対策する奴
敗北した俺達はのぞみの言う通りゲームセンターを出る。敗北した、というが俺は挑んでいない。それ以前の話、ということだ。
「………………………柳くん。」
「お、おう。どうした。」
「………これから、時間、ある?」
「もちろん。……用事があんならとことん付き合うぜ。」
勝負に負けたのだ。何か、気を紛らわせるというのならば俺にはきっと付き合う義務がある。なにせ俺自体はただ後ろで見ていただけなのだから。
「じゃあ……少し、手伝って。」
「?あぁ。」
手伝いの内容は分からなかったものの、取り敢えず静奈について行くことにした。
彼女が向かった先は、自宅である。いきなり同級生の家に訪問するというのは緊張したが、静奈は特に気にもとめていないようだ。
「お、お邪魔します…。」
「私の部屋、こっち…。ついて、来て。」
手招きされるまま、部屋に入る。クラスメイトの女子の部屋。意識をすると、自然に背筋が伸びる。
「はい…これ。」
部屋に入ってすぐ、キャンパスノートを渡された。何が何だか、分からない。
ノートを受け取ると、静奈に大きなパソコンが乗っかっているディスクへ案内された。長方形の黒い机にパソコンがふたつ。ひとつは中々古めかしい分厚い液晶のものだった。もうひとつは最新のようで、贅沢にモニターがふたつ付いている。
「えっと…。静奈。これから、何すんだ?」
「……………のぞみちゃんの瀧を………対策、する。」
瀧というのは確か、のぞみが『格闘伝説3』で使用したキャラクターだ。その対策をする、と静奈は言っている。が、正直なところどうするかピンとこない。
「対策っていうと…」
「………柳くんには……瀧の情報を集めてもらいたい……」
「なるほどな。よし任せろ!」
俺は彼女の言う通り、有志の作った攻略サイトを覗きにいく。『格闘伝説3』という文字を見つけ、クリック。そこにはシステムの解説やキャラクターのコンボ紹介、フレーム云々など俺にはよく分からない情報が載っていた。
取り敢えず、のぞみの使う瀧という青年のコンボやリーチを調べる。
隣に座る静奈はというと、使用キャラクターのメイマロについて深く調べているようだ。
そして1時間、経ったか経っていないか。俺はようやく瀧についての情報を整理し終える。なるべく見やすく、分かりやすく纏めるのに苦戦した。
「静奈。こっちは終わったぜ。」
「……………うん。私も……。……よし。それじゃあ行こうか。」
「行くって、どこに?」
「もちろん…ゲームセンター。…………やられたまんまじゃ、嫌だ……から。」
強い眼差しの静奈はそそくさと部屋を出ようと準備するのだった。




