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:5

「どうしたの?クラウ?」

母親が1人眠る寝室に息子が訪ねてきた。

遠慮がちに扉をノックして入ってきた彼は、最近元気のない母親を気遣っている。

「夜遅くにごめん。」

「いいのよ、高嶺はまだ来ないし。でも、あなた、もう2ヶ月もすれば留学でしょう?準備しなくていいの?」

呼ばれて母親のベッドに腰を下ろす。

「ずっと言いたかったことがあって・・・。覚えてる?ビーチェが家に来た時の夜のこと。」

夜中に寝言で叫んだ彼女。

彼女の家族を求める悲痛な声はクラウディオの心を抉った。

「えぇ、よく覚えているわ。」

「あの時、俺は、ビーチェを何としても守るって誓った。初めは家族として、妹として彼女を守るんだって誓ってた。」

彼の視線が膝で強く握られている自身の手に移る。

「ビーチェを愛してくれたのね。」

母の言葉に顔を上げる。

「…知ってたの?」

美園の手がそっと息子の頬を撫でる。

「母親だもの、貴方の気持ちなんてお見通し。」

「暫く、ビーチェの傍にいてやれない。ここイタリアでの生活は彼女にとってとても辛い環境だ。大伯母様や親戚達の視線を見てると分かる。母さまも体調が悪いだろ?親父も忙しそうだし。」

「クラウディオ…貴方は、何処まで考えているの?」

決意を秘めた息子の目は男の目をしていた。

「ビーチェを一生守って生きたい。彼女にはまだ伝えてない思いだけど…もし、彼女が他の男を選んだとしても、俺は陰ながらでも彼女を支えて生きたい。」

美園はにこやかに笑った。

「クラウ、私はビーチェの母親でもあるのよ?あの子の気持ちだってお見通しよ。」

「えっ?」

「留学前にビーチェに告白するのでしょう?母さまは賛成よ。」

言葉に詰まる息子。

「うっ、あ…。」

「ビーチェったら、段々綺麗になってるものね、クラウディオとしては、いつまでもお兄さんじゃ焦るばかりだもんねぇ。」

益々言葉に詰まる。

親に告白の許可を貰いに来たというのに、すっかり見抜かれて出足をくじかれたのだ。

「こらこら、クラウをからかうなよ。」

仕事を終わらせた高嶺が美園のベッドに近寄り彼女の頬にキスを落とす。

「あら、からかってなんかないわよォ。」

にこにこ言いながら言う母親にクラウディオは苦笑した。

「俺がビーチェに告白するのは許してくれるんだな。」

「え~?可愛いビーチェを渡したくないなぁ。」

ニヤニヤしている父親。

「うるさい。ビーチェはもらうから。」

言い切ってクラウディオは部屋を出て行った。

「高嶺こそ、クラウはよくも悪くも真面目なんだから、からかっちゃだめよ。」

笑顔を見せる妻に高嶺は真剣な表情を見せた。

「どうしたの?」

「美園…明日こそは主治医の診察を受けよう。こんなに体調が悪い日が続くなんてありえない。」

愛する者が体調を崩していることに気付かないほど彼は鈍感ではない。

「分かったわ、それで貴方が安心するなら。」

彼女は夫の抱擁を受け入れた。



つづく

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