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「名門に生まれるというのも楽じゃないな。」

ぼそりと愚痴をこぼしたのは弟のロレンッオ。

彼は一言目にはめんどくさそうに言ってしまう癖があった。

高嶺の息子2人は旅立ちの用意をしていた。

彼らは明日から全寮制の学校に通うのだ。

しかも国外の。

アレスコーニ家の男子たる者、うんぬんかんぬん。

大伯母のたっての願い、一族のたっての願いだった。

「親元を離れて暮すのもいいかもな。」

高嶺は2人の心を優先させてくれたが、だめもとで受けた試験に受かってしまったのだからと入学を決めた。

「良くも悪くも優秀だってこと。」

あっけらかんと行ってしまうロレンッオに皆が笑顔を見せた。

「まあ、行ってくるよ。」

家族にお別れのキスをする。

クラウディオは、ビーチェの前に立った。

「ビーチェ、覚えてる?俺が言ったこと。」

ビーチェは頬を染めた。


旅立ちの一ヶ月前のことだった。

クラウはビーチェに自分の気持ちを伝えていた。

兄としてではなく、1人の男としてビーチェを愛していると。

ビーチェにとってクラウはレンツォと違い、思春期に入った頃からヒーローで、いつか自分がヒロインになれたらと思っていた相手であった。

しかし、イタリアに来てから、クラウとビーチェの間には親戚の娘エリザベッタという娘が割り込んでくることが多かった。

一族の中には、跡継ぎになるであろうクラウにはエリザベッタが一番似合うと言うものが多く、ビーチェは彼を諦めざるおえない状況に陥っていた。

彼女への気持ちを伝える許可を得たクラウディオは、自分の決意に邪魔が入らない内にビーチェに告白した。

彼女はクラウの気持ちを受け入れ、自分にとっても彼が唯一無二の存在であることを告げ、お互いの絆を深めた。


2人は揃って両親の前で交際を宣言し、弟のロレンッオを驚かせたが、家族3人は祝福してくれた。

「最後の難関は、やっぱり大伯母様かな?」

苦笑するクラウに母は笑う。

「諦めろって言われて諦めるの?」

「まさか、僕が強くなれるのはビーチャがいるからだ。」

「わ、私も強くなるよ!クラウや母さまや、えーと、レンッオや父さまがいたら!」

「ビーチェ・・・そこは、ボクの名前だけじゃだめ?」

穏やかな時が流れている。

その流れは永遠に続くのだとビーチェは思っていた。

「さあ、恒例の食事会よ。まあ、いつものように行きましょう。」

何故か表情の暗い父が気になるビーチェは、交際の許可を求める緊張感よりも何か別のものを感じていた。

大伯母様の説得には美園が先に口を聞くことになっていた。

何だかんだいってオッタヴィアは美園に甘ったからだ。

定例会のように行われるアレスコーニ家の食事会の席。

一族が大勢集まって食卓を囲んでいる。

緊張の色を隠せないビーチェは高嶺とロレンッオに挟まれて時々頭を撫でられたりしていた。




つづく


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