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久しぶりの更新なのに、短いです。

広い研究所、その中を案内されている。

私の数歩先を歩くクラウディオというアレスコーニ家の当主は物腰が気品に満ちている。

洗練された所作。

さり気無いエスコート。

クロフォード家の一員になってからというもの自分の周りの人達と同じ空気を纏う人。

それだけで気圧されている自分に気付く。

ぼうっとなっているのは、その声が優しいと感じてしまうから?

何か心に痛いくらいの感情が私を襲うから?

いけない、いけない。

私はクロフォード家を代表して来たの。

私の恥は家の恥。

せめて背筋を伸ばそう。

引きつりそうな笑顔を出来るだけ自然に、自然に。

「ミス・・・どうされました?」

声を掛けられていることに気付かなかった。

慌てて口元に手をやって笑って誤魔化す。

「いいえ、書面では確認しておりましたが、思っていた以上に広くて、清潔な研究所ですから、驚くばかりで・・・。義父達が信頼を寄せているのも頷けますわ。」

大丈夫だろうか、彼の眼が探るように見ている気がする。

クロフォードの中の偽者。

それに気付かれた?

「クロフォードの御当主から依頼があった時は驚きました。けれど、アレスコーニ研究所の威信にかけて原因の特定に望みますよ。」

「ありがとうございます。」

ふと細められる目。

「・・・あ、あの・・・何か?」

声をかければ御当主はハッとなって目を逸らした。

「いえ・・・あまりにも貴方が・・・。」

ああ、例の大切な人に似ているのね・・・。

「失礼、何でもありません。さ、詳しい説明に入りましょう。」

そう言って先を急ぐように歩く彼の顔が前を向く瞬間痛々しいものに見えた。


私に用意された部屋は、アレスコーニ家が経営しているホテルの一室だった。

薬品の研究は、かの家にとっては新しい産業に入るらしく、古くはホテル経営が本業だったらしい。

「いいのかしら、こんな広い部屋・・・もっと小さくていいのに。」

身についた貧乏性は消すことが出来ない。

コレが、上流社会に馴染めない原因かもしれない。

この部屋は、シックだけど、とても品のいい・・・クロフォード家の祖母の部屋を思い出した。

広いベッド。

テーブルにノートパソコンを出して義父宛のメールを送る。

『明日も例の農薬の情報を得るために研究所に行こうと思っている。』

内容はこんなものだ。

私のイタリアの感想など彼らは求めていないはずだから、物凄く短いものになってしまった。

ちょっと、可愛気がなかったかな?

「ん?えっ、うそ・・・。」

ノートパソコンをそろそろ閉じようとしたら、メールが届いたことを知らせる音が鳴った。

まさかとは、思ったけど、送ってきた相手は義父だった。

『慌てなくてもいい、暫くゆっくりするがいい。アルヴィンは良い子にしているので、心配は要らない。』

短いメール。

え・・・ゆっくり?

急ぐんでしょ?

頭の中に飛ぶ“?マーク”

そりゃ、イタリアにいるんですもの、観光地とか巡りたいけど、それはあくまでもアルヴィンと一緒がいいのに・・・。

・・・でも、やっぱり研究所に行こう!

そう思っていたら、部屋の電話が鳴った。



つづく

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