昼飯の奴
チャイムがなる。授業の終わりを告げたのだ。
「はーい。それじゃあ今日はここまでです。みなさん、お昼をしっかり取ってまた午後に会いましょうね。」
新米先生はそう言い残してお昼を取りに行ってしまう。俺もお昼に、と思ったが如何せん気が進まない。何せ、教室には誰もいないのだ。折角の昼食は誰かと食べたかったのだが、クラスメイトが登校していないのなら仕方ないのかもしれない。
肩を落として手洗い場へ行く。石鹸でよく手を洗い、水で流す。教室に戻ってひとり黙々とお弁当を広げる。なんとも寂しい。早くひとりでも多くクラスメイトが登校してくれないだろうか。
なんて思っているとガラガラ音をたてて教室の扉が開く。
「あれ?先生、忘れ物ですか?」
「いえ。よければ留唯くんと一緒に食べようと思いまして。」
「俺は嬉しいですけど先生は大丈夫なんですか?」
「え?」
先生は目を丸くして立ち止まる。
「ほら、先生同士でお昼食べて交流する…とかあるんじゃないですか?新米先生は新任だって聞きましたからそういうの大切にするのかと思って…。」
「………ふふっ。私は問題ありませんよ。貴方は生徒なんですから。先生の心配は大丈夫です。ほら、ご飯食べましょう!」
「は、はい。」
どうやら杞憂だったらしい。確かに新任といえど先生は先生だ。余計な心配だったか。
先生は俺の隣の席に座って手にしていたビニール袋からサンドイッチとお茶、お手拭きをひとつずつ取り出す。
「……先生。お昼、それだけなんですか?お腹減っちゃいません?」
「あはは。そうですね。減っちゃいます…。でも、あまりご飯にお金をかけるわけにはいかないので…。」
「貯金中なんですか?」
「うーん、貯金というかなんというか…。最近、少し本を買いすぎてしまいまして…。ま、まぁ先生の心配は不要ですよ!さっ、いただきます!」
心配は要らないと分かっていても、少し気になってしまう。が、先生も大人だ。平気と言うなら平気なのだろう。俺も手を合わせてお弁当を食べることにした。今日のおかずは唐揚げに小さなハンバーグ、ポテトサラダ等々、夢が詰まったラインナップだ。子供舌と言われればそれまでだが、俺は何よりもこのおかずが大好きだ。
「そういえば…他の登校拒否している生徒のところも行ったんですか?」
ご飯を口に放り込みながら聞いてみる。昨日、先生は登校拒否中の生徒の家を訪ねていたのだ。普通に考えるならば、残り14人全ての家へ行ったとは考えにくいが。
「はい!行きましたよ!」
「ぜ、全員ですか…?」
「勿論です!………とはいっても、これといった成果はありませんでしたが…。」
「いやいや。成果はなくとも、1人で15人分の家を回ったのは凄いですよ…!」
「そうでしょうか…。」
「そうですよ!俺、先生をみくびってました!」
「………ふふっ。そうですよね。先生、凄いですよね。いやぁ、さすが私ですよね。うんうん。もはや全教師の模範とも言える教師オブ教師ですよね。たんまり手当てをもらっても良いぐらいですよね。」
「それは調子に乗りすぎだと思います!」
腕を組み、うんうんと自慢げに頷く先生へ言う。この人はもしかするとのせられやすいのかもしれない。だからこそ、こんな登校拒否ばかりのクラスに割り当てられたのでは、なんて考えが浮かぶ。
なんにせよ、悪い先生ではない。未だクラスメイトはいないが、先生とふたりのご飯も珍しいし、中々美味しかった。




