第2章−6 《共鳴:ラヴィと星の子》
ラヴィの指先が、光の子に触れた瞬間——
世界の色が裏返った。
重力も音も熱も、すべてが遠ざかる。
かわりに、柔らかい光の渦が胸の奥まで流れ込んできた。
——あたたかい。
——これが……“核の記憶”?
ラヴィは、自分が足元を失ったように感じた。
立っているはずなのに、地面の感触がない。
代わりに見えるのは——
赤い大地が生まれる瞬間。
星テルマが誕生する光景。
焼けた石が舞い上がり、溶融した海が波打ち、
その中心に、“マグニ”がゆっくりと目覚める幼い声があった。
——ワタシハ アカカゲ。
——ワタシハ ホシノ ヒトフリ。
——ラヴィ。
——これは ワタシガ ミテキタ ユメ。
ラヴィは息を呑んだ。
これはマグニが“ずっと独りで見てきた記憶”。
誰にも理解されず、ただ星の内側で眠り、
ただ星を守るためだけに存在してきた“意識”。
そこへ新しい光が揺らめく。
さっき触れた“星の子”だ。
——オカアサン サミシイ。
——ヒトニ コワガラレル。
——ウマレルノ コワイ。
幼い声は震えていた。
ラヴィは光の中で小さな影を抱くように両腕を広げた。
「怖くなんてない。
あなたにも、マグニにも……
誰かが必要なんだよ」
星の子はラヴィに触れようと揺れ、
その光は涙のようにきらめく。
——ラヴィ……
——コワクナイ……?
「うん。
あなたも、マグニも、私を信じて。
私はあなたたちを“奪わない”。
利用もしない。
守る」
光がぱっと広がり、
星の子の意識がゆっくり落ち着いていく。
だが——
その穏やかな瞬間を破るように、
現実世界から荒々しい“音”が響いた。
ガガガガガッッ!!
銃声。
ソラリスの破壊音。
装置の警告音。
アークの叫び声が遠くから聞こえる。
「ラヴィ! 聞こえるか!! 戻ってこい!!
こっちはもう限界だ!!」
ラヴィは光の空間に向かって叫んだ。
「……聞こえた?
あれが“現実”だよ。
あなたたちを壊そうとしてる人がいる」
星の子の光が震える。
——イヤ。
——ヤメテ。
——イタイノ イヤ。
ラヴィはゆっくりとその光を抱く。
「大丈夫。
私がいる。
でも……ただ守るだけじゃ足りないんだ」
マグニの声が静かに響く。
——ナニヲ スル?
「あなたたちの気持ちを……
“言葉にして”伝える。
人間に。
ソラリスに。
アークにも。
全部、繋げたい」
光が静かに強くなる。
幼い声が答える。
——……ラヴィ、コワクナイ。
——あなたハ……アカカゲノ ヒト。
「……赤影と同じの?」
——チガウ。
——“アカカゲヲ ツナグ ヒト”。
その言葉にラヴィの胸が熱くなる。
ラヴィが“選ばれた”のは、
星の声を聞けるからだけじゃない。
星と、世界と、人を繋ぐ存在だからだ。
光が波のように揺れ、視界が戻っていく。
ラヴィは現実世界へゆっくり帰還した。
そして——
目の前には銃を構えるソラリス隊長が立っていた。
「動くな、ラヴィ。
その核から離れろ」
アークは血まみれになりながら叫ぶ。
「やめろ!! あれは兵器じゃ——!」
だが隊長は引き金に指をかけた。
「兵器かどうかは関係ない。
“利益になるかどうか”だけだ」
星の子が怯えて震える。
——ラヴィ……
ラヴィは両手を広げ、星の子を背にかばう。
「……これ以上、誰にも触らせない」
隊長が嗤う。
「なら、お前ごと撃つまでだ」
引き金が引かれる。
その瞬間——
地底全体が轟いた。
赤い光が噴き上がる。
マグニの叫びだった。
——ヤメロ。
怒りが、ついに目を覚ました。




