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アルヴィンは、彼女にとって心の支えであった。

幼くも無邪気で可愛い笑顔を振りまく彼は母よりも早くクロフォード家に馴染み、その点では、彼女を安心させた。

そんな折に言われたのがアレスコーニ家が出資する研究所への見学だった。

蚕産業、絹織物を家の財産としていたクロフォード家にとって何の意味があるのかフェリシアには分かっていた。

「少し前、西エリアの蚕農場が大打撃を受けたのは知っているな。」

「はい、」

目の前にいるのはアルベルト。

新しく父となった人。

畏怖さえ感じるその雰囲気はクロフォード家に相応しい。

「何者かによる農薬の散布が原因だった。そして、その農薬は国内では使用認可がされていないものだった。今その成分をアレスコーニ研究所に送って調べてもらっている。国内で調べることができないのはライバル会社が目を光らせているからだ。いま、クロフォード農場では新種の蚕の開発に死力を尽くしているところだ。我々の活動を知られるわけには行かない。」

「見学と言う名目で研究所を尋ねて、農薬の成分結果を聞いてきたらいいのですね。」

頭のいいフェリシアは答えた。

クロフォード家の仇敵であるハリソン家。

同じ絹織物の会社を営んでいるが、一度として王室御用達を得たことはない。

蚕農場の大打撃はハリソン家が起こしたことではないかとの噂もあり表立って動けない。

それゆえのフェリシアなのだ。

後継者のアンガスが動いては敵に分かってしまう。

フェリシアは、富万の富を得て初めての使命に心が震えた。


飛行機の窓にイタリア、ローマの街並みが見えた。

着陸した飛行機のタラップを降りると黒塗りの高級車が止まっている。

(迎えの人かしら?)

車から降りてきた男性が身長が高く高級ブランドのスーツを着こなしているのが分かった。

髪の色は黒。


遠くからじゃよく分からないけとハンサムだと分かる。

(何故?胸が痛い…。)

アレスコーニ家の当主は義父とそれほど変わらない年齢だと聞いていたが、フェリシアには随分若く見えた。

(それに、どうしたのかしら?彼は硬直してるみたい。)

自分の格好が変なのかと彼女は今日来ているツイードのスーツに目を落とした。

(変じゃないわよね。)

動かなかった彼もフェリシアが一歩前に出るとようやく足を動かし近付いてきた。

(なんて綺麗で、魅力的な緑の瞳。でも、何かしら…私ってば、やっぱり変なのかしら。)

魅力的と彼に対して思ったことにフェリシアはぎょっとした。

財産を得た後、群がってきた男達。

(彼等は口々に養父母はあなたを愛していたのねって言ったけど、両親の記憶なない私にはお金よりも愛されていると言う実感が欲しかった。アルヴァンは無償の愛をくれるけど、親の愛情と言うものを味わいたかった。家族が欲しかった。)

今年6歳になる息子は本当に我慢強い子に育った。

幼心にも何かを感じているのだろう私に父親に関することを聞き出そうとはしない。

財産を貰ってよかったことは彼に十分な教育を受けさせることが可能になったことだけだった

今自分はクロフォード家の代表としてイタリアに来ているのだ。

彼女は我に返り、アレスコーニ家の者として目の前に立つ男性に視線を向けた。

「はじめまして、ミス…、」

「フェリシア・クロフォードです。あなたは…。」

「クラウディオ・アレスコーニ。アレスコーニ家当主をしています。」

そう言って手を差し出した彼は魅惑的な瞳を細めて彼女を見た。

「この度は、お世話になります。」

重ねた手から伝わってきた熱に2人はハッとなり、その手を放した。

「…長旅、ご苦労でしたね。今日はこの後、我屋敷にて休んでいただき、明日の朝研究所にご案内いたします。」

丁寧な物腰と言葉。

流暢な英語の発音。フェリシアは何故か彼に安堵を覚えた。

「ホテルで構いませんのに…。」

「あなたは大切なお客様です…まぁ…屋敷に来たら少々煩い連中もいますけど、」

「えっ?」

彼はにこやかな笑顔を向けた。

「あなたは、似ているんです。私の…亡くなった家族に。」

フェリシアは空港に降り立ち彼が硬直した訳を理解した。

「そ、そんなに似てますか?だから、驚かれていたんですね。」

彼女の言葉に斜め上から彼は緑色の瞳を向けた。

「驚いていましたか?」

「…え?ええ。そう思ったんですけど、勘違いならごめんなさい。」

新しい何かが始まる予感。

フェリシアは心の奥で自分が感じている感情に戸惑いを隠せずに居た。



つづく

次回から、過去へと飛びます。

過去といっても違うヒロイン・・・でも若かりしヒーローが出てきます。

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