第2章−4 《リング・ヴォルト地下中枢》
縦穴を滑り降りた先は、驚くほど静かな空洞だった。
まるで星の中心とは思えないほど冷たく乾いた空気。
天井は黒い鉱石でできており、微細な光が星座のように散らばっている。
「……これが、古代遺跡……」
ラヴィは息を呑んだ。
ソラリスの事前資料では「熱圧層付近にある巨大エネルギー貯蔵施設」と説明されていた。
だが目の前の光景は、もっと“神殿”的だった。
壁一面に、赤い光の紋様が走っている。
まるで心臓の鼓動のように、ゆっくりと脈を打つ。
「ラヴィ、見ろ。あれ……扉だ」
アークが指した先に、半円形の大扉があった。
紋様の中心がそこへ流れ込んでいる。
だが、扉の前には——
ソラリスの強襲部隊がすでに到着していた。
装備は重武装、見覚えのある企業ロゴが光る。
隊長格の男が通信で叫んでいる。
「これより《中枢封鎖層》の強制開放に入る!
エネルギー体は“未成熟”。危険性は低い。
プロトコル34に基づき、企業が保護・回収する!」
ラヴィの耳に、“声”が割り込む。
——ヤツラハ マチガッテイル。
——ナカニイルノハ……
——ウマレナイ コドモ。
「……コドモ?」
ラヴィの震え声にアークが振り返る。
そこでラヴィは悟った。
マグニが恐れていた“危険”の正体を。
「ソラリスは……このエネルギー体が“暴走する兵器”だと思ってる。
でも違う……これは、マグニ自身の分体……
“新しい星の核”が生まれかけてるんだ!」
アークの表情が固まる。
「じゃあ……企業が扉を開ければ?」
「生まれたばかりの核が衝突して——
この星は内側から崩壊する!」
その瞬間——
扉がうごめき始めた。
ソラリス部隊が強制開放装置を起動したのだ。
紋様が激しく脈動し、空気が震え、赤い光が暴れ出す。
アークが叫ぶ。
「止めるんだ、ラヴィ!!
お前しかできない!」
ラヴィは胸に手を当てる。
“声”が泣いていた。
——タスケテ。
——ワタシハ コドモヲ ウバワレル。
ラヴィは扉へ走った。
「やめろおおおおお!!」
ソラリス隊員がこちらを振り向き、銃口を向ける。
だが、扉の紋様が共鳴し、強烈な赤光が放射された。
重武装の隊員たちが弾き飛ばされる。
ラヴィは光の中へ踏み込んだ。
扉がひび割れ、開きはじめる。
——そこに、まだ形を持たない“光の胎動”があった。
マグニの未来。
星の子。
人類には“未知のエネルギー生命体”。
ラヴィは震えながら手を伸ばした。
その手が触れる瞬間、扉の内側から “何か” が目覚めようとしていた。




