第4章ー3《星核の戦端》
重力核が弾けたことで、戦場に一瞬の静寂が訪れた。
だが——
それは“終わり”ではなく、“始まり”だった。
「……ブラックヘイム隊、第二展開。
《重力装甲兵》、全機降下せよ。」
クロスの声と共に、夜空に黒い影が無数に開いた。
人型だが、装甲は重力反応で揺らいでいる。
足元に踏力装置を持たず、空中に“立つ”ように漂っている。
「っ……数が多い……」
カイが息を呑む。
十体、二十体——数え切れないほどの兵士たちが、
レアたちを中心に円を描くように着地した。
完全武装の部隊。
その全てが「レア奪取」に照準を合わせている。
■暴走守護者の名の片鱗
兵士たちが武器を構えると同時に、
暴走守護者がレアの前に立った。
『……ア……アア……
ソノ名……呼ンデ……
ボクハ……“アル……”』
声は途切れ途切れだが、はっきりと“言葉”になっていた。
「『アル……』?」
レアがそっと近づくと、
暴走守護者の胸の青光がわずかに強くなる。
(あと少し……あと一声で、完全に名前が戻る……)
マグニもそれを感じ取っていた。
「レア。君の星核技が、あいつの記憶を繋ぎ始めている。」
「じゃあ……もう一度力を使えば——」
「ダメだ!」
マグニが叫んだ。
彼の声には、珍しく焦りが滲んでいた。
「今の君がもう一度、星核技を撃てば……
“星と完全に同調”してしまう。
意識を失って、覚醒が暴走に変わる……!」
レアは震えながら唇を噛んだ。
(助けたい……でも、私が暴走したら……この星が……)
■その迷いを、敵は見逃さない
「撃て。」
クロスの冷たい声と同時に、
数十の重力装甲兵が一斉に攻撃を開始した。
空間そのものが歪み、圧縮された重力弾が放たれる。
「レア、伏せろ!」
マグニがレアを抱えて跳躍した瞬間、
地面が**“折れ曲がる”**ほどの圧力に潰された。
爆音。
岩石が空へ浮き、砕け、大地がめくれ上がる。
(こんな……これが人間の兵器……!?)
「レア、離れるな!」
マグニはレアを庇いながら、迫る重力弾を拳で弾く。
だが一撃ごとに彼の腕が焦げ、皮膚が剥がれ落ちていく。
「マグニ、傷が……!」
「大丈夫だ。俺は星の守護者——
だが、この“器”の身での戦闘には限界がある。」
その言葉に、レアの鼓動が跳ねた。
(容器……? まさかマグニも……本来の姿じゃない?)
■マグニの制限解除
「マグニ! 装甲兵が——!」
カイが叫ぶ。
空から降りた別部隊が、マグニの背後を取っていた。
囲まれた。
レアが一歩踏み出そうとしたその時——
マグニが静かに呟いた。
「……仕方ない。
器、三十%開放。」
地面が震えた。
マグニの身体を覆う赤い紋が光を帯び、
皮膚の下で“何か”が蠢く。
重力装甲兵が一斉にセンサーを向けた。
「反応出ました……!
守護者級エネルギーの放出……!」
クロスの声がわずかに震えた。
『……マグニ……!』
暴走守護者がその光に反応し、跪くように身を伏せた。
レアも感じる。
(これは……星の核よりも深い、
“守護者の核”……?
マグニは、まだ本気じゃなかった……?)
■戦端が開かれる
マグニはゆっくりレアを振り返った。
瞳は炎のように揺れ、声は低く静かだった。
「レア。
君が星核技を使わなくて済むように——
ここからは、俺が戦う。」
その瞬間、
マグニの背後に赤い翼の残像が広がった。
炎ではなく、光の羽。
守護者の本質が滲み出た姿。
「全員——かかってこい。」
重力が唸り、空が裂け、星の地表が光を返す。
星核の戦いは、本当の意味で幕を開けた。




