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:8

3/18 12:12加筆修正しました。

夫人の直ぐ傍の椅子に腰掛けはしたものの、何だろう・・・この居心地の悪さは。

けっして目の前の夫人が嫌な雰囲気や気を纏っているのではない。

なんだか落ち着かないのだ、この豪華な屋敷が。

根っからの庶民体質なんだなと心の中でため息を吐く。

そんな私の心を知らない夫人はとても嬉しそうに今までの経緯を語っている。

「だから、クロフォード家から連絡が来た時は本当に嬉しかった、これで全てが丸く収まるに違いないって・・・。これは奇跡なんだと思うの。」

ギュッと握られた手。

今回の仕事の依頼を受けたことが奇跡?

どういうことだろう。

暖かい手がふわりとまた私の手を包む。

「貴方に会えたことを心から嬉しく思います。」

長くこの家を守ってきた手なんだと改めて思う。

「そんな・・・に・・・似てますか?」

夫人の言葉は私にではない、もう一人の私に向けて言われているのだと分かる。

「ええ、本当に・・・、本当に・・・。」

オッタヴィアさんは、今にも泣き出しそうな声で、私が誰に似ているのかを教えてくれた。

クロフォード家の義祖父母と絶縁状態となった娘、アレクサンドラ・クロフォード。

彼女はイタリア人の男性と駆け落ちして、ベアトリーチェと言う娘を産んだ。

私はそのベアトリーチェに似ているのだといつか義父が教えてくれたことがあった。

そのベアトリーチェは、幼い頃、このイタリアのアレスコーニ家でお世話になっていた。

オッタヴィアさんからのSOSに拒否的姿勢を保っていたアルフォンスさんがイタリアに渡ったのは、アレスコーニ家を救うって言うのが前提だったけど、ベアトリーチェに生まれた故郷を見せてやりたいと思ったことも要因だった。

ベアトリーチェもまた幼くして実の両親、つまりクロフォード家の義祖父母の娘と娘婿を亡くし、絶縁状態だったために天涯孤独だった。

そんな彼女を実の娘として引き取って育てたのがアルフォンスさん一家だった。

なんて言う因縁。

ベアトリーチェは、アレスコーニの当主であったオッタヴィアさんの息子さんを狂わせたと思われていたアレクサンドラの娘。

オッタヴィアさんは、自分や一族の一部が随分彼女に辛く当たっていたことを認め、私に謝罪した。

多分この顔が、そうさせるのだろう。

謝りたくてもできないんだ、それがオッタヴィアさんを苦しめてきたんだろうと思った。

義祖父母はあまり彼女達のことを話してくれなかったけど、アレクサンドラもベアトリーチェも既にこの世の人ではない。

ベアトリーチェに至っては突然この世から姿を消したと言われている。

クロフォード家の義祖父母である彼らが私を引き取って、思っても居ないほどの幸運を運んでくれたのも、アレクサンドラやベアトリーチェという存在があったからだ。


私は身代わりでしかない。


いつからかシコリのように胸に残った思いだ。


「そんなに似てますか?」

夫人は少し戸惑ったような顔を見せた後、静かに頷いた。

「ええ、あの子がいるようだわ・・・。14歳で私達の元から去ったあの子が大人になって戻ってきたようよ・・・。私とあの子はこれから、新しい関係を築くはずだったのよ。本当に・・・これからだった。」

撫でられた頬。

昔に誰かにそうされたような感覚が胸に過ぎった。

なんだろう、この感覚。

辛い?

悲しい?

どうして・・・。

「どうしたの?ビー・・・いえ、フェリシアさん。」

ズキンと痛む頭。

どうしたんだろう、何かおかしい。

「大伯母様!」

頭痛の原因を探ろうとしている時に大きな音と共に一人の女性が入ってきた。



つづく


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