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第十一話 剣と涙と隠した心

 逃げるな。



 山口コッコがその庭を修復させたのは、つい昨日のことである。

 双子に庭を崩壊させられてから、彼女はずーっと一人で庭を作り続けてきた。ここ最近、彼女の出番がちょっと減ってしまったのはこのあたりの要因が強い。

 そういうわけで、今日の彼女はかなり上機嫌であった。これまでは彼女の主人(未満)でもある少年の世話を放り出して庭に精を出していたが、今日は付きっきりで看病できる。庭よりも人の面倒見ろよという意見もあるだろうが、山口コッコという女は実はかなり真面目である。任された仕事は貫徹するまで他の事には目もくれない。

 早く元気になった坊ちゃん『で』遊びたいなぁなどとかなりアレなことを考えながら、今日もコッコは元気に屋敷に出勤してきた。

 と、その時。無表情の黒霧冥が、こちらに向かって走ってきた。

「あ、冥さん。おはようございます」

「………………」

 冥はコッコのことを完全に無視して、横を通り過ぎて屋敷を出て行った。その背にはなぜかゴルフクラブを背負っていたりする。

 コッコはそれを不思議に思うよりも、彼女の主人(未満)にしか分からない青筋を額に浮かべた。

「……前々から嫌われてるとは思いましたけど、完全無視ですか」

 内心の怒りや憎悪なんかは大人の余裕で完全に封じ込める。実際にはかなり口許が引きつっていたりするのだが、それをコッコは気づいていない。

 若者の傍若無人さに腹を立てつつも、コッコはいつも通りに屋敷に入ろうとし、


 太い木の枝が、地面に落ちていることに気づいた。


 太い枝を落とされた木の断面は綺麗な切り口。一刀両断に切り落とされたものだと、コッコの眼力は見抜いた。外見からはとてもそうは見えないが、コッコは鍛鉄(鍛えられた鉄の意)と園芸に関してはかなりの知識を誇る。

「………………」

 引きつっていた口許が元の位置に戻る。浮かんでいた青筋も引っ込む。

 周囲の景色が歪むほどの殺意が、空間に満ち溢れた。

「ああ、すみません坊ちゃん。………苗木を、ダメにしてしまって」

 確かにこれはものすごい破壊力だ。思わず、我を忘れてしまうほどに。

 自分が苦労して積み上げたものを一瞬で崩壊されられた時の憤り。庭を燃やされた時もそうだったが、今もよーく分かる。

 あれは丹精こめて手入れした古木だったというのにっ!

 コッコは誰もが恐れる無表情になると、ぼそっと呟いた。

「うふふふふ。これは、おしおきが必要ですねェ……。くっふっふっふ」

 それから目にも止まらぬ早業でメイド服に一瞬で着替え、腰のホルスターから人も殺せそうなごついハサミを取り出し、追跡を開始した。



 黒霧冥は理解したくなかった。今自分が走っている理由も、この胸から湧き上がる焦燥感も、苛立っている理由も、なにもかもを理解したくなかった。

 知らないものだから、理解するのが怖かった。

 だから冥はこれから行う全てのことを理解しようとはしなかった。その後に屋敷に戻れなくなるだろうことも分かってはいたが、どうしようもないことだと割り切っていた。

 だって自分は化け物だから。

 元々、『普通』の人たちと一緒にいられるはずがなかった。

「がぁっ!?」

 内臓を打ち抜く感触が拳を伝わってくる。懐かしい感触。あと一寸強く打ち込めば相手は死ぬだろうが、冥はそこで力を抜いて、気絶させるだけに留めておく。

 なぜそんなことをしたのかは分からない。ただ、今は思い出したくない少年の顔が頭を掠めたからかもしれなかった。

 もんどり打って倒れる相手。どんな相手なのかは知らないし興味もない。

 分かるのは、相手が自分を殺しにきているということと、彼らの持っている解毒剤がないと、あの人が助からないという事実だけ。

 そう、あのお人よしは医者から処方された薬をなんの疑いもなく飲んでしまった。

 医者は医者ではなく、薬は薬でなかったというのに。自分か舞が付き添っていればそんなことも簡単に分かったというのに。

 ちゃんと気を配っていれば、狙いが自分だと簡単にわかったのに。

 処方箋に書かれた『暗号』を解いて分かったのは、冥も一度行ったことのある廃棄された倉庫に一人で来るようにとの指示だった。

 もちろん、待ち伏せであることは言うまでもない。

 少年はつまり餌だった。毒と知らず毒を飲み続けた少年は、体を悪くする。直すためには解毒剤が必要になる。つまり、少年に毒を渡した連中は『こいつを殺されたくなければ一人で殺されに来い』と言っているのである。

(……殺したいのなら、銃か砲、近代兵器でも持ってくればいいのに)

 心の中で陰鬱に呟いて、冥は黒づくめの四人に対峙する。

 相手は四人。しかしこちらは『武装』している。ものの数ではない。

 たとえ、トラップが張られていようとも。

 三人が飛びかかってくる。もちろん相手は素人ではない。動きも速いし、それぞれが少しずつタイミングをずらして攻撃してくるという徹底ぶり。当たり前のことだが実際の戦闘というものはゲームのようなターン制ではなく、しかも大抵の場合致命傷に一撃叩き込まれれば勝負がつく。

 同時攻撃は確かに有効ではある。しかし実際には攻撃のタイミングをわずかにずらした方が、相手にとっては避けづらい。仮に最初の攻撃を防いだとしても、次の一撃を防御しようとする時には態勢を崩してしまっているためである。

 攻撃を受けるまでに残された時間は一瞬。

 冥はその一瞬で、ゴルフクラブからあるものを取り出した。


 それは、木刀の形を模した鉄の棒である。


 相手を打ち据えるのではなく、相手の体を破壊することを目的とした武器。斬るのでも、突くのでもなく、『壊す』。ただそれだけに特化した武器。

 使いすぎて自分の血の色が取れなくなった柄を握り、冥は息を吐いた。

 一閃。

 多少攻撃のタイミングをずらそうが関係ない。冥は迫り来る三人の襲撃者を一撃でなぎ払った。攻撃を受けて腕もろともあばらを数本折られた一人が一人を巻き込み、二人が最後の一人を巻き込んで、一斉に倒れる。

 あとは頭を蹴り飛ばして意識を失わせるだけで十分だった。

「……解毒剤をよこしなさい」

 最後の一人に向かって、冥は歩みを進める。

 最後に残った小柄な少年は、黒づくめの下で口許を歪めて、笑っていた。

「なるほどなァ……やっぱり、情報は確かだったってコトかよ」

「?」

「なぁ、姉貴。……なんであんたはそんなところにいるんだよ!?」

 黒い仮面を剥ぎ取って、少年はそれを地面に叩きつけた。

 遠い昔に見覚えのある顔。冥とよく似た顔立ちに、印象的な垂れ目。年齢は自分より一つか二つ年下だろうと、冥は推測した。

 弟だ。正確には、『弟だった』男の子。

 懐かしさに少しだけ驚いて、それから冥は悲しそうに微笑んだ。

「ごめんね、リク」

 辛そうに微笑みながら、冥はきっぱりと言った。

「使い物にならなくなった道具は要らない。そういうものだから」



 昔、ほんの四年ほど前、空蔵冥という一人の少女がいた。

 彼女は生来の殺し屋で、一族に命令されて人外の存在を狩る仕事に就いていた。

 もちろん自由意志なんてものはない。三つ子の魂百までという言葉があるが、あれは三歳の時に教え込まれたことは百歳まで忘れないという意味である。

 一族全員が『魔狩り』によって糧を得ていた。少女もそういうふうに育てられた。

 それ自体にはなんの罪もないが、『生きているだけで他の人間の害になる』者たちを、なんの疑いもなく殺し続けた。

 命令されるまま。ただひたすら、殺し続けた。

 しかし、転機は訪れる。少女にとって致命的な出来事が起こった。

 二年前、少女はいつも通りに言われるままに所用に出かけた。姉となった少女の頼みごとは、『本を買ってきてくれ』というものだった。お釣りでなにか好きなものを買っていいと言われていたが、冥はなにも買わなかった。

 欲しいものが、なかったからだ。

 つまるところ生まれながらに殺し屋に育てられた少女には、『欲求』というものが欠落していた。なにも欲しいとは思わず、なにかして欲しいとも思えなかった。

 だからいつも通りに本を買った。それで終わりのはずだった。

 しかし爆弾は思わぬところに転がっていた。それが少女の心を吹き飛ばした。

「だから……アレは別に僕が悪いんじゃねーよ。あいつらが悪いんだ」

「聞いてますよ、坊ちゃん。確かに今回に限っては貴方は悪くありませんけど、怪我をしたことに関しては怒っています。次からは絶対に怪我をしないように」

「無茶言うなよ……。三対一だぜ?」

「男の子なら無茶を通しなさい」

 公園に、学生服を着た眼鏡の少年と、メイド服をきた無表情の女がいた。

 少年はボロボロで、メイドは傷だらけの少年の傷を消毒しているようだった。

「はい、消毒終わり。それじゃあ帰りましょうか」

「ああ」

「返事は『はい』、でしょう?」

「ふぐおおおおおおおおおおおおおっ!?」

 ほっぺたをつままれて、少年はかなりの痛みに泣きそうになった。というか、ボロボロになっても泣かなかったのに、ちょっとだけ泣いていたりした。

「この、暴力メイド! ほっぺた千切る気かよ!」

「これに懲りたら礼儀正しくしなさいな。貴方は少し礼節に欠けてます」

 厳しく言いながら、メイドは少年の頭を撫でた。

「でも、まぁ今日はよく頑張りました。女の子を守っての名誉の負傷ですからね」

「…………ふん」

 あれほど不機嫌そうだった少年は、まんざらでもなさそうに口許を緩める。

 平和な光景に、少女は知らずに見入っていた。

 分厚い本に爪が食い込む。メイドと少年の姿を見失うまで、少女は見つめ続けた。

 その目はまるで……今見た不思議な光景に憎悪しているいるかのようだった。

 


 それから数日後、冥は姉と武器以外の全てを捨てた。

 後悔はない。いいや、そもそも後悔という概念が彼女の中にはない。

 ただ、なぜ自分がそんなコトをしたのか、それだけは理解したくなかった。

 もし理解してしまったら、それは………。

「一つだけ言えるのは、私はもう暗殺者として役に立たないという事実」

「姉ちゃんっ!」

「その呼び名はやめなさい。私が『彼女』の《片刃》になると決定してから、私は貴方の姉であることを捨てた。そして、今の私は『彼女』とこの鉄剣以外の全てを捨てた。……もう、私にはなんにもない」

 泣きそうな笑顔を浮かべながらも、少女は一歩を踏み出す。

「なんにもなくたって、私は大丈夫。いつだってそうだったから。……でも、この世界には欲張りな人もいるの。みんなに幸せになってもらいたいって思ってる、とっても馬鹿な人だけれど、私はあの人に生きていて欲しい」

「……なんで、そこまで」

「さぁ、なんでかしら。私にもよく分からない。でも、解毒剤が必要なの」

 剣を構えて、冥は弟だった少年を見据える。

「邪魔をしないで。私は貴方を叩き潰したくない」

 純粋で無機質な殺気が、少年に叩きつけられる。

 ここで無理に戦えば間違いなく全滅すると少年の本能が告げる。少年とて多少は場数を踏んだ猛者である。自分より強い相手も、戦術と戦略で屠ってきた。

 しかし、だからこそ分かる。目の前の少女はそんな領域にはいない。三人を一度になぎ払った剛力。彼らの動きを観察し、完璧な推測をはじき出した観察眼。近接戦闘においての体捌き、速度、タイミング。全てが少年を上回っている。

 少年は静かに敗北を認めた。これ以上の戦力の損失は、一族の存亡に関わる。

「……分かった。これが解毒剤だ」

 胸にしまっておいた解毒剤を、ゆっくりと放り投げる。

 それを慎重に受け取って、冥は目を伏せた。

「……ごめんね、リク」

「謝るなよ。あんたには、あんたのやるべきことがあるんだろ?」

「……うん」

 感傷に浸ったのは一瞬。冥は決然と顔を上げて決意を固めた。

 これが最後の仕事になる。なら……せめて、これくらいはしっかりと。


「そんなことは、許さないわ」


 声が響く。まるで女王のような決然とした響き。

 それこそは、冥が膝を折らなくてはならない少女の言葉だった。

「冥ちゃん。なにを勝手に自己満足の自己完結しようとしているのかは知らないけど、残念ながらそうはいかないわ。わがままな人間は、ここにもいるもの」

 まるで最初からそこにいたかのように、彼女が立っていた。

 ショートカットにカチューシャ。つり目にふっくらとした顔立ち。クスクスというなにかを含んだ笑い。そこそこ発達した体躯をメイド服で包んでいる。年齢は高校生程度に見えるが、どこか浮世離れした印象を抱かせる少女。

 名を、黒霧舞という。

「そう、私は貴女が不幸になるなんて許さない。絶対に」

「……舞、ちゃん? なんで、ここに?」

 不思議そうな冥の言葉には答えずに、舞は口を開く。

「ねぇ、冥ちゃん。貴女はいつも諦めてきたわよね? 自分の想いを、自分の願いを、自分の気持ちを、いつもいつも殺し続けてきたでしょう? でもね、人間って生き物は、ほんの少しでもわがままじゃないと生きられないようになってるの」

 その言葉は重い。どこまでも深く冥に突き刺さる。

 舞は、冥の目をしっかりと見つめて、きっぱりと断言した。

「冥ちゃんはずっとわがままを殺してきた。でも、それじゃあダメ。そんなことじゃ、『あの人』は貴女を見てくれない。あの朴念仁を納得させるためには、冥ちゃんが強く可愛くならなきゃいけないのよ」

「舞ちゃ……一体、なにを」

 冥が口を開こうとするのを制して、舞は微笑を浮かべた。

 いつものように軽やかに笑いながら、決然と前を見据える。

 それは、不意に訪れた。

  

 殺意が、空間を侵食する。 


「チョッキンチョッキン、コッコさんー♪ 今日も双子を追いかけるー♪」(注1)

 シャキーンシャキーンという硬質的な音が響く。無機質な歌が倉庫に響き渡るのがシャレにならないほどの恐怖を呼び起こす。

「双子はとっても意地悪でー♪ コッコさんーは、ご立腹ー♪」

 ジャギィッ!!

 倉庫の扉を両手の鋏で切り裂いて、鉄の板と化した扉を踏み越えながら、無表情のメイドはズシャッズシャッ、という冗談のような足音をさせながら歩いてきた。

「だから今日こそ息の根をー♪ 止めちゃおうかなと決めたのだー♪」

 ヒュンヒュンヒュンとハサミをくるくる回しながら、コッコは無機質な歌を口ずさむ。その目は笑っていないどころではない。燃えさかる煉獄のごとき怒りを宿し、相手を害虫のように蔑んでいるという、赤い外套が似合う不死王ノーライフキングそっくりな目(注2)であった。

 簡単に言おう。ぶち殺す気満々なのだ。

「あ、あの……山口さん。なんでそんなに怒ってるんですか?」

 冥の恐怖が混ざった言葉に、コッコは口許を引きつらせる。

「貴女たちのどちらかが私の庭をまた破壊したので、体で払ってもらいます。密告するなら今の内ですよ。しゃべったほうが殴られる回数が減りますから」

「わ、私も舞ちゃんも、そんなことしません!」

 野生動物ですらびびって逃げ出すような殺気を放つコッコに恐怖を覚えながらも、冥はきっちりと言い返した。ちなみに、リクと呼ばれた少年は腰を抜かしている。

 が、コッコは鼻で笑って一蹴する。

「それはどうでしょう? その鉄の棒は中に真剣仕込んでるみたいですし、舞さんの方だってなにか隠し玉がありそうです。そして、屋敷に古木を一刀両断できるほどの技術を持っているのは、他に京子さんくらいしかいませんし」

 仕込刀を見抜かれたこととか、舞の武器に気づいたことにかなりの衝撃を受けつつも、それより気になることがあった。

「……京子さんって、もしかしてすごい人なんですか?」

「ええ、鼻歌混じりで軽くやってくれるでしょう。しかし、あのキッチンの女帝が古木の一刀両断なんて面倒な真似をするわけがない。よって、容疑者は貴女たち二人に絞られるわけです。……さぁ選びなさい双子ども。私に死ぬほど殴られてから屈服するか、私に死ぬほどどつかれてから屋敷を去るか、古木を完全完璧に元に戻して私に殴られるか」

 ここに彼女の主(未満)がいれば『選択肢ないじゃん』的なツッコミを華麗に入れてくれたのだろうが、当然ここにいるわけがない。

(……ホント、坊ちゃんってブレーキみたいな人だったんだねー)

 心の中でそんなことを呟いて、舞は心の中で苦笑を浮かべた。

(ごめんなさい、坊ちゃん。貴方の忠実なるメイドでいたかったんですけど、私は冥ちゃんのほうが大切です。だから、貴方にひどいことします)

 軽くボケて、彼や冥にツッコミを入れられる日々はそれなりに楽しかった。

 それで十分だと思う。そう、自分にはそれで十全。

 だから舞は前を向いた。一歩を踏み出して、少しだけ後ろを振り向く。

「そういうわけで、シャレにならない状態になっちゃったから、冥ちゃんは逃げて」

「………姉さん」

「勝利条件は坊ちゃんを呼んでくること。解毒剤はもう飲ませたから、なんとか動けるようにはなってるはずだよー」

「解毒剤って……なんで?」

「私は冥ちゃんの『頭脳』だもん。解毒くらいできるようになっておかないとね?」

 ウインクしながら、舞はゆっくりと歩みを進める。

「ここは私が食い止める。さっさと行かないと殺されちゃうかなー?」

「……分かった」

 冥は迷わず身を翻し、倉庫の窓を破ってそこから脱出する。

 それを横目で見送ってから、舞はゆっくりと、疲れたように息を吐いた。

「と、ゆーわけで私が相手ですー。山口さん、覚悟してくださいねー?」

「……なんか、話の流れ的に私が悪役になっているような気がするんですが?」

「トーゼンですよ、この悪女」

 にっこりと笑いながら、舞は言った。

「大体、二十四にもなろうっていう女性が、高校生の僕ちゃんにいつまでも甘えてるんじゃありませんよー。生産的な仕事もせずに朝から晩までチョキチョキチョキチョキ。芸術活動もいいですけど、それが迷惑だっていい加減気づいて欲しいですねー。っていうか、いい大人が園芸以外に興味が持てないって、なんか人生終わってるって気がしませんかー?」

「あはははは……ここで終わらせてやりましょうか、コムスメ」

「できるものならやってみせてくださいよー、オ・バ・サ・ン」

「うふふふふふ、それが貴女の本性ってわけですか。……よし、潰しましょう」

 ハサミを両手に構えて、コッコは青筋を浮かべた。

 にやりと笑いながら、舞はそれを迎え撃つ覚悟を決める。

(やれやれです。ホント……自己犠牲ってタイヘンだぁ)

 そして、封じていた己の武器を取り出して、不敵に笑った。

「行きますよ、ニートメイド。労働の素晴らしさを教え込んでやります」

「来なさい、魔女メイド。坊ちゃんには今後指一本触れさせません」

 かくて、屋敷の武闘派二人は激突することになった。



 一方、その頃。

 風邪なのに首筋を打たれて、漫画のように気絶した少年は、なんだかタヌキのような獣に尻を噛まれた夢を見て、あまりの寝苦しさに目を覚ました。

 それから、きょろきょろと周囲を見回し、一瞬で状況を把握する。

 風邪なのに無理して起き上がり、時間をかけずに服を着替えた後、途中でへばったりしないように解熱剤と鎮痛剤を用法用量を守らずに飲んだ。

 腹立ち紛れに近くの椅子を蹴飛ばし、あのばか女と怒鳴って走り出す。

 階段を転げ落ちたりもしたが、少年はそれでも走り続けた。



 第十一話『剣と涙と隠した心』END。

 第十二話『彼女の想いと彼女の願い』に続く。



 


 注訳解説こと貴様らに名乗る名前はないっ!!


 注1:歌詞はクロック〇ワーというゲームのCMソングから抜粋→アレンジ→次元彎曲をして完成したもの。ちなみにクロック〇ワーというのは大鋏をもった男『シザー〇ン』からヒロインであるジェニファー逃げ切らせるホラーゲームの一種で、作者はやったことがない。2だか3では包丁を持った少女がでてくるとかこないとか。

 ちなみに、山口コッコのモデルはシザー〇ン+ジェ〇ソン+戯言シリーズの零崎双〇+エ〇(2006年5月に最終巻が発売した、有名なアレ)+むらんやさか様のアイディアで構成されております。

 ここに列挙したモデルを全部分かる人は多くないと思うケド(笑)

 注2:ヤングキン〇アワーズで連載中のHEL〇SINGの主人公。逆読みするとドラキュラになる方です。最強かつ不死身の吸血鬼で少女属性付加の上に、体に可愛いわんこを飼っていたりするお茶目な方。ちなみにこの時の目は、第二巻でバレンタイン兄に「おにーちゃん、早く早くぅ」とせかしているシーンから抜粋(笑)

 意味が分からない人は、買って読んでね。 

はい、そういうわけで作者的解釈『冥ルート(中編)』いかがだったでしょうか? まぁ心の中でそう銘打っているだけであって、実際にはくっついたりくっつかなかったりするわけではありません。あくまでコメディなんで、最終話までは安心してお読みください(笑)

と、いうわけで次回に続きます。

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