第4章ー2 《赤い星の防衛線》
黒い影の群れが空を覆い尽くし、金属の羽音が大地を震わせる。
“ブラックヘイム隊”——エンデバー社の切り札。
クロスの「言葉」が終わるより早く、精鋭たちはレアを囲むように降下してきた。
「対象を確認。生体反応、異常値。
——確保工程に移行します。」
無機質な声。
その瞬間、マグニの背で炎が爆ぜた。
「……来るぞ、レア!」
マグニが腕を広げると同時に、地表から赤い火柱が立ち上がり、ブラックヘイム隊を押し返す。
炎は星の脈動と完全に同期し、通常の火ではありえない速度で伸びた。
レアは思わず息を呑んだ。
(……マグニの炎も、星とつながり始めてる?
いや、違う……私とつながってる……?)
⸻
■壊れた守護者の咆哮
『……侵入者……排除……排除……排除……!!』
暴走守護者が再び吠える。
だが先ほどの暴走ではない。
レアの光に触れた影響か、その瞳にかすかな“理性”が戻っていた。
巨体が地面を叩くたび、岩が砕け、衝撃波がブラックヘイム隊を弾き飛ばす。
「この……化け物が……ッ!」
隊員のひとりが特殊スーツ越しに悲鳴を上げた。
だがその瞬間、別の隊員が叫ぶ。
「落ち着け! 本命は“器”だ!
暴走守護者は後回しでいい!」
その言葉に、レアの胸が強く痛んだ。
(……私を、ただの“器”としてしか見てない)
恐怖と、怒りと、決意。
胸の中心でそれらが一つに混ざり合うのを感じた。
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■レアが前に出る
「マグニ、暴走守護者……私、やる。」
レアは震える足を踏み出した。
すぐに制御できるとは思っていない。
けれど、逃げる気もなかった。
胸の赤い紋が脈打つ。
星の声が、はっきり聞こえた。
『……レア……守って……レア……導いて……』
(星が……私の名前を呼んでる……?)
レアはそっと手を伸ばした。
すると地表の紋が星形に広がり、
ブラックヘイム隊の足元で爆ぜた。
精鋭たちが一斉に跳び退く。
「異常反応だ!
対象の力が——加速している!」
レアの視界が一瞬真っ赤に染まる。
だが意識ははっきりしていた。
(……制御できる。
“誰かを壊す”ためじゃなく……
“誰かを守る”ためなら……)
⸻
■マグニの気づき
その様子を見つめていたマグニは、
レアの背に映る赤い光を見て、息を呑んだ。
「……レア。
お前……“星を選ぶ側”の力を持っているのか……?」
「なにそれ……?」
「星核を持つ者には二種類いる。
星に使われる“器”と——
星を導く“選定者”。」
マグニが低く言う。
「選定者は、星そのものの意思に干渉できる……
守護者さえ従わせることも、本来は——」
その言葉の途中で——
暴走守護者がゆっくりとレアの前に跪いた。
『……導キ……ヲ……乞ウ……』
完全に、レアへ“服従”の姿勢だった。
ブラックヘイム隊も一瞬動きを止める。
レア自身も、信じられないといった顔で呟く。
「……私が……守護者を……導いてる……?」
⸻
■クロスが本性を表す
上空のホログラムが光を強め、
クロスの表情から笑みが完全に消えた。
「……やはり“選定者”だったか。」
声は氷の刃のように冷たかった。
「レア。
君をこのまま野放しにすれば、星の支配構造が崩れる。
だから——必ず確保する。」
ホログラムの背後で巨大な影が姿を現す。
エンデバー社製・対星核兵器
《グラビティ・ギア》——重力兵装の巨人。
「ブラックヘイム隊、全ユニット。
これよりフェーズ2へ移行する。
レア・アストリアを “捕獲対象” から
“確保優先対象α” に変更。」
空が揺れる。
地表が沈む。
星そのものが、攻撃されるのを恐れて震えていた。
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■レアが叫ぶ
「……やめて!
ここは……私の星なの!!」
その叫びと同時に、星核の光が爆発した。
赤い波動が、空へ——
クロスへ——
ブラックヘイム隊へ——
巨大兵装へ——
一気に押し寄せていく。
星の反撃が始まった。




