第3章−2 《母との再会:溶けていく誤解》
薄暗い夕暮れ、マグマの赤光が空を染める。
リング・ヴォルトから戻ったラヴィは、息を切らして家の扉を開けた。
「……ただいま。」
静かだ。
焦げた鉱石の匂いが風に混じり、街の喧騒もどこか遠い。
母・サラはキッチンで包帯を巻いていた。
ラヴィが暴走しかけた時の傷だ。
その腕を見た瞬間──
ラヴィの胸がぎゅっと締め付けられた。
「……ごめんなさい。」
サラは驚いたように振り返る。
ラヴィの瞳は、赤く揺れていた。
「また……怖がらせちゃったよね。
私、止められなかった。声がね……“助けて”って言うから……」
震えて言葉にするラヴィ。
彼女は「怒られる覚悟」で帰ってきた。
だけど──
サラはゆっくり近づき、
何も言わず、そっと抱きしめた。
ラヴィの体から熱が漏れる。
でもサラは離れなかった。
「怖かったのはね……あなたじゃないの。」
「え……?」
「あなたが、一人で何か抱えてるほうが……一番怖かったの。」
ラヴィの喉が震えた。
「……怒ってないの? 私のせいで、怪我したのに……」
サラは微笑む。
「母親が子ども守って怪我するなんて、普通でしょ?」
ラヴィはその言葉に耐えきれず、涙をこぼした。
「……わたし、もっと強くなる。
アストラにも、教えてほしいことがいっぱいあって……
“星の声”にもちゃんと向き合いたい。」
サラは娘の頬を拭う。
「それでいい。
あなたが誰かを救いたいと思うなら、私は応援する。」
そして、ふっと小さく笑った。
「ただし──
“自分ひとりで全部抱えようとする”のはダメ。」
ラヴィは強くうなずいた。
母の温かさに触れるたび、暴走の衝動が静まっていく。
胸の奥にいた“赤い獣”が、眠るように落ち着いていく。
「母さん……ありがとう。」
サラはラヴィを抱きしめたまま言った。
「大丈夫。どんな力を持っていても──
あなたは私の娘よ。」
その優しさの裏で──
オルドの船は、すでに大気圏に突入しつつあった。




