。

 いつもにこにこしていて、普段は気にしていないように振舞って……それでも、好きになった人を失った悲しみだけは、薄れはしてもなくなりはしない。

「側にいてとは言えません。……でも、私は貴方に生きていて欲しいんです」

「……美里さん」

「好きだから、生きていて欲しいんです」

 涙声のまま、美里さんはそう言った。

 言わせているのは間違いなく僕で、僕はその事実に立ち向かわなければならない。

 女の子を泣かせるのは、最悪にも程がある。

「美里さん」

「………………はい」

「大丈夫ですよ、僕はここにいますから」

「……全然大丈夫じゃありません。怪我……してます」

「京子さんが治してくれるから、大丈夫です」

 僕は笑った。いつも通りに。

 多分これからは、みんなのためにしか向けない笑顔で笑った。


「泣かないでください」


 抱擁に抱擁を返す。

 美里さんをぎゅっと抱き締めて、僕は目を閉じる。

「みんな、僕が守ります。……みんなみんな、全部ひっくるめて、僕が守ります」

「……そんなの、無理ですよ」

「だから、美里さんは僕を守ってください」

 美里さんは、強くて優しくて、ついでに怖くて楽しい人だ。

 さらに付け加えるなら、いつも誰かを守っていないと駄目になってしまう、とっても可愛い人だ。

 そんないい人をないがしろにしたら罰が当たる。

「……いいんですか? そんなこと言ったら、私は一生貴方をいぢめますよ?」

「ご自由に。こっちだって時々は逆襲しますんで」

「あら、それは怖い♪」

 美里さんは顔を上げる。

 いつも通りに微笑んで、僕のことを見つめていた。

「まぁ、そこまで言われちゃ仕方ありませんね。……ただし、もう一人で無茶はいけませんよ? 貴方は頼りがいがあるくせに、一人で突っ込む癖があるんですから」

「……はい、それは重々承知してます」

 つまり、無茶をするんだったら、誰かを同伴しろとそういうわけだ。

 まぁ……左目も見えなくなっちゃったし、僕にはそれくらいでいいのかもしれない。

 隣に誰かがいるくらいで、ちょうどいい。

「美里さん」

「はい?」

「ちょっとだけ、手を握ってもらえませんか?」

「? ……いいですけど」

 左手を差し出すと、美里さんは右手で僕の手を握り返す。

 見えないけれど、ぬくもりを感じることができたのが……なんとなく嬉しかった。

 そのぬくもりと喜びがあれば、きっと人はどこまででも戦えるのだと、思った。

「美里さん」

「なんですか?」

「今度、僕の意志で新しいことをやります。……付き合ってもらえませんか?」

 屋敷よりも、野菜を育てることよりも、やりたいことがある。

 僕が真っ直ぐに美里さんを見つめると、彼女は口元を緩めて、僕の頬をつねった。

「条件があります」

「なんでしょう?」

「とりあえず、高校は卒業なさい。あと、立派な男の子になりなさい」

「はい」

 即答すると、美里さんは柔らかく笑った。

「とりあえず、期待しないで待っててあげるから」

「……じゃあ二年以内になんとかします」

 僕がそう告げると、美里さんの表情が一瞬で凍りつく。

 あ、やべぇ地雷踏んだと思う間もなく、美里さんはちょっと泣きそうになりながら掴みかかってきた。

「待ちなさい。なんで二年以内? 別に三年でもいいでしょう? それともあれかしら、私の年齢が30に突入するとかそういう理由から二年以内とか言っちゃったの? それを言った人間がどうなるか分かってて?」

「や、あの、ちょっと……人と、話を……するっと、きは……胸倉を、掴んじゃ……いけないっつうのっ!」

 がっくんがっくんと揺さぶられ、危うく死にかける。

 なんでこう京子さんといい美里さんといい、僕の怪我の状態を気にかけない人ばっかりなんだろうか。……もしかして、殺す気なのか?

「違いますってっ! 僕の高校卒業が一年と半年くらいで、そこから半年は鍛え直したりしたいからであって、決して美里さんの年齢云々の問題じゃありませんっ!」

「……でも、男の子は若い子の方が好きなんじゃないんですかっ!?」

「や、僕はどっちかっつーと年上の方が」

「ロリコンのくせにっ!」

「誰がロリだこらあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 窓が割れて、人影が美里さんに向かって飛びかかる。

 美里さんはその人物の蹴りを片手でいなし、間合いを取って不敵に笑う。

「やっぱり覗いてたわね、京子ちゃん?」

「当たり前だ。……つーか、テメェ、今さりげなく落とそうとしてやがっただろ?」

「あら? なんでばれたのかしら?」

「以前と手口がそっくりそのままなんだよっ!!」

 頬を引きつらせながら怒鳴る京子さんに対し、美里さんは余裕しゃくしゃくだった。

 まぁ……実は余裕でもなんでもなく、意外と本気だったことは言わないでおこう。

 女性は涙をコントロールできるというけど、美里さんは多分出来ない。

 というか、そういう腹芸ができない。あーやって定期的に京子さんや僕に構ってもらわないと駄目になる、直情一直線な人なのだ。

「いいか、こいつは、あたしのもんだっ! 他の連中はともかく、美里にだけは絶対に渡さねぇよっ!!」

「ほーっほっほ、やってみなさいロリ巨乳っ!」

「ロリ巨乳ゆーなああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 まるで女王のように笑いながら病室を出て行く美里さんと、烈火のごとく顔を真っ赤にしながらそれを追う京子さん。

 あっという間に、病室は元の静けさを取り戻した。

「……やれやれ」

「もてもてね、パパ」

「うーん……おもちゃって気がしないでもないけど」

「……なんか、ママの時と反応が違いすぎない?」

「そりゃそうだよ」

 笑いながら振り向くと、いつの間にそこにいたのか、美咲ちゃんが膨れっ面で僕のことを見つめていた。

「君はまだまだ脇が見えてないからね。気配の隠し方が、いまいち」

「……前々から思ってたけど、パパって普通でもなんでもないよね」

「僕は普通だよ。ただ単にちょっと人より努力しただけ」

 才能はなかったけれど、ちょっと人より努力したぶん強いだけだ。

 それだけを誇りにしてきただけだ。

 他にはなにもない。

「ところで、望は今日は一緒じゃないの?」

「うーん……のぞちゃんのママが強制連行していっちゃった」

「………………」

 望。……お前の犠牲は忘れない。

 っていうか、後で絶対に助けに行くから、それまで待っててくれ。

 ……と、まぁそれはともかく。

「で、他の人たちの様子はどうだった?」

「舞お姉さんと冥お姉さんは、この病院にいるよ。陸お兄ちゃんはお兄ちゃんに言われたとおりに待機している。……で、竜胆お姉ちゃんなんだけど、どこにもいないの」

「………………」

 ……なんとなく、そんな気はしていた。

 虎子ちゃんは責任感の強い女の子だ。ついでに言えば、不可抗力といえど友達に刃を向けて、それで平気な顔をして会えるような神経は持ち合わせていない。

 そういう女の子だから、好きになった。

 まぁ、虎子ちゃんのことは陸くんに任せよう。僕はもう口も手も出さない。

 決めるのは……陸くんだから。

「で、美咲ちゃんはこれからどうする? 屋敷がなくなっちゃったから道場はもう使えないんだけどさ」

「アパートにいる、京子さんみたいなロリお姉さんに色々教えてもらうつもり。ママは新しい職場での人間関係とか支配とかで忙しいみたいだし」

「………へぇ」

 今、普通に『支配』とか言ってたケド、それは気にしないほうがいいんだろう。

 とりあえず、美咲ちゃんは大丈夫そうだ。やっぱり女の子は男と違って強い。

 目標を立てれば、それに向かって一途になれるというのもあるだろうけど。

 さてと……それじゃあ、そろそろ最難関に立ち向かうとしましょうか。

「ちなみに、最難関のご機嫌は?」

「最悪だったよ」

 美咲ちゃんは、ほんのちょっとだけ気の毒そうに言った。

 かくて、難易度Sランク。究極のミッションが幕を開ける。



 拳やら指やらを骨折して腕を吊っていた舞さんは、思ったより元気そうではあった。

 ただ、元気と機嫌に関係はないわけで、舞さんはものすごく不機嫌そうだった。

「あの〜……舞さん?」

「うるさい」

 頬を引っ張られながら、僕は口を閉じる。

 とりつく島もなかった。

「あの……怒ってますか?」

「当たり前でしょ?」

「できれば理由なんかを説明してもらえると助かるんですけど……」

「………………」

 パワーが50%増しになった。

 コッコさんたちほどじゃないけど、ものすげぇ痛かった。

 でも、なんとなく彼女が言いたいことはよく分かった。

 よく似ているからよく分かる。……よく似ていなくても、きっとよく分かる。

「舞さん」

「……なによ」

「僕は、大丈夫だから」

「………………」

「大丈夫だよ。目は京子さんがなんとかしてくれるし、美里さんだって手伝ってくれる。冥さんもきっと協力してくれる。……だから、大丈夫」

「……うるさい」

「うん、ごめん」

「謝るな。……こんなの、全然アンタのせいじゃないんだからっ」

「………………」

 ふがいない自分が、悔しい。

 傷つく人を見ていられなくて、気がつくと背中は守りたいものでいっぱいだった。

 舞さんはそれが分かっていたから、背中を冥さんのためにいつも空けておくために、なんにも背負おうとはしなかった。

 章吾さんは全部背負って、それに立ち向かった。

 友樹も同じ。助けたい女の子を全員助けて、一人で戦い続けている。

 ……僕も似たようなことをしようとしたけど、駄目だった。

 だから、せめて四人だけは守ると、誓った。

「舞さん」

「…………あによ?」

「前にさ、遊園地で色々お説教してくれた時があったじゃん?」

「……アンタが不甲斐ないからよ。今思うと……余計なお節介だった」

 かもしれない。舞さんにとっては、とっても余計なお節介だったのかもしれない。

 それでも、僕にとっては嬉しいことだった。

「あれから色々考えたんだ。……いっぱい、色々考えた。自分でやりたいこと。やらなきゃいけないこと。舞さんに言われて、気づいたこともたくさんあった」

「なにが言いたいわけ?」

「よく考えなくても、僕に言われたことって、結構舞さんに当てはまるよね?」

「………………」

 ものすごい目つきで睨まれた。

 人のことを言うより、まずは自分をなんとかしろと言いたげな目つきだった。

「まぁ、全部当たってるからなんとも言えないんだけど、少なくともこの目に関しては舞さんが責任を感じたりする必要はないからね?」

「……責任なんか、感じてない」

「じゃ、なんで怒ってるの?」

「……それは、その……アンタが」

「僕が?」

「……アンタが怪我すると、みんなが心配するから」

「うーん……それはまぁ、あながち外れでもないけど、さ」

 僕はにやりと笑う。犯人を追い詰めるドSな探偵のように笑った。

「でもさ、僕は舞さんが怪我をしてるのが分かった時、ものすごく心配したけど?」

「っ……ば、ばっかじゃないのっ!? そんな心配りは冥ちゃんにしなさいよっ!」

「無理。冥さんは冥さんでものすごく心配だったけど、舞さんのことを心配しないとか、そういうのは一切合財不可能」

「なんでよっ!?」

「だって僕、舞さんのこと好きだから」

「っ!?」

 舞さんの顔が思い切り強張る。

 まぁ、大体分かっていたことではある。あえて口には出さないけれど、前々からうっすらと悟っていたことではある。

 僕と舞さんの相違点。

 僕は母さんに甘々に育てられてきたから、ある意味では慣れている。

 舞さんはわりと孤独に育てられてきたから、まるで慣れていない。

 好意を示されることに、まるで慣れていない。

「別に好きでもなんでもないんだったら、心配なんてしない。でも、僕は舞さんのことが好きだからね。……本人が嫌がろうが、心配するよ」

「……まぁ、アンタが勝手に心配するぶんには、いいけど」

「うん」

 そっぽを向いた舞さんを見つめて、僕はこっそり口元を緩める。

 さすがの僕も怪我人に対してボケを振るような真似はできないけれど、とりあえずこれだけは言っておかなければならないだろう。

「じゃあ、そういうことで、これから一生心配して世話とか焼くから♪」

「………………は?」

「だから、舞さんがくれたお節介と言う名の恩義を全部まるっと返すのは絶対に不可能だから、少しずつ一生をかけて返していこうかなと思ってるわけだ♪」

「……アンタ、頭とか大丈夫?」

「さりげなく失礼なこと言うね、舞さん」

 僕はニコニコ笑いながら、こっそりとポケットの中にあるスイッチを押す。


『私は……あいつがくれたこの日々を、一生忘れない』


 舞さんの声で再生された格好いい言葉は、時間を止めるのに十分すぎた。

 舞さんの顔が真っ赤に染まる。

 僕は邪悪に笑いながら、ハンカチで目もとを押さえた。

「ほら、こんな格好いい女の子を放っておけなんて無理な相談なんだよ?」

「アンタ……ちょ、なんでっ!?」

「あ、言い忘れたけど、あの屋敷で採用してたメイド服って一着一着に集音マイクとか仕込んであったりするんだね、これが」

「プライバシーとかそういうのを土足で踏みにじるんじゃないですよっ!!」

「や、仕込んだのは君がコッコさんを抹殺しようとしたのがきっかけなんだけどね?」

「……まぁ、それはそれとしてっ!!」

 誤魔化し切れないことを、無理矢理誤魔化そうとしている女の子がいた。

 だが……今回は誤魔化されるわけにはいかない。

「と、とにかく、そのマスターテープと、その他諸々を全部渡しなさいよっ!?」

「その場はテンションが上がってるからいいけど、後で聞き返すともう死んでもいいくらいに恥ずかしいセリフ満載だもんねぇ」

「言うなあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ああ、なんだろうこの感情。

 舞さんが涙目になって顔を真っ赤にしてるのがものすごく可愛い。

 なんかこう……背筋がぞくぞくする。美里さんが京子さんをいぢめる時に感覚が似ているかもしれない。

 まぁ、怪我人をいじめるのは趣味が悪すぎるのでこのへんでやめておく。

 僕は取り出したマスターテープを舞さんに手渡して、口元を緩める。

「舞さん」

「………………あによ?」

「僕は、舞さんもみんなも幸せにします。これまで受けてきた恩義とか、そういうのは一切関係なく、みんなと一緒にいたいから……全員まとめて、幸せにします」

「……男としては最低じゃない。そんなの」

「ええ。……でも、僕はそうしたい。舞さんの言葉を聞いて、そう思いました」

「………………」

 だから決めた。自分で決めた。舞さんの言葉を聞いて、そう決めた。

 彼女の言葉を聞いて、誰にも見えない所で一人で泣いたことは言わないけれど、少なくとも僕がやっていたことは、間違いではなかったと信じられる。

 間違いじゃないんだったら、あとは改善すればいい。

 努力と工夫を積み重ねればいいだけだ。

 僕は病室のパイプ椅子から腰を上げて、立ち上がる。

「舞さんには迷惑かもしれませんけど……それでも、僕は舞さんを幸せにします」

「………………ばか」

「はい」

 笑いながら背を向ける。

 言いたいことは言った。伝えたいことも全部伝えた。

 あとは……舞さんの判断に任せよう。

「テン」

「………………え?」

 呼ばれ慣れない言葉で呼ばれて、僕は思わず振り向いた。

 舞さんは、僕を真っ直ぐに見つめている。

「由宇理から伝言。……『屋上で待ってる』ってさ」

「……由宇理から?」

「話があるんだってさ。どんな話かまでは、分かんないけど」

 ……話、か。

 どんな話なのかは知らないけれど、あいつに会っておくのも悪くないか。

 少なくとも、お礼は言わなきゃいけないだろう。

「ん、了解したよ。とりあえず今から屋上に行くことにする」

「ん」

 舞さんはこくりと頷いて、顔を背けた。

「……あと、さ」

「なんですか?」

「………………ありがと」

 それだけを言って、舞さんはそれ以上の会話を拒絶するように布団を被った。

 僕は正直かなり面食らって……それから、頬を緩めた。

「……こっちこそ、ありがとう。舞さん」

 精一杯の感謝を口にして、僕はゆっくりと病室を出る。

 ゆっくりと息を吸って、吐いて、それから目を閉じた。

「…………さて、と」

 幸せな気分にひたるのはここまでにしておこう。

 さて、由宇理。……お前の話を聞きに行ってやる。

 どんな説教をされるのか、今から楽しみにしながらな。



 僕は、正義の味方にはなれない。

 正義の味方には資格がいる。人に優しいとか、人より強いとか、そういう資格。

 僕は卑怯で卑劣で普通だから、そういうものにはなれないと信じていた。

「由宇理」

「………………あんだよ」

「僕の勝ちだ」

 数を頼みにした包囲殲滅。

 師匠からもらった船がなくても対応はできたはずだけれど、僕は僕なりの『全力』で由宇理を完膚なきまでに、躊躇なく、叩き潰した。

 これが、『普通』という名の戦い方。

 どう足掻いても『質』で勝てないなら、『量』で凌駕すればいい。

 それでも勝てないなら後は努力と工夫だ。たとえどんなに足掻いても勝てない相手であっても、弱点は必ずある。……人の形をしていれば、『人』であるという弱点を有するように、必ずどこかに弱点があり、それを突けば戦いには勝てる。

 ……問題は、どうやってそれを見抜いて、どうやって突くか。

 生きるということは、全てがその準備に過ぎない。

 戦いは一撃で事足りる。その一撃のための準備が……生きるということだ。


「覚悟は決まった。……僕は今から、五人のために生きて死ぬ」


 馬鹿な人生だと笑うがいい。

 馬鹿野郎だと思うがいい。

 いつか破滅するかもしれないけれど、それでも破滅しないように最初から最後まで、前のめりに倒れて死ぬまで足掻き続けてやる。

 誰かが握ってくれた手を……もう二度と離しはしない。

 僕を助けてくれたみんなを幸せにする。

 それが、僕の正義だ。心に掲げた一つの御旗だ。

 それに例外はない。あの人だって、幸せにしてやる。

 その決意と覚悟こそが、僕が唯一誇れるものであると信じてやる。

「……アンタは、そうやってる方が似合うッスよ」

「正直、気は進まないけどな。……あの屋敷を維持するために、僕がどんだけ苦労したと思ってやがる」

「でも、やるんでしょ?」

「やるさ」

 きっぱりと断言しながら、僕は由宇理に向かって笑いかける。

「由宇理。……お前は絶対にいい奴だ。断言してもいい」

「……そーかもしれないッスね。ここまでお人好しだと、我ながらあきれ返るッスよ」

「だから、この恩は絶対に返す。お前が返さなくてもいいと言っても、絶対に」

「へいへい、期待せずに待っておくッスよ」

「とりあえず、明日までに一千万ほど振り込んでおくから」

「誠意がまるで感じられねぇッスよっ!?」

 うん、やっぱりこうでなくてはいけない。

 話のオチにはこいつが突っ込んでくれなきゃ。

「……ったく、アンタはなんつーかホント馬鹿極まりないッスね」

「馬鹿とは失礼な。僕は単純に、由宇理をからかうのが好きなだけだ」

「はいはい」

「……なんか、さっきから対応がぞんざいじゃね?」

「ぞんざいというよりね……んー、なんというか」

 由宇理は困ったように笑いながら、ゆっくりと起き上がって僕に近づいてくる。

「あたしが言うのもなんだけど……アンタ、もーちょっと他人からどう見られてるのか、意識した方がいいッスよ?」

「……どういう意味だよ?」

「そういう意味ッスよ」

 そう言うと、由宇理はそっと体を寄せる。

 そして、背伸びをして、僕の頭をポンと叩いた。


「辛い時は、我慢なんかしなくていい。……アンタには支えてくれる人がいっぱいいるんだからさ」


 ハンマーで、頭をぶん殴られたと思った。

 鼻の先がツンと痛む。握り締めようとした拳に力は入らなかった。

 悔しいのでもない。不甲斐ないのでもない。

 痛くて、辛くて、心が軋みを上げている。

「……由宇理」

「なに?」

「………………痛い」

 赤い涙が頬を伝う。

 人が見てないところでは腐るほど泣いてきた。

 それでも……意地を張り続けた。

 そんな馬鹿な生き方しかしてこなかった僕だけど、今だけは正直に、自分の言葉を口にした。……声に出すことが、できた。

「……目が痛いんだ」

「うん」

「…………痛いよ、由宇理」

 僕は泣いていた。

 きっとこれからも、辛いことがある限り泣くだろう。

 痛みに泣きながら、赤い涙を流しながら……それでも僕は拳を握った。


 泣き終わったら、名前を名乗ろう。


 覚悟を決める。それは、自分と向き合う覚悟。

 自分を規定する固有名詞。母さんから名づけられたその名前を、僕は嫌っていた。

 恥ずかしい名前だったし、『自分』というものを確定するのが嫌だった。

 そんな思い上がりを……惰性でこんなところまで続けてきた。

 だから、名乗ろう。

 あの時と、コッコさんと出会った時と同じように。由宇理に名前を言おう。

 泣き終わったら……改めて名乗りを上げよう。

 僕が僕であるために。

 覚悟を決めながら……僕は、泣き続けた。



 暗い病室の中、自分で傷の手当をしながら僕は準備を整える。

 まずは、やりたいことをやる前に、美里さんとの約束を果たす。

 高校を卒業するのは簡単だけど……男前になるためにはあの人の助力を借りるのが一番だ。所在を探すのに一年くらいかかりそうだが、僕はあの人を見つけなきゃならない。

 忙しくなるのは目に見えているけれど……それでも、やらなきゃならない。

 僕が決めたことだ。

「さてと……行くか」

 屋敷がなくなった今、大した手荷物はない。

 由宇理やみんながくれたものがこの胸にあるのだから、なにも心配はない。

 やれることは多くないかもしれないけれど……やれるだけやってやるさ。

 決意を固めて病室を出る。勝手に退院することになるけどかまいやしない。

「行くかじゃありません、我が主」

 部屋を出たところで、呼び止められた。

 振り向くと、そこにいたのは見覚えはあるけれど……見たことがない彼女だった。

 切りそろえた髪に、メイド。折れた腕を吊ったりあちこちに包帯を巻いているのが痛々しいが、なぜか眼鏡をつけているのが印象的だった。

「まったく……怪我も治りきっていないのに勝手に出て行くなんて、無謀にも程度ってものがあります。貴方の怪我を見て、痛々しく感じる人間の心すらどうでもいいと言うつもりなのですか?」

「……冥さん」

 彼女はそこに立っていた。

 当たり前のように僕に説教をするために、立っていた。

「主。……少なくとも、怪我が治るまでは貴方をここから出すわけにはいきません」

「悪いけど、どうせ左目は使い物にならない。それなら京子さんを待ったほうがいい」

「貴方も彼女も医者ではない」

「だから、これから本当に腕のいい医者に見せに行く」

「一人で? 片目が見えないのに? そんな不十分な体でなにができますか?」

「なにかができるのさ、侍従」

 僕は笑う。

 いつかどこかで浮かべていた笑顔。口元を緩めて得意そうに笑う。

 なんの根拠もないけれど、最強のように普通に笑った。

「力が足りないから努力する。足りないなら他で補う。誰かを頼って生きていく。誰かに頼られて生きていく。……それが答えだ。僕は高校に通いながら師匠を探して体と心を鍛え直して、ついでに目も治す。で、一年経ったらやりたいことをやってやる」

「わがままですね」

「知っているさ。……だから強くなる。わがままを通すためにな」

 僕は真っ直ぐに侍従を見つめる。

 彼女は真っ直ぐに僕を見返して、不意に口元を緩めた。

「主」

「なんだ、侍従」

「それならば……ニ年間ほど、姉さんのことをよろしくお願いします」

「どういう意味だ?」

「私は修行しなくてはなりません。一介の侍従として、かくあるべきためには、私はまだまだ力不足なのです」

「………………」

「だから、貴方と一緒の高等学校には通えません。……その時間は、きっと楽しいであろうその時間は、全部姉さんにあげてください」

「分かった」

 彼女が決めたことには一切口は挟まず、僕は了承した。

「その代わり、その失った時間のぶんだけ僕は君を大事にするぞ、黒霧冥」

「……感謝の極み」

 冥さんは深々と頭を下げて、ゆっくりと頭を上げる。

 にっこりと笑いながら、口を開いた。

「ところで、ご主人様」

「ああ、なんだ侍従」

 僕は笑いながらそれに応える。

 冥さんはゆっくりと僕に近づいてきて、目の前で足を止める。


 火花が散って、世界が歪む。


 殴られたと認識するよりも早く、僕はその場に踏み止まることに全力を費やす。

 容赦なく顔面を殴られたために傷が開いてしまっているが、知ったことか。

 拳を握りこむ。

 そして、生まれて初めてではないけれど、女の子の顔をぶん殴った。

 容赦はなし。手加減もなし。

 ただの主のけじめとして、侍従の頬をぶん殴った。

 鼻血を流して、にやりと笑いながら、冥さんは踏み止まった。

「どうやら、腐ってはいないようですね?」

「当たり前だ。この程度の挫折など、とっくの昔に踏破している」

 折ってきた膝の数だけ、強くなれた。

 諦めたものの数だけ、賢くなれた。

 僕の強さは……結局はそこに尽きる。

 その答えに満足したのか、冥さんは鼻血を拭いながらきっぱりと言い放った。

「では、姉さんのことをよろしくお願いします。不幸にしたら、殺しに来ますから」

「ハ、甘く見るなよ侍従。僕は女の子を甘やかすことにかけては天下一品だぞ」

「それと……今度このようなふがいないことになっても、殺しますから」

「そっちこそ、僕と姉くらいなら楽勝で守れるようになっておけ、侍従。今回のお前の働きはかませ犬以外の何者でもないからな」

「言いますね、主」

「それが勤めだからな、侍従」

 そう言って、冥さんは僕に

 僕と彼女はにやりと笑う。

「では、行って来ます」

「ああ」

 僕が返事を返すと、彼女は迷うことなく歩き出す。

 その背中を見送ることなく、僕も歩き出す。

「ああ、主」

「なんだ?」

 一度だけ振り返る。

「これを」

 冥さんは、僕に向かってなにかを放り投げた。

 キラキラと光るそれを受け取る。

 よく見ると、それは僕があの人にあげたはずの、イルカのブローチだった。

「島で拾いました。どうするかは貴方が決めてください」

「…………ああ」

「では、今度こそ行ってきます」

「ああ、行って来い」

 笑いながら、パァンッ! と互いの手を打ち鳴らす。

 そして、今度こそ互いに後ろは振り向かず、僕らは歩き出した。



 正義と言うには自分勝手。

 大人と言うには大人気ない。

 人は変われない。死ぬまでそのままだ。

 それでも、僕は一歩を踏み出す。

 僕は僕のまま……死ぬまで変わることなく。

 この生を全うする覚悟を、決めた。





 かくて、物語は幕を下ろし、新たな物語が幕を開ける。



 一年後。



 僕は彼女と向かい合う。

 腰まで届く漆黒の髪と煌びやかな和服が最高に似合う美女。柔らかな微笑と手に持った鉄扇がこれ以上なく決まっている。

 僕の師匠。完全完璧なる和服美人。

 世界制圧同盟『と番』。

 虚構演者、倉敷戯式(くらしきぎしき)

「私の弟子。……貴方はなぜここにいるの? この場がどんな場所か分かっていて、踏み込んでいるのかしら?」

 円卓を囲んでいるのは10人の誰か。

『い』から『ぬ』まで、世界制圧同盟でも十本の指に入る連中。

 まぁ、正直そんなことはどうでもいいけど。僕が用事があるのは師匠だけだ。

「っていうか、師匠の所在が掴めないからわざわざここまで来たんですよ」

「ああ……そういえば、ここ最近は自宅を留守にしていたわ」

「ゴミも出しっぱなしでしたし」

「……あの、弟子?」

「下着だってちゃんと洗濯されてなかったし」

「…………もしかして、部屋に踏み込んだのかしら?」

「あんまり適当にやってると、本当に嫁の貰い手がありませんよ?」

「その辺は少々諦め気味だけどね、こんな歳だし」

 確かに、師匠は母さんよりちょっと年下くらい。母さんが僕をかなり若い時に産んだとはいえ、もうそろそろ行き遅れと言われてもおかしくない年齢ではある。

 だが、そんな事実なぞ知ったことか。

「嫌だね」

「……弟子?」

「師匠は、誰かものすごくいい男とくっつかないと駄目だ。未婚なんて絶対に死んでも認めてたまるか。……師匠みたいな根性悪は、実直な男とくっついてこそ価値がある」

 宣言しながら前進する。

 当たり前のことだが、迷いもなく、躊躇もない。

「な、なんなんだお前はっ!? 警備兵はどうしたっ!?」

「うろたえるなよ、三下。俺を誰だと思ってんだ?」

 慌てふためくサラリーマン風の男を蹴り飛ばして黙らせながら、俺は笑う。

「見た目で判断する気はさらさらねぇが、ここにはこんなしょっぺぇ人材しかいねぇのか? こんなんだったら俺の知り合いの金髪美女の方が百倍可愛いぞ」

「相変わらずね、弟子。……いえ、ずいぶんとあからさまになったじゃない?」

「欲しい物がはっきりしただけだよ、師匠」

 口元を緩めながら、俺は師匠の前に立つ。

 師匠は笑いながら、俺を見つめる。

「貴方に問いかける。……貴方はなんのために戦うの?」

「俺は、俺のために、俺が好きな誰かのために戦う」

「貴方に問いかける。……貴方はどうやって戦うの?」

「努力と工夫だ。それ以外に俺が戦う術など知らない」

「ならば、私は最後に貴方に問いかける」

 師匠は俺を真っ直ぐに見据える。

 試しているかのような視線。嘘吐きな師匠が、俺に向ける真摯な目。


「貴方は誰?」


 言葉は俺に届く。いつか聞かれて答えられなかった、あの人同じ言葉。

 その言葉を、俺は当たり前のように受け止めた。

 そう……全ては、この時から始まった。

 笑いながら口を開く。

 あらゆる全ての正義の味方と、悪の全てに敬意を払いながら、俺は口元を緩める。


「俺の名前は高倉天弧(たかくらてんこ)


 円卓を拳でぶっ叩く。

 口元で笑いながら、俺は自分たちの世界すら制御できない馬鹿どもに、俺の名前を刻み付けるために、俺自身を叫んだ。

「そう、俺の名前は高倉天弧! 翼を持つ赤き狐にして、四人プラス暫定一人の女を幸せにするためなら、手段も努力も工夫も卑怯も卑劣も辞さねぇ男っ! 俺の敵に回った奴は、女を不幸にする奴は、全員まとめてぶっ潰すっ!!」

 場内が静まり返る。

 呆れている連中が五人。気絶が一人。こいつらは論外。

 そして……俺を見返している連中が、四人。

 その中には、師匠も入っている。

 師匠は笑っていた。ほんの少し呆気に取られながらも、笑っていた。

「……素晴らしいわ、弟子。正直、貴方が一番見込みがないと思っていた。……やっぱり、最強の息子は最強ってところかしら?」

「一緒にするな。最強の息子は、ただの人間だ」

「……いいわ。貴方は資格を得た」

 笑いながら、師匠は立ち上がる。

 悪魔のような微笑を浮かべて、俺の顔を覗き込む。

「結婚して」

「それは断る。後で何人か紹介するから、その中から選べ」

「けち」

 頬を膨らませる師匠は可愛かったけれど、まぁそれはそれだ。

 ……さて、誰を紹介したもんか。

 ほんの少し頭を悩ませていると、師匠は俺の手を取って立ち上がった。

「では凌駕なさい、弟子。今から貴方に本物の『魔法』を叩き込んであげる」

「最初からそのつもりだ、師匠。俺はアンタを越える」

「ただでここから帰れると思っているの? 貴方たち」

 その声を発したのは、円卓の上座に居座っている、俺とそう歳の変わらない女の子。

 肩でざっくりと切りそろえた髪の毛と氷のように鋭い目つき。どんな修羅場をくぐったらこんな目になるんだという、俺が寒気を覚えるほどの目の持ち主だった。

 それでも笑う。

 退かない。媚びない。振り向かない。

 俺は俺のために、俺が好きな女のために戦う。それだけだ。

「甘いんだよ、制圧盟主」

「……どういう意味かしら?」

「俺を誰だと思ってやがる。手段と努力と工夫と卑怯卑劣が売りの凡人、赤い狐の高倉天弧だぞ?」

 にやりと笑う。当たり前のように、不敵に笑う。


「逃げ道ぐれぇ、確保してるに決まってんだろうが?」


 キン、と鋭い音が響いて、俺の横の地面が陥没する。

 そこからひょっこりと顔を出したのは、愛すべき我が侍従。

「ご主人様、お迎えに上がりました」

「ん、ご苦労さん。ご褒美に後で頭を撫でてやろう」

 逃げる前に、ちらりと円卓の方を振り向く。

 唖然としているのが五人。気絶しているのが一人。

 相変わらず、俺を見返しているのが三人。……そう、要注意なのがこの三人。

 その三人に向かって、笑いかける。

「では、これで失礼」

 ひらひらと手を揺らして、俺は師匠を抱えながら侍従が開けた穴に身を躍らせる。

 さてさて……目的は達成。速やかに撤収しましょう。

 ついでに、置き土産なんぞを残しながら。



 肉球がプリントされた眼帯を身につけた彼は、嵐のようにやって来て、ウチのメンバーの中でも筆頭に腹が黒いあの人と一緒に、どこかに去って行った。

 置き土産は一枚の名刺。

 狐のマスコットが箔押し加工された、つまらない名刺。


『正義の気休め処・稲荷のお宿』


 電話番号と所在地、パンフレットのお取り寄せについてなどが記されている。

 円卓を囲んでいる私たちは、唖然としてそいつが消えるのを見守るしかなかった。

 相も変わらず……世界は私たちになにもさせたくないらしい。

 ゆっくりと溜息を吐く。

 本当にやれやれだ。……まさか、あんな化け物が世界に存在するとは。

「スーパーロボット系ね、あれは」

「は?」

「なんでもない。とりあえず……あの男を見て呆れた奴は、全員抜けてもらう」

「………………は?」

「分からないか? あの男の恐ろしさを認識できない奴は、ここにいる価値がないということだ。……まったく、堕落したものだ。その程度で世界を握ろうとはな」

 私は心底下らない気分になりながら席を立つ。

 やれやれだ。本当に見下げ果てたものだ。最近は腐敗が進んでいるようだから、このあたりで一斉に粛清した方が良さそうだ。

 ……代わりにすげ替える人物は、彼が言っていた金髪の彼女あたりが適任か。

 と、ちょっと待て。私はその子の名前を知らないぞ?

「……ふむ、まぁ湯治がてら確認しに行ってみるのも、一興か」

「盟主っ! 抜けてもらうとは……一体」

「終わった話を蒸し返すな、下郎」

「は?」

「私を誰だと思っている?」

 仕方がないので、分からせるために、私は一瞬で見限った。

 唖然としている男の頭を掴んで、円卓に叩きつける。

 骨が砕ける音と、肉がはぜる音が響いて、男は動かなくなった。


「私は盟主。制圧盟主。制圧から逃れる者を許さぬ絶対主」


 私は笑う。少女らしかぬ冷笑で、笑っている。

「それじゃあ、四人を除いて皆殺しだ。気絶している奴まで裁定はできんからな」

 笑いながら歩むと、気絶した一人と笑わぬ三人以外は恐慌を起こして逃げ出した。

 やれやれ……本当に腐敗している。一度全部壊して作り直した方が早そうだ。

 と、私がとりあえず皆殺しを決意したその時。

『あー……テステス。只今マイクテスト中』

 名刺から、なにやら粗雑な声が響いた。

『えっと、盟主ちゃん? 虐殺はよくねーと一応忠告すんぞ?』

「私に命令していいのは、私だけだ」

『小学生の理屈だけどそんなこと言っていいのかなー? おにーさんは、君の弱点を知っているんだぞー?』

「ふん、私に弱点なんて……」

『ゲートオープン』

 ガシャン、となにやら音が響いて、私の目の前にボトリとなにかが落ちてくる。

 頭が真っ白になった。

「きゃああああああああああああああああああああああああああっ!?」

 ボサボサと音を立てて落ちてくるカエルを前に、私は取り乱した。

「な……なんでカエルがっ!? や、ちょ……いやああああああああああああっ!!」

『ああ、それと一言忠告』

「なによっ!?」

『カエルはあと15000匹いる』

「………………」

 ぶつ、と意識が断線する。

 私は戦うこともなく、相手と向かい合うこともなく。

 あっさりと……実にあっさりと、敗北した。



 ちなみにこの後、私を助け出してくれたのは一番最初に殴られてそのまま気絶していた、小心者だけが取り柄の、なぜ制圧同盟に参加できたのかよく分からないほど気の良いサラリーマン風の男で、私は本当にうっかり……いや、事故みたいな確率で。

 その男に惚れてしまうのだけれど。

 ……まぁ、それは多分、別の話。

 だと、思いたい。





 ………………Story End.

 おめでとう、どこかにいる誰か。

 貴方たちのおかげで、この物語は終わりを告げる。

 始まりのための終わり。そして、終わりのための始まり。

 貴方たちの誠意と努力と奮戦と、その全てに敬意を表する。

 私の名前はMAGIUS。三千世界で唯一つ、心を成しえたシステム。

 ……それでは、貴方たちが選んだ結末を語りましょう。


 僕の家族のコッコさん つヴぁいっ!!


 結末:Sランク。


 この物語は、彼と彼女が本当の家族になるまでの物語である。


 エピソード1《橘美咲の章》:『唯たる我等・無双の主従』

 エピソード2《空倉陸の章》:『インペリアル・クリーム』

 Sランクエンド前説:『そらとぶきつねのはなし』

 Sランクエンド(前):『右手に剣を左手に愛を』

 Sランクエンド(後):『僕の家族のコッコさん』



 以上を持って、この物語の終局とする。

 最後に、一つだけ断っておこう。

 この物語は、ハッピーエンドである。

よーやく終わりました。

みなさんの助力を経て、ようやくここまで辿りつきました。


さて、ここからは趣味の時間だ。

ようやく、書きたいものを書くことができる。


散々ファンタジーだのなんだの言われてきたが、それは全部ここに行き着くためのおまけみたいなもんである。

最初から最後まで……どこかの誰かの奮戦は、一つの嘘を本当にするためにあったのだ。

それじゃあ、ここからが閉幕にして開幕。


コメディな話の、始まり始まり♪

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