年上の奴
静奈、そしてのぞみと迎えた授業。静奈は兎も角、意外にものぞみも大人しく机に座り勉強をしていた。
驚きながらも、時間は進む。一日というのはあっという間だ。教壇に立つ先生がホームルームを終えて、教室から出ようとする。
「あっ!先生!」
「はい。どうしました留唯くん。」
黒いバインダーを小脇に挟みながら俺の呼び掛けに応じる。
「次の生徒はどうします?誰の家に行くとか、決まってたり…。」
短期間で2人もの生徒が登校してくれたとはいえ、まだまだ全員揃ってはいない。登校拒否中の生徒を引っ張り出すため、次なるターゲットを聞く。
「次の生徒…ですか…。一応、目星はついています。丁度放課後会いに行く予定だったので。」
「そうなんですね!なら、俺もついていきますよ!」
「…………私、も。」
「おい、待てよ。」
おずおずと手を挙げた静奈を静止したのはのぞみである。
「これから、あたしと勝負すんだろ?」
「……でも、私も……先生達を手伝いたい……。」
「むっ。あたしよりこいつらの方が大事なのかよ。」
年にも似合わずむくれっ面で頬を膨らませる。
そんなのぞみの仕草は置いておいて、彼女の言い分自体は理解できた。そもそも、勝負に勝ったら登校するという約束だったのだ。それに、無理に静奈が俺達の手伝いをする必要もない。
「静奈さん。ここは先生に任せてください。」
「そうだ。俺と先生で次のクラスメイトを引っ張ってくるからよ。のぞみが拗ねる前に遊んでやってくれ。」
「あ!?誰が拗ねるだぁ!?」
「………うん。分かった。………行こっか。のぞみちゃん。」
「おい待て!あたしは拗ねちゃいねぇからな!おい!」
静奈はこくこくと首を縦に振りながらも、抗議をするのぞみを連れて行った。さながら駄々をこねる子を回収していく保護者のようだ。
「それでは行ってみましょうか。」
「ですね。」
***
学校を出て目的地へ向かう途中、これから会う生徒の情報を聞く。
名は竜上美奈。なんと、歳が23らしい。先生によれば、美奈さんは病気で伏していた母親のために1年ほど前まで働いていたようだ。
そして母の病気が一段落したところで通えなかった高校に通おうと決意したらしい。
だが、その話が本当ならばなぜ彼女は学校へ来ていないのだろうか。
考え直して、やっぱり学生になるというのは気が引けてしまったのだろうか。まぁ、俺の考えなんてただの妄想にすぎない。兎に角会ってみなければ。
「着きました。……よし。押しますよ。」
耐久が不安になるアパートの一室。その前に立ち、先生はインターホンへ手を伸ばす。
「ごめんください。私、摩訶高校の教師をしております、新米舞子です。………美奈さんはいらっしゃいますか。」
「はぁーい。少しお待ちを〜。」
中からおっとりとした声がする。
俺より随分年上のクラスメイト。いったいどんな人なのだろう。




