説得する奴
「おい。何見てんだって言ってんだよ。うんとかすんとか言えよ。」
目前の金髪の少女は俺達を睨みつける。今にも食いかかってきそうだ。俺は静奈のを背にして、落ち着いて口を開く。
「俺は、摩訶高校鹿組の柳留唯だ。ここにいる、のぞみって奴を探しに来たんだ。」
「あ?……のぞみはあたしだよ。なんか用でもあんのか?」
のぞみの威圧にひるみそうになるが、どうにか踏ん張る。
「が、学校に誘いに来たんだ。……一度でいいから来てみないか。案外、楽しいと思うぞ。」
「はっ。くだらねぇ。んなもん、願い下げだ。」
「…………やっぱり行きたくねぇ理由があるのか?もし話せるんなら、聞かせてくれ。」
家庭環境か、彼女自身の性格か。いずれにせよ深い理由があるのかもしれない。踏み込みすぎるのはよろしくないだろうが、もし話してくれるなら聞きたかった。
そんな意気込みとは反対に、のぞみは鼻を鳴らす。
「なに深刻な顔してんだ、気持ちワリィ。あたしはな、ただ無駄だから行かねぇだけだ。」
「無駄…?勉強がか?」
「全部だよ。ちんたらちんたら他の奴らと過ごして何の意味があんだ?んなことしてんなら、あたしにとってはここにいる方が有意義さ。」
「しょ、将来はどうすんだよ。」
「しょーらい?あんたの気にすることじゃねぇだろ。それに、あたしにはコイツがあるから問題ねぇよ。」
コイツ、と親指で示したのはのぞみの横にあったゲームだ。ドット絵のキャラクターが大きく映されている格闘ゲームらしかった。
「あたしはな、このゲームで大会優勝してきたんだ。しかも賞金のあるやつをな。高校卒業したら、そん時はプロになってこれで稼ぐだけ。……ほら、あたしが学校に行く意味なんざねぇだろ?」
ダメージジーンズに包まれた足を組み、得意げに言う。それに対して、今まで沈黙していた静奈が俺の後ろから顔を出して躊躇いがちに話す。
「で、でも……プロに、なれなかった時の……ことを考えたら…ちゃんと、行った方が……良いと、思う…。」
「あ?」
「ひっ!」
のぞみにガンを飛ばされ静奈は再び俺の後ろに引っ込む。俺は彼女を庇いながら、のぞみを見る。
「静奈の言う通りだと思うぜ。ほら、備えあれば何とかって言うしな。それに、将来云々に限らず、学校は楽しいと思うぜ。」
「……………………ちっ。」
引き下がらない俺達を見て、のぞみは頭をかく。苛立ちが募りに募って有頂天に達したのか、怒りとは真逆のような笑みを浮かべる。
「随分、上からもの言うじゃねぇか。そんなにあたしに言うこと聞かせたかったら勝負しようじゃねぇか。」
「勝負か。何すんだ。け、喧嘩は賛成できねぇぞ。」
「喧嘩?馬鹿言うなよ。それよりもっとおもしれぇ奴だよ。」
そう言って彼女が指差したのは、件の格闘ゲームであった。




