あだ名をつける奴
昼休みももうじき終わるという頃。用事があるといっていた静奈と、何処かに行っていた美奈さんが教室に戻ってくる。
「静奈!お前、お昼は食べたか?もうすぐ昼休み終わっちまうぞ。」
「……………うん。…………大丈夫。」
「ふふっ。実は、2人でご飯を食べてたのよ。大切なお話をしながら。ねっ?」
「……………ん。」
2人は何やら笑顔で視線を合わせている。どうやら昼休みの間に静奈は美奈さんと随分仲良くなったようだ。
俺はすこしの焦りを感じる。不登校のクラスメイトを連れてきて、仲良くする。そう宣言したというのに、それほど仲良くなってはいない。それどころか、静奈の方が彼女らと関係を深めているではないか。
いや。まぁ、静奈の人となりが成したことなのかもしれない。今は深く悩むのはよしておこう。
「ふふっ。お昼、中々楽しかったわ。せいちゃん。」
「…………私も、楽しかった。」
良い感じの雰囲気の中、美奈さんの言葉に突っかかりを覚えてつい叫ぶ。
「せ、せいちゃん!?それって、静奈のことですか!?」
「えぇ。そうよ。」
「のんたんに、せいちゃん……。俺も、なんかあだ名欲しいです!ほら、仲良しって感じしますし!」
「そ、そうねぇ…うーん。留唯くんだから…るいるいとか?……なんてね。少し馴れ馴れしすぎるわね。」
「いえ!それにしましょう!俺、気に入りました!」
折角付けてくれたあだ名だ。るいるいという可愛らしすぎる響きは少し似合わないが、それはそれとしてあだ名は欲しい。俺だけないというのも仲間外れのようで寂しいし。
「そうです!一人称もるいるいにします!」
「え、えぇ…それはやめたほうが良いんじゃないかしら…。」
「でも嬉しいんです!るいるい、これで午後の授業も頑張れます!」
「一人称はやめましょう?ね?」
引き留められるが、戻すつもりはない。うん。るいるい、良い響きだ。
そうこうしていると昼休み終わりを告げるチャイムが鳴った。俺達は大人しく席につく。それと同時に先生が入ってきた。チャイムが鳴り終えるのと同時だ。
「はーい!それでは授業を始めます。日直の留唯くん。号令お願いします。」
「先生!今の俺は留唯くんじゃありません!るいるいです!そう呼んでください!」
「え、えぇと…………………。頭でも打ちました?」
「打ってません!」
「そうですか…。それならそれで心配ですね………。」
先生は大真面目に俺へ返答する。そうしてやや困ったようにウェーブがかった短い髪を指に巻きつける。
それを見たのぞみは俺へ足蹴りしてきた。
「おいっ!先公困ってんじゃねぇか!馬鹿言ってねぇで早く号令しろ!殺すぞ!」
「わ、分かったからすぐ殺すな!」
のぞみの叱責を受けたので、るいるい呼びは諦めて大人しく号令することにした。




