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ベアトリーチェの章:1

過去の話へと移ります。

ヒロインの名はベアトリーチェ。


この名前を聞くと過去の歴史上において不幸な最期を遂げたベアトリーチェ・チェンチを思い出します。


11/11誤字修正

ベアトリーチェは、雪の降る畦道を歩いてた。


吐く息は白く、吐いた側から凍っていきそうな寒さだった。

彼女の小さな手は感覚を失い、歩いていることすら不思議なほど、顔もどこもかしこも色を失って見えた。

可愛くレースをあしらった白い寝着一枚に裸足で、その足取りはたどたどしく、今にも止まりそうだった。

「助けて・・・。」

消え入りそうな声だった。


上等のチーズをつくっているベアトリーチェの家は少し山の上にあった。

幼い彼女が山道を倒れそうになりながら、雪の振る中歩いている。

雪の音すら聞こえてきそうな静かな夜に、今の彼女が声の限りに叫んだ小さな声はお人よしで普段から彼女の家族と交流のあった家に届いていた。

「何かしら?」

「ん?どうした。」

「何か聞こえたんだけど、・・・気のせいね。あら、薪が切れそうだわ。ちょっと、あんた行って取ってきておくれよ。」

「ああ?お前の方が扉に近いだろう?」

「まったく、何時の間にこんなものぐさになってしまったんだろうね。」

この季節外れの雪の為に家の中の暖炉に薪をくべようと表に出てきた恰幅のいい女性は、夜道地に浮かぶ小さい白い影に小さく悲鳴を上げたが、それが少女で、近所の小さなベアトリーチェだと分かると家の中にいる夫の名を叫びながら彼女に走りよった。

「ビーチェ!」

馴染みのある声に彼女はゆっくりと視線を向けて安堵の微笑を浮かべた。

差し出された暖かい手に倒れこむ。

「どうしたの!こんな格好で!」

抱きしめた夫人は自分の手のひらに暖かい滑りを感じ手を見た。

夜目にも分かる赤い色。

身体が震えた。

夫人の悲鳴に駆けつけた夫が何事かと覗き込む。

ベアトリーチェは夫人の腕の中で崩れ落ち、その意識を手放した。


ビーチェを助けた夫婦は、すぐさま救急車を要請し、ワンピースをめくった背中に大きな切傷を見て慌てて警察も呼んだ。


静かな村の夜が一変した。

警察はベアトリーチェの家で驚くべき現場を目撃することになる。


翌日の新聞はベアトリーチェの家で起こった陰惨な事件を一面で伝えた。

畦道まで歩いてこれたベアトリーチェはイタリア中の注目と同情を集めていた。

ワイナリーを営む家で見つかった彼女の父親は首が切り離され、母親は強姦された上に腹部を滅多刺しにされ、祖父母は折り重なるように血の海に横たわっていた。

そして、ベアトリーチェの2歳上の姉は部屋の入口の内側のノブを握りしめ、ぶら下がるように絶命していた。

彼女が背中に受けた傷は身体を突き抜け、木の扉にまで届いているものを筆頭に数箇所にのぼった。

ベアトリーチェは後に先に切り付けられたは自分で、姉はベアトリーチェを外に逃して扉を閉めたとことを紙に書いて知らせた。


警察は非常線を張ったが、犯人らしき者は見つからなかった。

静かな村に起こった事件は、その村だけではなくイタリアを震撼させた。


ベアトリーチェは、翌朝に意識を取り戻したが、言葉を失っていた。

その現実に老夫婦は同情し、涙を流した。

夫婦はベアトリーチェを引き取ることも考えたが、いずれ記憶が戻った時に家族が殺された現場に近いところでは可哀想だと考えた。

そのため、彼女は傷の回復を待って施設に入ることになった。

彼女の家族にはこの村にも何処にも親戚と呼べる者が居らず、人々は改めてベアトリーチェを不憫に思った。

彼女が生まれ育った村は父親の故郷ではあるが、親戚もなく、細々と経営していたチーズ工房。


彼女は心の中にある失意がなんであるか分からないまま牧場主夫婦と別れを告げた。




つづく

ん~難しい。

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