対戦する奴
『はっ!はっ!はっ!』
レトロチックな画面から青年の声が聞こえる。それと共に拳が振るわれ、打撃音が鳴った。対戦相手、のぞみが使用するキャラクターから発せられるものだ。
対する静奈のキャラクター、メイマロは短い手足を縮めて攻撃をガードしていた。そして、しばらくガードを終えると反撃を始める。
『ていやっ!えいっ!やぁっ!』
可愛らしい声をしながら青年へスライディングしていく。懐からハートを取り出し、相手にぶつける。ピンクのキュートなハートは当たり判定があるようだ。
「いけるぜ!静奈っ!」
「………………………どう、だろう。」
「え?」
額に汗を滲ませながら、静奈は渋い顔をしている。
「だ、だって今はお前の方が体力多いじゃねぇか。このまま行けば…。」
「………………大会優勝するぐらいの………のぞみちゃんが………黙って押されるわけ、ない……何か、狙いがあるはず……。」
「狙い…。」
格闘ゲームを嗜まない俺には、のぞみの狙いとやらが分からなかった。体力ゲージを見れば、相手は静奈の半分ほどしかないのだ。これから負けるなんてことはないはず。
と、体力ゲージを見ていると下にある別のゲージに気付く。スタミナゲージか何かだろうか。のぞみのものはかなり溜まっており、反対に静奈のものはあまり溜まっていなかった。
やけに嫌な予感がする。
『おらおら!パーティといこうかっ!』
「!まずっ、」
「やっと気付いたかよ!おっせぇなぁ!」
静奈が慌てるのと同時に、のぞみの使用するキャラクターがメイマロのお腹に蹴りを入れた。
拍子に浮き上がる兎。空中にいるメイマロへ、相手の青年は容赦なく拳を突き上げる。幾度も、幾度も。
削れるメイマロの体力ゲージ。明らかに、減り方が尋常じゃなかった。そして、遂に。
『フィニッシュ!』
ゲージがゼロとなり、メイマロが倒れる。
『ま、負けちゃったぁ…。』
『これで終いか?つまんねぇなぁ!』
「…………………………。」
敗北した静奈はただ呆然と画面を見つめていた。
「今、何が起こったんだ?のぞみの使った技、強すぎるだろ。もしかしてズル、」
「……………ううん。違う。…………あれは、のぞみちゃんが使うキャラ瀧の………必殺技……のはず。」
「必殺技…?にしても強すぎだろ!」
そこで、対面していたのぞみが立ち上がり勝ち気に言う。
「強すぎだぁ?逆だよ。メイマロが弱すぎんだ。」
「!」
「あのなぁ。シリーズの中でも特に、『格闘伝説3』は必殺技が勝敗を分けんだぜ?だってのに、あんたの使うメイマロは必殺技が溜まりにくいわ、弱ぇわで、雑魚オブ雑魚。………新参が雑魚使って、あたしに勝てるわけねぇだろ?」
「………………………。」
静奈は黙ったままだった。
「ほら、負けたやつはとっとと帰んな。うざったいあんたらがここにいたら、あたしに迷惑だ。」
約束は約束だ。俺達は廃れたゲームセンターを背に、帰宅することにした。




