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約束する奴

 またまた不和(ふわ)へ登校するように言った翌日。まぁ、なんとなく予想はしていたが、やはり彼女は学校に来なかった。

 おかしいな。昨日、アイスを奢れば来てくれると言っていたのだが。所詮、口約束。拘束力などないのだから仕方がない。しかし、だからといって諦めたくはない。


 今日も今日とて病院近くの信号へと行ってみることにした。


***

 「あっ!不和(ふわ)!お前、今日どうしたんだよ!学校来る気分じゃなかったのか?」

 

 不和(ふわ)は変わらず後ろ向きに信号を渡っている。危ないったらありはしない。


 「うん。気分じゃなかったんだ。」

 「……………でも、アイス奢ったら学校行く気分になるって…。」

 「あれ?そうだっけ…。でもほら、気分になるかもって言ったから。かもってことは、確実じゃないでしょ?」

 「そ、そりゃあそうだけどよ…。」


 ピヨピヨと鳴る信号を渡りきる。不和(ふわ)は手を頭の後ろに組んで後ろ向きに歩き続ける。摩訶(まか)高の制服が風で靡いていた。制服を着ているということは、行く意志が全くないというわけではないのだろう。

 マイペースな彼女のことなので、断言は出来ないが。


 「ねぇ。きみはなんでわたしに学校へ行ってほしいの?」

 「お前がクラスメイトだからだ。……やっぱり、みんな揃って学校生活送りてぇからさ。」

 「揃う意味ある?仲が良い人だけ来てくれれば良いんじゃないかな。」

 「で、でもなんか寂しいだろ。仲良くなれるかもしれねぇのに、そもそも来てなかったらそれすら分かんねぇし。」

 「ふぅん。」


 自然と俺達はジェラートを売っていた公園に辿り着く。今日はキッチンカーの姿が見えない。

 不和(ふわ)は公園内の砂場にしゃがみ込み、何かを造形し始める。手慣れた様子で、砂を叩いて固めていく。 


 「学校、行ってもいいよ。」

 「ほ、ほんとか!?今度は嘘じゃねぇよな!?」    

 「うん。嘘なんか、わたしつかないよ。」

 「まぁ、嘘はついてなかったな…。」


 昨日も一昨日も、別段学校に行くとは直接言っていなかったのだ。つまり、嘘はついていなかった。物はいいような気がするが。


 「あっ。今の、嘘。わたし、嘘ついてた。」

 「え。もしかして、学校行くって言ったことか!?」

 「あははっ。今日のことじゃないよ。昨日だったか、一昨日だったか、のことだよ。わたし、学校嫌いじゃないって言ったけど嘘。」

 

 砂を固めて山を作っていた手を止めて彼女は立ち上がる。そして俺の方を振り向く。


 「嫌いじゃなくて、大嫌い。」

 「じゃ、じゃあなんで学校に行く気分になったんだよ…?」

 「それは、きみのことが嫌いじゃないから。」

 「……………つまり、大嫌いってことか?」

 「あははっ。大嫌いでもないよ。」

 「てことは、大大大嫌い…?」

 「違うよ。卑屈だなぁ。」


 口元に手をやって、不和(ふわ)は笑う。控えめでささやかだが、妙に頭に残る優しい微笑みだった。

 手についた砂をパンパンとはたき落とす。視線を俺に向け、言う。


 「まぁ、そういうことだから。明日、学校でね。」

 「お、おう。またな。」


 彼女の心変わりについていけないものの、恐らく不和(ふわ)は明日学校へやってくるのだろう。取り敢えず、そのことに喜び一段落ついたことに安堵するのだった。

 

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