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第1章:星の脈動

惑星テルマ

上空から見下ろしたとき、そこは燃える心臓のように赤く脈打っていた。

大気は硫黄の匂いを含み、地表には無数の溶岩河が網のように走っている。


その星に降り立った探査隊《デルタ採掘班》の一員、ユノは、ヘルメット越しに熱波が叩きつけてくるのを感じながら装備をチェックしていた。


「ユノ、酸素濃度は問題なし? 今日は内陸のレア結晶帯まで足を延ばす予定よ」


リーダーのカシアが声をかける。

彼女の手には、企業から命じられた採掘ルートのホログラムが浮いていた。


ユノは「問題ない」と返しながら、胸の鼓動が落ち着かない原因が、暑さではないことを自覚していた。


――聞こえる。


星の鼓動だ。


地面の下から、どろり、としたマグマの流れとは異質の“音”が伝わってくる。


(今日の…声は強い。まるで、呼ばれているみたいだ)


ユノは他人には理解されないこの感覚を、いつも胸にしまってきた。

ただの錯覚だと言われるのがオチだからだ。


だが、今日の星は違う。


まるで意志を持っているかのような、低い唸り。


――来い。


ユノはビクリと身体を震わせた。

耳元で誰かが囁いたように、はっきり聞こえた。


(……誰?)


返事はなかった。しかし、星の鼓動は強くなる。


そのとき、隊の後方から別の隊員が叫んだ。


「おい! 見ろ! あれ……遺跡じゃないか!?」


溶岩の向こうにそびえる黒い構造物。

溶岩に溶けない特殊素材でできた、楔のような巨大建造物――

古代遺跡。


予想外の発見に隊がどよめく。


カシアが驚きつつも冷静に指示を出した。


「近づくわよ。危険ならすぐ引き返す。ユノ、熱波計測頼む!」


「了解……」


ユノが遺跡へ一歩踏み出した瞬間、世界が反転した。


――待っていた。


星の奥底、熱と光の渦の中心に“誰か”がいる。

赤く輝く双眸がユノを見ていた。


(……あなたが……?)


――名を、呼べ。

私は、マグニ。


ユノは息を呑んだ。

視界が戻ると、遺跡の扉が、まるでユノの接近に反応するかのように光り始めていた。


隊員たちが警戒する中、ユノだけが気づいていた。


この星は怒っているのではない。

求めているのだ。


そして――

ユノに何かを託そうとしている。

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