第3章ー5 《覚醒の兆し》
耳鳴りのような地響きが、足元から体の中心を震わせた。
レアは反射的に地面へ片膝をつく。熱風が吹き上げ、赤い砂が舞った。
「……来る。星が、目を覚まそうとしてる」
マグニの声は低く、焦りと祈りが混ざったような響きだった。
カイは眉をひそめる。「さっきから何を感じてるんだ? 噴火か?」
「違う。これは……星そのものの怒り。人間が何かを“壊した”ときに起きる反応」
そう言った瞬間、レアの胸の奥で、
“ヴォォォ……”と低い共鳴音が震えた。マグニの声が鼓膜ではなく、意識に直接響く。
『——レア。急ぐんだ。このままでは星が傷つく。君の同族が来ている。』
「同族……? 他の“星の声が聴ける人”ってこと?」
『いや。そうではない。もっと……君に近い存在だ。』
曖昧な言い方に戸惑ったレアは、マグニと視線を合わせる。
だがマグニは何かを言いかけて、口を閉じた。
今言えば混乱を招くと判断したようだった。
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■その頃、上空の軌道船
エンデバー社のモニター室では、緊急アラートが連続で点滅していた。
「周囲の地殻活動が不自然に増大……これは自然現象じゃないぞ」
「例の“遺跡”の反応も跳ね上がってる! エネルギー源を吸い上げてるみたいだ!」
その中心には、レアたちがいる区域が赤く塗りつぶされていた。
現場責任者のグレンは険しい顔で言う。
「……やはりあの少女は“触媒”だ。
星の反応は彼女が現れた直後から急激に変わっている」
「どうしますか? 拘束します?」
「いや、まだだ。利用価値があるなら“保護”の名目で囲い込みだ。
暴走し始めたら……排除する。」
画面にはマグニの姿が解析されていた。
『分類:不明。
予想:自律型戦闘生体兵器——あるいはテラフォーミング用ガーディアン。
レアとの接触率:100%』
「やはり危険だな。少女を惑わして反乱を誘導している可能性がある」
誤解が新たな決断を生み、静かに事態が動き始めていた。
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■地表に戻って
レアはまだ胸の共鳴に戸惑っていた。
「……マグニ。『同族』って、どういう意味?」
マグニはゆっくりとレアの前にしゃがみ、
熱で揺らめく瞳をまっすぐに向けた。
「言えることは一つだ。
君は“星の声を聴ける人間”じゃない。君は——
その瞬間、地面が爆ぜた。
マグマが噴き上がり、灼ける衝撃波が三人を襲う。
カイが叫び、レアを庇った。
「しゃがめ!!」
視界が赤く染まる中、マグニだけが立ったまま、
噴き上がる炎を睨みつけていた。
「……来たか。
この星の奥底で眠っていた“もう一体”……」
地割れの向こうで、炎の中から巨大な影がゆっくりと姿を現す。
それはマグニに酷似していた。
だが——その目には理性の光がなかった。
新たな守護者の覚醒。
そして、レアが“人間ではない”可能性の影。
物語は、大きく動き始める。




