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:11

頬に感じる空気の冷たさに目が覚めた。

目の前にあるのは、白い天井。

発しようとした言葉は空を切って消えた。

どうしてだろう、なんだか、身体が動かない。

視界もおぼろげだ。

ふと目の前に覗き込む顔があった。

「目が覚めたのね?」

優しい声は誰のもの?

「私は、看護師のシェーラよ。」

優しく微笑む彼女は私の体に触れている。

どうなってるのか分からない私は混乱した。

「大丈夫、ここは病院。貴方は助かったのよ。」

喋ることは出来なかった。

「気管切開って言ってね、喉に穴を開けてソコから空気を送らないと息が上手く出来ない状態だったの。」

何を言っているのか、分からない。

英語だと言うことは分かっても知らない単語があるから?

息が出来ない?と彼女は言ったの?

「・・・。」

キョロキョロと目を動かして見えるのは、半分の世界。

左目が上手く開かない。

「大丈夫、元気になるわ。もう少ししたら、人工呼吸器からも離脱できるから、貴方の名前を聞かせてね。」

目の前の女の人に言われて、気付いた。

分からない。

自分の名前も、どうしてこんなことになったのかも。

「どうしたのっ!」

心の動揺は、心臓の鼓動を早くさせる。

それと同調するように息が上手くできないパニックに陥る。

耳に響くアラームが自分の心のサイレンのようだった。


「!」

飛び起きた。

酷い寝汗を掻いていた。

何故?

何故、今、思い出したの・・・。

がたがたと震える身体を押さえる。

映画のワンシーンのような夢。

集中治療室に横たわっていた包帯の少女は私?

過呼吸になりそうな思いを必死に落ち着かせる。

分からない、何で?何で?



助けて・・・アルヴィン・・・。

息子の名前を呼んだ。

いや、叫んだと言っていいだろう。

きつく閉じた閉じた瞼では、部屋の明かりが灯ったことに気付けない。

そんな混乱した私の耳に声がかかった。

「どうした?大丈夫か?」

置かれた手に目を開けて、部屋の明るさと涙で歪む視界に瞬きをした。

涙の止まらない瞳にぼんやり映るのは、黒髪に緑の瞳をしたクラウディオだった。



つづく

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