第4章-3 制御装置コアへ
デルタ地区の中心へと近づくにつれ、
空気は重く、熱は鋭く、そして“声”は強まっていった。
まるで星の心臓へ近づいているようだった。
溶岩の光がゆらめく通路の壁には、
古代文明の刻印——テルマ語の残滓が浮かび上がる。
セラが息を呑んだ。
「これ……古代の設計図……?
制御装置は、やっぱり彼らが造ったものなの?」
ユノは壁面の紋様に触れ、かすかな震えを感じた。
そこに流れる律動は、マグニの声そのものだった。
——ユノ……
——もうすぐ……来て……
声は弱々しく、震えていた。
レオンが前方を照らしながら言う。
「急ごう。崩壊がもっと進めば——」
その時、地面が激しくうねり、
頭上から岩片が降り注いだ。
グラッ……ズシンッ!
「伏せろ!」
レオンがユノをかばうように抱き寄せ、
巨大な岩塊が背後に落ちて砕け散る。
熱と砂煙の中、ユノは遠くを見て呟いた。
「……マグニが、押さえてくれたんだ」
レオン「押さえる? この揺れをか?」
ユノ「全部じゃないよ。
でも、“私たちの通る道だけ”揺れが弱まってる」
セラ「……あなたを信じてるのね、星が」
ユノは胸の奥が熱くなるのを感じた。
マグニは、ただ守りたいだけなのだ。
自分のコアを、そして——ユノを。
だが、次の瞬間。
赤い光が前方を裂き、
そこから数機の重装備ドローンが姿を現した。
「……採掘社の戦術ドローン!?」
セラが驚愕する。レオンは短く舌打ちした。
「本社が……現場を制圧する気か」
ドローンのスピーカーが冷たく響いた。
《これより制御装置の強制停止作業に入る。
一般隊員は即時退避せよ。
抵抗行動は作業妨害と見なす。》
ユノが叫ぶ。
「ダメ!
今コアを止めたら、テルマは内部から崩れ落ちる!」
《解析の必要なし。
我々は最新データをもとに最善判断を下している。》
ユノは震えた。
その“最新データ”こそが誤解の原因なのだ。
星の声など、彼らには届かない。
レオンが前に出る。
「道を開け! 俺たちはコアに——」
《許可されていない行動。
排除モードに移行する。》
ドローンの銃口が赤く光る。
ユノの心に、悲鳴のような声が走った。
——いやだ……
——ユノ、来ないで……危ない……!
ユノ「行くよ、マグニ。
あなたをひとりにはしない!」
その瞬間、床下から赤い光の奔流が吹き出し、
ドローンの足元を包み込んだ。
「……溶岩流!? ちがう、これは——」
セラが目を見開いた。
「星核エネルギーの防御反応……!」
ユノはマグニの声を理解する。
——ユノを、傷つけさせない。
次の瞬間、轟音とともにドローン群が弾き飛ばされ、
制御装置コアへ通じる最後の通路が開けた。
レオン「今だ、走れ!」
ユノは頷き、
炎の通路をマグニの声の方向へ全力で走った。
“制御装置コア”——そこには星の記憶が眠っている。
それを開けられるのはユノだけ。
だが、マグニの声は、もう限界だった。
——……ユ、ノ……
——はやく……
——ぼくが……壊れる、まえに……
ユノの胸に熱いものがこみ上げる。
「待ってて、マグニ。
今、行くから……!」
三人は炎と崩壊の中、
古代文明が残した巨大な門へと辿り着いた。
門はユノの接近に応じ、
静かに、だが重々しく光を帯びていく。
次の瞬間——
眩い白光がユノの視界を飲み込んだ。




