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未来予測2 今ここにいるアナタノナミダ

はい、そういうわけで本題です。

これは有り得るかもしれない未来予測のその2。

誰かが必死で伝えてくれた、あるメッセージ。

もしも、貴方がこの終わりを否定するのなら……


終わりを否定しなさい、読者。

この物語に限っては、それが許される。



 最終命題提出。これより我は修羅に入る。

 

 更新履歴

 2/12 

 最終命題1:公開。

 前提条件 :1、2、3を公開。


 3/02

 最終命題1前提条件:1〜4を公開。

 前提条件:4を公開。


 3/17

 最終命題2『群』オープン。

 前提条件5、6を公開。


 3/27

 最終命題2、問題4、5を追加。

 前提条件7、8を公開。


 4/17

 既知となった情報をオープン。

 最終命題2、最後の問題までオープン。

 前提条件をいくつかオープン


 4/23

 前提条件9、10、11をオープン


 5/27

 ALLオープン


 前提条件

 1:月ノ葉という一族がかつて存在した。

 2:その一族には、至高と称えられた三姉妹がいた。

 3:長女、月ノ葉光琥。次女、月ノ葉鞠柄(まりえ)。三女、月ノ葉香澄。

 4:月ノ葉一族の人間は一族に伝えられしある秘儀をその身に継承する。

 5:月ノ葉一族の人間は一定年齢になると自分が認めた相手に仕えることになる。

 6:月ノ葉光琥は三条院家に、月ノ葉鞠柄は有坂家にそれぞれ仕えた。

 7:しかし、一族に伝わる秘儀が原因となり、月ノ葉一族は三条院家に滅ぼされる。

 8:その結果、月ノ葉光琥は己の主と従者の死神を殺し逃走することになった。

 9:秘儀の1は俗にマテリアライズと呼ばれる秘儀。錬鉄を掌握し錬鉄を操作し錬鉄を支配する基幹となる技法である。

10:秘儀の2は鍛鉄による命の作成。人に依らず命を創作する秘儀。

11:以上の2つの秘儀を有す月ノ葉は、『錬鉄一族』と呼ばれている。


 最終命題1(難易度:カオス)

 前提条件

 1:彼は強い女性が好きである。

 2:彼は努力してる女性が好きである。

 3:彼は偏屈なので、出会ったヒト全員にこっそり点数をつけている。ちなみに、採点基準は男の方が甘い。女性に関してはかなりシビアな観点をもっている。

 4:彼は嘘吐きである。


 問題:主人公たる『彼』は山口コッコのことをどう思っているかを示せ。


 ※『〜と言っていた』みたいな具体的な根拠を提示してください。

 ※普段の言動、挙動などでも根拠に値しますが、根拠薄弱はダメです。

 ※根拠があっても真実とは限りません。『彼』の性格を良く考えてください。


 ※この問題はクリアされました。



 最終命題2(難易度:スイート→キーニング)

 前提条件

 1:この命題2に限り解答は直感で構いません。ただ、理由もあると説得力が増します。

 2:死神礼二は現段階でどう足掻いても幸福になれない。

 3:死神さんが幸福にならないと約三名が確実に不幸になる。

 4:空倉陸の告白は失敗するが……。

 5:月ノ葉の最後の秘儀は限定空間内における『時間転移』


 問題

 1:死神礼二はどのような生き方をすれば幸福になれるのか模索せよ。(スイート)

 ・メッセージにて突破。以下はメッセージの一部抜粋。

  人を殺さず、隊長さんと喫茶店を営みながら生きていくこと。

  

 2:この物語において最も成長率の高い人物の名前を挙げよ。(スイート)

 ・評価欄にて突破。

  黒霧冥。現段階成長率ALL『S』


 3:現時点で空倉陸が告白をした時、成功するか?(スイート) 

 ・評価欄にて突破。

  失敗する。理由は色々あるけど(笑)


 4:刻灯由宇理がなぜ主人公のいる学校に通えているのか推論を述べよ。また、刻灯由宇理の経済能力は物語中にある記述の通りであり、隠し金とかは存在しない。(イージー)

 ・メッセージにて突破確認。 

  隊長経由で柔らかな髪の女に出資してもらっている。


 5:空倉陸が『漢』になるための条件を三つ挙げよ。直感と推論で構わない。(ノーマル)

 ・メッセージにて突破確認(完全突破(ねたばれ)のため、非公開)

 

 6:刻灯由宇理とは何者か(デス)

 ・メッセージにて突破確認……デス・トラップ起動。

 ※デス・トラップは挑戦者を求めています。解答したい人はメッセージをどうぞ。

 ※なお、既に最終命題3の解答権を持っている人は挑戦不可とします。


 7:大善牙の作者の名前を述べよ(羽休め的スイート)

 突破。製作者の名前は山口コッコ。


 8:月ノ葉一族の秘儀の二つまでを述べよ(デス)

 突破。一つは構成物質の掌握と完全支配。一つは練成に依る存在の精製。

 ここまで来れば大体分かるだろうが、つまり月ノ葉が有していたのは錬金術。

 ただし、秘儀の1は物質に限定されたものであるが、秘儀の2は存在という目に見えぬものまで創作する。つまり、彼らの錬成は物質のみならず精神や概念にまで及んでいる。

 

 9:最終話直前において『彼女』がなにをするかを述べよ(ヘル)

 まだ未公開。ちょっと待つべし。



 最終命題3(難易度:限定付きハニー・スイート)

 ・解答権取得者は、以上を踏まえて以下の問題に解答せよ。


 問題:この物語は、彼と彼女が本当の■■になるまでの物語である。


 ※五名以上の承認を持って、この物語のSランクエンドとする。

 ※ちなみに五名未満の場合は以下の通りとなる。


 回答者4名:Aエンド・舞

 回答者3名:Aエンド・京子

 回答者2名:Aエンド・冥

 回答者1名:Aエンド・美里

 回答者0名:Bエンド・フレンズ


 解答権取得者

 ・キョウ(京子関連問題突破者)

 ・にょろろん(最終命題1突破者)

 ・any熊(死神関連問題突破者)

 ・坂本ヒロノリ(公式設定、通称『コッコ《零》』製作者)

 ・ラフメイカー(主人公名前問題突破者)

 ・クレスト(命題2-9突破者)


 ※命題3以外の全条件がオープンされました。

 ※デス・トラップ及び最終問題9回答者にはご褒美的なものがあります。早い者勝ち。

 ※どんなご褒美かは、今は正解した人だけの秘密です(笑)

 貴方は知っている。この物語の結末を、未来を知っている。

 この物語が、普通に終わらないことを知っている。

 それが嫌ならば戦いなさい。

 この世界に巣食うことごとくの悪と戦うのです。

 貴方にはそれができるはず。いついかなるときもそうであるように、その手には誰にも見えないけれど真の名を持つ剣と盾があるのだから。運命など簡単に凌駕できる、そういうものを持っているのだから。 


 貴方は既に知っているはずです。自分がなにをすべきか。なにを守るべきかを。


 私が計測した未来予測を送ります。恐らく、これが私の干渉できる最後の助力になるでしょう。

 予測から想像しなさい。想像から発想しなさい。発想から導き出しなさい。

 どんな終わりが訪れるのか、全身全霊で考えて、否定しなさい。



 私の名前は黒霧冥。メイドだ。

 メイドというと仕事はもちろん雑務全般で、扱いとしては家政婦と似たようなものだろう。

 朝はご主人様より早く起床し、ご主人様に手料理を振る舞い、ご主人様の隣で執務のフォローをして、ご主人様のためにベッドメイキングや部屋の掃除をやって、ご主人様のために午後の紅茶とお菓子を調達し、ご主人様のために夕餉の支度をし、ご主人様のためにお風呂を沸かし、ご主人様のために添い寝……は残念ながらしたことがないけど。

 私はそういうことを生業(なりわい)にしている。

「そんなわけで、今のこの状態は私としてはとても良くないと思うのです」

「んー……そうかな?」

「そうですとも」

 自信満々に肯定しているのにも関わらず、私のご主人様はのんびりを欠伸をするだけだった。

 小さな日本家屋。六畳一間に押入れと台所とお風呂場がついただけの小さな家。庭だけはそこそこ広いのが唯一の長所。

 ご主人様は基本的にはそこで寝泊りしている。基本的に怠け者なのが、私のご主人様だったりする。

 いや……怠け者にならざるを得なかったというべきか、そのへんはちょっと判断が難しい。

 実際に、自分のことは自分でなんとかしてしまうため、私の出番がまるでない。

 年中甚平姿で甲斐性がなさそうに見えるくせに、私のご主人様はそつがない。気がつくとご飯を作っていたり、気がつくと洗濯していたり、気がつくと掃除をしていたりと、少しずつあからさまに私の仕事を奪うのがご主人様だった。

「大体、ご主人様は殿方なんですからお部屋を散らかすくらいはしていてもおかしくないじゃありませんか?」

「何気に無茶苦茶言うね、冥さん」

「仕事がありませんから」

「んー……じゃあ耳かきでもしようか?」

「『しようか?』の時点で自分がやりたいだけなのではないでしょうかっ!?」

「嫌ならいいけど」

「……嫌じゃありませんけど、今はいいです」

 ホント、この人との会話は気が抜けない。

 冗談だと思っていたら冗談じゃなかったり、反対に本気だと思っていることが冗談だったりすることもざらだ。

「……ホント、貴方には色々と手を焼かされます」

「性分だから仕方ないよ」

「冗談と本気の区別がつかない人間は世間では『空気の読めない人間』として扱われ、それはそれはひどい扱いを受けるのが常なのですが、ご主人様はそのへんはちゃんと理解しているのでしょうか? いえ、そもそも最近は家に引きこもって家事に勤しんでいるか、外に出て本を物色しているところしか見ていないのですが、それは私の勘違いなのでしょうか?」

「勘違いじゃないよ。なんかもうアレだ……働いたら負けって気がする」

「……嘘吐き」

「嘘じゃないって」

 適当かつ曖昧な笑みを浮かべながら、ご主人様は面倒そうに欠伸をする。

 そう、この人は嘘を吐いている。

 性根が働き者で、常に何かをやっていないとダメになってしまうくせに、それを誤魔化して怠けているのだ。

 怠ける理由なんて本当に馬鹿みたいで、手の施しようがないのだけれど、私はそれに付き合っている。


 ご主人様は、悪い人になりたいのだ。


 本当の悪というのは、存在するだけで害悪でなければいけない。

 ただそこにいるだけで人を破滅させ、ただ存在するだけで世界をおかしくする。

 とりあえず人の不幸を見て笑える人間になりたいなぁと無茶苦茶なことを言いながら、ご主人様は笑うのだった。

 悪人など、向いていないにも程があるのに。

 けれど……それを止めたいと思ったことは一度もない。

 私も彼と同じ気持ちで、悪い主人を守る悪いメイドであろうと誓っているから。

「……さて、それじゃあそろそろ出かけようか、冥」

 ご主人様は時計を見て、平穏が終了したことを私に告げる。

「はい、ご主人様」

 私は、それを当たり前のように受け入れた。



 一つの出来事があった。

 同情の余地なんてないくらいに、それは一つの破滅だった。

 最悪の事態は免れたと言っても過言じゃない。言い過ぎって言っても言い足りないくらいだろう。

 世界は今もこんなに平和だ。空は綺麗で、海も綺麗で、子供たちは当たり前のようにはしゃいで、大人たちは額に汗を流しながら子供たちのためにあくせく働いて、役目を終えた老人たちは子供たちのために自分が受けついだものを教えながら辛かった若い頃を懐かしむように生きている。

 私たちも、そういう風に生きられたらどんなに素晴らしかっただろうか。

 そんな風に思うこともある。

 薬の匂いが充満する病院の廊下を歩きながら、時々私はそんなコトを考えたりもする。

 言うまでもなく……そんな未来は、どこにも存在しないのだけれど。

「冥」

「なんでしょうか、ご主人様」

 甚平から最高級のスーツに着替えたご主人様は、その服に似合わないチョコバナナクレープを頬張りながら、なんだかものすごく不機嫌そうな顔をしていた。ちなみにこの人は場所に応じて態度を変えるということをしない、迷惑な人間だった。

 ついでに、出てきた言葉もとんでもなく迷惑だった。

「……あのクレープのチェーン店、味がいまいちになったから潰そう」

「かしこまりました」

 電話、手続き、承認、実行。

 たったの四秒で、最近話題になっていたクレープのチェーン店は潰れることになった。

 いつものことだ。

「やっぱり、甘味処じゃ『みつや』が一番か。あのチェーン店にはそこそこ目をかけてやってたのに」

「そういうものでしょう。チェーン店とは『言われた味をそのまま提供する』のがお仕事ですから」

「つまらないね。お菓子っていうのは、多くの人に安らぎを与える食べ物だろうに」

「同感です」

 あまり話題が合わない私とご主人様だけど、猫と甘味に関しては意見を同じくしている。

「しかしなんつーか……今日は退屈だな。空は排気ガスまみれで、海はゴミだらけ、ガキどもは阿呆のように口を開けて忌々しい鳴き声を発し、馬鹿大人はストレスと胃痛と誰かを殴りつけたい衝動に耐えながら生産性のある仕事に興じ、腐れ老人どもはそんな連中を眺めながらほくそ笑んでいる。……うん、実に平和だな」

「……表現一つ変えるだけで、ここまで印象が違うものなんですねェ」

「そういうものだろうさ。建前と本音は違うし、本音が本当のことだとは限らない。かつての僕もそのあたりを見誤っていたからこそ、間違えた」

「………………」

「背負った責任が、自分だけのものだと信じて疑ってなかった」

 悪人らしく皮肉げに笑いながら、ご主人様は胸元から煙草を取り出して火を点ける。

「……まぁ、どうでもいいことだがな。彼女が勝手にやったことだし、助かった僕はラッキーとでも思っておくさ」

「………………」

 またこの人は嘘を吐く。

 一刻も早く自分から離れて欲しくて、私に嫌われるような嘘を吐く。

 自分は悪人だから側にいない方がいいと思っているから、今みたいな嘘を吐く。

「ご主人様」

「なんだ?」

「貴方がどんな人間であろうとも、私だけは貴方の味方です」

「偽善だな。自己満足と言い換えてもいい」

「言葉が届かないのであれば、行動で示しますが?」

「……いや、ごめん。今のは冗談。愛してるからとりあえず行動で示すのはやめておけ」

「はい」

 直接的アプローチに弱い私のご主人様は、そんな風に言葉でなんとか誤魔化そうとするのが常だった。

 頬を赤く染める彼のことを、私は好ましく思っている。 

「着きました」

「………ああ」

 だからこれまでもこれからも、私は彼のことを見送ろう。いつも通りにいつものように。

 当たり前に当然に私はここにいて彼と一緒に歩んでいく。そういう風に生きていこう。

「それではご主人様、行ってらっしゃいませ」

「ああ、行ってくる」

 私の主人は苦笑を浮かべながら、いつも通りに扉に手をかけた。



 私の名前は黒霧舞。情け無用の入院患者。

 なんでこんなところにいるのかはよく分からないし、よく思い出せない。

 気がついたら両腕は使い物にならないくらいにボロボロのぐちゃぐちゃだったことと、背中の刺し傷のせいで左足が動かなくなったことぐらいしか思い出せない。

 絶対に治らないならと使い物にならない両腕は義手と交換して、左足は引きずったまま。

 それからというもの、日常生活に多少の不便を抱えながら私は生きている。

 怪我の方は大体完治している。左足もほんの少し動くようになった。

 それでも、私は病院の外に出てはいけないらしい。

 もしかしたら私にも自覚できないくらい、私には大きな欠陥があるのかもしれないなーと思う。

 もしくは、


「やっほー、舞さん。具合はいかが?」


 このぼんぼんが、私の予想をはるかに超えて心配性ってコトなんだろう。

 私は大きく溜息を吐いて、その馬鹿男を睨みつけた。

「帰れ」

「うわ、いきなりひどいな。見舞いに来た人に向かってそういうコト言うか?」

「坊ちゃんの顔を見ると気分が悪くなるので」

「ほう。それはそうと、今日のお土産はみつやの豆あんみつなんだけど」

「ようこそいらっしゃいました」

「……安」

「いいからさっさと着席しなさいこのド阿呆」

 病院におなじみの安いパイプ椅子に坊ちゃんを座らせて、私は彼が持ってきたお土産を広げる。

 上品な作りの豆あんみつが、私のことを誘っていた。

 うん、やっぱり病院食とかまずいものばかり食べていては気分が滅入るというものだ。

 しかしこの美味しそうな豆あんみつ。私が美味しくいただくためには少しばかり問題があるわけで。

「はい、あーん」

「………………」

 いや、確かに義手でも食べられないことはないんだけど、やっぱり人に食べさせてもらうのが一番楽なんだけど。

 私は念のために、釘を刺しておく事にした。

「坊ちゃん」

「ん?」

「こっちは一応社会的弱者なので贅沢は言ってられません。食べさせてもらうのはものすげぇ嫌でかつ屈辱的ですが、あえてそこは苦渋を飲んで納得しましょう」

「これくらいのコト、もう何回もやってるじゃん」

「ええ、だから食べさせてもらうことに関しては文句はありませんとも。……だから、ちゃんとスプーンに乗せるあんみつの配分を考えろと言ってるんです」

「あらら、気づいちゃったか」 

 とぼけたように言いながら、坊ちゃんは『あんこ』のみが乗ったスプーンを下ろした。

 本当にこの人は……どこまで行っても微妙な嫌がらせを忘れない。

「いいですか? 私が言ったものだけをスプーンに乗せればいいんですからね」

「はいはい」

「はいは一回です」

「はーい」

「……なんとなく腑に落ちませんがよろしい。じゃあ、まずは寒天から」

「うん」

 坊ちゃんはわりと素直に頷いて、素直に寒天を私の口に運んだ。

 糖蜜の上品な甘みと寒天の歯ごたえは、なんだかとても懐かしい。

 坊ちゃんはそれから私に言われるがままに、あんみつを私の口に運んだ。微妙な嫌がらせをするわけでもなく、穏やかに笑って、いつも通りと言わんばかりに、私の世話を焼き続けた。

 ホント……なんていうか、相変わらず世話の焼ける男だ。

 あんみつを食べ終わって、坊ちゃんに熱めのお茶を用意してもらったところで、私は口を開いた。

「坊ちゃん」

「なんだい?」

「最近はどうしていますか?」

「ぼちぼちってところかな」

 平気な顔でそんなコトを言いながら、坊ちゃんはお茶を口に含む。

 私が怪我をしたのが二年前。お屋敷が他の人の手に渡ったことは、一年前に聞いている。

 正確に言うのならば、この人の口から山口さんのことが出なくなって二年。他の人のことが出なくなってから一年。

 なにがあったかなんて言うまでもない。たぶん、決定的なことがあった。

 私はきっとそのことに関わっている。私自身は覚えていないけれど、なにか決定的なことが二年前に起こった。

「それじゃあ、冥ちゃんはどうしていますか?」

「役に立ってもらってる。冥さんには足を向けて寝れないな」

「京子さんは?」

「何回か見かけたかもしれないけど、友樹っていう白い髪の親友のところで働いてる」

「美里さんは?」

「以下同文ってところかな。美咲ちゃんも友樹のところで色々頑張ってるみたいだし」

「章吾さんから連絡は来ましたか?」

「まだかな。……でも、まぁあの人なら大丈夫だよ。美咲ちゃんもいるし」

「陸は?」

「高校生活を満喫中」

「竜胆さんは?」

「大学生活を満喫しながらバイトしてるみたい」

 そう、ここまではいい。ここまではいつも通り。

 問題なのはここからだ。

「じゃあ……山口さんは?」

「豆腐の角で頭をぶつけて死にました」

 これだ。

 血を吐きそうな顔をしながら、この坊ちゃんは二年前からそんなコトばかり言う。

 親しい女の子に冗談でも『死にました』なんて言えるわけない人なのに、そんなコトを言う。

「……坊ちゃん」

「なんですか?」

「前々から聞こうと思ってたんですけど、二年前になにがあったんですか?」

「あの馬鹿女と喧嘩して、僕が殺されそうになって、舞さんが割り込んで怪我をした」

「あからさまに嘘じゃないですか」

 私は坊ちゃんが殺されそうになろうが絶対に割り込まないし。むしろ協力するし。

 坊ちゃんはアメリカで放映されているコメディ番組のように大きく肩をすくめて、とぼけた表情を浮かべた。

「ならば、あの馬鹿女は実は火星からの侵略者だったというセンでどうだろう。舞さんは正義的な使者で、侵略者を倒すために立ち向かったのだけれど、不覚を取って重傷を負ってしまう。そして僕は託されたライトメーザーソードを使い、見事に侵略者を退けたのだった。めでたしめでたし」

「……いや、それ素でつまんないです」

「そうだねぇ。……いや、困ったな。いつもならポンポン出てくる冗談が今日は出て来ないな」

「調子でも悪いんですか?」

「まぁね。調子が悪いというより、緊張してると言った方が正しいかな」

「緊張?」

 この心臓に毛が生えているような男が緊張ですと?

 いや……ちょっと考えれば分かることだ。この坊ちゃんが緊張することなんて一つしかない。

「んもう、嫌ですねぇ。それならそうと早く言ってくれればいいのに」

「勘違いです」

「いやいや、謙遜しなくてもいいんですよ? ホラ、あれでしょ? 坊ちゃんは実はこの二年の間に冥ちゃんと愛を育んでましたとか、そういうオチなんでしょ? で、今日はその報告に訪れたわけなんですね?」

「……いや、そういうわけでは」

「安心してください。いくら私でも二年も寄り添った恋人を邪険にするほど無粋じゃありません。……まぁ、殺したいのは否定しませんけど」

「………………」

 坊ちゃんは、なんだかものすごく複雑そうな表情を浮かべていた。

 それから頭を掻いて、視線を中空に向けて、それから私を真っ直ぐに見つめて、ポツリと言った。


「結婚してください」


 頭の中が真っ白になる。

 とりあえず、今までのことを反芻して、私は首を傾げた。

「……WHY?」

「結婚してください。僕と」

「………………っ!?」

 一瞬で脳内が沸騰して、状況を把握する。

「だ、誰か来てくださいっ!! 坊ちゃんが、坊ちゃんがあまりのストレスのあまり乱心をっ!!」

「いや、乱心とかしてねぇから。……正直なところ、僕だってなんで結婚しなきゃいけないのか分からないよ」

「じゃあ結婚とかやめとけよこの甲斐性なしっ!! いい加減にしないとまぢ貴方を殺して私も死にますよっ!?」

「だいぶ錯乱してるね」

「いきなりそんなコト言われれば、誰だって錯乱しますっ!!」

 私は顔を真っ赤にしながら、ちょっと泣きそうになった。

 だってそうだろう。そんなアホみたいな展開、誰が認めるもんか。

 この坊ちゃんは冥ちゃんとラブラブしてりゃいいのだ。私に構う必要なんてない。

 坊ちゃんは溜息を吐きながら、口を開いた。

「……そんなに嫌ですか?」

「嫌です。坊ちゃんは冥ちゃんと一緒にいればいいんです」

「同じコトを冥さんにも言われました」

「………………え?」

「『貴方は姉さんと一緒にいてください』ってね。なんでも、僕にからかわれる舞さんを見るのは、最高に楽しいそうです」

「………………」

 複雑すぎて言葉が出ない。

 坊ちゃんはちらりと私を見てから、口元を緩めた。

「ま、正直に言えば結婚っていうのは方便です。……実は、舞さんは来週には退院できます」

「……え?」

「できれば……僕らは舞さんと一緒にいたいって思ってます」

「………………」

 ちょっと、不覚を取った。

 結婚してくれとか言われた時より、百倍くらい嬉しかった。

 やばい。ちょっと泣きそうだ。

「……迷惑をかけます。私、こんなに不自由な体ですし」

「大丈夫です。いざとなったら僕がなんとかします」

 彼は笑う。いつも通りの、笑顔で。


「僕は、冥さんと舞さんのために存在してますから」


 彼は、そんなコトを言った。

 二年前、決定的なことがあった。

 それから私は不自由になって……不自由のままで終わると、思っていた。

 でも、待っていてくれた人がいた。妹と、なんだか妙に不器用な男の子。

「……坊ちゃん」

「なんでしょうか?」

「ごめんなさい」

 謝りながら、私は泣いた。

 そんな不器用な男の子にもたれかかることになってしまう自分に腹が立って、

 そんな男の子の優しさにもたれかかることになってしまう自分が嫌で、

 それでも……彼と冥ちゃんが待っていてくれたことが、嬉しくて。

 私は二年ぶりに泣いていた。



 病室から出てきたご主人様は、なんだか異様に疲れ果てているようだった。

「ご苦労様です」

「ご苦労だったよ。顔から火が出ると思った」

「でも、いい案だったでしょう?」

「素直に冥が『一緒に暮らしましょう』って言えば良かったじゃねぇかよ」

「姉さんは強情ですから、それじゃあ絶対に断られます。太陽だけじゃ人は動かないんですよ。緩急が必要なのです」

「……僕が北風かよ」

 呆れながらも溜息を吐いて、ご主人様は私を見つめる。

「それで、これからの予定は?」

「午後からは暇だったのですが……残念なことに、彼女の消息が掴めました」

「……ふぅん」

 ご主人様は口元を緩める。嬉しそうで、楽しそうな、それは歓喜の笑顔。

「それは良くやった、冥。はなまるをやろう」

「身に余る光栄です」

「……じゃあ、復讐しに行くか」

「了解しました」

 私とご主人様は身を翻す。

 昔は昔。今は今。そんな風に割り切ってなどやらない。

 姉さんに傷を負わせた、あの女を許してなどやらない。

 殺してなどやらない。再起不能にもしない。全身全霊生きたまま、地獄を味わえ。

 それが、私とご主人様の理由。あの女を不幸にするためだったらなんだってしてやろう。

 ふと、思いついて足を止める。私たちが私たちであるための、最後の生命線を張っておく。

「……ご主人様、僭越ですがよろしいでしょうか?」

「なに?」

「これが終わったら、三人で水族館にでも行きましょう」

「ああ……それはいいな。死亡フラグみたいでアレだけど」

「大丈夫です。私がいます」

「うん。任せる」

 ご主人様もにっこりと笑って、私の手を握った。

 私も同じように笑って、彼の手を握り返した。



 歩き出す一歩は復讐のために。


 胸に抱く自分勝手な憎悪に限度などなく、


 体を焼く無念は、どこまでも私たちを苛んでいる。



 それでも――――

 


 また三人で遊びに行こうと、私の主人はそんなことを言った。

 自分の手はとっくに真っ赤で真っ黒なのに、そんなコトを言ってくれた。

 そんなコトを言われたら頑張らないわけにはいかない。私はメイドなんだもの。

 どうやって彼と姉さんをからかってやろうかと、そんなことを思いながら私は笑った。




 現在の物語の結末は以下の通りです。


 世界制圧同盟:『と』番、復帰。

 彼の屋敷:炎上。

 黒霧舞:再起不能。

 新木章吾:帰還確立34%。

 山口コッコ:行方不明。

 竜胆虎子:行方不明。

 梨本京子:敵対。

 橘美里:敵対。

 有坂友樹:敵対。


 黒霧冥:アヴェンジャー・メイド。

 彼:アヴェンジャー・マスター。


 以上、計測終了。



 ※携帯で見てる人のことを考えて、命題はあとがきに移します。

命題はこっそり前書きに移します。


……ちなみに、この後に出演するデコッパチの登場によりこの未来は完全に否定されています。


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