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第二十五話 舞ちゃんと螺武麗蛇吾

はい、そういうわけで一週間ぶりの更新です。

……そのせいか、ゲロ長くなっております。少々はしゃぎすぎた感がいなめません。反省することひとしきりでございます(謝)

と、いうわけで覚悟してお読みください。

 分かっちゃいるけどね。



 日は落ちて、日は昇り、そろそろ鳥も起き出す頃に少女は目を覚ました。

 いや、正確には覚ましてはいない。寝ぼけ眼を開けることなく、羽毛布団を引き寄せて体にかけ、抱き枕に蹴りを入れてベッドから弾き出した。

 自分の部屋の布団はこんなに寝心地が良かったかなぁとちょっと思ったが、気にしないことにした。

 はっきりと言えば、現実に戻りたくなかった。なんだかものすごく嫌なことがあったような気がしたのである。

 不意に、なんだか自分以外の存在を感じる。

(………まいちゃん?)

 ぼんやりとした頭で、自分が寝付けない時は必ず一緒に寝てくれる少女のことを思い出し、いつもと同じ要領で抱きついた。

 なんだかいつもと感触が違うし、においも違うような気がしたが、気にしない。

 少女は大好きな姉をいつものように抱きしめて、再び眠りについた。



 これは、少女が再び眠りについてから一時間後の出来事であり、惨劇まで残り一時間の出来事である。 

 そろそろ鳥が置きだした頃、少年はちょっとした寝苦しさに違和感を覚えた。

 なんだか柔らかくていい匂いの『なにか』が、自分の首を真綿で絞めているような、そんな矛盾した感覚。

 ついでに、毎日使っている愛用品がどこかに消え失せてかなり心許なかったりする。

(………………うーん)

 少しばかりうなされながら、少年は寝返りを打って愛用の抱き枕を手探りする。

 なにか柔らかい感触。

 僕の愛用品はこんなに良い出来だったかなぁと思ったが、眠気が疑問の全てをかき消した。

 愛用品を抱き寄せるとなんだかとても安心できた。昔飼っていた猫に抱きついたような、そんな幸せな気分になれた。

 日差しは暖かく、ついでに心も暖かい。

 少年は久しぶりとも言える心穏やかさで、深いまどろみの中に落ちて行った。



 惨劇二十分前。

 わりと早起きな少女と、生活態度が小学生並の彼女は、朝から追いかけっこをしていた。

 正確には、少女はこれ以上ないほどの全開で逃げていたし、彼女はこれ以上ないほどの全力で追いかけていた。ちなみに彼女の手にはいつもの左右対称のハサミではなく、人の首程度ならあっさりともぎ取れそうなほど巨大なハサミである。

 彼女はその『凶器』にしか見えないものを『高枝切り鋏』として使っていた。もっとも、今はその凶器の用途そのままに使おうとしているのだが。

 奇妙に切り揃えられた庭を全力疾走しながら、庭の主こと山口コッコは叫んだ。

「やはりあの手紙は貴女でしたか黒霧舞っ! いい加減にしなさいと美里にも言われたでしょうが!」

「うっふっふ、山口さんがロッカーを開けてラブレターを見つけたときの一瞬の硬直と、その後の慌てふためく様は見てて最高でしたよぅ。それに、今の時代は騙される方が悪いんですよ〜。パソコンだって日頃のセキュリティがものをいう時代ですよ?」

「黙りなさい、この悪辣小娘! 今すぐひどい目にあわせてやりますからね!」

「わぁ、ジャイアンみたいな脅し文句。とてもラブレター一通であんなに慌てふためいていたとは想像もできません」

「恋愛経験に関しては貴女も似たようなものでしょうが!」

「私には未来があるのですよ。もう二十歳も中盤のおばさまとは一味違うのです」

「………………」

 一瞬だけ足を止めて、山口コッコは前方を逃げる舞の背中を見つめた。

 距離、歩幅、加速、それらを目算しながらコッコは大鋏を振りかぶり、ぎりぎりまで体をひねる。

「……死になさい」

 宣告はそれだけ。わりと年齢のことに触れて欲しくない彼女は、まるでブーメランを投げるように大鋏を解き放った。

 ものすごい勢いで投擲された鋏は、風を切る鋭い音を発しながら舞に迫る。

 直撃すればほぼ即死。背後からとんでもない速度で迫る大鋏をかわせたとしても間違いなく体勢を崩す。

 しかし舞は微笑を浮かべながら、人差し指を動かした。


 ガギャァァァァンッ!!


 不意に空中で大鋏の回転が静止。壁に衝突したかのような鋭い音を響かせて地面に落下した。

 コッコは目を細めて足を止める。鋏を止めたのは、縦横無尽に張り巡らされた『極細のワイヤー』だった。

「甘いですねぇ、山口さん。この私を止めたいんだったら、ちゃーんと貴女が得意なインファイトで仕留めないと。そして、残念ながら山口さんは私に触れることもかなわない。……なぜなら、既に私の周囲には『極細ワイヤーの結界』を張り巡らせているからなのです! 迂闊に突っ込めばワイヤーに引っかかって『死』あるのみですよ〜」

「ほう」

 コッコは目を細めて、地面に落ちていた小石を軽く投げつけた。

 コツン、とそれは弧を描いて舞の頭にぶつかって落ちた。

「いたっ。ちょっと、いきなりなにするんですか!」

「なにって見ての通りですよ。結界の中に閉じこもって身動きが取れなくなった舞さんをじわじわと追い詰めようとしているだけです」

 コッコはにっこりと笑って、小石を思い切り振りかぶった。

 先ほどの大鋏を投げつけた威力と同じ力で放たれる小石。小石といえど侮るなかれ。時速十キロで衝突するものと時速百キロで衝突するものでは、威力も衝撃もなにもかもが違いすぎる。

 小石はまるで弾丸のように舞の頬をかすめ、屋敷の壁に穴を穿った。

「ふむ……最初はこんなものですか。投げるのは専門外ですからちょっとコツが掴めませんね」

 説得力のないことを言いながらコッコは腕を回し、にやり、と最高に邪悪な表情を浮かべた。

「ま、いいでしょう。百発も投げればいつかは当たりますし、『結界』とやらを周囲に張り巡らせた時点で『逃げ場なし』って言ってるようなもんですからねぇ。……まぁ、逃げようが逃げまいが関係なく、ここで貴女を『血祭り』にする事実は変わりませんが」

「な……ちょっ、ちょっと待ってくださいよぅっ! たんま、ストップ、今までのはほんのお茶目ですから!」

「まぁ、これがお茶目なら本気になった時はどうなることかしら? ……今すぐ抹殺しないと♪」

「ふぎゃあああああああああああああああああああああああっ!?」

 コッコがノーモーションで投げつけた石を全力で回避しながら、舞はかなり涙目になる。

 投げ放たれた石は、木に衝突し、地面に落ちることはなかった。

 石は、弾丸のように木に食い込んでいた。

(あ、あんなの食らったら軽く死ぬ……っ!!)

 死の恐怖に戦慄する舞。もちろんのことながら結界を作るときに逃走ルートは確保してあるが、その逃げ道は一本だけ。

 今の状況では、背を向けた瞬間に精密射撃が舞を射抜くことになるだろう。

(まずいですね……このままだと私は全身に石が突き刺さって、『モヤっとボール』みたいな死に方をすることに……)

 いまいち緊張感のない自分の死に様を思い浮かべて、それはかなり嫌だなぁと舞は思う。

 仕方なくゆっくりと息を吐いた。目を閉じてほんの少しだけスイッチを入れて、逃げ切る程度の全力を出すことにした。

 それから、うっかり結界内に巻き込んでしまった冥の花壇に足を踏み入れないようにと思って、ちらりとそちらに目を向ける。


 その時、舞は見てはいけないモノを見た。


 顔をしかめて溜息を吐く。頬を掻いて目を細める。

 予想しておくべきだったけれど、予想し切れなかった自分を少し責めた。

「山口さん」

「なんでしょうか?」

「今回は本当にすみません。貴女に謝るのは業腹だけど、今回は素直に謝っておきます」

「え?」

「じゃ、そういうことで」

 言葉少なに言い放ち、舞は冥が育てている花壇に容赦なく踏み入り、そこに置いてあった箱を拾い上げる。

 ダンボール箱を抱えたままジャンプして窓が開いている窓枠に手をかけ、鮮やかな動作で屋敷の中へと戻った。

「……さてと」

 仕切り直すかのように呟いて、舞は重い足取りで歩き出す。

 あの少年に相談しよう。この時間帯ならまだ部屋で眠っているだろうと……そう、思っていた。  



 かくて惨劇は始まる。



 目を開けると、そこは地下室でした。

「……いや、ちょっと待てい」

 思いっきりなにかにツッコミを入れながら、僕は自分の状態を確認する。

 僕の手首と足首には皮の拘束具。首には首輪がつけられていて、その首輪からはごつい鎖が下がっている。

 そのごつい鎖はとんでもなく太い柱に結び付けられていて、とりあえず脱出不可能だってことはよく分かった。

 服は制服のまま。どうやら、昨日眠ったままの服装らしい。

「……で、ここはどこ?」

 あまり見たくはないのだが、僕は周囲を見回してみた。

 注射器。

 鞭。

 バリバリの原色が綺麗な、薬品らしきもの。

 でっかい釣り針。

 ロープ。

 なんかおかしな形状の木馬らしきもの。

 あ、あれは分かる。鋼鉄の処女(アイアンメイデン)(注1)だ。

 …………………………。

「……あれは分かるじゃねえええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 思っクソ拷問道具の数々じゃねーか! あの巨大な爪切りみてーなのはなんだっ!? 一体なにを切ろうってんだっ!? 巨人族か竜の爪かなんかですかっ!? 残念ながら現実階梯の世界に竜や巨人はおりませんが!

 ちょっ、一晩眠って起きたら一体全体なんでこんなことにっ!? 僕の身に一体なにがっ!?

「……いやいや、落ち着け。これしきのことでパニくるな。まだ夢の中かもしれないじゃないか。ほーら。こうやって地面に頭を打ち付けても痛くも痒くも」

 僕はとりあえず地面に頭を打ち付ける。


 ゴスッ!


「ぎおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 ゴロゴロと地面を転がる。痛みに涙目になりながらも、僕はなんとか起き上がった。

 そして、完璧に状況を把握する。

「……ふっ、なかなかリアルな夢だね。痛みまであるとは」

 どこかで冷静な自分が「いつまで現実逃避してんだよ」とかほざいているがそんなコトは関係ない。

 そう、余程特殊な環境下(借金が1000万円ほどあるとか(注2))でない限りは『朝起きたら拷問室でした』なんてふざけた事態になるわけがないだろう。

 うん、そうだ。僕は極めて品行方正に生きてきた。そりゃあ多少はふざけたこともあったかもしれないけど、友樹よりは色々と真面目に生きてきた自負がある。……まぁ、向こうも同じコトを思っているだろーケド。

 しかしなんつーか……ホント、どーしよ?

「……っていうか、ここはどこの国なんだ? 本当に日本国ですか?」

 一人でツッコミを入れても寂しいだけなので、僕はそろそろ真面目に脱出方法を探すことにした。

 とは言っても、いくら僕が多少縄抜けの心得があるとはいえ、ここまで厳重に拘束されていては抜け出すことすらできない。脱臼がくせになる上にめちゃくちゃ痛いのであまり外したくないのだけれど、手首の骨を外せば手錠くらいはなんとかなる。でも、さすがに首につけられた首輪までは本当にどうしようもない。

 さてさて……ホント、どーしたもんか。

「さべつ、ちんあつ、よくあつ〜♪(注3)」

「?」

 今、なんか、独裁者が好みそうな、ものすごく不吉な歌が。

「さくしゅ、じゅうぜい、だんあつ〜♪」

「………………」

 母さん、父さん、コッコさん。すみません、なんつーか僕は帰れそうにありません。

 僕はどうやら、異空間に迷い込んでしまったようです。

 残念、僕の人生はここで終わってしまいました。げーむおーばー。……そんな気分だ。

「しゅくせい、とうた、とうごく〜♪」

 ああ、足音が。死の足音がすぐそこまで……。

「ごうもんさつりくぎゃくさつ〜♪ し〜け〜い〜♪」

 ガチャンッ、ガギンッ、ギィィィィィィィィィィ。

 僕の位置からは見えない扉が開いたらしい。コツ、コツ、コツ、という死の宣告が響く。


 そして、僕は本物の絶望というヤツを目の当たりにした。


 真っ黒なゴスロリ服に、見る人が見れば、まぁ天使くらいには見えるかもしれないにこにことした笑顔。

「は〜い、元気にしてましたかこの下半身野郎。愛の拷問処刑粛清殺戮戦士こと黒霧舞ちゃんのお出ましですよ〜♪」

 でもよく見ると、確かに笑顔は全体的に見れば笑顔と言えなくもないけれど、口元は憎悪に満ち満ちて引きつりまくっているし、こめかみあたりには血を吹き出さんばかりに血管が浮き出ている。なによりその激烈な殺気は野生動物程度ならあっさりと逃げ出し、子供はひきつけを起こして入院し、体の弱い老人ならショックのあまり心臓発作を起こしかねないだろう。

 そしてゴスロリ服。確かに全体的に見れば『ある意味』可愛いのかもしれない。

 僕だって普段ならなんとも思わなかった。……しかし今は違う。

 舞さんの手には、恐ろしいほどに生々しく死を連想させる『鉈(注4)』が握られていた。

 可愛いものにグロいものが加わると恐怖は倍増する。可憐な乙女がごっつい凶器を持って笑顔になるだけで、大半の男はおしっこちびって土下座でもなんでもして許しを乞うしかないのである。

 ……で、なんで僕がそんな状況に追い込まれているんだろうか?

「……あの、舞さん。ちょっと聞いておきたいんだけど、なんでこんなことになってるの?」

「あはは〜♪ ………死ぬええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 なにがお気に召さなかったのか、舞さんは思い切り僕に向かって鉈を振り下ろしてきた。

「うぉあっ!?」

 ドガッ!

 当たれば即死間違いなしの一撃を、僕は拘束されながらもぎりぎりのところでなんとかかわす。

「いや、ちょっとたんまっ! 殺す前に説明、せめて説明をっ! 僕は一体何をしたのか全然心当たりがないんですがっ!」

「くっくっく、心当たりがないですって? そんなはずはないでしょう。ホラ、胸に手を当ててよーく考えなさい」

「………………」

 昨日の出来事を思い出そうとして、思い出すまでもなく心当たりに思い当たった。

「……えっと、その、すみません」

「そうそう、分かればいいんです。男の子なんだからちゃんと責任を取って」

「うん。昨日の朝食に食べてしまったみつやの三百個限定高級プリンはちゃんと弁償するよ」

「そっちじゃねェェェェェェェェェェェェ! っていうか坊ちゃんだったんですかァァァァァァァァァァァァ!?」

「あれ? 違うの?」

「違いますっ! それもまぁかなーりむかつきますが、私が怒っているのはそんなことじゃありません!」

 まぁ、そりゃそうか。舞さんって何気に自分のことで本気で怒ることってあんまりないし。

 だとすると、あとは冥さんに関連すること以外にありえないのだけど……。

「や、ごめん。本当に分からない。ねぇ、舞さん。僕は一体冥さんになにをしたんですか?」

「そ……そんなコト、私の口からは言えませんっ!!」

 なぜか真っ赤になってそっぽを向く舞さん。

 うーん……やばい。まじで分からないし思い当たらない。舞さんの反応もよく分からない。

「もしかしたら、最近あげたぬいぐるみがさっぱり気に入らなかったとか、奢ったクレープがあんまり好きなものじゃなかったとか……。あ、そうか。デパートに一緒に買い物に行った時に買った服がこれまた全然気に入ってなかったとか」

「キエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェ!!」

 ズギャッ!

 舞さんが全力で打ち下ろした鉈は、僕の頬を掠めて床に突き刺さった。

「ちょっ、いきなりなにすんのっ!?」

「なにもなにもないですよぅこの下半身がっ!! いつから坊ちゃんは冥ちゃんと買い物に行くようになったんですかっ!? 冥ちゃんと買い物なんて……なんて羨ましいっ!」

「ちょうど暇してた冥さんと一緒に買出しついでにデパートに行っただけだよ。服を買ったのもついでみたいなもんだし」

「ついでで恋人でもない女の子に服を買っちゃうんですかっ!?」

「……いや、まぁ色々あってね」

「お茶を濁さないっ! はっきりと答えてくださいっ!!」

 ものすごい剣幕で舞さんは僕の襟首を掴んで睨みつけてくる。

 仕方なく僕は、溜息混じりに言った。

「あのさ、前々から……薄々と思ってたけど」

「なんですか?」

「舞さんが選ぶ服は、ちょっと少女趣味過ぎるよーな気がします」

「いいじゃないですか。似合うし」

「似合うときっぱり断言できる心胆は羨ましい限りなんですが。その……冥さんはそういう服を全く気に入っていないみたいなんですね、これが」

「………………」

 血を吐きそうなくらいに悲痛な表情を浮かべる舞さん。

 でもまぁ、ここできっぱりと言ってあげるのも本人のためというやつで。

「や、舞さんが選ぶ服は冥さんには似合うと思うし、可愛いとも思うよ? でも、冥さんとしてはもっとこう……赤とか青とかピンクとか黒の原色バリバリ『私目立ってます』みたいな服じゃなくて、淡色系の『普通』な服がいいみたいでね」

「……………あう」

「で、それを買い物の途中でちょっと言われたんで、せっかくだから服でも買って行こうかって、そういう話になったわけで……」

「…………………」

 見る見るうちにものすげぇ勢いでへこんでいく舞さん。

 ちょっと泣きそうな顔をしながら、地面に鉈で『の』の字を書いていたりする。

 ……なんか、可愛いんだか怖いんだかよく分からなくなってきた。

「………買ったんですか?」

「へ?」

「………坊ちゃんはどんな服を買ったんですか?」

 涙目になってかなり拗ねながらも、舞さんは僕に向かって問いかけてくる。

 正直、それはあまり聞かれたくないことだった。

 僕はにっこりと笑って、額に汗を一筋流し、目を逸らしながらきっぱりと言った。

「そりゃもう、平凡で当たり前な、極めて普通のお洋服ですよ?」

「……どんな服を買いやがったんですか?」

 うわ、首に当たる鉈の感触が冷たくて嫌な感じ。ついでに舞さんが僕に向ける視線も絶対零度だったり。

 物理的な脅迫に、僕は渋々白状するしかなかった。

「寝間着に甚平と作務衣、それからGパンと皮のジャケット。他にも数着買ったけど、あとは冥さんが自分で選んだものだね」

「……ねぇ、坊ちゃん」

「はい?」

「甚平とか作務衣とかGパンとかジャケットとか……明らかにアンタの趣味丸出しじゃないですか!!」

「いーじゃん。甚平と作務衣。本当は振袖が欲しかった。売ってなかったから断念したけど」

「坊ちゃん、アンタアホでしょ? アホなんでしょ? 和服好きの悪霊とかに取り付かれたりしたんでしょ!?」

「和服好きのなにが悪いっ!? そもそも、君が妹に自分の趣味とか押し付けるのが悪いんだろ! 最近冥さんが僕の部屋に入り浸ってるのだって、君があんまり娯楽とか教えないせいだろーがっ! 最初にゲーム画面を見た冥さんの顔は、そりゃもう『江戸時代の人間が初めてテレビを見た』ような感じだったぞっ!! 痛々しくて思わず泣きそうになっちゃったっつーのっ!!」

「冥ちゃんは女の子らしく可愛く育てるんですぅ! そんな十年前のレトロゲームとか坊ちゃんみたいなアホしかやらないようなものは本当は大反対なんですからねっ!!」

「レトロゲームを馬鹿にすんなこの少女趣味がっ! 君だって似たようなもんだろうがっ!」

「似てません〜。全然似てません〜。私はヒラヒラな服と格闘、またはアクションゲームが好きなだけです〜。その辺のことも理解できない坊ちゃんって、つくづくアホですよね♪ 財産を私と冥ちゃんに残して死ねばいいのに♪」

「ハ、冥さんにならまだしも絶対に君には一銭もやらん。大体、冥さんだって君のこと『基本的には優しくて気立てが良くてとってもいいお姉さんですけど、応用的にはちょっとウザったくて将来が心配です』とか言ってたぞっ!」

「言ってません! 冥ちゃんはちょー可愛い天使なんだから『ウザ』とか言いませんっ! 言ったとしても私に対してならオールオッケー! 冥ちゃんはなにをしても許されるんだからっ!」

「……………うん、まぁ、君がそう思ってるなら、僕からはなにも」

「痛々しいものを見る目で見ないでくださいっ!」

「前々々々々々々々々々々々くらいから言おうと思ってたけど、シスコンもたいがいにしとかないと嫌われるよ?」

「……………うっ」

 なにやら思い当たる節があるのか、舞さんは思い切り傷ついたような表情を浮かべた。

 あー……なんだか、大型の地雷を踏んだ気がする。

 舞さんは鉈を床の上に置き、どういう心境の変化か僕の拘束を丁寧に外して、真っ直ぐに僕を見つめた。

「……ねぇ、坊ちゃん」

「なんでしょうか?」

「冥ちゃんのこと、ちゃんと幸せにしてくれますよね?」

「………………………………………………はい?」

 僕の頭の中が一瞬で真っ白になる。

 ちょっと待て。意味が分からない。なんでそんなことを、いきなり?

「坊ちゃんが冥ちゃんを幸せにしてくれるんだったら……私も、ちゃんと祝福します。もう覚悟はできてます」

「や、ちょっと待って。どうしてそういうことになるの? 僕と冥さんは別にそんな関係じゃ……」

「え……だって」

 舞さんは顔を赤らめながら、不思議そうな顔で、僕が忘れていることを言った。


「坊ちゃんの部屋で、一緒に寝てたじゃないですか」


 …………待て。

 いや、ちょっと待ってくれ。まさかそんな。

 え? あの……どういうコト?

「…………舞さん」

「なんですか?」

「一分ほどお待ちください。冷静に思い出します」

「はい」

 わりと大人しく、舞さんは僕の(ある意味)無茶な要求を呑んでくれた。

 えっと昨日は……朝に舞さんのプリンを黙って食べて、学校に行ってから友樹の下駄箱にラブレターが入っていることに不条理を覚えながら授業を受けて、昼休みに友樹の手紙にこっそり細工をして、放課後に見事なまでにふられた友樹を見て愉快な気分になりつつ家に戻って、冥さんのセーブデータが消えて冥さんが廃人になって、コッコさんのラブレター騒ぎがあって、重いツッコミを入れられてKOした。

 ……………ん?

「ああ、はいはい。思い出しました。うん、そっか。そーゆーコトか」

「坊ちゃん?」

「………………」

 僕はにっこりと笑ってゆっくりと立ち上がり、息を吐いて目を閉じた。

 そして、目を開いて舞さんを正面から見つめる。

「舞さん」

「なんですか?」

「僕を殺してください」

「………………は?」

「いや、なんつーか鉈とか生ぬるいのじゃダメですよ。ほら、あそこにアイアンメイデンがありますから、あれに僕が入って、舞さんは容赦なく蓋を閉めるとかそういう感じで」

「ちょっ、なにいきなり清々しい顔で生々しいこと言ってるんですかっ!? 自殺志願っ!?」

「舞さんってなにかと僕のこと殺したがってたじゃないですか。ほら、これもいい機会ってことで。ね?」

「いやいやいやいやいやいやいや! そんな家電を売りつけようとする店員みたいな口調で言われてもっ!」

「うるさいなぁ、いいから殺してよっ!!」

「なんで逆ギレするんですかっ! ……っていうか、なにがあったんですか?」

 冷静なツッコミに、僕は涙目になった。

 が、滅多にお目にかかることのない舞さんの『真剣な瞳』が、僕を容赦なく追い詰める。

「坊ちゃん、なにがあったんですか?」

「や、それは……その、昨日ちょっと色々ありまして」

「お茶を濁さないで、はっきりと答えてください」

「……はい」

 仕方なく僕は正座をしながら昨日の経緯を説明した。セーブデータが吹っ飛んで冥さんが廃人になり、仕方なく僕の部屋のベッドで休ませていたこと。そしてコッコさんのツッコミによって戦闘不能になった僕が、そのまま冥さんのことを忘れ去ってベッドで寝てしまったこと。

「……なるほど。そういうことでしたか」

 こくこくと納得したように舞さんは頷いて、なんだか呆れたように溜息を吐いた。

「坊ちゃん」

「…………はい」

「私も大人げなかったとは思いますが、妹が男性と一緒の布団で『抱き合って』寝ていたらフツーはびびります。ギャルゲーの主人公ですか、アンタは」

「…………ホント、反省してます。すんません」

 誰がギャルゲーの主人公やねんとか突っ込みたかったけど、今は反論できなかった。

 ああ、ちくしょう。なんて恥ずかしさだ。顔から火が出るとはまさにこのことだ。

 眠っている間になにかに抱きついてしまう自分のクセをここまで恨んだのは初めてだ。この前の修学旅行さえもなんとか凌いだっていうのにっ……!。

「本当に反省してますか?」

「してます。ええ、いつもいつもテキトーに流してきましたが、今回ばかりはまじです」

「……本当に反省してますよね?」

「はい。今なら『なんか面白いことやってよ』とか言われたら面白い大道芸を演じてしまうくらいには反省してます」

「なるほどなるほど……それはある意味好都合」

「?」

 舞さんはなにやら呟きながら、『なにがしまわれているのか絶対に知りたくない棚』に手をかける。

 その棚をゆっくりと開いて、中から段ボール箱を取り出した。

 きっとあの平凡な段ボール箱の中には想像を絶するモノがしまわれているに違いない。『顎砕き機SP16(今なら鎖骨砕きHG101がついてくる)』とか、『首ねじりひねりもぎ取り君(今なら大特価、ご奉仕価格の二万九千八百円)』とか、『万能十得ナイフ(頭皮の剥ぎ取りから爪の引っこ抜きまで、十種類の使い道)』とか、そういうの。

 ああ、さようなら世界。さようならみんな。うあああああああ。

 と、僕が青ざめながら死の覚悟を決めた、その時。


 みゃーという可愛らしい声が聞こえた。


 ざわ、と背筋に寒気が走る。

 段ボール箱の中には……三匹の子猫が入っていた。

「ほらほら、三毛に黒に白ですよ? 可愛いですよ〜」

 や、分かっている。そんなコトはとっくの昔に理解している。

 アレは神が創りたもうた世界最強の可愛らしさを体現した存在。『泣ける映画』で涙一つ零さずに、むしろあまりのご都合主義に嘲笑した鬼畜な僕が、子猫の可愛いらしさに意味もなく泣けてくるという奇跡を体感させられた。

 くっ……しかし、しかしっ!!

「だ……駄目ですっ! それだけは駄目なんですっ!」

「え〜? 可愛いですよ? ほーらこんなにふわふわでもこもこでふにふにで」

「くっ……!」

 くそっ……分かってる。僕にだって子猫がふわふわでもこもこでふにふにだってことくらい分かってるさっ。

 分かってる……分かってるケド、流石になんの前フリもなく『可愛いから』って理由で動物を飼うのは非常に良くないんだ。そうやって無計画に飼って『こんなに大きくなるとは思わなかった』とかほざく、アホで間抜けで馬鹿極まりない人間に僕はなりたくない。……ああ、でも可愛いなぁ。猫可愛いなぁ。ふかふかしてるなぁ。

『みゃー』

 うわ、みゃーとか言ったよ。みゃーってっ。ああ、なんかもう……可愛いなぁ。

「……坊ちゃん」

「なにさ?」

「もしかして……坊ちゃんって猫好きですか?」

「猫に限らず可愛いものは大好きだけど」

「…………………さいですか」

 自分で猫を登場させておきながら、なぜかものすごく微妙な表情を浮かべる舞さん。

 むぅ。なんだかものすごく引かれている。アレか、男が猫好きとかそーゆーのはいかんのか。

 でも章吾さんは間違いなく猫好きだぞ。あの人の部屋には猫がめっちゃ住み着いているし。ちなみに陸くんは間違いなく犬派だ。この前街で見かけた時にペットショップのショーウインドウに飾られてる柴犬めっちゃ見てたし。

 まぁ、それはそれとして。

「うーん……それじゃあ、仕方ないですね」

「飼ってくれるんですか?」

「保健所ってどこにありましたっけ?」

「鬼ですかアンタはっ!?」

 怒鳴りながら僕の頭をどつく舞さん。本気で殴ったのか、かなり痛い。

 いやー、なんていうか、『打てば響く』ってのはまさにこのことだと痛感させられる。実にいいツッコミだ。

「んもーっ! 絶対分かっててやってるでしょっ!? 私のことからかってそんなに楽しいですかっ!?」

「そりゃもう滅茶苦茶楽しい……じゃなくて、現実問題としてウチのお屋敷で子猫を飼うのは不可能に近いです」

「どーしてですか?」

「子猫ってのは放っておくと一日で脱水症状を起こして死んじゃうほどか弱い生き物で、三時間に一回くらいの割合でお乳を飲まないといけないです。で、ミルクに関しても市販の牛乳は当然アウト。猫用のミルクを買って来ないといけません。ミルクがなんとかなったとしてもトイレの世話、その他諸々の躾、それらを一体誰がするんですか? それ以前に、この屋敷にはそれなりに高額なものだってけっこーあるんです。すさまじく高級なカーペットで爪研ぎをされたり高価な椅子の上で粗相をされたりしたら目も当てられないです」

「…………う」

 完璧な正論にうろたえる舞さん。

 や、そりゃ僕だって飼えるもんなら飼いたいけど……そういう事情があるんだから仕方ない。

「だから、僕らにできる最善は飼い主を探してあげることくらいです。……飼ってあげたいのは山々だけど」

「じゃ、お願いしますね」

「は?」

 舞さんは唖然としている僕に、子猫の入った段ボール箱を押し付けた。

「言っておきますけど、ちゃーんと飼い主さんを見つけてあげないと惨殺しちゃいますからね?」

「いや……その、飼わなくていいんですか?」

「私は『飼って欲しい』とは一言も言った覚えはありませんけど」

「……………な」

 は……はめられたっ!?

 舞さんはにやりと邪悪な笑みを浮かべて、僕の方をポンポンと叩いた。

「じゃ、そういうことで後のことはよろしくお願いしますね。それと、私に対する精神的な負担は、あとで物理的な慰謝料として払ってもらいますから。具体的に言えば、服とか鞄とかアクセサリとか」

「ちょ、ちょっと待って。それはいくらなんでも」

「なんでもするって言いましたし」

「……………ぐっ」

「冥ちゃんにはなんでも買ってあげてるし」

「……………げふっ」

「前々から思ってましたけど、坊ちゃんは思わせぶりな行動が多すぎます。今後はそういうのは謹んでください」

「……………すみません」

 飼い主探しを押し付けられたのに、なんで僕が謝ってるんだろう?

 世界の不条理をかみ締めながら、ちらりと段ボール箱の中身を覗いて見る。

『みゃー』

 ……不条理なんぞクソくらえ、と僕は思った。

「分かりました。今回は僕が全ての責任を取ります。飼い主くらい三日で探してやりますよ」

「私との約束も忘れないでくださいね?」

「はい、とりあえず三万円くらいでいいですかね?」

「わーい、やったー……ってこんな味も色気も旨みもない『現金』で乙女が納得するかァァァァァァァっ!!」

 うん、実に素晴らしいツッコミ。僕が修学旅行でいなかった間は舞さんが主に突っ込んでくれたのだろう。

 そう考えると……実はけっこー貴重な人材だったりするのかもしれない。

「はいはい、分かってますよ。それじゃあ再来週の日曜あたりでいいですか?」

「なんで来週じゃないんですか?」

「来週は予定がありますし、再来週から見たい映画が始まるし、ついでに言えばみつやの季節限定新作ケーキの販売が始まるのもその日からで、ついでだしちょうどいいかなと」

「………………」

 おお、睨んでる。めっちゃ睨んでる。『私と出かけるのは『ついで』ですかこの野郎』と言わんばかりの絶対零度。

 僕は絶対零度の『死線』を流しながらにやりと笑った。

「ところで舞さん」

「……なんですか?」

「最近、冥さんが世話をしてる子猫も黒と白と三毛の三匹なんですけど、知ってましたか?」

「………………」

 舞さんはものすごく不機嫌そうな顔になると、呆れたように深々と溜息を吐いた。

「……最初から知ってたんですね?」

「ご主人様は体重とスリーサイズ以外はなんでもご存知なのですよ」

 内心の大爆笑を堪えながら、僕は口元だけで笑って言った。

 実際には3対7くらいで僕の負けだったけれど、それはあえて考えないことにした。



 猫のことを押し付けるだけだったのに、黒霧舞はやたら疲れていた。

(……ったく、あのぼんぼんはホント性悪なんだから。あんなヤツに冥ちゃんを任せていいのかしら?)

 舞が見つけ出した地下室は、この屋敷が作られた当初からあったらしいものらしい。一体どのような用途に使われていたのかは考えたくもないが、少年曰く『えっと……多分、人に言えない趣味かなんかじゃない? 母さんにちょっと聞いたけど、この屋敷の前の持ち主って《コスチュームプレイ》が好きだったらしいし』ということらしい。

 血なまぐさいことになっていないのはいいが、その片づけを押し付けられるこっちの身にもなって欲しい。

「…………はぁ」

 少年は学校に行き、今この地下室にいるのは自分だけ。ほんの少し空しさを覚えて、舞は溜息を吐いた。

 一人でいるのはあまり好きじゃない。暗いものが胸の奥をかすめて通り過ぎていくからだ。

 ほんの少し思い出す。業務の合間に花壇の世話をやっている妹と、それを見ながら必要な時だけアドバイスをするあの女。二人はまるで仲のいい姉妹のようで、冥もあの女も朗らかに笑っている。

 それを見て、疎外感と孤独を感じている自分がいる。

 いや、実際のところは薄々分かっている。分かってはいるが認めたくないだけ。


 もう、妹は自分を必要とはしていない。


 当たり前のことだ。誰だって大人になる。大人になるということは決して『立派になる』ということだけではない。

 妹はもうその一歩を踏み出しつつある。なるべくなら自分でやって、必要な時には人を『頼る』ということを覚えつつある。なんでも一人でやろうとしていた少女は、『仲間』がいることをきちんと自覚しようとしている。

 一人でなんでもできるのは確かに『強い』。しかし、それは同時に弱さを内包する。

 それは『孤独』という弱さ。『自分はたった一人だけ』という強迫観念。周囲の人間と打ち解けないという『存在』という意味での弱み。……たったそれだけの、しかし決定的な弱さ。

 人は一人でも生きられる。しかし、一人でも生きていけるのは『弱い』からに他ならない。

「……分かってはいるし、妹の成長は喜ばしいことではあるんですけど」

 それでも、それを寂しく感じてしまうのは……自分が弱いせいなのか。

 頭で理解はできるが、感情で納得はできない。

「……はぁ」

 なんとなく憂鬱を感じて溜息を吐きながら、舞は作業に戻る。

 と、その時、ポケットになにか違和感を感じた。

「……………?」

 ポケットに入っていたのは、見覚えのある手紙。

 自分の筆跡で『山口コッコ様』と書いてあり、その隣に自分のものではない字で『添削済み』と書いてあった。

 いぶかしみながら開いてみると、誤字や脱字や文法の間違いに赤線が引いてあり、『手紙の書き方も知らないようだと陸くんみたいに強制的に学校に通わせることになるから今後は注意してね』と追記してあった。

「……あの野郎」

 顔をしかめながら手紙を裏返す。そこにも、赤字で一文が記されていた。


『キミが思っている以上に、冥さんはキミを見てるから、あんま心配しなくてもいいよ』


 たったそれだけ。簡単な一文を見て、舞の動きが止まった。

 ゆっくりと溜息を吐く。呆れながら頭を掻いて、舞はポツリと呟いた。

「……馬鹿ですね、アイツ」

 仕方ないなと言いたそうな口調で呟いて、舞はほんの少しだけ口元を緩める。

「これはもーちょい……教育の必要がありそうですねぇ」

 自分を見ている暇があるんだったら、その時間を妹を可愛がることに使えと言いたい気分だった。

 それでもほんの少しだけ心は軽く、舞はゆっくりと伸びをして立ち上がる。

 時間は少なく、仕事は多く、やることはまだまだ山積みで、自分とも他人とも向き合わなきゃいけない。

 けれど、生きるということは結局そういうことなんだろう。

「……さて、と」

 舞は小さく笑いながら歩き出す。

 とりあえず、この変な地下室をさっさと片付けてしまおうと思いながら。



 第二十五話『舞ちゃんと螺武麗蛇吾』END

 第二十六話『彼と彼女の初デート』に続く





 注訳解説ってなに? 食べ物?


 注1:鋼鉄の少女と書いてアイアンメイデンと読む。ジャンプをそれなりに長く購読している人は多分『シャーマンキン●』とかで知っていると思うが、要するに『蓋の内側に無数の針がついたカンオケ』である。言うまでもなく拷問というよりも処刑を目的とした道具である。

 ……こんな道具が地下室にでも置いてある屋敷には、絶対に住みたくないもんです。

 注2:借金もこれくらいの単位になると、黒服の人たちが家に押し寄せて地下に連れて行かれます。で、金持ちの道楽のために穴掘りとかさせられて、ペリカを賭けて色々と勝負をする羽目になるわけですよ(笑)

 分からない人は『ペリカ カイジ』あたりで検索検索♪

 注3:差別鎮圧抑圧搾取重税弾圧粛清淘汰投獄拷問殺戮虐殺死刑。独裁者が好きそうな言葉の数々。

 ホント、日本語ってレパートリーが豊富で使うのが楽しいっす♪ 英語なんて……英語なんてっ(泣)

 注4:木を割ったりする時に使われる無骨な刃。勢いと重みで木を叩き割るのに使うけど、木が割れるってことは当然のことながら人の頭も割れるわけで、こいつを可愛い女の子とかが使うと恐怖が軽く百倍ほどに跳ね上がることになる。見た目よりも破壊力があり、迂闊に斧とか使うよりも使い勝手がいいのが特徴。

 ……とはいえ、ファンタジーでこれを振り回す人間を僕は見たことがありません(当然)

はい、そういうわけで作者としても想定外の一話『舞ちゃんとラブレター』、もしくは『にゃんだふるぱにっく、ゴスロリと鉈VS鋼鉄の処女』をお送りしました。楽しんでいただけたら幸いです。

と、いうわけで次回は章吾さんと彼女の初デート的なもの? になると思います。お楽しみに♪

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