五十歩百歩な奴
美奈さんを含めての授業は淡々と進んだ。昨日も感じたが、不登校のクラスメイト集めは随分順調である。スカスカな教室が埋まるのも時間の問題といったところか。
なんやかんやで昼食の時間。俺の昼飯は勿論、母特製の弁当である。さっさと手洗いを済ませて席につく。こうしてクラスメイトが集まってきたのだ。今いるメンバーで仲良くお昼としたい。
「折角だし皆で食おうぜ!」
「あ?なんであんたと食わなきゃいけねぇんだよ。」
「……………のぞみちゃん………私と一緒は、嫌?」
「なわけねぇだろ!ほら、さっさと用意しろ!」
「…………………お前、やっぱり俺と静奈とで対応変えてるだろ…。」
今に始まったことではないが、のぞみの態度はあからさますぎる。
あからさまといえば、のぞみの美奈さんに対する態度もそうか。とはいっても、肝心の本人はこの場にいなかった。何処へ行ったのだろう。
「み、みな姉が来る前にさっさと食おう。なっ?」
「ビビリすぎだろ…。」
のぞみも美奈さんが居ないことに気付いたらしいが、俺とは逆に彼女が来る前に食事を取ろうとしていた。以前、美奈さんに絞められたと聞いたが、効果てきめんだったらしい。
「………………私、お手洗い……行ってくる。………先に、食べてて……。」
「おう。分かった。」
静奈はそう言って席を立ち、教室を出ていく。残されたのは俺とのぞみだけだった。
先に食べてて良いと言われたので、俺は自分の弁当を広げる。今日も今日とてナポリタンのスパゲッティにハンバーグ等々、夢のようなラインナップが目前に広がっていた。
横を見ると、のぞみが鞄からたったひとつ銀色の包装をしたゼリーを取り出している。
「……まさか、それが昼飯なのか…?」
「あ?そうだよ。文句あんのか。殺すぞ。」
「すぐ殺そうとすんなよ…。………別に文句ってわけじゃねぇけど、それで足りんのか心配になっただけだ。」
のぞみは白いプラスチックの飲み口からゼリーを吸引して飲み込む。そして、得意げな顔で言った。
「あのなぁ、柳。これは、完全栄養食だぜ?完全って知ってるか?パーフェクトってことだよ。つまり、他にはいらねぇってことだ。まぁ、豆粒ぐらいの知能しかないお前には分かんねぇか。」
「完全がパーフェクトってことは知ってるぞ…。つぅか、心配しただけでそんな言うことねぇだろ…。」
「はっ!ホントに知ってんのかぁ?じゃあパーフェクトってスペル書けんのかよ?あ?」
「か、書けるに決まってんだろ!………多分。」
パーフェクトというのだから、恐らくPa、それから、
伸ばし棒が付いているからrあたりか。うん。多分そんなとこだろう。
「そういうお前は書けるのかよ…?」
「当たり前だろ!」
意気揚々と、のぞみは黒板の前に立ちチョークを手にする。
緑色の黒板に白い文字がでかでかと記されていく。
PARFECT
「パーフェクトってのは、こう書くんだ!」
「お、俺だってそう書こうとしてたぜ!」
「はぁ〜?ホントか〜?」
と、口論していると教室のドアがガラガラ開く。
「ちなみにパーフェクトの最初はPaではなくPeですよ。」
それだけを告げた先生は何処かへ行ってしまう。
「…………………おい、違うってよ。」
「う、うるせぇな。あんただってそう書こうと思ったっつってたろ。」
「…………いやぁ?本当はPeって書こうとしてたんだ。でも、お前が変に煽るから言い逃しただけだぜ?」
ぎこちなく笑いつつ、なんとか先の失態を逸らそうとする。が、再び教室の扉が開く。
「2人とも、英語の勉強をもう少し頑張りましょうね。まずは中学の復習から。」
「「…………………はい。」」
先生はそれっきり、廊下に出てしまった。




