アイス奢る奴
不和が学校に来なかったので、俺は彼女に会いに行くことにした。といっても、不和がどこにいるのかは分からないが。
さてどうしたものか。取り敢えず彼女と出会った場所に戻ろう。
***
俺が不和と出会ったのは病院から出た信号のところである。人や車通りが少なく、閑散としている場所だ。早速向かう。
ピヨピヨと信号機が切り替わる音がした。
そこに、昨日と同じように後ろ向きに歩く少女不和がいた。また声をかける。
「お、おい。だから、後ろ向きに歩くのは危ねえって。」
「でも今まで事故に遭ったことないよ?」
「そういう問題じゃねえって昨日も言っただろ!?」
「昨日?そうだったかなぁ。」
不和はとぼけるようにゆったりとした調子だ。まさか本当に覚えていないのか。だとすれば学校に来れなかったのも理解できる。
「もしかして学校に行くっつったことも覚えてなかったのか?」
「ううん、まさか。覚えてるよ。」
「え!?なら、なんで来なかったんだ?」
「うーん。そういう気分じゃなかったから、かなぁ。」
「き、気分じゃない、かぁ…。」
記憶に障害があるだとかではなさそうなので、安心した。が、それはそれとして気分でないから登校しないというのも難しい。
どうにかしてノらせれば学校に来てくれるということなのだろう。頭を捻って、アイディアを浮かばせる。
「ど、どうすりゃ学校に行きたくなる?」
「そうだねぇ。アイスを食べたら行きたくなるかなぁ。」
「アイスか!分かった!よし!食いに行くぞ!」
不和の手を引き、近くの公園を目指す。確か、付近の公園にジェラートのキッチンカーが来ていたはず。そこならば彼女も満足してくれるだろう。
信号を渡りきり、住宅街に入る。その一角。小さな池がある公園へと辿り着いた。丁度、ピンク色の旗が立っているキッチンカーがある。
「すいません。ジェラート、ください。………不和。なに食うんだ?」
「バニラかなぁ。もしかておごり?」
「あ、あぁ。任せろ。」
「そっかぁ。なら、抹茶と、バニラと、チョコと…。」
「お、おう…。…………持ってくれよ。俺の財布……。」
思わぬ出費につい、財布を握りしめる。
「はい!お待たせしました!」
「あ、ありがとうございます…。」
店員に礼を言ってジェラートを受け取る。そして不和に渡そうと見渡したが、肝心の彼女はいない。周囲を見てみても、いない。一体どこに行ってしまったのか。というか、マイペースすぎないか。
「ふ、不和ぁー!どこいったんだー!?アイス溶けちまうぞ!?」
「ん。美味しいね。これ。」
「!?い、いつの間にいたんだよ!?」
気がつけば不和が俺の持っていたジェラートを持って、小さな口で食べていた。悪びれもなく次々とジェラートを平らげる。
「ふぅ。美味しかった。じゃあね。」
「え!?あ、おい!不和!明日、学校でな!おーい!」
ひらひらと手を振って、のらりくらりと去っていく。全くマイペースなものだ。
しかし、これで明日学校へ来てくれるだろう。きっと、そうだ。明日に期待を込めて俺は帰宅するのだった。




