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第二十八話 貴方の人生の物語

リミッター解除終了。

……携帯で読んでくださっている人たちに伝えます。


まじで、ごめんなさい。


いや、本気で長いです。今までで一番です。

覚悟を決めて、お読みください。

 いつか、きっと、たぶんだいじょうぶ。



 役目を終えて、やることもなくなって、夕日が沈む頃に僕は屋敷に戻っていた。

 途中で陸くんの携帯に電話をかけたのだけれど、「ま、にーちゃんがなにも言わずに出て行くはずはねーから余程の急用だったと思っておく。どーせ女がらみだろうけど」と、返された。

 信用されてるんだか、信用されてないんだかちょっと分かりづらいところだった。

 女がらみなのはむしろ章吾さんで、今回の僕は『勇者に重要アイテムを渡す魔法使い』の役目といったところだろう。

 まぁ……魔法使いには魔法使いの憂鬱ってもんがあるわけで。

「……どーすっかなぁ」

 気分は青色。僕は久しぶりに本気で落ち込んでいた。

 こういう日は世界を恨みつつも不貞寝するのが一番なので、僕は疲れた体と心をひきずりながら、自室に戻った。

 そして、なんだか見てはいけないようなモノを見た。

「……えっと、すみません。まさかそんな趣味が二人にあるとは」

『誤解だ(です)から』

 なぜか僕のベッドに拘束されていたのは、京子さんと美里さんで、美里さんはいつも通りの表情なのだけれど、京子さんの方はかなりいっぱいいっぱいな表情を浮かべている。なにかを堪えているような、羞恥に耐えているような、明らかにぎりぎりな表情。

「……坊ちゃん頼むから、冗談はいいから、早く。お願いだから」

「はいはい」

 顔を真っ赤にしている京子さんは可愛かったけど、これは明らかに放置してはいけない症状である。

 手早く拘束を解くと、京子さんはお礼も言わずにベッドから飛び降りて、一目散に部屋を出て行った。その速度はまるで陸上競技のスプリンターのようだった。

「トイレならこの部屋にもあるのになぁ……」

「………………」

 美里さんがなにやら言いたそうな『痛い』視線を向けてきたが、気づかなかったことにした。

 目を逸らしながら、とりあえず話を変えてみる。

「ところで、どこのどちらさまがこんなマニアックなことを?」

「……知りません」

 美里さんは、なんだかとても不機嫌のようだった。

 まぁ、どこのメイドマニアがこんなことをやったのか大体想像はつくし、こういう羨ましいもとい女の子を辱めるような真似をする男は、一日中母さんに愛を語ったりしなきゃいけない刑に処されることになる。

 自業自得とは恐ろしい。問題なのは、あの人がそれを意に介していないという恐ろしい事実。結婚してとっくに十年を越えているというのに、あの男はいまだに母さんラブだし、母さんもあの男にベタ惚れという背筋も凍えるようなことだったりする。

 ……実はとっくの昔に弟か妹くらいはいるんじゃねーかと思ったりもする。僕以外にあの夫婦の血を引き継いだ人間がいるというのは、想像するだに恐ろしいことだけど。

 まぁ、そんな悪夢以上の絶望的な仮定はともかく。

 美里さんの拘束も解いたところで、僕はようやく人心地着いた気がした。

「……じゃあ、僕はこれから一眠りするんで、美里さんが帰る時に気が向いたら起こしてください」

「坊ちゃん」

「なんですか?」

「なにか嫌なことでもありましたか?」

 直球ど真ん中、人の心をあっさりとぶち抜くストレートだった。

 それなりに隠していたつもりだったのだけれど、年上のお姉さんから見たら僕の憂鬱などとっくの昔にお見通しだったらしい。玄関先でちょっと眠そうなコッコさんに挨拶した時はなにも言われなかったけど、もしかしてあれは多分余計なことは聞かないようにとの配慮だったのかもしれない。

「……まぁ、もうばればれみたいなんではっきり言っちゃいますけど、正直かなりへこんでます」

「なにかあったんですか?」

「………………んー」

 美里さんは直球で聞いてくる。

 あまり話したくはないけれど、美里さんにも一応関係あることだから言わなきゃならない。

 ベッドに仰向けに寝転がって、天井を見上げて美里さんの顔を見ないようにしながら、僕は言った。


「急な話ですけど、章吾さんが屋敷を辞めます」


 沈黙は、ちょっとだけ長かった。

 唖然としているのか、それとも僕の言葉を待っているのか、ベッドに寝転がっていては美里さんの表情を見ることはできなかったので、美里さんがなにを思っているのかは分からなかった。

 だから、言葉を続ける。

「章吾さんに任せていたぶんの仕事に関しては、舞さんに一任します。仕事量が膨大ですから陸くんをサブにつけて二人で作業させてください。おそらく慣れるまでは仕事に遅延が発生すると思うので美里さんはサポートをお願いします。僕も、できるだけのことはします」

「………………なぜ、ですか?」

「え?」

「どうして章吾君は、いきなり辞めることになったんですか?」

「実家の父親がぎっくり腰で動けなくなったからやむなくだそうです。ま、こんなこともありますよ」

「………………」

 美里さんは黙った。ベッドに寝転がっているままじゃ表情は分からないけれど、きっと怒っている。

 いきなり章吾さんが辞めるとかいう理不尽に。

 辞める理由すらも話さず嘘を突き通す僕に。

 美里さんは公正な人だ。まるで正義の味方みたいに公平で真っ直ぐな人だ。

 だから、別に、殴られたっていいと思ってた。

「坊ちゃん」

 不意に、キシリとベッドが揺れる。

 いつもは僕が乗った程度では音も立てないベッドが、ほんの少しだけ軋む音を立てる。何の音だろうと思う前に、眼前に現れたのは美里さんの悲しそうな表情だった。

 ベッドに寝転がったのは美里さんの顔を見たくないからだったけれど、こうなってしまったら意味がなかった。

「……本当のことを言えとは言いません。章吾君にも貴方にも、理由はあるでしょうから」

「………………」

「でも……それなら前を向きなさい。そんな顔で嘘を吐いたって、全然説得力がありません」

「…………はい」

 頷いて、僕はゆっくりと目を閉じた。

 そして、ほんとうのことを言った。

「章吾さんは意地を張りに行きました。この屋敷よりも優先しなきゃならないことがあったんです」

「はい」

「休職扱いにしようと言ったら笑顔で断られました。君は相変わらず甘いと言われました」

「はい」

「その意地を張るときっと辛い目に遭うとも言いました。それがどうしたと言われました」

「はい」

「だから僕は、主として最後の命令を下して笑顔で送り出しました」

「それを後悔してるんですか?」

「いいえ」

 首を振って、口元を緩めて、目を閉じて、僕は言った。


「ただ、不安なんです。僕は、あの人にふさわしい主人でいられたかどうか」


 最初に見た時はボロ雑巾のようで、それでもその瞳はどこか遠く、ここじゃない場所を見ていた。

 章吾さんが抱いていた感情が怨恨だか怨嗟だかそんなものは知らない。

 そもそも、僕はそういう人を今までに見たことがなかった。

 他人のために自分を犠牲にできる人。

 誰かのために先陣を切って進める人。

 嫌なコトを嫌と言わず、鋭い眼光でどこまでも厳然としている人。

 優しくて厳しくて強くて弱い。……そんな、醜い生き方をしている馬鹿な人を見たことがなかった。

 だから憧れた。そんな風に生きたいと思って、僕はとっくの昔に挫折していたから。

「あの人は絶対に心残りにするだろうけど、この屋敷のことを少しでも心配させないようにできたか、それが心配で不安で辛いです。僕は卑怯で嘘吐きでこの屋敷を守るためならなんでもするつもりですけど、あの人の隣で一緒に並び立てていたかと言われれば、きっとそうじゃないと思います。……本当に、あの人は僕にとってはできすぎた執事でした。分不相応だったと思います。徳川家康を助けた本田忠勝みたいなもんです」

「そうでしょうか?」

「はい。……少なくとも、『僕』はそう思っています」

 どうしようもなく不器用で、ぶっきらぼうで、ついでにフォローが必要な人でもあったけれど。

 あの人は、どこまでも執事だった。完璧で完全で騎士で先駆けな執事だった。

 そんな彼抜きで、この先がやっていけるのかどうかかなり不安だった。

 けれど、そんな心を僕は押し隠す。押し隠して、口元を緩めた。

「……それでも、今は力不足でも、いつか僕は章吾さんみたいになります。守りたい人を守れる男になってやる」

「その生き方は後悔しますよ?」

「どんな生き方をしても後悔はしますよ。……なら、僕はあの人に教わったことをやってやるだけです」

 笑えとあの人は言った。

 女の人を泣かせたくないのなら、笑うのが一番いいとあの人は言った。

 それはきっと間違っていない。もしかしたら間違っているのかもしれないけれど、僕はそうは思わない。

 だから僕は笑う。いついかなる時でも、不敵に笑って、ふてぶてしく笑ってやるのだ。どんな逆境だろうが知ったことか。

 あの人の『元』主として、僕は笑い続けよう。

「……ま、そういうわけで、来週からの仕事はものすごく忙しくなります。いっそのことこの辺で辞めてしまうのも一つの手だと思いますが、どうでしょう?」

「嫌です。こんな割のいい仕事、他で探したって絶対に見つかりませんもの」

「……そうですか。そりゃ良かった」

 ここで美里さんにまで辞められたら首を括らなきゃいけないなーと思っていたんで、ほんの少し安心した。

「……美里さん」

「はい」

「気を使わせちゃってすみません。……ありがとうございます」

 お礼を言って僕は起き上がる。ゆっくりと息を吸って深呼吸。一歩を踏み出して覚悟を決めた。

 不安を拭って、顔を上げて、笑顔を浮かべた。

「ちょっと出かけてきます。帰りは八時ごろになると思いますんで、屋敷で待っててください」

「……今日はそろそろ帰ろうかと思っていたんですけど。美咲にご飯作らなきゃいけませんし」

「その美咲ちゃんを迎えに行くんです。……まぁ、僕からのささやかなお礼ってことで、三人でなんか美味しいものでも食べましょう。なんか用事があるんだったら、さすがに諦めますけど」

「……そうですね」

 美里さんは少し考える素振りを見せて、にっこりと笑って言った。

「それじゃあ、八時ごろまでに考えておきますね。私としては久しぶりにお寿司がいいなー、なんて」

「……分かりました」

 うーむ。さすが主婦。一食浮かした上で豪華なディナーの要求とは。やってくれる。

 まぁ、美里さんのそういうふてぶてしいところは、わりと嫌いじゃないケドね。

「じゃあ…………行ってきます」

「行ってらっしゃい、坊ちゃん」

 美里さんに見送られて、僕は部屋を出る。

 さてさて、これが最後の仕事だ。気合入れて行こう。

 あの人の主として……最後のお節介を焼きに行こう。



 響いてきた曲は賛美歌だった。神を崇め奉るための曲。どことなく不思議に人を惹きつける、そういう曲だ。

 曲を耳にしながら教会の扉を開ける。そこはいつもなら神秘的な雰囲気に包まれた場所だっただろう。

 人が作り出した神を崇める空間。日常から離れ、一時の神聖に浸る場所。それが聖堂や教会という場所だ。

 人は弱い。弱いからこそ様々な偶像を作り出した。天使、悪魔、宗教、神秘、概念、秘儀、神。そういったものは過去に遡った逸話ほど生々しく、現実味を帯びる。現代のように『ファンタジー』などというものにパッケージングされた『綺麗』なものではなく、古代の人間にとってそれはどこまでも鮮明な現実(リアル)だったに違いない。

 だから、これもきっと現実なんだろうなと章吾は思ったが、普段から幻想というものをあまり信用していない男は、それでも目にしたものを素直には受け入れられなかった。

 目の前にいる存在は、それほどまでに醜悪で美しくどこまでも現実感が希薄だった。


 異形の翼を持った天使が、軽やかな手つきでオルガンを弾いていた。


 教会の中は月明かりが差し込むため、暗いというほどではない。だから彼女の姿ははっきりと見えたし、章吾にはその姿が異形であることはすぐに理解できた。彼女の体には人にはありえないものが生えている。

 白鳥でも蝙蝠でもない異形の羽。表皮を剥がされた筋肉のように肉が脈打っている翼。見るからにおぞましいそれは、信じられないことに彼女の背中から生えているようだった。

 しかしその醜い翼の持ち主は、この上なく美しかった。輝くような金色の髪、誰もが見とれる決然とした横顔。そして抜けるような白い肌に血の色よりも鮮やかで深遠のごとき深さを誇る深紅の瞳。体が動かなくなりつつあった彼女は、なにかを得て、なにかを失って、再び力強い体を取り戻していた。鍵盤を叩く指は軽く、右足は違和感なく動き、痛みもなく苦しみもなく当たり前にオルガンを弾ける体を得ていた。

 少女はオルガンを弾く手を止める。

 元は清村要という名前だった少女は、もうそこにはいなかった。


「……来ると、思っていました。貴方はそういう人だから」


 席を立って、彼女は……この世界に具現した絶望は、真っ直ぐに彼を直視した。

「……一応聞かせてください。章吾さん、貴方はなぜここにいるんですか?」

「君を止める」

 テールスーツ(執事服)の男は、きっぱりと何の迷いもなく断言した。

 絶望(かのじょ)は彼を見つめる。そして、嘲笑うような苦笑を浮かべた。

「……それなら、大丈夫です。始末は独りでつけられます」

 始末。

 そんなことを言って、少女はゆっくりと立ち上がる。

 その意味はこれ以上なく明確だったし、彼女が正気を保っているのなら……当たり前のことだった。

 絶望になってしまった少女は、体を絶望に侵されながら、心までは譲り渡していなかった。

「私がどんなモノになってしまったかは、私が一番良く知っています。……世界の敵とでも言うんでしょうかね、いくつもの世界を滅ぼして、いくつもの世界を喰らって……私は、そういうモノになりました」

「………………」

「……でも、気分だけはいいんです。健康な体、動く手足、呼吸をしても苦しくないし、動いても辛くない。先輩に刺されて、なにもかも諦めて、それでも生きることにしがみついて、助けを求めて、結局最後はこんなになって。それでも……それでも、気分はいいんです。ちゃんと体が動くことが、これほど幸せなことだとは思っていませんでした。……でも、大丈夫です。私はちゃんと、自分で、なんとかします」

「…………そうか」

「……ごめんなさい」

「なぜ謝る?」

 章吾の声に、絶望の彼女は、寂しそうな微笑を浮かべた。


「私は、貴方を幸せにできませんでした」


 その言葉にどれほどの深い想いが込められているのか、章吾には分からなかった。

 自分を嘲るようなその悲しそうな表情にどんな悲しみを隠しているのか、章吾には分からなかった。

 なぜ、彼女が自分を好いてくれたのかも、章吾には分からなかった。

 分かるのは一つだけ。小さくて淡くて儚い、たった一つの事実だけ。

 どんな形になろうとも、どんな異形になろうとも、どんな概念になっても、彼女は笑っていた。

 デートの時だって、彼女は彼に心配をかけないように、体が言うことを聞かなくなっても、足が動かなくなろうとも笑っていたのだ。

 絶望に成り果てようとも、いつだって彼女は笑っていた。

 思い返せば、彼女の辛そうな顔を彼は見たことがなかった。

 付き合いは浅く、まだ女としても意識していない。顔は好みで性格はあまり好みではないが、意地を張らずにほんの少しでも素直になれば、もう少しくらいは可愛くなるんじゃないかと彼は思う。

 ……だから、理由なんてそれだけだった。

 たったそれだけで十分過ぎた。

「……一つだけ、聞かせてくれ」

「なんでしょう?」

「坊ちゃんの話だと、その『絶望』とやらが発芽すると、人の意思などおかまいなしらしい。余程の強い意志、強固な信念、曲げられぬ思い、そういったものがなければ正気を保つことはほとんど不可能だそうだ。正気を保ったとしても絶望が与えるメリットは容易く人を飲み込むだけの魅力がある。……なのに、君は笑っている。これから死ぬと決めているのに、まるでいつものように」

 執事は……新木章吾は顔を上げた。真っ直ぐに彼女を見つめて、口を開いた。

「君はどうして笑っていられるんだ? そんな体を抱えて、そんなモノを抱えて、どうして笑えるんだ?」

「……そんなの、決まってるじゃないですか」

 絶望は……清村要だったものは、彼を真っ直ぐに見返して、答えた。


「祈りや願いに意味なんてないけど、笑うことには意味があるから」


 笑いながら、シスターらしくないことを彼女はきっぱりと断言した。

 祈りは届かない。願いは叶わない。けれど、笑顔と真心は誰にでも届くと信じていた。

 誰よりも他人のことを思いやれる少女は、そうやって人の幸せを祈り、自分の弱さを隠していた。いつだってそうやって生きてきたしこれからもそうやって生きるつもりだった。死の間際だってそれは変わらない。

 一度は絶望に屈したとしても、好きな男がいればすぐに意地を張る。

 それしか生きる術を知らなかったから、そうやって生きてきた。



 だからこそ、


 そんな身勝手を、


 絶対に、


 許さない。



 イメージは撃鉄(トリガー)。引き金を引いてガチンと打ち下ろす想像(イメージ)

 それは意味がないものでありながら、最後の最後まで保たなくてはいけない己そのものだったが、章吾は数年ぶりにそれを手放した。心の中の自分が親指を下に向けていた。引き金を引けと言っていた。

 襟元を正す。タイを締める。背筋を伸ばして、真っ直ぐに彼は言い放った。

「知ったことか、そんなものは」

 ナイフのように目を細めて、執事は怒っていた。

「君は勘違いしているようだからはっきりと言ってやろう。私は、君を『止めに』来たんだ。それが我が主の命であり、私自身の意思だからだ」

「……無理ですよ。だって、これはもう私とほぼ一体化して……」

「関係ない」

 彼女の言葉を一言で叩き潰し、章吾はゆっくりと拳を握り締めた。

「そんなモノは関係ない。私は君を止めると決めた。理由などそれだけで十分過ぎる」

「そんな……やめてくださいっ! これは人間に太刀打ちできるものじゃ……」

「ああ、確かに私は人間だ」

 無造作に歩みを進めながら、章吾は言い放った。


「だがな、私は執事(バトラー)なんだよ」


 章吾は口元を引き締める。拳を握った。ほんの少しだけ緩んだネクタイを締めた。

 あの白い少年渡してくれた手土産。それはただの執事服(テールスーツ)だった。

「執事とは先駆け。執事とは騎士。執事とは紳士。執事とはすなわち女を守るもの。どんなドブ臭い悪党でも、どんな最低な悪魔でも、かくあるべしと定めてそれに向かって突き進めば、その先に行き着くのは執事だ。執事とは職業ではない。執事とは覚悟であり決意であり意地であり、この世のありとあらゆる強き心が行き着く先にあるものだ」

 スーツの乱れを整えて、シルクで編まれた手袋をはめる。

 自分の主人が届けてくれたもの。それはただの手袋だった。

「エレガントに。エレガントに。なによりも、どんなものよりもエレガントに! 強く正しく完璧に、女の心に光を燈せ! かくあるべしと定める心! 生と死の狭間で愛を選ぶ者! それこそが執事だ!」

 だが、章吾にとってはそれで十二分。

 戦闘準備を完了させた執事は、今まさにかくあるべしと定めたその心で、叫んだ。

「清村要、私はお前を助けるぞ。そして責任を果たせ。『笑うことに意味がある』と言った、お前の在り方の責任を果たせ。勝手に死ぬことなど許さない。全人類と世界が許そうが、私は認めない!」

 執事は叫んだ。正義よりも勇気よりも、愛を選ぶ漢として、心の底から、叫んだ。


「私の名は新木章吾。女を救うために生きるただの執事っ!!」



 誰かの話をしよう。

 祈りは届かない。願いは叶わない。そんな風に諦めた少女がいた。

 それでも笑顔だけは誰かに届いてもいい。そんな風に思っていた。

 誰かの話をしよう。

 たまには祈りが届いて、願いが叶ってもいい。そんな風に思った執事がいた。

 執事とは他のどんなものでもなく。女の子を幸せにするために存在する。

 執事とは最新。世界中の男の手本でなくてはならない。

 執事とは光明。彼女の心に光を燈す存在。

 そんな風に思った男がいて、彼はそのために努力をしてきた。



 だからそう、これはハッピーエンドになるかもしれない、一つの別れの話である。



 執事が走ると同時に、絶望の象徴である翼は、大きく広がって黒い羽を打ち出した。

 絶望や憎しみ、概念の集合体であるそれは『呪い』そのものである。本来ならば人の心に傷を負わせる程度の力しか持たないそれは、あまりに高密度に圧縮されたことにより具現化し『怨呪の弾丸』と化して執事に迫る。

 強い恨みや妬みが人の心を変質させるが、さらに高密度の『呪い』は人の心どころか形そのものを変容させる。精神を破壊し、肉体を変容させ、その呪いの性質のままに侵食し、絶望の仲間とする。

 かすめただけで怨念が執事を侵食し、一瞬で死に至らしめるだろう。

 執事は一瞬だけ足を止める。そして鍛え上げられた動体視力で弾丸の軌道を見切る。

 武器は受け取っている。彼女を救い、もれなく自分も生還する、そういう都合のいい武器を。

 名を叫べと主は言った。だから執事は拳を掲げて、その通りに実行した。


「吼えよ、『大善牙(だいぜんが)』っ!!」


 思い描けと主は言った。だから執事はこの場に最も相応しい武器を思い描き、それを振るった。

 執事の手に握られていたそれは、装飾のまるでない、純白の騎士剣。

 かわせる弾は華麗に全弾回避。どうしてもかわせないものだけを剣で打ち払った。

「な……なんですか、それはっ!? 高密度の『怨念』を一瞬で消去できるほど武装なんて、夢幻殺しのあの男が持つ二刀くらいです。そんなものを……絶望(わたし)は知らないっ!!」

「知らなくても当然だ。……なぜなら、この武器は練成されてから、ただの一度も振るわれたことがないんだからな」

 章吾が主より託された武装。その名を『無迷・大善牙』という。

 大善牙本体は、章吾が身についているシルクの手袋である。章吾の手に握られている騎士剣は、大善牙が彼の意思に呼応して武器を生み出したに過ぎない。それは章吾のために創られた、どんな悪だろうが絶望だろうが一刀の下に切り捨てる『理想の具現』である。

 もちろんのことながら、そんな都合のいい武装が存在するはずもない。

 その武器は唯一つの理念の下に創造された。『正義の味方の武器はかくあるべし』という理想と共に創られた。

 そして放置された。大善牙を創った作者は『当代随一』と謡われながら、武器というものの根本的な所が分かっていない五歳の子供だったからだ。

 武器としての欠陥。武装として致命的な欠如。故にその武装は『ガラクタ扱い』されることになった。


 善たる牙を振るう条件。それは、ただ迷わぬこと。


 剣を振るうに迷いはなく、真正面から悪を叩き潰す。

 それは、子供の心が具現化しただけの、使い道のない武器だった。

 人の心は弱い。言葉一つで容易く揺らぐ。心が揺らぐ度に武器が使い物にならないのでは話にならない。

 迷うことが禁じられているのなら、フェイントや不意打ちすらもできない。

 故に、この武器を扱える人間はいなかった。あらゆる間合いを見抜く、かの夢幻殺しすら『こりゃ無理だ。俺向きじゃない』と言って放り出し、相棒に渡したまま忘れ去っていたほどである。

 しかし今ここに、その武器を扱うに値する、馬鹿な男がここにいる。

「……ああ、しかしな、武器のあるなしなどささいなことだ。武装があろうがなかろうが、そんなものは関係ない」

 再び放たれた黒の弾丸を、剣で打ち払いながら、章吾は叫んだ。

「そう、いつだって絶望を駆逐するのは、誰かの『努力』以外のなにものでもないのだから!!」

「そんな……無茶苦茶な戯言をっ!」

「戯言だろうが、無理だろうが、それでも……」

 世界最強の弟子。全てにおいて完璧なる執事は、ここにおいてようやく己の力を全開にした。

 無理だと言われようが、無茶だと言われようが、そんなモノは関係ないと笑い飛ばすことにした。

 冷静に振舞うことをやめ、ただ己の心の命ずるままに行動を始めた。

 まるで嵐のように、怒涛のごとく放たれる銃弾を前に、章吾は剣を振るって己に当たる弾だけを相殺していく。

 が、その白い剣は一撃ごとに刃こぼれし、軋みを上げる。

 一発相殺するごとに体に澱のように溜まっていく疲労感を感じながら、章吾は心の中で舌打ちした。

 強力すぎる力には当然のごとく存在するペナルティ。『大善牙』の場合は『疲労』という分かりやすいものだが、疲れは緊張感を阻害し、容易く人を迷わせる。

 使えば使うほど、使用条件を満たすのが難しくなっていく様は、まるで正義そのものの象徴であるかのようだった。

「それでも……」

 手を広げる。その手に生まれるのは身の丈サイズの巨大な白槍。

 ありえないサイズの巨大な槍を振り上げて、章吾は体を弓のように引き絞る。

「それでも、認められぬものがある。……それが不可能であっても、だからこそ、認めるものか!!」

 狙うは短期決戦。無尽蔵に力を振るえる相手に持久戦など無意味。

 今扱える最大、最高の戦力を持って、ここで叩き潰す。


「執事、新木章吾……役目を果たすそのためだけに、無理を通してまかり通るっ!」


 そして、その無茶苦茶なサイズの槍を、投げ放った。

「っ!?」

 サイズも無茶苦茶ならば、やることも無茶苦茶だった。いくら『大善牙』が武器を創造できるとはいえ、その数には限りがある。武器を新しく生み出す度に、その武器が強ければ強いほど、章吾の消耗も半端ではなくなる。

 先ほどの『騎士剣』だけならが多少疲れた程度で済むだろうが、今の『白槍』のような規格外の武器を練成すれば、一瞬にして体力を失って倒れてもおかしくはない。

 そう判断した『絶望』は瞬時に結界を展開する。この一撃を凌ぎきれば勝利は確実なものとなる。

「……ぐっ」

 己の中の絶望の声を聞き、彼女は唇を噛み締めた。

 本当のことを言えば、悔しくて仕方がなかった。

 そう、悔しくて仕方がない。はっきり言えば、『お前にだけは言われたくない』という気分であった。

 自分よりも意地を張って生きているくせに。

 自分よりも不器用に生きているくせに。

 どんなことよりもつまらないことで本気で怒るくせに。

 猫好きの優しいヤツのくせに。

 子供に甘いくせに。

 本当はわがままなくせに。

 絶望に取り込まれて、悔しくて、それでも彼が来なかったのなら、心穏やかに死ねたと思う。

 けれど執事はここに来た。己の役割を果たすために。絶対に曲げられない己の信念を貫くために。

 だから……綺麗に死ねなくなった。彼の前でだけは、無様に足掻かなければならなかったから。

 その意地を、張り通すために。

「やめて……もうやめてくださいっ!! 私なら大丈夫ですから。ちゃんと……ちゃんと死にますからっ!! 助けようとしないでくださいっ! そういうことをしないでくださいっ! どうせ、ここで助かっても、私は……」

「甘えるな、要っ!!」

 そして彼は、本当に心の底から初めて、彼女の名前を呼んだ。

「お前は決めたんだろう。意地を張ると。ならば最初から最後まできっちり張り通せっ! 死ぬことなど許さない。絶対に許すものかっ! いつか死ぬんだとしても、それは明日であろうとも、最後の最後まで徹頭徹尾、己の行き方を、意地を貫き通せっ! ……辛くても苦しくても、お前はそういう風に生きてきたんだろうっ!? そうやって、誇り高く誰にも負けないように、生き続けてきたんだろうっ!? ちゃんと死ぬだと? 甘えるのもたいがいにしろっ!」

「………………っ!!」

「どうしても死にたければ、生きている誰かのために生きて、それから死ねっ!!」

 いつかどこかで主に言われた言葉を、そのまま彼女に突きつけた。

 死ぬことは絶対に許さない。それはただ、それだけの言葉だった。

 絶望は押し黙る。彼の言葉を聞いて、俯いて、それから口元を緩めた。

「………………ハ」

 その笑いは、ボロボロの体を抱えながら、動かなくなりつつある足で、誇り高く生きていた少女の瞳だった。

 清村要はいつも通りに涙を拭って、不敵に笑った。

「お説教はそれだけですか? 執事さん」

「ああ、それだけだ」

「なら、さっさと助けなさい。この無能(ばか)

「了解した、レディ」

 にやりと笑って、章吾は最後の武器を取り出す。

 それは、こっそり創っておいたちっぽけな純白のペーパーナイフ。

『いいかい、章吾くん。執事にとって剣や槍や銃、ましてや近代兵器など邪道なんだよ』

 章吾が先生と呼んだ灰色の髪を持つ男は、そう言って笑った。

『エレガントに、だ。いついかなるときもそのように振舞うといい。無理でも無茶でもやり遂げろ。最低限ペーパーナイフだけは持っていい。それ以外の刃物やを使うことは恥だと思え』

 本物の執事が唯一持つことを許される武器なんて、紙しか切れないそのナイフだけだった。

 剣も槍も本当は使うべきではなかったが、章吾は彼女を救うためだけに己の全てを賭けた。

『恥を捨てる時は、他に捨てられるものがある時にするんだ。そうでなくては誇りを保てない。そして、勝った後に恥じるんだよ。恥じて、再びエレガントを志せ。誇りを心に打ち立てろ。一振りでも、切れなくても、剣を立てろ』

 その切れない刃物こそが、誇りだった。

『それが、執事というものだ』

 巨大な槍が結界にほんの一筋の罅を入れると同時に、章吾はその槍を消去する。

 そして、『覚悟』という最終最後の武器を振り上げた。



 誰かの話をしましょう。

 昔々、ある所に不幸な女の子がいました。

 彼女は普通の女の子で、健康でそれなりに幸せな女の子でした。なに不自由なく暮らしていました。

 けれど、それは一瞬で終わってしまいました。

 なにが起きたのかは詳しくは分かりません。女の子は地震と共に『異世界』という場所に飛ばされました。ファンタジー小説ならそこから王様になったり勇者に助けられたり、そういった王道(ありきたり)な展開になるんだろうけれど、そんな奇跡は起きなかった。なんにも起こらなかったのです。

 少女は魔術という異世界の技術の実験体にされました。それらは口では語れないほどむごたらしいもので、とてもとてもひどいことでした。体を作り変えられ、心すらも改造されて、少女は女の子ですらなくなって、人間ですらなくなって、それでも最後の最後まで、心までは人のものだと思い込んで、最後の最後に人間ですらなくなりました。

 そして、なにもかもに絶望したのです。

 世界にとって不幸だったのは、少女の中に絶望の種というこれまたご都合主義のようなモノが寄生していたことでした。負の感情を餌に生きるそれは少女の絶望を喰らってスクスクと成長して、そのまま育てばやがて芽が出て膨らんで花が咲いてどかーんという感じに世界を滅ぼせる。そういう所まで来ていました。絶望は既に意志を持っていて、少女の体をいつでも乗っ取ることができました。

 でも、少女は絶望しながらも決して世界から逃げようとはしませんでした。

 自由になって、今までできなかったことをやりたい放題やることにしたのです。

 不平不満大爆発でした。それこそ絶望すらあきれ果てるほどに。

 宿の食事がパンでないことに憤慨して、宿を爆破したり。

 城の騎士がうざったいからといって鎧を溶接して窒息させて死ぬ寸前に助け出してみたり。

 なんか意味もなく世界が憎いという理由で城一つ吹っ飛ばしてみたり。

 さすがの絶望も呆れました。いくらなんでもやり過ぎだろうと諭したこともあります。絶望だって『人間』から生まれたものだったから常識と非常識くらいは理解していました。なにより目立つと追っ手がやってくることを知っていたのです。いくらなんでもこんなつまらないことで狩られるのはごめんです。

 少女でなくなった異形は納得したように頷いて、あっけらかんと言い放ちました。

「そーだね。君の言うことももっともだ。確かにこの世界で遊ぶのもそろそろ飽きたし……そうだな。よし、久しぶりにあたしの故郷に戻ってみますか!」

 少女でなくなった異形は、絶望の話を全然話を聞いていませんでした。

 この時点で絶望はなんかもう色々と諦めました。自分の役目だとかそういう一切合切をです。

 ありていに言えば……異形に愛着を持ってしまい、乗っ取るとかそういうことができなくなったのでした。

 二人で一人。どーしようもないほど世界の敵だけど、それでも二人はのらりくらりと生きていました。

 異形は元の世界に戻って、ひょんなことから世界の裏側に関わることになったりしましたが、世界の裏なんざとっくの昔に知っていたので、知らないことをやってみることにしました。

 学校に通って、友達と遊んで、当たり前のように笑って、そういう生活を始めました。

 そして、そういう生活こそが、日々の営みこそが、一番楽しいんだとこの時初めて気がついたのです。



 だから、自分の好きな誰かが、自分みたいな末路を辿るのが大嫌いになりました。

 

 

 なにもかもを終えて、章吾が気絶した彼女を抱き上げた時、音が聞こえた。

 パチパチパチという小さな拍手。この場にそぐわない、単調な響きの音だった。

「すごいですねぇ、おにーさん。や、この場合は執事さんって言った方がいいのかな?」

 ツインテールにヘアバンド。大きな瞳に、中学三年生にしてはちょっと幼い体格で、胸もなければ背丈もない。ただ、見た目はものすごくかわいい少女……に見える男。お気楽な笑顔が印象的な、ただそれだけではない少年。

 見覚えがあった。話したこともあるし話を聞いたこともある。

 ただ……前に話した時はもっと柔らかい空気を持っている男の子だったような気もする。

「……君は、確か獅子馬さんだったか?」

「んー……普段はそう名乗ってるんですけどねェ。今はちょっと違います」

 彼はにっこりと笑う。自然でなんの違和感もない笑顔。

 ぞくりと背中に悪寒が駆け上がる。その違和感のない笑顔こそが、まるで邪悪であるかのように。


「あたしは世界制圧同盟No42。二つ名は『絶望踏破』。名を死屍王(ししおう) 真衣(まい)。二つ合わせてその筋じゃ『絶望踏破死屍王真衣』で通ってます。絶望の付き人にして異形。根っからの悪人ですよ」


 無垢な少女のような笑顔を浮かべながら、彼はそんな滅茶苦茶なことを言った。

「ここまで言うからにはもう分かってると思いますケド、今回のことはあたしが仕掛け人です。諸悪の根源、黒幕とか言い換えてもいいかもしれませんね」

「………………」

「シスターの体はね、実はもうとっくの昔に限界だったんです。けれど、あたしは要さんに死んで欲しくなかったから、彼女に絶望の種を植え込みました。『使徒』なんていう守護者付きで、なんとかして彼女のことを守ろうとしたんです。……でも、ダメでした。あたしの友達の絶望は人よりは強いけど『本体』よりは弱い。いくら絶望の種といえど本体のものでなくては数年で朽ちる。……そして、朽ちればシスターの体は思ったように動かなくなるでしょう。下半身不随くらいで済めば御の字です」

「………そうか」

 章吾は冷静に言い放った。その眼光はいつも通りで、変化はない。

 真衣は口元をつり上げた。そうでなくては面白くないとでも言いたそうな笑顔だった。

「つまり、今章吾さんが滅ぼした絶望の種は、シスターが下半身を動かすのに必要不可欠なものだったんですよ」

「……で?」

「ここはやっぱり男としては、きっちり責任を取らなきゃいけないでしょうと思いますよ?」

「で?」

「この近くの公園に異世界の扉を開いておきました。その扉をくぐって異世界に行き、アル'キルケブレスっていうとんでもねぇ化け物の角を取ってきてください。その角が万病薬の材料です。病気にも効果があります。風邪でもガンでも脊椎の損傷でも一発です。調合を一歩間違えると恐竜も粉末を少量吸っただけでコロリと逝く猛毒になりますけど」

「それで?」

 まるで怯まず、驚きもせず、章吾は他にあるのかと問い詰めてくる。

 予想外のことに真衣はかなり怯んだ。はっきり言えば、もう言うことがなくなっていた。

「……………えっと、それだけです」

「ふむ」

 章吾はそれだけを呟くと、思ったよりも軽い要の体をを抱え直して歩き出す。

 あっさりと真衣の横を通り過ぎて、教会の扉に手をかけて押し開けた。

「感謝しよう、少年。君は実にいい奴だ」

 そして、外に出る直前に、執事は振り向いて本当の悪党に向かって不敵に笑った。


「どうやら、君は私に責任を取るチャンスをくれたらしいからな」


 執事は、最初からそのつもりだった。

 自分で救った命の責任を、最初から最後まで取るつもりだった。

 自分の感情を放棄して、それでも守りたいものがあって、守るためならなんでもするつもりだった。

 理由などない。彼自身から生まれ出た理由など何一つない。

 それでも章吾は言い切るだろう。……自分は執事なのだから、女を守るのだと。

「仕掛け人というからには君も責任くらいは果たせ。俺が薬を取ってくる間に、君が彼女を守って世話をしろ」

「えっと……あの、もうちょっと驚くとかなんとか」

「必要性を感じないな。じゃあ、俺は行く。せいぜい坊ちゃんに怒られないように怯えておけ」

 そう言い放って、執事は教会から出て行った。

 後に残されたのは、鳴り物入りで登場したくせに一人っきりで取り残された少年のみ。

「えっと……あの、予定通りだからいいんですけど……さすがにこの扱いはちょっと寂しいっていうか、後で先輩とか唯の姉御とかシスターに怒られるんで今からめっちゃ怖いんで」

 と、少年がなにやら情けないことを呟き始めたその時。

 いきなり、携帯電話が鳴った。

 嫌な予感が背筋を走り抜ける。おそるおそる電話を取ると、ディスプレイに映っていたのはは今最も話したくない少年の名前と電話番号。執事が坊ちゃんと呼んでいた、『坊ちゃん』ではない少年の名前が表示されていた。

 携帯電話とは思えないほどの悪意のオーラを放つそれを、麻衣は恐る恐る取った。

「……えっと、もしもし?」

『ハロー、クソの詰まったズタ袋さん』

 怒っている。めちゃめちゃ怒っている。彼は怒ると途端に容赦がなくなる。男が相手だと特に。

『まったくもう、麻衣さんってばそんなに(ファック)して欲しいなら早く言えばいいのに。僕が知り合いの拷問吏さんに頼んでこれ以上なく苦しめてから死んだ方がましだ級の辛い目にゆーっくりと合わせてから、知り合いのお医者様に完全治療してもらって、それからまたじーっくりと拷問してもらおうかと思ったのに。きっと君以外はみんな愉快だと思うんだ。どうかな? いいと思うんだケド』

「あの……それは冗談ですよね?」

『わぁ、冗談に聞こえるんだったら君の頭はとっても愉快だネ! 脳の代わりにぷるるんグレープゼリーが詰まっているのかと勘違いするような素晴らしい発想だネ! ところで今度の日曜だけど、スカイダイビングに行くから一緒に行こうよ。もちろん、君だけはパラシュートなしだ』

「先輩。それはスカイダイビングとかいう格好いいスポーツじゃなくて、一般には『飛び降り自殺』と呼ばれる行為だと思います。いくらあたしでも五千メートルはちょっと」

『んーじゃあ、素直に経済的に殺そう。要さんの入院費用その他経費は僕が一時的に立て替えておくけど、基本的には全部君持ちね。金利は一応法律上で定められてるギリギリに設定してやるけど、取立てはそのへんの借金取りよりチョッピリだけ厳しくやるから、ちゃーんと期日までに振り込まないとコンクリ漬けにしちゃうぞ★』

「ちょ……ちょっと待ってください! いくらなんでもそれは……」

『章吾さんはお前に『頼む』と言ったんだ。だったら金くらいは払えよ、絶望踏破。人の命ってのは金抜きじゃ維持できない。言い方は悪いが命は金で買えるんだよ、『死屍王真衣』。……章吾さんは責任を取りに行った。なのに君だけが責任逃れをするというのはフェアじゃないだろう?』

「…………あう」

 まったくもって正論。当たり前かつ言い返しようのない言葉に、麻衣は絶句した。

 そのことを考えていなかったわけではない。金銭面に関しては、当初の予定では全部が終わった後に少年に話を持ちかける予定だった。

 しかし、予想外だったのは少年の動きがあまりに早すぎたこと。自分の正体も、今回の目的も、少年は全部知っているらしい。どんな強力な情報源があるのかは知らないが、あまりにできすぎている。

 最速で動いた少年は、的確に真衣を追い詰めていった。

『さて、死屍王真衣とかいう図抜けた馬鹿。今なら僕は君を経済的に殺すことも容易だけど、どうする?』

「…………あの、先輩」

『ん?』

「ごめんなさい。もう二度とやらないんで今回は許してください」

『……最初からそう言えばいいんだよ、『麻衣』さん』

 電話越しに聞こえるのは、呆れたような声だった。

 本当に溜息をつきながら、彼は麻衣に言い含めるように言った。

「要さんが死んじゃったら、後悔するのは君だけじゃない。唯さんだって友樹だって、僕だって後悔する。確かに僕らはなにもできなかったかもしれない。……けれど、『なにかができていたかもしれない』んだ。……それだけは覚えておいて欲しい。僕は『獅子馬麻衣』という男の子は友達だと思ってるし、協力も惜しまないつもりだから」

「………………あたしが、人間じゃなくても?」

『当たり前だろそんなもん。つーか、友達のためになんでもしようとした君のどこが人間じゃないのさ?』

「………………すみません」

『うん。……じゃ、そういうことで、お休み』

 ありきたりな言葉を残して電話は切れた。

 麻衣はゆっくりと息を吐いた。極度の緊張から開放されて、緊張の糸がぷっつりと切れた。

 近くの椅子に力なく腰かける。それから、ポツリと呟いた。


「……ちょっとくらい、責めてくれたっていいのに」


 騙されたとも思ってくれない上に、自分の想像を遥かに超えることをやってのける。

 黒幕だろうが諸悪の根源だろうが、そんなものは関係ないと言わんばかりに執事も少年も麻衣を責めることはしなかった。

 麻衣は悪いことをしたと思っているのに、本人たちは全くそう思っていないのだった。

 ステンドグラスが綺麗な教会の天井を見上げながら、麻衣はポツリと呟いた。

「あーあ……後でめっちゃ怒られるなぁ」

 涙が一つだけこぼれた。

 それでも、その口元はほんの少しだけ笑っていた。

 自分が一番だけど、友達には絶対に死んで欲しくない苦労性の異形は、

 なにもかも失う覚悟をして、それでもなにも失わなかったことに、ほんの少しだけ絶望して、ほんの少しだけ安心した。


 

 少年が言っていた近所の公園とは、夜はデートスポットになる大きめの公園のことだった。

 しかし、どんな魔法を使ったのかは知らないが、公園に人は寄り付いていなかった。公園には誰もいない。人の気配すらしない。ただ噴水の音が響くだけだった。

 その噴水の前に、無造作に扉が置いてあった。ごく普通の、木製の扉である。

「……情緒もなにもあったものではないな」

 神秘性もなにもあったものではない。出発という雰囲気でもない。騙されているんじゃないかとちょっと思ったりもしたが、どの道自分にはこれしかないのだと思って開き直った。

 要を近くのベンチに寝かせると、彼女はほんの少しだけ目を開けた。

「………章吾さん」

「ん?」

「………迷惑を、かけました」

「気にするな。いつものことだ」

「いつものことですか」

「いつものことだ。あの屋敷ではこんなものは日常茶飯事だよ」

 屋敷、とうっかり言ってしまって後悔した。今から別の場所に行くのに、懐かしい場所を思い出してしまった。

 それを表情には出さない。最後まで章吾は自分の心を殺し切った。

 口元でほんの少しだけ笑う。不意に思いついて手を伸ばして、要の頭を撫でた。

「少し眠るといい。今日はちょっとだけ無理をしただろ?」

「……無理なんてしてませんよ。ただ、ちょっと疲れました」

「ああ、そうだな」

 笑いを堪える。彼女が意地を張るのが楽しくて、ほんの少しだけ未練が残る。

 準備を整えたわけではない。それでも、一分一秒でも時間が惜しい。

 だからなにもかも捨てた。部屋は引き払うように言ってあるし、あの屋敷も既に辞めている。少年は最後まで泣きそうな顔で食い下がっていたが、最後には笑顔で送り出してくれた。

 だからいい。これでいいんだと思う。

 自分は執事だから、これでいい。

 ふと見ると、要は再び静かな寝息を立てて眠っていた。

「…………さてと」

 最後の最後に電話をかける。相手はあの少年。自分に居心地のいい場所をくれた元主人。

 相変わらず、1コールで彼は電話に出た。

『……もしもし?』

「ああ、私だ。あの教会の近くの公園に彼女を寝かせてある。病院に連れて行ってくれ」

『分かった。他にはなにかある?』

「色々とあるが……まぁ、今となってはどうにもならないことばかりだからな。別にいいさ」

『……了解したよ』

 少年の声はなにかを押し殺しているかのようだった。それでも、彼はなにも言わなかった。

 章吾は口元を緩めた。未練は一つ消えて、すこし胸のつかえが取れた。

「最後に言っておこう。君は実に優秀な主だった。変な女を一人雇っていることを除いてな」

『最後に言っておくよ。貴方は僕には不相応なくらい最高の執事だった。女の子に弱いことを除いてね』

「では、行ってくる」

『行ってらっしゃい』

 それだけを残して、電話は切れた。

 携帯電話は必要ないだろうから、彼女の側に置いて、章吾は立ち上がる。

 悔いはある。たくさんある。それでも章吾はなにもかもを捨てた。未練を断ち切った。

 そのつもりだった。


「行くんだ?」


 いつの間にか、木製の扉の前に、小さな彼女が立っていた。

 章吾が惚れている彼女に似た面影を持つ小学生。肩まで伸ばした髪がとても良く似合う、見た目は可愛らしい少女。

 橘美咲、というのが彼女の名前だった。

 白の上着にキュロットスカートという私服姿も可愛いといえば可愛いのだが、不機嫌そうな口元とどうしようもなく不愉快そうな目元が全てを帳消しにしていた。

 そんな彼女は、章吾を睨みつけながら口を開く。

「……ねぇ、章吾っていっつもそうなの?」

「そう、とはどういうことだ?」

「馬鹿みたいに格好つけて、準備もせずに遠くに行っちゃうような馬鹿ってコト。遠くに行くのはもう決めちゃったことだからいいけどさ、準備もしないって本当に馬鹿じゃないの? RPGの勇者だって洞窟に行くときは薬草やポーションくらいは持っていくよ? 最終ダンジョンに行く時は挨拶くらいはするし」

「………………」

「……まぁ、私がなにを言っても、章吾は行くんだろうケド」

 全部を分かった上で、美咲はただそれだけを言った。納得できない顔で、そう言った。

 ゆっくりと小学生らしくない溜息を吐いて、美咲は真っ直ぐに章吾を見据えた。

「帰ってきて」

「え?」

「行くんだったら、絶対に帰って来て。不可能でもなんでも帰ってくるの。いい?」

「……分かった」

 確約ではない口約束。帰って来れる保障などどこにもない。

 それでも章吾は頷いた。心を確かに、はっきりと。

 そして、覚悟を決めた。

 屋敷を辞めて、主を失った執事は、己の意地と建前のために最後の覚悟を決めた。

 ゆっくりと美咲の前に歩み寄って、章吾は片膝をついて(こうべ)をたれた。

『最後に教えておこう。それは、執事が最後に意地を張るために必要な条件だ』

 灰色の髪を持つ先生の言葉を思い出しながら、章吾は口を開いた。


「我は剣。執事という名の最新にして先駆け。一人の騎士。我は貴女に忠誠を誓う」


「許すわ。……行ってきなさい、執事。役目と責任を果たしなさい」


「御意」


 決然と顔を上げ立ち上がる。歩みには迷いはなく、ただ力強く大地を踏みしめる。

『執事には主がいる。そして、主はなるべく強くて優しくてフォローのしがいがある異性がいい。男の主なんかより、女の子に主になってもらった方がやる気が出るだろ?』

 灰色の髪の先生は、冗談交じりにそんなコトを言っていた。

(……さて、行くか)

 口元を緩めてドアノブに手をかける。未練も後悔も吹っ切って、章吾は扉を開けた。

 そして、最初の一歩を踏み出した。



 猫が、なんだか寂しそうに、にゃーんと鳴いた。



 あの人はこうと決めたら、絶対に考えを曲げない頑固者だった。本人に自覚はなかったかもしれないけれど、結局はあの人が一番頑固者だったんだろうと思う。

 だから、別れも唐突だった。誰にもなにも告げずに、惚れている人にすらなにも言わずに、ただ僕に『美里さんを頼む』とだけ告げて、彼はどこか遠くに要さんを助けるために行った。

 ……残されるこっちの身にもなれって言いたかった。

 章吾さんがいなくなってから、ずっとそうしていたのだろうか。

 唇を噛み締めていた。なにも言えなくて、辛くて、それでも泣かないように彼女は堪えていた。

 慰めるわけにもいかず、放っておくわけにもいかなくて、僕は彼女の美咲ちゃんの側にいた。

 僕の気配を感じ取ったのか、美咲ちゃんは目元を拭って、泣きそうな声できっぱりと言った。

「……パパ」

「なに?」

「私、強くなる。強くなって綺麗になって、あの人の世話を焼く。もう放っておけない。馬鹿すぎるもん、あの人」

「……そっか」

 僕は少しだけ口元を緩めて、美咲ちゃんの頭を撫でた。

「がんばれ。僕も頑張るから」

「うん」

 美咲ちゃんは頷いて、それからほんの少しだけ泣いた。

 一緒に泣きたい気分ではあったけれど、僕は高校生だったので我慢した。



 綾名優子は目を開けた。近年稀に見るくらいに爽快な目覚めだった。

 意識はきっちりと覚醒し、何事もなかったかのように心はすっきりしていた。ただ、ベッドが硬いのがとても不満で、ちょっと寝返りを打ってから、彼女は自分が寝ている場所がベッドではないことに気がついた。

 冷たい感触。凹凸の激しい地面。まぎれもなくそこはコンクリートの上だった。

「気がついたかい?」

「えっと……アンタ、誰?」

 優子の顔を覗き込んでいたのは、灰色の髪を持つ少年だった。

 一瞬、なんだか大変なことを思い出しそうになって、優子は顔をしかめた。

「えっとさ……アンタ、どっかで会ったことなかったっけ?」

「君とはこれが初対面。どーでもいいけど年上に向かってアンタ呼ばわりはひどいなぁ」

「年上?」

「君、どう見たって十代でしょ? 僕は三十前半くらいだもん」

「はぁっ!? まじでっ!? 体と顔になんぼほどつぎ込んだらそんなに若さを保てるのっ!?」

「……介抱した人間に対してまじで失礼だね、君は」

 ゆっくりと溜息を吐いて、灰色の髪の少年は口元を緩めた。

「ま、その調子なら安心だ。それよりも、この先の公園で男の子と女の子が困ってる。至急助けに行ってあげるといいと僕は思うんだけど、どうかな?」

「アンタが行けばいいじゃない」

「病弱でね、あんまり動きたくないんだよ。背が伸びないのも童顔なのもそれが原因みたいなもんでね。見れば君はシスターみたいじゃないか。人助けだと思って、頼むよ」

「……ったく、そーゆーことはさっさと言いなさいよ」

 優子は溜息混じりに立ち上がり、服の埃を払って走り出そうと一歩を踏み出す。

 そして、不意に足を止めた。

「……ねぇ、やっぱりアンタと私、どっかで会ったことなかったっけ?」

「ないよ。あったとしても君の前世とか君の親とか子供の頃とかそんな感じじゃない?」

「そっか……そうよね」

 なにやら釈然としないものを感じながら、優子は走り出す。

 灰色の髪の彼はその後姿を見送ってから、杖を突いて立ち上がった。

「じゃ、そゆことで僕はそろそろお暇させてもらうよ。奥さんにめっちゃ怒られるのは怖いし」

「………………」

 気配を消して隠れていた死神は、電柱の影から姿を現すと同時に彼を睨みつけた。

「……あのヤロウの親父がテメェだったとはな。なんかもうなにから驚いていいのかわかんねーよ」

「子供が平凡だからって、親まで平凡とは限らない。まぁ、遺伝子的にはけっこーいいセンいってると思うよ。奥さんが100とすると僕は0だからね。計算式で表すと(100+0)÷2=50ってところかな」

「遺伝子みてーな複雑怪奇なものをそんな平凡な式にしてんじゃねーよ。世界中の学者に土下座しやがれ」

「土下座なら奥さんの前でだけしたいもんだねぇ。最近はキスで誤魔化すことも難しくなりつつあるから」

「惚気話はよそでやってくれ」

「ははは」

「……ったく」

 死神は溜息を吐いた。あの少年がこの男とあの女に育てられたかと思うと不憫でならない。

 それでも、死神は疑問を口にした。

「……なぁ、アンタはあの『絶望の使徒』に結局なにもしなかったのか? ただ側で起きるのを待ってただけみてーだけどよ」

「なんにもしてないってことはない。僕は彼女を『人間』にしただけさ」

「……は? いや、ちょっと待て。いくらなんでもそんな無茶苦茶は……」

 あまりにも不可解な言葉に、死神が口を挟もうとした、その時。


「え?」


 もうそこには、誰もいなかった。

 見回しても誰もいない。いや、そもそも誰かここにいただろうか?

「あれ? ……えっと、ああそうだ。確か隊長に色々と奢ってもらう約束だったな」

 なんで自分が『教会の前』などという場所にいるのかは分からないが、確かそういう約束だったはずだ。

 なんだか大切なことを忘れたような気もするが、忘れてしまったからにはきっと大したことはないのだろう。

 そんなふうに割り切って、死神は疲れたように溜息を吐いて歩き出す。

 なぜそんな風に割り切ってしまったのかには、まるで疑問は覚えなかった。



 去って行く死神の後姿を見つめて、灰色の髪の彼は口を開く。


「これで、誰かの話はおしまいです。続きはまた……機会があればということで」


 そして、杖を突いていつも通りに歩き出した。



 第二十八話『貴方の人生の物語』END ……to be continued 『■■■■■■』

 第二十九話『熱とバナナと体温計』に続く





 ちょっとした補足解説。


・無迷・大善牙

 むめい・だいぜんがと読む。善なる牙。別名ブレイブ・ファンタズム。命名についてはもちろんあの機体がモデル。子供が鍛え上げた最高傑作。子供が鍛え上げた最低の武器。能力は『理想の具現』。迷わぬのならばどんなイメージですら物質化する。対価は製作者の体力。体力で足りなきゃ命も持っていく。あんまり度が過ぎたもの(なんでもいうこときくはだかのねーちゃんとか)を創るとオーバーフローを起こして脳がプッツンするやばいモノ。限界の向こうは無限大でもなんでもなく、ただの廃棄物(ジャンクヤード)という典型例。

 かの夢幻殺しが使う二刀『無業散水』、『異形灼刹』とは似ているようで似ていない武器。製作者の性格は似たり寄ったりだけど、前者は現実主義者(リアリスト)で後者は幻想乙女(ロマンチスト)。創作物は製作者の鏡みてーなもんである。

・絶望

 作者が現在更新停止中な小説『猫日記』に出てきたアレと一緒。具体的には違うけど、大体同じもの。絶望が具現化しているものなので、大抵の場合は見た目がグロい。というかラスボスがスマートなのは最近の風潮で、一昔前のラスボスは大体グロかったし、悪役然としたヤツが多かった。……のだが、悪役然とした悪役なんぞそう多くいるわけもないので、流れとしては現在の風潮の方が正しい。『悪』とされる存在にも理由があったりするのである。

 親友にめっちゃ裏切られたり、フィアンセにめっちゃ裏切られたり、仲間がみんな死んじゃったり、人々に襲い掛かられたりしたら、フツーは『みんな死んでしまえ』的なノリになってもおかしくない。

 おかしくないのだけれど、そこで踏ん張らないとなんともならんのが現実ってもんである。

 さて、話は変わるが更新停止中の猫日記については……まぁ、設定がいっぱい詰まったパソコンがクラッシュしたり、自分が就職したりで忙しくなっちゃって更新する暇がなくなっちゃったのが原因。設定を煮詰めた上で少しずつ改定しながら続きを書こうかと思っています。

 ……今見直すとかなり甘い表現が腐るほどあるし。ぶっちゃけ書き直させて欲しいなぁ(死)

・世界制圧同盟

 なんかそういう同盟らしい。人間の数は六十億人、別の惑星やら世界を増えると知的生命体の数はもっと増えるのでこういう組織があっても全然おかしくない。とりあえずこの同盟を創った人のネーミングセンスだけは最低だったということだけはよく分かる。

 構成メンバーは47人。この数字の由来が分かった人はエスパー認定。当たり前すぎて誰も気づかないと作者は思ってるし、名乗るには格好悪い表現なので絶望踏破さんはあえて言いませんでした。上位のメンバーになるほど給金が上がるシステムになっているので、絶望踏破の彼だか彼女だかよく分からない人は全然下っ端なわけです。下っ端なので月給はかなり少ないです。むしろアルバイト感覚。少年漫画なんかと違って『戦闘能力』だけで能力の有無を判断される組織ではないので、いくら強かろうがなにしようが成果を出さなかったら意味がないわけです。

 参加条件は腹黒いこと。黒ければ黒いほど上に上がっていく仕組み。

・今回の小説について

 ルビがつけられるようになりました。小説家になろうの管理人ウメさんには本当に頭が上がりません。せっかくのリミッター解除なので思いっきりぶちまけました。括弧、括弧閉じの中の文字はパソコンで見ると全てルビとなっているはずです。……ただ、試験導入ということなのでどこまでやってくれるかは掲載してみないと分かりません。

 個人的に王道と書いてありきたりと読ませるのが大好き。

 や、自分は王道的展開は超がつくほど好きなんでそこのところを勘違いしてはいけませんよ? ド●クエで好きな人物は? って聞かれたら間違いなく勇者か主人公って答えますし。

 YES OR NO。勇者に曖昧などという言葉は存在しない。最高にクールです。しびれます(笑)

そして執事は剣を取る。ただ一人を守るために。

しかし……まぁ当たり前というかなんというか、誰かがわがままを通せばどこかにひずみが生じるわけで、尻をぬぐうのは、わがままを通した本人とは限らないわけで。

次の話は、そういうお話です。コメディです。

というわけで次回をお楽しみに♪


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