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屋敷に来た彼女達は大奥さまの話し相手という仕事をした。
セバスチャンの話では、娘さんだけでなく、まだ会ったこともない孫にも先立たれたと言う大奥さまは、すっかり心を閉ざし、落ち込んでしまった。
大学時代に家を出て、親の望む結婚をしなかった彼らの娘は異国の地で無残な死を遂げた。
ショックを受けた夫人は夫を非難した。
「あなたが、もっと早くあの娘を許していれば、殺された事実をこんな後になって知ることも、埋葬されて帰って来れないなんてこともなかったのよ!」
それは夫にとっては後悔することの一番上位項目だった。
その後当主は事業の殆んどを長男のアルベルトに譲り事実上の引退をした。
いくら似ているとはいえ、2人を慰める役目などフェリシア達にに勤まるかと周囲も本人達も不安だったが、彼女の息子の無邪気さは2人の心を捕えたようだった。
そんなある日、彼女達は隠居した当主に呼ばれ彼の弟夫妻に子供として貰われることになった。
「あいつらは、子供がおらん。しかしながら、いずれは家を継ぐものを得なければならない。そこで、フェリシア、お前の気立てがいいところや、心優しく私達を慰めてくれたことは本当に感謝しても仕切れない。その礼だと思って欲しい。君は幸せになる資格がある。ちゃんとした家庭の子として、アルヴァンを育ててくれ。」
当主の申し出には、不思議と屋敷の者誰もが反対しなかった。
きっと前当主の意志が強いことに反対できる者がいなかったのだろうと彼女は思った。
しかし、子供が居ないとはいえ、孤児でしかも誰の子かも分からない子供を産んだフェリシアを我子として迎えなければならない養父母は、兄夫婦の前以外では彼女に冷たかった。
「上手くやったものね、これで貴方は、私達が必死になって稼いだ財産を手に入れる権利を得た。お兄さんが死んだ後、私達にくれる遺産のことを考えるとあなたを丁重にもてなさない訳にはいかない。けれど、貴方を育てるのに十分すぎるお金を出す以外は、自分で道を切り開いて頂戴。」
冷たい視線だった。
「貴方を可愛がっているということをお兄さん達に分かってもらうため、万が一の時の資産はあなたに譲るという契約書を作りましょう。けれど、いずれ、私達が気に入る子供を手に入れた時、それは失効される。それを覚えていて頂戴。貴方には十二分な教育を受けさせてあげるわ。その似た者同士の貴方の息子にもね。」
養父母は彼女達を引き取ると兄一家に報いるために大学進学を命じた。
息子のアルヴァンがもう少し手がかからなくなったからでは駄目だろうかとフェリシアは言ってみたが恩を忘れたのかと言われ何も言えなかった。
屋敷に招かれた時も、彼女は参加させてもらえなかった。
大学の勉強が忙しいと養父母は答えていた。
時々前当主達がくれる手紙にも真実は述べられなかった。
つづく
大きな手違い発見。
申し訳ない。
誠に申し訳ない・・・。