第3章-8 《星核の器》
爆炎の渦の中で、マグニはレアを抱えたまま、
ゆっくりと膝を地に着いた。
背中に降り注ぐ爆撃の熱を、その体がすべて吸収していく。
「……マグニ……だいじょうぶなの……?」
レアは震える声で尋ねた。
マグニは無言で頷き、レアをそっと地面に降ろす。
その瞳は、今までとは違う光を宿していた。
「レア。聞いてほしい。
君は——人間ではない。」
レアは息を飲んだ。
その言葉は、胸の奥でずっと分かっていた違和感に触れていた。
「君は“星核の器”。
この星の心臓——“星核”と呼ばれる意思を宿すため、
古代文明が造り出した存在だ。」
「……造り出された……?」
レアは頭が真っ白になる。
「人間として育てられたのは、
“暴走しないため”だ。
本来の力は強すぎて——星を壊してしまうから。」
そこへ、爆煙を割って暴走守護者がゆらりと姿を現した。
その目がレアを見た瞬間、赤い亀裂がさらに深く走る。
『……主……器……還サネバ……』
「やっぱり……私を……狙ってる……」
「違う。」
マグニがレアの前に立つ。
「奴は君を“守りたい”本能と、
“戻せ”という壊れた命令の間で、引き裂かれている。」
それを証明するように、暴走守護者は苦しげに胸をかきむしり、
マグマのような血を滴らせていた。
⸻
■その時、空から声が降ってくる。
『対象Aを確保せよ。
対象B、C(マグニ・暴走守護者)は排除して構わん。』
エンデバー社の指揮系統が降下スピーカー越しに響く。
「……確保って……
私、どうなるの……?」
恐怖に震えるレアの手を、マグニがそっと包んだ。
「レア。
君を渡す気はない。
君が何者であっても、君は、君だ。」
初めてレアの目に涙があふれた。
⸻
■暴走守護者が、吠えた。
地面が砕け、マグマの柱が噴き上がる。
『器……ヲ……奪ウナァァアアア!!!』
「待って! 私は“奪われて”ない!」
レアは叫ぶ。
その声に、暴走守護者の動きが一瞬だけ止まった。
だが、その隙を企業ドローンが見逃すわけがない。
ドォォォン!!
プラズマ砲が守護者の背を貫いた。
狂ったような絶叫。
『アアアアアアアア!!!』
「やめて!!」
レアの悲鳴が響いた瞬間——
⸻
■星核が脈動する。
レアの胸に、赤い光が爆ぜた。
地面が光の紋章に包まれ、暴走守護者の体が硬直する。
企業ドローンの電子機器が次々と焼け落ち、
空中で黒焦げになって落ちていく。
「……この力……」
レア自身も理解できていない。
だがマグニだけは、その光を見つめて呟いた。
「レア……
“星核”が……君を選んだんだ。」




