恩返ししたい奴
今日の教室には私の他に新米先生、柳くん、のぞみちゃん、美奈ちゃん、そして不和ちゃんの5人がいる。なんとも賑やかで心が弾む。
クラスメイトが増えるにつれて、新米先生の表情が明るくなるのだ。これほど嬉しいことはない。
先生と柳くんは私を家から出してくれた。だからこそ、2人の喜ぶ顔の為に出来ることはやりたい。
今、やるべきことといえば新しく登校してきた不和ちゃんと仲良くなることだろう。
そうと決まれば行動あるのみ。次は体育の時間だ。早速話しかけてみよう。
***
「それでは2人一組でストレッチをしましょう!あっ!先生と組みたい人は言ってくださいね!先着1名ですからね!」
先生はジャージに身を包み、誇らしげに言う。これはチャンスだ。私はすかさず不和ちゃんに近付く。
「不和ちゃん……一緒に、やろう。」
「えっと、確か静奈ちゃん、だっけ?勿論、いいよぉ。」
まずは膝を伸ばすストレッチ。私が先に前屈状態になり、後ろから押してもらうことになった。
「おおー。見掛けによらず、静奈ちゃんは身体が柔らかいねぇ。」
「…………うん。……蛸も顔負けの、柔軟さ。」
「あははっ。すごいねぇ。」
会話は好感触。我ながらユーモアのあるたとえだったと思う。このまま会話を弾ませて、より仲を深めよう。
「不和ちゃんは……好きなキャラクターとか、いる…?」
「え?好きなキャラクター?突然だねぇ。うーん、特にいないなぁ。」
「そ、そっか…。私はね……メイマロって、キャラクターが好きなんだけど……知ってる?」
「あぁ。知ってるよ。兎のキャラだよね?うんうん、可愛いよねぇ。」
今度は私が不和ちゃんの背を押す番になった。ここは容赦なく押す。意外にも、身体が固いようで数秒押しただけでぴたりと彼女は止まる。
「いたたっ。わたし、柔軟苦手なんだぁ。」
「そうなんだ…。確か、ストレッチは……呼吸が大切って……聞いた。」
「呼吸、ねぇ。ひっひっふーってやつ?」
「それは……妊婦さんのだから……ちょっと違うかも…。」
「あははっ。だよねぇ。」
前屈姿勢のストレッチが終わり、今度は向かい合って足裏を合わせるストレッチをする。冷たい体育館の床に座り、足を広げた。そして手を伸ばし、不和ちゃんの手を握る。
足を広げ、彼女の足裏と私の足裏を合わせる。
「ねぇ。静奈ちゃんは、どうしてわたしと組もうと思ったの?」
「えっと……仲良く、なりたいから……。」
「仲良くねぇ。でも、もうお友達はいるように見えたよぉ。」
「………友達は、何人いても……嬉しい…。それに、折角……クラスメイトになったから……お話しは、してみたかった……。」
「ふぅん。いやぁ、確かに。友達は100人いても、1000人いても良いもんねぇ。わたしも同感同感。」
彼女は笑顔でそう告げる。予想よりもだいぶフレンドリーな人だった。これからもきっと仲良くなれるだろうと、そんな予感の中ストレッチを終える。




