待ってる奴
再びのぞみに敗北した静奈。リベンジといきたかったが、残念ながらゲームセンターが閉まるということで勝負は翌日に持ち越された。
翌朝。俺は家が隣でもあるので静奈と共に登校する。
「…………………次こそ、勝つ。」
「すげぇやる気だな。…………よし。プレイ代は俺に任せろ!」
「いいの…?」
「おう。他に出来ることもねぇしな!バンバン金づるにしろ!」
「そう、言われると…やりにくいけど…。分かった。」
いつも通り摩訶高の鹿組へ行き、教室の扉を開ける。
「!?のぞみ!?」
「あ?何叫んでんだ?まずは挨拶だろうが。」
「そ、そうだな…?えっと、おはよう。」
「ちっ。」
「挨拶したんだから返せよ!?」
2人きりと思えた教室には、なんとのぞみが居座っていた。席は窓際一番端という、なんとも羨ましい場所である。彼女は足を机に乗せたまま腕を頭の後ろに組んでいた。
「…………のぞみちゃん……昨日は、学校なんて………無駄だから……行かないって……。」
「あぁ。でも今は少なくとも無駄じゃねぇ。」
「?どういうことだ?」
「あんたと対戦するまで暇だからな。学校終わったらすぐ勝負するために待ってやるよ。」
思わぬ収穫である。こんなに早くクラスメイト2人目が登校してくれるとは思わなかった。
「そうか…。そういうことなら、よろしくなのぞみ!」
俺は彼女のもとに行き、握手を求める。が、差し伸べた手をスルーしてのぞみは後ろにいた静奈へ視線を投げる。
「で、あんたはなんて言うんだ。連れの名前は聞いたが、あんたのは聞いてねぇ。」
「…………私は、柊、静奈………。」
「静奈…。良い名前じゃねぇか。あたしは、たちばな のぞみ。あんたを負かしたんだ。名前くらいは覚えとけよ。」
「……………うん。……でも、次は……勝つから。」
「はっ!上等だ。」
どうやら2人は意気投合したようだ。静奈ものぞみに怯えることなく、彼女に笑いかけている。なんだか俺が蚊帳の外にいる気分だ。
「そ、そういやのぞみって字はどう書くんだ?」
「んなもん先公にでも聞けよ。」
俺の疑問はぴしゃりと冷たく追い払われてしまう。少し物悲しい。
「………………普通だったら……希望の希とか、望……?」
「いや。あたしは名字も名前もひらがなだ。珍しいだろ。」
「へぇ。………どっちもひらがななんだ……。」
「なんか俺と静奈の対応ちがくねぇか!?」
「気のせいだろ。」
「気の所為、だと思う…。」
「そうかぁ!?」
差別というか区別というか。謎の隔たりを感じながらも、俺はホームルームを告げるチャイムを聞く。まぁなんにせよ、クラスメイトが1人増えたのだ。先生も喜ぶに違いない。




