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しつこい奴

 俺と静奈(せいな)は再び、寂れたドーム型のゲームセンターへ来ていた。その中の格闘ゲームコーナーに、目的の少女は座っていた。


 「あ?なんだあんたら。負けたんだから帰れっつったよな?」

 「…………うん。帰ったよ………一回。それで、また来た。」

 「は?」

 「また来るなっては………言ってなかった……だから…貴方の約束は守った……。」

 

 俺の袖をこっそり掴みながらも、静奈(せいな)は勇敢に言う。のぞみへのリベンジに熱い想いがあるようだ。俺としても、彼女を応援したい。


 「そもそも、ここのゲームセンターなんて人すくねぇだろ。なら、静奈(せいな)と対戦したって良いじゃねぇか。」

 「良いじゃねぇか、だぁ?なんであんたが決めんだよ。殺すぞ。」

 「お、お前、ほぼ初対面の相手に殺すぞなんて言うなよ…。」

 「ちっ。うるせぇなぁ。おぼっちゃんはこんなとこ来るんじゃねぇよ。」


 頭をかいて、のぞみは不機嫌そうにする。だが、その態度を受けてもなお静奈(せいな)は引き下がらない。


 「それで……対戦してくれるの……?それとも、逃げるの…?」

 「はっ!やっすい挑発だな!まぁ乗ってやるよ!さっさと座れ!」


 勝負は受けてくれるらしい。のぞみの声に呼応して、静奈(せいな)も席につく。


 『格闘伝説3!』


 タイトルコールが鳴ったと思えば、2人はすぐさまキャラクター選択に。勿論、使うのはそれぞれ(たき)とメイマロだった。

 淡々と準備は進んで、試合が始まる。


 今回もまた、静奈(せいな)側の体力のほうが多い状況になる。


 「おいおい!またこの展開か!あたしの使うキャラ性能すら把握出来てねぇんだな!」

 「……………してるよ。…………貴方の使う(たき)は……体力が多ければ多いほど………必殺技のダメージが、出る。」

 「だってのに、あんたはあたしを攻撃してる。それは、あんたの頭じゃ策が思いつかなかったからか?」

 「…………作戦は、ある……。」


 静かな宣言と共に、画面を見る。体力ゲージの下は確か必殺技ゲージだったか。のぞみの必殺技ゲージを確認すると、前回の勝負と比べてあまり溜まっていないようであった。

 調べたサイトによると必殺技ゲージは攻撃を受ける、またはガードによって溜まるらしい。基準となるのは、ヒット数と書いてあったような気がする。つまりは、沢山食らえば食らうほど必殺技を打ちやすい、と。


 「……………あぁ。なるほど。あんた、メイマロの性能くらいは調べてきたのか。」

 「………もちろん。」

 

 何かに納得したのぞみはほくそ笑む。俺は彼女の笑みが何に対して向けられたものかさっぱりだった。


 「な、なんで前よりも(たき)の必殺技ゲージが溜まってねぇんだ…?攻撃は普通にしてるよな…。」

 「なんだ。連れは知らねぇのか。なら教えてやろうか。」

 「お、おう。頼む。」


 思わぬ言葉につい、頷く。対戦の最中だというのによく会話が出来るものだ。


 「必殺技ゲージは攻撃のヒット数で溜まり具合が変わる。つまりは、相手に必殺技を貯めさせたくなかったらヒット数のすくねぇ攻撃を打てばいい。」


 解説をされるまま画面を見ると、確かに先からメイマロの攻撃はヒット数が多くはない。ただ懐からハートを取り出して相手へぶつけるだけ。ヒット数にして2ヒットだ。


 「それに、この攻撃は発生もはえぇ。テキトーにコンボを擦るよりかは強いってわけだ。」


 話しながらものぞみは操作を続ける。彼女の言う通りなら、静奈(せいな)に分があるはず。だというのに、静奈(せいな)の使うメイマロは画面端に追い詰められて攻撃を食らい続けていた。


 『フィニッシュ!』


 そして遂に、メイマロの体力ゲージが無くなり勝負は終わってしまう。


 「な、なんだ?何が起こったんだ…?」

 「(たき)の…ハメ技…。(やなぎ)くんが、調べたノートに……あったはず。」

 「!そうか!」


 急ぎノートを開いて確認する。彼女の言ったハメ技とやらは、確かに記録してあった。


 曰く、足を払うモーションから入る一通りのコンボだそう。抜け出すには適切なタイミングでのガード、または必殺技を発動させることが必須らしい。


 「…………今のは、練習不足だった。………対策は分かってたから…。」

 「なんだ負け惜しみかよ。」

 「………………うん。……だから、一回帰ってまた来る。」

 「………あんた、しつこい奴だな。」

 「………負けっぱなしは、嫌だから。」

 「ふぅん。まっ、でも無理だぜ。そろそろここも閉店だしな。するとしても、明日だ。精々、イメトレでもしとけ。」


 のぞみは手を振って立ち去る。心なしか、嬉しそうな顔をしていた。


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