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押される奴

 朝のホームルームを告げるチャイムと同時に、いつものように新米(にいまい)先生が教室へ入ってくる。


 「おはようございま、あっ!?」


 先生は立ち止まり、唖然とする。かと思えば、教室隅の席へ即座に移動してそこに座る生徒の手をぎゅっと掴む。


 「貴方は、たちばな のぞみさんですね!?来てくれたんですね!先生、嬉しいです!」

 「な、なんだよあんた…。」


 手を掴まれた生徒、のぞみは先生の態度に仰け反りながらも引き気味になる。

 そんな彼女の反応は置いておいて、先生は薄い胸を張り得意げに言う。

  

 「あっ!自己紹介を忘れていましたね!私は新米(にいまい)舞子(まいこ)と言います。ここ、鹿組(しかくみ)の担任をやっています!よろしくお願いしますね、のぞみさん!」

 「わ、分かったから離れろよ…。うるせぇ先公(せんこう)だな…。」


 俺の時と同じように、随分乱雑な対応をするのぞみ。対する先生は普段のペースを崩さず、騒がしい調子である。


 「閃光(せんこう)…?私がですか…?」

 「あ?そうだろ。」

 「……!そうですか。私、貴方にとって眩い光なんですね…!」

 「は?…………言っとくけど、光る方の閃光じゃねぇからな!」

 「見ていてください。模範となる、眩しいほどの大人の姿、見せますから!」

 「話聞けよ!」


 恐らく先生は、生徒が登校してくれて妙なテンションに駆られているのだ。この状態ではマトモな話しはできないと思ったほうがいい。


 「のぞみ。先生はしばらく駄目だ。諦めて話合わせるんだな。」

 「い、意味分かんねぇよ…。」

 「だろうな。」


 そうはいったが、正直気持ちは分かる。俺だってクラスメイトが登校してくれて舞い上がる気持ちなのだ。まぁ、先生ほど跳ねた様子にはならないが。


 「のぞみさん!そんな離れたところにいないで此方へ!さぁさぁ!」

 「お、おい…!」


 引っ張られるまま連れてこられたのは俺の隣の席だった。これで、教室真ん中の席に俺、左右に静奈(せいな)とのぞみが配置されるようになる。ひとりぼっちの教室と比べ、隣がいるだけで寂しさは半分ほどなくなった。


 「どうせ隣にすんならこいつじゃなくて静奈(せいな)にしろよ…。」

 「むっ。席替えはまだ早いですよ。そう言わず、留唯(るい)くんとも話してみましょう?」

 「ちっ。」

 

 隣に移動したのぞみは舌打ちと口撃で俺の心を刺す。先程までクラスメイトの登校を喜んでいたが、ここまで拒否されると些か悲しい。


 「そんなに俺が嫌かよ…。仲良くしようぜ?なぁ。」

 「はいはい。夜露死苦(よろしく)夜露死苦(よろしく)。」

 「ホントによろしく思ってるか!?」

 「………………どんまい。(やなぎ)くん。」

 「慰めんなら、こいつのこと注意してくれよ静奈(せいな)!」


 肩にポンと手を乗せられたが、それどころではない。慰めならば、のぞみとの仲をどうにかとりもってほしい。


 「…………それは、無理……。伸び伸び育ってほしい、から。」

 「だとよ!静奈(せいな)がそう言うんだ。あたしはあんたと仲良しこよしするつもりはねぇよ。」

 「なんだよ…。お前は親子か何かなのか…?」


 予想外の意気投合っぷりを見せる2人。蚊帳の外に放り出された俺はひとり悲しく肩を震わせるのだった。

 

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