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第二十話 甦る悪夢と修学旅行(突破編)

今回は学友の方々中心。正確には似たもの同士の喧嘩でございます。


 これは、男の願望を裏切った一人の少年の物語である。



 暗闇の中、純白のあいつは一人笑っていた。

「諸君」

 にやりと不敵に、どこまでも不屈の笑顔を浮かべていた。

「諸君は俺と思いを同じくする者。そう、我らは一つの思いを共有する」

 月明かりに照らされながら、白の女垂らしは笑った。


「そう、我々は女の子が大好きだ(※1)」


 まるで軍団指揮者のように、あいつは笑っていた。

 僕はそれをゴキブリを見るような目で見ている。ぶっちゃけドン引きだ。

 その間にも、ヤツの演説は熱を帯びていく。

「女子高生が好きだ。女子大生が好きだ。OLが好きだ。ナースが好きだ。眼鏡ッ子が好きだ。人妻が好きだ。キャビンアテンダントが好きだ。ツンデレが好きだ。妹属性が好きだ。貴婦人が好きだ。街道で、喫茶店で、砂浜で、キャンプ場で、学校で、ゲームセンターで、病院で、家で、この地上に存在するありとあらゆる女の子が大好きだ」

 この時点で僕はかなり飽きて、お茶を飲みながら漫画本を読み始めた。

「家が隣同士の幼馴染がベッドの上に乗って自分を起こしに来るのが好きだ。バレンタインで普段は気の強い女の子が「ぎ、義理なんだからね!」と言ってチョコをくれた時など心が躍る」

 うん、なかなか美味しいお茶だ。空港で暇してる時に買った漫画もなかなか。

「甘えん坊の妹に抱きつかれるのが好きだ。コロッケ売りのお姉さんに「はい、君だけはちょっと特別」などと言われてメンチカツを渡された時は胸がすくような気持ちだった」

 ああ……うん、そろそろ耳障りになってきた。どうしてくれようか。

 他人事とはいえ、『聞いてて面白くない事実』ってのは存在するわけで。

「ぽややんとしている女の子をちょっといじめて涙目にするのが好きだ。隣のお姉さんに「友樹くんじゃなきゃダメなの」と言われた時には感動すら覚えぶっ!?」

 ゴズッ!!

 かなり鈍い音が響く。我ながらとんでもないことするなぁと僕は思ったけれど、それはそれでなんとなく仕方がないような気がする。男として。

 僕は陸くんの要望で買った『シーサーの置物(※2)』を鞄に仕舞いながら、言った。

「友樹、くそやかましいから黙れ」

「……フ、親友。そんなに照れなくてもいいじゃないか。これから始まるのは一世一代の大イベント。下手を打てば死人が出るかもしれない戦場だ。修学旅行はこれのためにあると言っても過言ではない!」

 なぜか得意げというか自慢げに断言する我が親友こと有坂友樹。

 シーサーの置物で殴り倒されたのになぜか元気だし。

 ホント、こいつ死んでくんねーかな。できれば付き合っている女の人全員に順番に刺されて死んで欲しい(※3)。

「そう、オレ達が望んでいるのは一心不乱。男全てが望む桃源郷」

 にやり、と僕の親友はものすごく悪そうな笑みを浮かべた。

「人はそれを『女湯』と呼ぶのだよ、親友」



 男っていうのは基本的にも応用的にも馬鹿な生き物だけれど、そこまで馬鹿を極めなくてもいいと僕は思う。

 修学旅行二日目。色々と紆余曲折あったものの、基本的には虎子ちゃんの行きたい所を最優先で回ることにした。ちなみに一日目は『分校見学』などつまらないことこの上ない行事が満載だったので省略する。

 委員長がハブを見てめちゃめちゃ恐がっているのを見て心潤されたり、虎子ちゃんが沖縄料理を食べてものすごく良い笑顔を浮かべているのを見て優しさを分けてもらったり、『サーターアンダギー』を初めて食べる委員長に「実はそれ豚の目玉を砕いたものの揚げ物」などととんでもねぇ嘘を吐いてびびらせてみたり、『ミミガー』を初めて食べる委員長に『実はそれ兎の耳』と嘘を吐いて怒らせてみたり、『ゴーヤ』を食べて驚いている虎子ちゃんに『実はそれピーマンの親玉だからねぇ』とさりげない嘘を吐いてみたり、虎子ちゃんが交差点で滑って転んで老婦人に重傷を負わせかけたり、すっかり拗ねてしまった委員長に全員でヤシの実ジュース(※4)を奢って全力で怒らせてみたり、虎子ちゃん用の『海人Tシャツ』のサイズがなくて店員を呼び出して僕と友樹でネチネチ嫌がらせをしたり、最後に委員長が心底行きたがっていた朱里城に行ったりと実に有意義な一日だった。

 うん、今思い返してみても楽しい一日だった。やっぱりあの二人は最高に可愛い。

 ぜひとも、彼女たちにお似合いの最高に格好いい、あるいは最高に『尽くしてくれる』タイプの男を探してやらなければならないだろう。

 生半可な男と付き合うのは、僕が許しません。……まぁ、許す許さない以前に彼女たちと恋人になろうと思う男が生半可なわけはないのだけれど。

(さて……それはともかく)

 さらに目が悪くなりそうなので、僕は漫画本を閉じた。

 明りを消した室内は、本当は心が落ち着くはずの和室のはずなのだけれど、今その和室は極めて重要な作戦を実行するための『作戦会議室』となっていた。

 明りを消す意味がイマイチよく分からないケド、まぁそういうものなんだろう。誰かが持ち込んできたカンテラというかトーチ(※5)というか、ファンタジー世界に出てきそうな、時代錯誤の照明のおかげで本を読む程度の視界は確保できているわけだし。

「隠しカメラによる盗撮」

「NON。それでは証拠が残る」(※6)

「望遠鏡。遠距離からの覗き」

「NON。角度的に不可能だ。それは昨日で検証が終了している」

「男湯からの錐の使用」

「NON。男湯と女湯を隔てる木の壁の中央に鉄板が仕込まれている」

「人工衛星」

「NON。それではあまりにも面白味に欠ける上、画像が不鮮明になる」

 男たちによる秘密の会議が続く。……つーか人工衛星ってなんだよ。

 もはや投げやりに突っ込むのも馬鹿らしくなり、僕は欠伸をしながら持ち歩き専用のバッグを持って立ち上がる。

「おい、親友。どこに行くつもりだ?」

「ゲーセン」

「をいをい、ちょっと待てよ。せっかく盛り上がってきたのに『ゲーセン』はねぇだろうに。お前だって見たいだろ? 見たいよな? まさか見たくないってことはないよな? 男だもんな? しかも今回はお嬢様クラスこと『A組』、そして意外と可愛い女子が多い、我が『B組』だぞ」

「……昨日、C組を覗こうとしたら反対に覗かれてたからね」

 全員が俯いて押し黙る。中にはちょっと涙ぐんでいる者さえいた。

 C、D、E組合同女子主催『思ったよりも体格のいい男子コンテスト』が開催されたのはつい昨日の話だ。

 ルールはとても簡単。女湯よりもはるかにセキュリティがクソな男湯を外から覗き込んで、どの男子が『思ったよりも』体格がいいのか女子による投票で競う。

 沈んだ表情のまま、友樹は言った。

「なぜかお前が1位だしな、親友」

「最近自宅で『トレーニング』っていう名目で色々といじめられてるからねぇ」

 僕がそう言うと、作戦会議に参加している男子が騒ぎ出す。

「マゾなんだな」

「やっぱりか、キツネはマゾか」

「キツネの家のメイド見たことあるけど、そのメイド普通にキツネのことぶん殴ってたぞ。物腰からして只者じゃなかったし」

「そもそも今時メイドっていうのがもうアレだしな」

「黙れお前ら」

 目をナイフのように細めながら、僕は口々に僕を罵倒する連中に言い放つ。

 その言葉に神妙に頷きながら、友樹は極めて真面目な口調で言った。

「そうだぞ、お前ら。このキツネを馬鹿にするのはいいが、メイドを馬鹿にするな」

「お前が一番黙れ、友樹。メイドマニアが」

「ハ、和服マニアには言われたくねーな。お前アレだろ、京子とかあの山口ってメイドに振袖着せてみたいとか思ってるだろ?」

「残念だが違うね。これだからエプロンドレスごときに色気を見出している男は」

 そう、正確にはコッコさんや京子さんに限らず、『全員』に振袖や割烹着などの和服を着せたいと『心底』思っている。メイド服などという色気のない外来品よりも、僕は和服の方が百倍くらい好きだ。

 そもそもメイド服と言えば血と暴力の象徴のようなものじゃないか。そんなものに色気を見出せる友樹の性根も根性も嗜好も、ついでに友樹に惚れている女性の気持ちもさっぱり分からない。

 ……まぁ、その歪んだ考えは僕を殴る女性の大半が、エプロンドレスを着ているせいだと思うケド。

 友樹の頬が少し引きつる。久しぶりにちょっと怒っているようだった。 

「おい、オレを馬鹿にするのはいいが、メイドを馬鹿にするのは許さん」

「ハ、メイドに夢を見るのは自由だけど、その夢は所詮幻想と知れ。主人より早く起きて、主人のご飯を用意してくれて、主人を門まで送ってくれて、主人の帰る頃に門の近くで待ってくれて、主人より遅く寝て、わがまま一つ言わず、素朴で純朴で可愛らしくて時には主人を諌めてくれる。そんなパーフェクトなメイドはこの世に……」

 言いかけて、ちょっと言葉に詰まる。

 今までのことを色々と思い出して、さらに言葉に詰まった。

「えーっと……ちょっと待ってくれ。そんなメイドはこの世界には」

「いないよな? さすがにそんなのはいないよな? なぁ、いないだろ?」

 僕の胸倉を掴み上げて、友樹が今にも泣きそうな表情で僕を問い質す。

 迫力に押されて、僕はうっかり言ってしまった。

「一人くらいは……いる、かも?」

「殺してやる」

 そして、僕は親友がマジ切れするのを初めて見た。



 覗き見計画そっちのけで僕を殺そうとする親友の追跡を振り切って、僕は深々と溜息を吐く。今僕がいるのは倉庫というか用具室の中で、隠れるのには絶好のポジションだが、見つかったら一巻の終わりという嫌な位置でもある。

 暗い部屋の中には足が壊れたテーブルだの、傷付いた棚だの、いかにも必要なさそうなものが満載されていたりする。

「やれやれ……あんなに逆上しなくても」

 気持ちは分からないでもない。友樹が和服美人と一緒にいるところを見て殺意が湧いたのは否定できないところだし。

 ちなみに、僕が思い描いたパーフェクトメイドは、なにを隠そう冥さんだ。

 コッコさんが調子のいい時(朝四時起床確実)を除けば、最近は冥さんに起こしてもらっているし、料理の練習台ということで、それなりに美味しい手作りの朝食もご馳走になっている。出かける時になぜか門まで送ってくれるし、屋敷に戻った時も出迎えてくれる。もちろん、僕より遅く寝ていることは言うまでもない。

「働きすぎって気がしないでもないけど……いい兆候なのかな?」

 以前よりも笑うようになったし、感情の伝え方がストレートになったし、服とかも以前のように白いTシャツに赤い下着などというとんでもねぇものではなく、きちんとした可愛い服を着るようになったらしい。

 僕は一度しか見たことがないのだけれど、舞さんが選んだらしいその服は海兵さんの着るようなセーラー服だった。あまりの可愛さに思わず頭を撫でたら、ものすごく幸せそうな笑顔を浮かべたのが印象的だった。

 その直後に、舞さんの渾身の(ニー)を喰らったけど。

「……………ん?」

 と、僕はそこでようやく気づいた。

 どんな所にも『抜け道』というものは存在する。ここのホテルもまた、そういう抜け道を作らざるを得なかったのだろう。構造的に、構築的に、建造的に、それはあらゆる意味で『欠陥』と呼ばれるべきものだけれど、ある意味それは仕方のないことなのかもしれない。

 僕のいる倉庫の窓から、ちょうど女湯が見えていた。

 ただし、僕の目のポテンシャルじゃあくまでぼんやりとすら見えない程度。遠すぎて詳細どころか概要までさっぱりという有様だった。

「視力が2.0以上ないと無理……か」

 残念ながら、僕の視力は眼鏡で矯正しても1.0が限界。つまり遠すぎてよく分からない。望遠鏡や双眼鏡の類があれば、……そりゃもう世にも美しいものがゆっくり見られるだろうけど。

 しかしまぁ……女の子のお風呂を覗くのは凶悪犯罪の一つだしね。

 問題は、友樹と他の男子どもがこの部屋の存在に気がついた時だ。たかだか『覗き』に人工衛星まで使おうとした馬鹿どもだ。ホテルの案内図どころか完璧な設計図くらいは手に入れていてもおかしくない。そうなれば、この部屋がばれるのは時間の問題ということになる。

「……やれやれ」

 僕はゆっくりと溜息を吐きながら、部屋の中を見回す。

「悪いな、みんな。今回ばっかりは敵に回らせてもらう」

 そして、ここがばれるまでに最善の準備を尽くすことにした。



 岩風呂。温泉。屋根はあるがそこは露天風呂と呼ばれている桃源郷である。

 男が見たら卒倒間違いなしの光景がそこには展開されているが、その桃源郷を覗き込む無粋な輩もおらず、少女たちはそれぞれに湯浴みを楽しんでいた(※7)。

 が……中には温泉を楽しめない少女もいるわけで。

「うー……」

 委員長こと山田恵子はひどく不機嫌だった。それなりに熱いお湯に首まで浸かり、今日一日のことを思い返している。

 はっきり言えば、ものすごい屈辱だった。

 口から出るのは大抵が嘘ばかりの二人は、今日一日恵子のことをこれでもかこれでもかこれでもかというくらい、からかいまくってくれた。おまけに、今日行きたかったところなんてほとんど行けていない。精々が最後の朱里城くらいなものだろう。

(前々からずっと計画立ててたのに……楽しみにしてたのに)

 心の中でブツブツと文句を言いながら、それでも口には出さない。あの二人の思惑など分かりきっているし、今日は今日で一応楽しかったからだ。

 それでも文句が出るのは、やっぱり色々と不愉快な思いをさせられたからだろう。

「なんか、えらい不機嫌そうですねぇ、委員長さん」

「……竜胆」

 にこにこと笑いながら隣に座る虎子を横目で見つめ、恵子は大きく溜息を吐いた。

「不機嫌といえば不機嫌よ。でも、それはあの馬鹿二人のせいだから」

「キツネさんと友樹くんは優しいですよ?」

「あいつらは竜胆にだけはやったらめったら優しいだけよ。他の女子の扱いなんて、もーそりゃ惨憺たるもんなんだから!」

「……そーなんですか?」

 首をかしげながら、虎子は不思議そうに首をかしげた。

 恵子は目を細めてかなり大きく溜息を吐き、きっぱりと断言した。

「そーなのよ。あいつらの価値基準ってかなりワケわかんないんだけど、この前亜由美ちゃんが月曜九時にやってるドラマの話題でものすごく盛り上がってた時に、あいつらなんて言ったと思う?」

「……えっと、面白くないとかですか?」

「そんな甘いもんじゃないわ。あいつらはね、『そりゃドラマの話じゃなくて俳優の話だろーが』って顔も上げずに言ったのよ!」

 キツネ&タヌキ。話の腰を折る男ども。ミスター嫌がらせ等々、クラス内での二人はあまり評判が良くない。いや、正確には男子にはすこぶる人気があるのだが、女子にはすこぶる人気がないのだ。

「委員長を決める時だって、あのキツネが『はい、この中で一番委員長らしい雰囲気を持つ人がいいと思います』とか言ったせいで得票多数で私になったし、宿題見せてくれって頼まれてた時とかも『それじゃあ、ウチの屋敷の挑戦メニューにチャレンジするなら見せてあげよう』とかムチャクチャ言ってたし、体育祭が終わった後とかに自腹でジュースを奢ってくれたりもしたけれど、一本だけ『ホットおしるこ』が混ざってて体育祭で培ったクラスの一致団結が一瞬で壊れそうになったし!」

 話しているうちにヒートアップしてきたのか、恵子は怒りを炸裂させた。

「ここまでならまだいいけど、あの白いヤツが帰ってきてからはもうリミッターが外れたみたいになっちゃって、嫌味も嫌がらせも百倍増しよ!」

「……まぁ、確かにキツネさんは性格がいいとはいえませんけど」

 虎子は曖昧な苦笑を浮かべながら、それでもはっきりと言った。

「でも、キツネさんは優しいです」

「優しくないわよ、あんなヤツ」

「キツネさんが本当に優しくないんだったら、私をバイトとしてでも雇ってなんかくれません。……キツネさんが私を助けてくれなかったら、きっと私はここにはいれませんでした。だから、感謝してます」

「………………」

 恵子は少しだけ顔を逸らした。

 それなりに長い付き合いだ。あのキツネがどんなことを考えているのかくらいは容易く理解できる。ひねくれ者で意地っ張りで基本的にも応用的にも嫌な奴だけど、あの男は『友達』を絶対に見捨てない。

 だから採算度外視で虎子を助けた。高校へ通う援助もした。必要なら大学やらの学費まで全部自分でなんとかするつもりだろう。

 努力している人間には、手助けを惜しまない野郎なのだ。

(……だからって、虎子ばっかりひいきしなくてもいいじゃない)

 それでも内心でむくれながら、恵子は今日のことを思い出して溜息を吐いた。

「……もっと色々な所回りたかったなぁ」

「今度は、彼氏さんと一緒に来たらどうですか?」

「…………彼氏?」

 虎子のさりげない言葉に、恵子は首をかしげた。

「私に。彼氏なんて奇特かつ奇抜な存在はいないけど?」

「あれ? この前言ってた喫茶店のおにーさんはどうなったんですか?」

「……えっと、なんというか、その別に」

「じゃあ、私がなんとかしてあげましょーか?」

「……勘弁してください」

 顔を真っ赤に染めて、恵子は湯の中にブクブクと沈んでいった。

 そんな彼女を横目で見ながら、虎子はキツネの少年や友樹が見たら大絶賛するであろう微笑を浮かべて、楽しそうに笑っていた。



 少年たちがその部屋の存在に気がついたのは、ホテルの見取り図を眺めていた時のことである。それが偶然かあるいは少年たちの執念が成したものなのかは誰にも分からない。しかし、事実として少年たちはホテルの『抜け道』、あるいは『欠陥』と呼ばれるべき場所を発見したのである。

 後々まで語り草となるこの作戦に参加したのは、チームリーダーである有坂友樹を含めて二十名。B組男子のほぼ全員が参加するという、ある意味異常事態だった。

 

 ホント、男ってのは馬鹿ばかりなのである。


 いきなり二十人で部屋に向かうのは不自然極まりない上に見咎められる危険性があるため、少年たちは二、三人の編成を組んで部屋に向かった。部屋に到着次第、各自が持った部品を組み立て、望遠鏡を完成させようという魂胆である。

 が、そこで予期しないイレギュラーが発生した。

「結局のところ、コッコさんの教育の賜物ってコトなんだろうね、これは」

 部屋の前に、『那覇空港』と書かれた紙袋を頭に被っている少年が立っていた。

 袋の中ほどには二つの穴が空いていて、そこから瞳が覗いていた。

「典雅に優雅にエレガントに、常に紳士であれ。女の子には優しく野郎には厳しく、自分に厳しい人には優しく、自分に甘い人には厳しく、家族と友達を大事に、笑顔を忘れず拗ねず媚びず甘えず、ただ真っ直ぐに物事に当たれ」

 少年はぼんやりとした口調のまま、ナイフのような眼を彼らに向けた。

「そして、敵には容赦をするな」

 少年は手に持っていたものを、ひょい、と放り投げた。

 閃光弾だった。


 

 自分でも思うんだから間違いない。こればっかりは本当に間違いがない。

 ホント、男ってのは馬鹿ばかりなのである。

 地面に伏せて目を閉じると同時に閃光弾が効力を発揮、廊下はとんでもない光で満たされた。京子さん曰く「非致死兵器だから、人を殺すようなことはない。一日寝ておけば後遺症もなく視力は元通りになる……ま、閃光弾というより目くらまし」と言っていたから、大丈夫だろう。

 光が収まると同時に僕は走り出す。目を押さえているクラスメイトの首筋やら鳩尾やらに拳を打ち込んで、次々と気絶させていく。

 その騒ぎを聞きつけて、他の連中がこちらに向かって突進してくる。足音から察するに五人以上十人以下というところだろう。囲まれれば間違いなく袋叩きで、裸にされて吊るされるくらいはされるかもしれない。

(……それは嫌だなぁ。かなり嫌だ)

 すぐにきびすを返して、クラスの連中の目的地である物置に駆け込む。

 扉を閉めてから、あらかじめ近くに寄せてあったテーブルやらタンスやらを全力で扉の前に押し出す。これで、しばらくは持ちこたえられるはずだ。

 準備完了。

「さて……と」

 ドンドンと扉が叩かれる音が響く。連中としても必死だろう。なんせ、女性の入浴時間は男よりは長いといっても、精々一時間〜二時間程度。そして、女子はとっくに入浴を始めている。時間はもう残り少ない。

 そして、それこそが僕が付け入る隙になる。

 20対1じゃ正面から殴り合ったら絶対に勝てない。

 逆を返せば、正面から殴りあわなければなんとでもなるということ。

「あんまり殴り合いとかは得意じゃないしね」

 足音と声から察するに、痺れを切らした連中はどうやら十五人を越えたらしい。ドアを叩く音は強くなっているが、簡易的とはいえバリケードを破るほどじゃない。

「そろそろかな。……それじゃあみんな、おやすみなさい」

 そして、僕はワイヤーを引っ張ってトラップを作動させた。


 なにかを噴霧する音が響いて、人が倒れる音が響き、外は静かになった。


 京子さん提供『催眠ガス』はものすごい威力だったらしい。京子さん曰く「ピンを抜いてから三十秒以内に効果が出る。後遺症は一切なし」という現代科学でもちょっと考えられないようなモノで、正直半信半疑で使ってみたのだけれど。

 うーん……常々思うケド、京子さんはどこでこんな兵器っぽいものを入手してくるんだろうか? あの人ならなんでもやりかねないけど、かなり心配だ。

 テーブルとタンスをどかして外を見ると、死屍累々というか、クラスの男子のほぼ全員が廊下で眠りについていた。さりげなくワイヤーと噴霧器を回収して鞄の中に詰め込みながら、人数を数える。

 ちっ……やっぱりこの程度の罠じゃ引っ掛かってくれないか。

「やっぱりテメェだったか、親友」

 僕の背後から声が響く。よく知った声でもあり、生涯で倒さなければならない男の声でもある。

 僕は口許を緩めながら、ゆっくりと振り向いた。

 僕の視線の先。渡り廊下の曲がり角ににそいつは立っている。まぁ、それも仕方ない。女風呂を除くことができるこの倉庫はちょうど廊下の突き当たりに位置している。

 逃げ込んだが最後、逃げ道などない。

 それでも、僕は笑う。

「ああ、そうだね親友。僕は君たちの邪魔をすることに決めた」

「はン、臆したかキツネ。女湯を覗くのがそんなに怖いか?」

「それは怖いねぇ。実に怖い。女湯を覗いたりしたら、下手すると黙秘権も裁判もなく、それこそゲームや漫画みたいな気軽さで抹殺されちゃうからねェ」

「……それはお前の屋敷だけだ」

「そうかな? 君も似たような経験をしたことがあると顔に書いてある」

「………………」

 かなり当てずっぽうで言ったのだが、友樹は顔を青く染めて目を逸らした。

 どうやら、図星だったらしい。

 しかし、次の瞬間には、にやりと楽しそうに笑っていた。

「だが分からないな……どうしてお前はオレ達の敵に回る? オレとお前が組めば一騎当千。女子連中に対抗するには、オレとお前と一個師団と空母と核兵器が必要だとしても、教師程度ならなんとでもなるだろうに?」

「僕が君たちの敵に回る理由は至って単純だよ、友樹」

 肩をすくめながら、僕は溜息を吐いて言った。


「テメェ、『B組』も覗くって言ったろ」


 そう、よりにもよってB組を覗くと言いやがったからこそ、僕は敵に回った。

 それはつまり虎子ちゃんや委員長をも覗くことを指している。

「他の女子なんぞ覗かれようがどうでもいいがな、虎子ちゃんや委員長を覗くことだけは、僕の全存在と誇りに賭けて許さん。そういう不埒な存在は、僕がこの手でぶち殺す」

 僕の答えに満足したのか、友樹は笑う。

「……なるほど、そうきたか。……いやいや、どうやら杞憂だったようだな。うっかりお前がつまらん『義侠』やら『道徳』やら『常識』なんかに惑わされてオレ達の邪魔をしているのかと思ってしまったじゃないか」

「ハ、つまらんことを言うな。僕が『面白い』と思った行動を止めるのは、僕の誇りを汚すか、コッコさんに怒られると判断した時のみだ。今回の『覗き』はその二つに見事に触れる。だからこそ、今回ばかりは僕は君の敵だ」

 僕はきっぱりと臆することなく断言する。

 が、親友は僕から目を逸らして、ポツリと言ってはならないことを言った。

「……親友。なんか格好よさげなセリフの中に、『コッコさんに怒られる』とか、ちょっと情けない言葉が混じってないか?」

「ははは。友樹、君は女性の尖った拳が恐ろしくないとでも言うのか?」

「……すまん」

「……そこで素直に謝るなよ」

 非常に痛々しい空気が僕と友樹を包み込む。

 まずい。これはかなりよくない空気だ。友樹はなんだか嫌なことを思い出しているのかものすごく辛そうな顔になっているし、僕は僕でコッコさんに受けた教育という名の虐待をうっかり思い出してしまって大変なことになりつつある。

 ごめんなさいごめんなさい、もう女の子と喧嘩はしません。しませんから、だからアイアンクローだけは、アイアンクローだけは勘弁してください。あと一緒にお風呂に入ろうとかホントやめて。僕とて小学六年生、もうそろそろ中学生になろうって年頃なんだからそんな子供みたいなにゃああああああああああああああああっ!!


『はっ!?』


 僕と友樹は同時に我に返った。額の汗をぬぐいながら、僕は息を吐く。

「やるな、親友。僕をここまで追い詰めたのは君が初めてだ」

「そっちこそなかなかやるじゃねぇか。オレのトラウマを甦らせるとは」

 友樹も僕と似た苦悶を浮かべながら、それでも不敵に笑っていた。

「なァ、親友」

「あンだよ、悪ゆぐっ!?」

 返事をした瞬間に、友樹のストレートが僕の頬をぶち抜く。口が切れて鉄の味がした。

 友樹は笑いながら左拳で僕の顎を狙いに来たが、これはかわした。

「相変わらず先手が甘いな、キツネっ!」

「相変わらず、卑怯だか奇襲なんだか分からない殴り方だな、友樹!」

 友樹は右拳で僕の腹を狙うが、これは平手で弾いて方向を逸らす。さっきのストレートのお返しとばかりに、蹴りを友樹の腹にぶち込んだ。

「がッ!……。テメェこそ、相変わらず後の先が得意みてぇだなっ!」

「ウチの屋敷の執事がこれしか教えてくれないもんでねっ! 他の戦い方はヘタクソすぎて寿命を縮めるだけだそうだっ!」

「はっ、そいつは正しいぜ、親友! いい従業員雇ってるじゃねぇかっ!」

 殴り、殴られ、それでも急所は打たせない。まともに殴り合えば友樹の方が強いけど、攻撃を出させてからの対応は僕に一日の長がある。一進一退、つまりほぼ互角。

 二発ほど殴り殴られたところで、友樹は間合いを取って、口から流れる血を拭いながら言った。

「……なァ、親友」

「なんだよ、親友」

「今からでも遅くない。オレと組まないか?」

「その誘いはついさっき断ったし、小学校の頃にも一度断わってるはずだぞ」

「ハ、相変わらずつれないねェ。オレたちは親友だろうが?」

「親友だがそれ以前に敵同士だということを再認識しておけよ。お前はメイド好きで、僕は和服好みだ。平行線で交わるところなど何一つない。ついでに言えば、僕は家族と大切な誰かのためにはなにかをしてやれるが、友樹は大切でもなんでもないんでね」

「……大切な誰かのために、ねぇ」

 友樹は噛み締めるように呟いてから、目を細めて憎らしげに口許を緩めた。

「なァ、親友」

「なんだよ、さっきから」

「正直言えば、オレはお前が大嫌いだ」

「奇遇だね、僕も友樹のことは大嫌いだよ」

「気が合うと喜びたいところだが……今回ばかりは喜んでもいられねぇな」

「は?」

 僕が眉をしかめると、友樹も同じように眉をしかめた。

 お気楽な友樹にしては珍しい表情だった。

「……なァ、親友。『有坂(ありさか) 四季(しき)』って女を知ってるか?」

「知ってるよ。何回も聞いた。君の妹だろ?」

「ああ。これがもうポニーテールがめっちゃ似合う美人でな、可愛いんだ」

「妹自慢は他所でやってくれ」

「まぁまぁ、聞けよ。妹はな、オレから見ても自慢の妹だった。可愛いし、なにをやらせてもなんでも上手くやってのけた。特に絵を描く才能があってな、六歳の頃には絵画の巨匠に認められるくらいで……そりゃもう、天才だった」

「だから、妹自慢は他所でやれってば」

「だが、妹はどうも不器用なヤツでな、唯一才能の片鱗も感じさせなかった『剣術』にのめり込んで『有坂』からは全く期待されなくなって、親類の家に預けられた。もちろん、本来の名前も変えさせられて、今は道具として利用されようとしている。ま……政略結婚ってやつだな」

「へぇ」

 僕が曖昧に返事をすると、友樹はとうとう血を吐き捨てるように言い放った。


「その妹はな、今は『桂木唯』って名前なんだ」


 僕は目を細める。

 少しだけ考えて、結局言葉がまとまらず、言いたいことだけ言った。

「……で、今の状況にそれはなんか関係あんのか? お前は女風呂を覗こうとしていて、僕はそれを阻止しようとしている。……お前の『妹』とやらがそんなスットコどっこいな状況に、なんか関係あるのか?」

 一歩を踏み出しながら、僕はいつものように口許を緩めた。

「いつもながら笑わせてくれるぜ、親友。事情も裏事情の説明もなしに、この僕を、よりにもよってこの『僕』を有耶無耶の内に巻き込もうとは恐れ入る。テメェがなにを言いたいのかおおよその検討はつくが、生憎こっちはもう自由ができる身分じゃねェんだよ。小学生(クソジャリ)の時みたいに、正義の味方ごっこをしてる暇はない。友樹だってシスコンに徹してる暇があるんだったら、その時間を女を口説くのに使えよ。認めたくはないが、女を幸せにする技術はお前の方が上だ」

「………………」

 親友は、神妙な顔をして押し黙った。

 アレはマジで怒ってる。本気と書いて『殺意』と読むくらいに怒ってる。

 ……やれやれ、これだからメイドマニアのシスコンは。

 まぁ、ちょっとだけいじめすぎたらしい。どうも女の子の扱いが上手い男は打たれ弱くていけないね。

 仕方なく、僕は溜息を吐きながら、肩をすくめた。

「……って言えれば楽だったんだけど……そうもいかないらしいな」

「……お前」

「『有坂四季』はどうか知らないが、『桂木唯』は僕の後輩で、僕が幸せになって欲しいと思っている女の子の一人だ。友樹の妹のことなんざこれっぽっちも知らないが……『桂木唯』のためなら喜んで手を貸そう。せいぜい、重用してくれ」

「……………ハ」

 友樹は笑った。いつものように、少し斜に構えた態度で、苦笑する。

「なぁ、我が親友。麗しき最愛なる友よ」

「あんだよ、ともだち」

「お前は最高のクソったれだ。会えて良かったとまでは言わんが、死んでなくてなによりだと心から思う」

「そりゃ気が合わなくてなによりだ。友樹は死んでくれた方がいいと心から思う」

 僕は口許を緩める。いつものように、人に信用されない微笑を浮かべる。

「……さて、それじゃあ友樹。最後の勝負だ」

「そーだな、時間もないことだし、伏線を張ったところでケリをつけるか」

「勝手に伏線にするなよ。明らかに僕に回収させる気満々じゃねぇか。自分の可愛い妹のことくらい、自分でなんとかしやがりなさい」

「そう言うなよ、キツネ。いつも通りコメディで行こうぜ?」

「いつも通りもクソも、最初からコメディだったつもりはないが……まぁ、他人事でもないし謝礼次第ってところかな」

「よし、オレが昔集めてた●●●のカード●ス(※7)でどうだ?」

「乗った」

「ごめん、アレだけは冗談抜きでオレの宝物だから勘弁してくれ。……そうだ、友達の和服美人の写真で良かったらどうだ?」

「……ほう」

「ちなみに名前は山田恵子っていうぶげっ!?」

 なんとなく予想はしていたので、僕は友樹の顔面をフルパワーでぶん殴った。

 頬を押さえながら、友樹はちょっと涙ぐんでいた。

「最後の勝負とか言っておきながらいきなり殴るなよ! 痛いだろっ!」

「やかましいわ。あと、その和服美人の写真に興味がないんだったら、すぐに僕に引き渡せ。一生の宝物にしてコレクションに加える」

「ハ、そういうお前こそ、虎子+メイド服というカタストロフ的に可愛らしい写真を持っているだろう。それこそ寄越せ。家宝にする」

 高まる殺意。僕はゆっくりと拳を上げて、友樹はゆっくりと半身に構えた。

 お互いに譲れないものがある時、男は戦いに身を投じるのだ。

「……さようなら、友樹。僕はきっと君の事を忘れる」

「……じゃあな、親友。オレはお前がいなくても強く生きていくぜ」

 お互いに最後の言葉を言い合いながら、僕らは互いに譲れないもののために、プライドをかけて走り出す。

 と、その時だった。


「なにやってんのよ? アンタら」


 僕らは最後の一撃を放つ前に声を聞いた。

 それは聞き覚えのある声。僕らの共通のアイドル、山田恵子こと委員長の声だ。

 委員長の姿を視認した瞬間に、僕と友樹は即座に急停止。刹那の間にアイ・コンタクトを交わし、お互いに写真を焼き増ししてトレードする条件で停戦協定を締結。

 やれやれと肩をすくめながら、僕は少し意地悪っぽく笑った。

「……と、いうわけだ、友樹。僕はこの辺で君に敵対することをやめる。あとは好きにしろ」

「だろうな。……お前はそーゆーヤツだと信じてたよ」

「敵対って……喧嘩でもしてたの?」

『いや、別に』

 僕は少しだけ楽しそうに、友樹は少しばかり残念そうに、しかし口から出た言葉はそっくりそのままの異口同音だった。

「委員長、僕らが喧嘩なんてするわけないだろ?」

「そうそう、オレ達は近年稀に見る仲良しさんだぜ?」

「……あ、そ。ならいいけど、あんまり旅館の人たちに迷惑かけないでよね」

 風呂上りでいつもよりも色っぽくふにゃりとした委員長は、僕たちに適当に釘を刺してから、フラフラとした千鳥足で去っていく。

 委員長は基本的にも応用的にも温泉好きだ。それは過去の修学旅行で実証されている。……けれど、温泉が好きだからといって熱いお湯に強いとは限らない。

 案の定というかいつも通りというか、相変わらずというか、唐突というか前触れもまるでなしに旅館の床にぱったりと倒れこんだ。

「……いつも通りだな」

「うん、そーだね」

 僕らは溜息を吐いて、本当にいつも通りに委員長の介抱に向かう。

 僕が肩を、友樹が足を持って、いっせーので持ち上げようとして、

「おっと」

 友樹がバランスを崩して、脱力してふにゃふにゃになった委員長を地面に落としてしまうところだった。慌てて引き寄せて頭が地面にぶつからないようにガードする。

 抱きかかえる形になってしまい、シャンプーの匂いが鼻をかすめたけど、人命救助中なので完璧に無視した。

「おい、しっかりしてくれよ友樹」

「ああ、悪い。ちょっとバランスが」


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 そして、間が悪いというかいつも通りというか、最悪は訪れた。

 僕は聞き覚えのある声に戦慄を覚え、泣きそうになりながら友樹を見た。

 友樹も似たような表情を浮かべていた。

 客観的に僕らのことを見てみよう。

 委員長の頭を抱きかかえている僕と、足を持ち上げようとしている友樹。見る人によっては人命救助に見えるかもしれないが、はっきり言えば重犯罪者確定の瞬間だった。

 虎子ちゃんの姿が、一瞬でかき消える。

「なにしてるんでスか二人ともぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 一言すら上げる暇もなく、ものすごい衝撃が僕たちを吹っ飛ばす。

 ガシャンという音が二つ響いて、僕らはホテルの五階からまっさかさまに地面に向かって落下していった。


 僕は重力に身を任せながら、今回は落下オチかぁ、などと現実逃避気味かつベタなことを考えていた。



 第二十話『甦る悪夢と修学旅行(突破編)』に続く

 第二十一話『甦る悪夢と修学旅行(略奪編・前)』に続く


 その前に第二十.五話『黒ダイヤとメイドパニック』(※9)をよろしく♪


 

 


 注訳解説であったそうな(ベベン!!)


 ※1:作者の愛読書ヘル●ングに出てくる小太りの少佐の演説を改訂。坊ちゃんが止めなければ、有坂友樹のスーパー女性遍歴の一部が聞けただろうが、まず間違いなく女性読者はドン引きであろうということで現在の形に。最初は全部載せるつもりだったのだが、自分で書いてて「これはない。これはありえないよ友樹くん。僕の脳内の想像限界を越えてしまったよ」とばかりに、あまりの恥かしさに手首をかっ切りそうになった。

 萌え小説とか書いてる人は、本当に精神力が強いんだなァと感心しました。まる。

 ※2:あれーしーさーやいびーん。沖縄の犬に似た空想上の動物。犬ではない。狛犬ともちょっと違う。シーサーはシーサー。ぶさ可愛いのが特徴の四足獣。多分魔獣種とかその辺の扱いでいいと思う。少なくとも幻想種(ドラゴンとか)とかじゃないだろう。

 ※3:ここからの話は人づてに聞いた話なので、あまり本気にしないで欲しいのだが、昔、ある美少女ゲームがあった。少女たちが『暗黒太極拳』を踊っているようにしか見えないオープニングムービーから始まる『十二股物語(別名、センチメンタ●グラフィティー)』である。正確には差出人不明のラヴレターを送った人を探すゲームなのだが、二股三股と可能であり、最大十二股まで可能というのが『ある意味』画期的だったらしい。

 ちなみに、続編ではその主人公はお亡くなりになっている。それもまた『ある意味』画期的だろうが、きっと死因は全身を十二箇所ほど刺されたからに違いないと作者だけは思っている。

 ※4:緊急時以外はあまり飲みたくない飲み物。『薄いスイカジュース』という友人の感想が飲む気力を減退させた一品。

 ※5:ファンタジー世界御馴染みの、洞窟内を照らしてくれる必需品。たいまつの発展系だと思えばいい。一度転ぶとカンテラは二度と使い物にならなくなるため、冒険の度に『使い捨て』になってしまうソーサラーもいるとかいないとか。

 この文章だけでピンと来た人は『ソードワールドオーダー(へっぽこ編)』を進呈。

 ※6:※1と同じく愛読書ヘル●ングより抜粋。書いててものすげぇ楽しかったシーン。

 ちなみに愛読書ヘ●シングは普通に本屋に売っているけれど、内容がアホみたいにグロいので流血が苦手な方は読むのを控えた方がいい。でもね……銃剣投げつけまくる眼鏡の神父様がちょー格好いいのよ。

 ※7:あっはっは、男性読者諸君、残念だったな。作者はちょー想像力に乏しいので女湯を詳しく描写することなんざとてもとてもできるわけがない。虎子さんが意外とスタイルが良くてモデルみたいだったり、恵子さんが意外と艶っぽかったりするのも、作者のちょー乏しい想像力じゃ描写できませんでした。ごめんね♪ 代わりに男湯をしっかり描写してやろうと思って、『小説になろう』で男の裸を格好よく描写している人を探してみた。

 ……目ぼしい人がいなかったので断念。誰か、ちょー気合を入れて書いてくれ(笑)

 ちなみに蛇足になるけど、『モデル』っていう仕事は高身長じゃないとできません。少なくとも175センチ以上、なるべく180は欲しいところらしい。160センチちょいの女の子を出す時は『モデルのような』ではなく、『アイドルのような』と描写するのが正しい……かも?

 ※8:●●●の中にはお好きな内容を入れてください。今の子供たちは恐らく知らないけど、昔は一枚二十円で売っていたカード。カードを出すからカー●ダス。安直だねとか思いつつ、FF6の●ードダスを小遣いがなくなるまで買い続けたのはなにを隠そう作者である。……なんで捨てちゃったんだろう、FF6カードダスNo1、ロ●ク&セ●ス(泣)

 ……中学生〜小学生、あるいは一部の高校生ならびに大人の読者様、ホント、分からないネタですみません。レアカード捨てたと思ってください。

 でも、くらやみのくものはどうほうくらいは分かりますよね? 最近発売したし(知らんてば)。

 ※9:そういうわけで次回はお屋敷の話になります。お楽しみに☆

と、いうわけで作者にありがちな嘘予告、修学旅行編第二部『突破編』でした。見事に突破していなくて作者的にも満足です。アレですよ、突破したのは『ガラス窓』とかそんな感じだったようです(笑)

ちなみにあんまりいないと思いますが、アンナ嬢のファンの方は第二十一回までお待ちください(謝)

さて、次回『20.5話』はメイドフル出演。最近影が薄くなりつつあるコッコファンの方、お楽しみに★

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